光ちゃんと司先生が結ばれる話   作:青紫

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湯上りトーク

 遅刻した挙句、ゲロ(×3)を披露したのがマズかった。

 あまりの醜態に瞳さんがキレて鬼と化したのだ。

 またかよぉ!!┐(´∀`)┌ヤレヤレ

 怒髪天を衝いた瞳さんは神々しくも恐ろしい鬼神である。

 阿修羅、仁王、明王もお似合いだと思うのよwww

 瞳さんは合宿中に何度鬼へと変身するのだろう?

 毎回そんなに怒って疲れないのかな?

 

『今日という今日は許さん!』

『いつも許されてませんけどねw』

『黙れぇぇ!』

 

 しこたま怒られ、スケートリンクで正座放置プレイ(半裸)までする事になった。

 練習に参加する光といのりさんは、説教だけで許されたのが唯一の救いだ。

 俺を見せしめにしたのは瞳先生の発案で、二人の教え子に反省を促すためだったらしい。

 効果はバツグンだったようで、光といのりさんは半泣きで俺の減刑を嘆願してくれた。

 二人にとっては自ら罰を受けるより、俺が酷い目にあう方が堪えたようだ。

 優しい子たちに育ってくれたなぁ。

 先生、泣いちゃうぐらい嬉しいわよ!

 

『瞳先生の鬼!悪魔!欲求不満!司さんを解放を要求する!』

『やりすぎですよ!サディスティック瞳先生!失望しましたファンやめます』

『いい教え子を持ったわね、司君?…もう1時間正座してろ』

『『やめたげてよぉ!!』』

 

 二人の余計な発言で刑期が伸びたよ。

 やったね!ツカサちゃん!

 本当に泣いちゃう!!

 

 放置プレイに物足りなさを感じだした頃、ようやく瞳さんの怒りが収まったようで、俺は解放された。

 冷え切った体は教え子たちに温めてもらったので即座に回復した。

 美少女のハグは万病に効く。古事記にもそう書いてある。

 それから、お騒がせした事を三人で謝って回った。

 呆れ3割心配7割の反応で『ま、気にすんな』と言ってくれた皆は、いい人たちばかりだと思う。

 因みに、ゲロは放置プレイの前に綺麗に掃除済みだ。

 

 ホテルに戻って入浴を済ませ、やっと一息つくことが出来た。

 今日はいろいろあって疲れた。主にピュア太郎のせいでな!

 あの後、ピュア太郎と実叶さんはどうなったのだろうか?

 碌な挨拶もできず別れてしまったは少々心残りだ。

 明日にでも何らかの形で接触があればいいが、無ければ教え子たち経由で連絡を取ってみよう。

 

 ●

 

 風呂上り、ゆったりとした恰好に着替えた俺は、だだっ広い休憩所で日課のストレッチを行う。

 浴場で一緒になった理凰君を含む男子選手たちも、俺に(なら)って体を解していた。

 女子グループばかりに注目しがちだが、男子たちも頑張っているようで感心感心。

 彼らによると、俺と光といのりさんは『ゲロい三連星』という不名誉な称号を獲得したらしい。

 (つつし)んで辞退させて頂きたい。

 

「お…俺も…司先生みてーに腹筋・・・割りてぇな~~…!!」

割れば善し!

「高難易度ジャンプ-----跳んで…いいんスかぁ!?」

跳べば善し!!

「意味なく嘔吐(ゲロ)ってええのか!?」

嘔吐(ゲロ)れば善し!!

 

 ノリのよい男子たちと極道的会話を楽しんだ。

 『よう、(オレ)だぜ』と言ったら、光は喜んでくれるだろうか?

 

「あ、あの、僕も…司先生のお話…聞きたい…です」

聞けば善し!!!

「先生、もう極道からは足を洗ってください」

 

 鵯朱蒴(ひよどりすざく)君という、華奢で繊細そうな男子が俺と理凰君の筋トレ談議を熱心に聞き入っていた。

 なんでも彼は現在気になる女子がいるらしく、その子にアピールするため己の体を鍛えたいのだそうだ。

 あら~青春だわねぇ。微笑ましくて応援したくなるわよ。

 無理なくできる筋トレメニューをいくつか伝授すると、とても喜んでくれて何度もお礼を言われた。 

 うむ、精進するがよいぞ。

 前途有望な若人がマッスルボディになる事を祈ってるよ。

 

 しばらくすると、入浴を終えた女子選手たちも休憩所にやって来きた。

 場が一気に華やいだ雰囲気になる。

 風呂上りの女子って艶っぽくていいよね~。

 

「あ~司先生だぁ」

「男子連中に囲まれてる?吊るし上げか?」

「光ちゃんたちのいない今がチャンス!私たちも行こう」

 

 男子たちを押しのけて女子たちが俺の周りに群がって来た。

 理凰君と一部の男子以外は女子の勢いに飲まれ、休憩所のあちこちへと退散させられた。

 おや?光といのりさんの姿が見当たらない。

 積もる話もあるだろうし、仲良く長風呂でもしているのかな?

 二人の入浴シーンを想像してホッコリした。

 今頃、洗いっ子しててうらやましいとかは微塵も思ってない。

 

「司先生~」

「君は…胡荒さん?」

「亜子でいいよぉ」

 

 いのりさんや朱蒴君と同じ、スターフォックスFSC所属の胡荒亜子(こあらあこ)さんが、人懐っこく話しかけて来た。

 甘え上手で可愛いらしい感じの子だな。

 

「なんだい亜子さん?俺の腹筋に触りたいのかな?」

「それは後でお願いねぇ~。光ちゃんの事なんだけど…」

「光の?」

「うん。亜子ね、光ちゃんと仲良くなりたいの~…どうしたらいいかなぁ?」

「そもそも、光はお前の事を認識しているか怪しいな」

「う゛っ……やっぱり亜子、眼中に入ってないの~」

 

 理凰君の指摘にガーン!とショックを受けた亜子さんが落ち込んでしまう。

 『そんなことないよ』と、俺と周りの子たちでフォローするが理凰君の指摘はあながち間違ってはいない。

 

 光は人に対する判断が異様に早い子だ。

 彼女は『好き』『嫌い』『どうでもいい』を瞬時に決めてしまう。

 『好き』な相手には素をさらけ出して甘えるのだが、

 『どうでもいい』相手には事務的に対応し『嫌い』な相手には途端に冷徹になる。

 『どうでもいい』に格付けされてしまったであろう亜子さんは、今の状況を何とか打開したいのだろう。

 

「司先生はどうやって光ちゃんと仲良くなったの?」

「ボロクソに罵倒されてビンタをもらい、次に再会した時は『コーチをしろ』って無茶言われた。その翌日からは『好き好き』言われまくって俺にも何がなんだか…」

「なにそれぇ!?全然参考にならないよ~」

 

 思い返しても未だに意味不明過ぎる展開だわw

 光が相当テンパった上での行動だと理解はするが、もうちょっと穏便にならなかったのか?

 昔に熱中症のところを助けたフラグは、俺と光の大事な思い出なので秘密にしておく。

 

「つまり、光から暴力を受ける事が最低条件だと?」

「どうだろう?とりあえず一発殴らせてやれば、何か変わるかもしれないが」

「無理だよ~怖いよ~亜子死んじゃう~」

「そういや俺も、よく光にブッ叩かれていたな…」

「光ちゃん、バイオレンスな子!!」

 

 光と本気で仲良くなりたいなら、彼女の琴線に触れるような何かを差し出さなければならないと思う。

 今日、いのりさんと仲直りしたのだって正面からぶつかり合って互いを認め合った結果だからね。

 みんなは俺と理凰君の回答に戦々恐々する。

 亜子さんはガクブル状態だ。

 

「後は……食べ物で釣るとか?」

「そんな、動物じゃあるまいしww」

「アリだな」

「アリですね」

「二人とも、光ちゃんのことを何だと思ってるの?」

 

 俺と理凰君はウンウンと頷く。

 食べ物を与えてくれる存在に懐くのは、生命として当然の理である。

 食欲旺盛で野性味を残している光はその傾向が特に強い。

 餌付けして仲良くなる作戦は十二分に勝算があると思う。

 

「長期戦覚悟で地道に食糧を貢ぐのが最善かな」

「食事に誘うのもいいかと。最初は断られるかもしれませんが…」

「もっと即効性のある方法はないのお~?」

「即効性って…先生ならどうします?」

「うーん、ビーフジャーキーをチラつかせて、近寄って来たところを『ニーブラ!』すれば」

「ひぃぃん!それ逆に亜子が『ニーブラ!』されちゃうよぉ~」

「ビーフジャーキーか…」

 

 こうして光攻略の結論に至ったが、亜子さんは『前途多難だよ~』と涙目になっていた。

 光に心を許せる友達が増えるのは良い事なので、彼女には是非とも頑張ってほしい。

 俺たちの会話をメモを取りながら真剣に聞いている子がいるのに気付いた。

 あれは名港ウインド所属の八木夕凪(やぎゆうな)さんだ。

 『ニーブラ!』はやり返される可能性が高いから、おススメはしないよ?

 

「ツカサ先生!アレやってくれんね?」

「いいぞ。苦しゅうない、近う寄れ」

 

 話が一段落ところで三家田涼佳(みけたりょうか)こと、ミケがトテトテと近寄って来た。

 入浴後の彼女はトレードマークの猫耳型ヘアが解除されている。

 何が始まるんです?と、困惑する周囲をよそにミケは胡坐をかいた俺の前にちょこんと座った。

 事前準備していたドライヤーとブラシを取り出し、ミケの髪を乾かしていく。

 

「髪、伸びたなぁ」

「ヒカルぐらいの長さになったら、ロリコンのツカサ先生はゲロゲロだで」

「それを言うならメロメロな」

 

 ゲロゲロはもうしたっちゅーねん!

 あと、俺は断じてロリコンではない。

 

「合宿はどうよ?」

「ボチボチだでね。でも、イノリたちと別グループなのは納得できんし」

「他の子とも仲良くなるチャンスだと思って頑張れ」

「エマとは仲良くなっただにー」

「おお!やるじゃない」

 

 蓮華茶FSCの大和絵馬(やまとえま)さんと仲良くなったらしい。

 彼女の方に視線を向けると、柔らかく微笑んで首肯してくれたので本当みたいだ。

 物静かで優しい絵馬さんが、年下のミケを放っておけず世話を焼ていてくれたのだろう。

 快活で気まぐれなミケは何故か大人しい子と相性がいいのだ。

 ぐうたらな羊さんとも、直ぐに仲良くなっていたからな。

 別グループだが、人見知りしない鹿本すず(かもとすず)さんとも、芋づる式に打ち解けたくれたら御の字だ。

 

 出会った当初、全方位にケンカ腰だったあのミケも、ちゃんと友達を作れるようになっている。

 エイヴァさんが言うように、本当に子供の成長ってのは早い。

 見守って来た大人の一人として、その事が少し寂しく同時に嬉しくも感じた。

 友達作りに成功したミケの頭をわしゃわしゃ撫でる。

 ミケは誇らし気にエッヘンと胸を張り、もっと褒めろと催促する。

 そんな俺たちの様子を見た周りが少しザワついた。

 ん?何かおかしかったか?

 

「あの気性難なミケちゃんが…男に身を任せている、だと!?」

「完全にデレとるやないかい!!」

「ナッチン先生はこの事を知ってるのか?」

「なんでや!なんで司先生ばっかり!」

「オオカミとエビフライを落とした男だ。ネコ一匹ぐらい朝飯前だろ」

「食糧が混じってるw」

「なんか変なフェロモンが出てるんじゃね?」

「これが真性ロリコンの本気…すさまじいな…」ゴクリッ

「く、くそぉ。俺だって司先生に甘えたいのに」

「「「もげろ!」」」

 

 ミケは加護家にお泊りした日から、定期的に家へ遊びに来るようになった。

 そのおかげか俺にはすごく懐いてくれて、宿泊する日のヘアセットはもう何度も経験済みだ。

 今では勝手知ったる仲という自負がある。

 ミケのコーチである那智鞠緒(なちまりお)先生からもよろしくされているし、俺とミケが仲良しでも何も問題ないのだ。

 諸君らに『もげろ』と言われる筋合いはないのだよ!

 

「ツカサ先生、ナッチンといつ結婚するん?」

「そんな予定ありませんけど!?」

「ナッチンが身を固めてくれんと、ミケ安心してフィギュアに打ち込めんでね」

「小学五年生の老婆心すげぇ」

「やっぱり若い子じゃないとダメ?ロリコンは不治の病らあ?」

「誰だ!ミケに失礼な知識を吹き込んだ奴は!」

 

 光が不在の今が好機とばかりに、ミケは那智先生を結婚相手にと推薦して来る。

 あいにく俺は那智先生を恋愛対象には見れない。ごめんなさいね。

 

「ヒカルとイノリは若いけど、怒ると怖いし結構アホだで」

「酷い言い草だww」

「ナッチンは年増で家事全般苦手だけど、おっぱいだけは一流のもん持っとるよ」

「うんうん。各方面にケンカを売るのやめような?」

 

 手早くヘアセットを済ませてミケとの危険な会話を打ち切る。

 ふぅー、危なかった。

 光たちが一連の発言を聞いていたら、ミケがピュア太郎と同じ目にあうところだったぜ。

 

 そういえば、那智先生はミケの事を『ミケ太郎』と呼んでいるな・・・

 太郎とつく猫は人の地雷を踏み抜くタチなのか?

 

「司先生~。超絶可愛いうちのブラッシングも、してみたくあらへん?」

「あっ!すずちゃんが抜け駆けした!私だってしてほしいのに」 

「わ、私も…お願いしたい…です」

「女子ばっかズリぃぞ!俺もやってほしいっス!」 

「お前らバカか?先生は弟子の俺を優先したいんだよ。引っ込んでろ!」

「ミケ、まだナッチンの縁談まとめとらんで」

 

 ミケの髪の毛を整え終わると、すずさんを筆頭に他の子たちもヘアセットをやってほしいとせがんで来た。

 コラコラ、みんなケンカはやめなさい。やるにしても順番だからな。

 

 人数が多いので一度に二人まとめてのヘアセットを実行していく。

 これくらい、光と羊さんとミケの三人同時進行も可能な俺には造作もない。

 プロの美容師には劣るだろうが、光も太鼓判を押す俺の技術は概ね好評だった。

 

 そんな事をやっていると、遂にあの子たちが登場する。

 

「司先生!?何やってるんですかぁ!みんな離れて!はーなーれーてー!」

「またか?またなのか?また浮気したんかぁぁぁッ!!

 

 みんなに囲まれている俺を見るなり、光といのりさんは怒りながら詰め寄って来た。

 俺の周りにいた子たちは『でたぁ!』と悲鳴を上げて退散した。

 逃げ遅れた何名かを蹴散らした二人は、俺の下へ来ると背を向けてドカッと座り込む。

 髪の毛が濡れているから早く乾かせという、無言の圧を感じる。

 仕方ないな、二人のヘアセットに取り掛からせて頂きましょうかね。

 何気にいのりさんの髪をイジるのは初めてなので、少し緊張するがなんとかなるだろう。

 

「なんでいのりちゃんまで?司さんは私の専属スタイリストなんですけど?」

「堅いことを言わないでよ。いいですよね、司先生?」

「是非もなし!」

「もう甘いんだから…フンッ!司さんの好きな髪の毛ランキング1位の座は渡さないからね!」

 

 妙なランキングを捏造する光の髪は、今日も美しく手入れのしがいがある。

 いのりさんの髪もサラサラで髪質は上々だ。

 

「で?私たちがいない間に、他の子たちの髪に興奮していたと?」

「人聞きの悪い言い方するな。ちょっと頼まれてやっていただけさ」

「男子はともかく、女子は随分と丁寧にやったみたいですね。すずちゃんたちの髪の毛ツヤツヤですよ」

「司さんは意外と軟派だから困るよ。女の子と自然に接触しまくる癖がある」

「確かに、司先生は気を許した女性相手にスキンシップ多め気がします」

 

 俺はただ紳士として当然の振る舞いをしただけなのに、何故責められねばならぬのか?

 

「司さんは私以外の子とベタベタするの禁止だよ」

「ん?ヌチャヌチャならいいのか?」

「そういう事を言ってるんじゃないの!」

「そんなに怒るなよ。光まで瞳さんみたいになったら、俺は泣くぞ?」

「結局、司先生はスケコマシ野郎だったんですね…なんだ、ホモじゃなかったのか…」

 

 光の沸点が低くなっていて心配になる。

 いのりさんは辛辣だなあ。

 俺がホモではないと知って残念がるのはやめてほしい。

 

 いのりさんのヘアセットを終えると、彼女は『ありがとうございます』と、お礼を言ってミケたちの輪に混ざっていった。

 残った光の髪を丁寧に整えていくことに集中する。

 この時間が俺は好きだ。

 俺を独占できているのが嬉しいのか、光の機嫌も徐々に直っていった。

 

「…光さんや」

「なあに?」

「どうやら俺はスケコマシらしい」

「ふーん、だから何?」

「俺を選ぶのは間違いだと思うんだが…」

くどい!!

 

 光は振り返って俺を正面から見つめる。

 なんだか、非常に厳つくて濃い顔になってないか?

 伝説の暗殺拳を使いそうだよ。

 

誰を愛そうがどんなに汚れようがかまわぬ

 

最後にこのヒカルの横におればよい!!

 

 トゥンク!(*´д`*)

 ヤダッ!光ちゃんってば漢らしい////

 

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