光ちゃんと司先生が結ばれる話   作:青紫

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狼猿の仲

ぬわああん疲れたもおおおおおおん!

 

 ホテルの自室に戻った私はストレスから情けない声を上げた。

 今日は本当にいろいろあって疲れたのだから仕方ない。

 合宿の授業や練習はともかく、それ以外のイベントが多過ぎた。

 

 ・司さんが女狐と朝練という名の浮気

 ・四回転を跳んだ司さんにハートを撃ち抜かれる

 ・いのりちゃんとの和解に成功

 ・猫耳ヨダカとの予期せぬ遭遇

 ・人工呼吸『よだつか』未遂でミカエル降臨

 ・ジェットストリームゲロ!

 ・ヌメモン進化と虫食い疑惑

 ・嬉し恥ずかし悶絶マッサージ

 ・イキュラスキュオラ大戦

 

 箇条書きにしてみたが、今日一日のイベント密度が半端ない。

 別れ際の司さんも疲労困憊でゲッソリしていた。

 奥義を連発した上に最後は鬼の討伐もしたのだから、致し方ないというものだ。

 本当は部屋に誘って同衾してもら予定だったけど、司さんの体調を考えて自重しておいた。

 ゆっくり休んで明日はまた元気な姿を見せてほしいな。

 

 今いる部屋は私と夕凪ちゃんの二人で寝泊りしているツインルームだ。

 本日は諸事情により夕凪ちゃんが医務室のベッド送りとなったので、今夜に限りこの部屋は私の独壇場である。

 一行に起きない亜子ちゃんと夕凪ちゃんに、ゾルトラークで追撃を加えたのは失敗だったかな?

 本職のお医者さんによると明日には目を覚ますとのことなので、実はあまり心配していない。

 司さんのイキュラスキュオラと同じく、私のゾルトラークも気軽に使うべき技ではないので封印しておこうと思う。

 

 せっかくお風呂に入ったのに、悶絶したり動き回ったりで汗をかいてしまった。

 今からシャワーを浴びるのは面倒だ。でも、お湯で濡らしたタオルで体を拭くぐらいはやっておこう。

 いつ司さんに求められてもいいよう、体は常に清めておきたい。

 恋する乙女は常在戦場なのだ。

 

 体を拭いてサッパリした後、新しく用意した寝間着に着替えてようやく落ち着いた。

 あとは歯を磨いて寝るだけと言いたいところだが、まだやることがある。

 さて、あいつはサボらずに仕事をしただろうか?

 

 家から持参したタブレットのスイッチを入れる。

 背面に狼のエンブレムが刻印されたタブレットはカミサキの技術部から支給されたもので、私専用にカスタマイズされた特注品だ。

 基本性能もさることながら破格の耐久性を誇っており、乱暴に扱っても傷ひとつ付かないところが凄くいい。

 開発コンセプトは『自分を人間だと思っている野生動物の酷使に耐えうる端末』らしい・・・バカにしやがって!!

 お母さんに頼めばソフトとハードの両方をアップデートしてくれるので、こらからも長らく愛用して行けそうだ。

 

 端末の起動を確認した直後、タイミグよく通知音が鳴る。

 たった今メッセージが届いたようだ。

 

『起きていますか?』

 

 簡素なメッセージに『起きてる』と、こちらも短く返答する。

 

『お顔を見てお話したいです』

 

 『了解』と返してビデオ通話用のアプリをタップして起動させる。

 このアプリもカミサキ製なので使い勝手がよくセキュリティもバッチリだ。

 程なくして、画面いっぱいに見知った少女の顔が映る。

 

「あ、ひ、光ちゃん。こんばんわ…」

 

 長い亜麻色の髪を持つ少女の視線は落ち着きなくさまよい、頼りない小動物のようにオドオドしている。

 私ほどではないが愛らしい相貌は美少女と言っても差支えのないレベルだろう。

 私ほどではないが!!大事な事なので二回言った。

 

「こんばんわ。そのキャラは何のつもり?」

「怒ってる?私、何かしちゃったのかなぁ……ぐすん」

 

 うへぇ何この茶番?

 胃がムカムカしてくるんだが。

 いかにも気弱で大人しく『ぷるぷる、いじめないでよ』というキャラ作りにウンザリする。

 

「ぶりっ子、不愉快だからやめてくれる?」

「ふぇぇ。私ぶりっ子なんてしてないよ…可愛くてごめん」

 

 してるしてる!

 そして、図太い本性が出てる。

 

「私そんなつもりじゃないのに、どうしてそんなこと言うの?ブリブリ」

「ブリブリ言ってんぞ?う○こでもたれてんのかてめーは!」

「光ちゃんじゃあるまいしwう○こたれたりなんかしないよww」

「どういう意味だ!私がいつどこでう○こたれた?」

「たれたというか、う○こそのものだよねw」

「なんでだよ!?お前は今喋る排泄物と会話してんのか?」

「てへ☆」

「てへ、じゃねーよ!」

 

 もうヤダ、この子めんどくさい。

 毎度のことだけどめんどくさいよ。

 私をいじって遊ばないと気が済まない性格なの、本ッッ当にめんどくさい!

 

「光ちゃん怖い顔してる…お腹痛い?私にかまわず、う○こ出して来た方がいいよ」

「いい加減、う○こから離れろ」

「画面越しだから大丈夫だよ。名古屋と大阪は100キロ以上離れてるし」

「『光ちゃん=う○こ』の式、今すぐかなぐり捨てろ!」

「光ちゃん、さっきからう○こ言い過ぎ…お下品だよぉw」

「お前もだろ!」

 

 なんでリモートでう○この応酬をしてるんだろう?

 クソまみれで頭がおかしくなりそう。

 これではいつまで経っても落ち着いて話ができない。

 

「光様、本日の報告をしたいのですが、よろしいですか?」

「うわぁ!いきなり落ち着くな!」

 

 つい先ほどまで私を排泄物と揶揄(やゆ)して来た少女の雰囲気がガラリと変化していた。

 気弱な態度は鳴りを潜め、口調もあざといものから礼儀正しいものになっている。

 

「光様がうんこたれ蔵なのは十分承知致しましたので、業務報告に入らせていただきます」

「待てやエテ公!」

 

 もはや伏字すら使わなくなったバカは勝手に話を切り上げ、仕事モードに入ろうとしている。

 誰がマキバオーじゃ!

 丁寧な言葉遣いなのに私を貶めるのはやめないんかい!

 慇懃無礼の権化か貴様は?

 

「エテ公ではありません。私には()()()というチャーミングな名がございます。たれ蔵様とは違うのです」

「私もたれ蔵じゃないけどね」

「え!?……う、嘘です、よね…」

「今初めて知ったみたいな感じ出すな」

 

 もう数年来の付き合いでしょうが!

 

「私は光様の専属侍従、申川(さるかわ)りんなと申します。以後お見知りおきを」

「誰に自己紹介してんの?」

「私どもの世界を俯瞰する高次元存在の方々に向けてです」

「素直に読者様と言いなさいよ」

 

 突然のメタ発言失礼。

 

 自己紹介どおり、この女の名前は申川りんな。

 名港ウィンドFSC所属のスケーターで今は14歳だったと思う。

 気弱で真面目な性格ゆえ落ち込みやすく、大会の滑走順を決めるくじ引きで1番を引きまくってはショックを受けて泣く女の子だ。

 表向きはそういうキャラで通っている。

 

 その正体は、カミサキ本部が私の友人兼付き人として用意したエージェントである。

 『ふぇぇ、また1番になっちゃった。ヤダよぉ…』と、嘘泣きするのが猫を被った状態で、

 『1番は当然の結果です。私は選ばれし人間ですから』と、自画自賛しているのが申川りんなの本性だ。

 

 鴗鳥家での暮らすようになった際、ばぁやから再三護衛や世話役を付けた方がいいと打診があったのだが、ウザいのですべて断り続けていた。

 そうしたら、この女…りんなが前触れもなく派遣されて来たのである。

 『この子でダメなら常に10人単位でお守り致します』という、脅迫めいたお言葉のおかげて私は渋々りんなを専属侍従として採用した。

 早まったかなと、ちょっと後悔した・・・

 

 ここまでの会話と態度でわかると思うが、りんなは私に対する敬意の念は持ち合わせていない。

 私をおちょくることが三度の飯より好きという厄介極まりない存在だ。

 私も散々言い返しているのでおあいこか?

 いや、りんなの方が無茶苦茶酷いことを言って来るので私は被害者だと思う。

 

「エテ公、クソ猿、エテモンキー、一番ウザい女、なんばわん、全て光様から頂いた敬称でございます」

「それ蔑称だから」

 

 私にとってりんなはただの部下ではなく、気の置けない悪友というポジションの女である。

 原作とキャラが違い過ぎるのは今更なので許してつかあさぃ。

 

 ●

 

 私は一応カミサキの要人なので、良からぬ事を企む連中のターゲットになる事がある。

 組織的な誘拐計画が未然に防がれた事もあるらしいのだ。おお、怖い怖い。

 私は非常事の訓練を受けているし、ある程度なら自力で撃退できる自信がある。

 それに今は司さん(強キャラ)がいてくれるのだ。よって、基本私に護衛は必要ない。

 守るべきは私ではなく、抗う力のない人たちだ。

 

「こちらは平和そのものです。光様がいないからですかね?」

「うるさいよ」

「加護耕一様、羊ちゃん様も、既にお休みになっておられます」

「そう。特に問題はないみたいだね」

 

 何もないとわかっていたが、耕一さんと羊ちゃんが息災で安堵する。

 卑怯な輩は私を直接狙わず、人質になりそうな人たちを…家族を狙って来る場合がある。

 鴗鳥家は心配ない、お母さんはアレで七星狼の№4なので汐恩も安心だろう。

 今いるホテルや合宿のスッタフには事前にカミサキの息が掛かった工作員・狼亜が配置されているので、お父さんと理凰にも魔の手が伸びる事は無い。

 

 そういうわけで、合宿中はりんなに家を…加護家の二人を警護してもらっている。

 大阪に連れて行く気はないと説明した時、めっちゃ不服そうだったけど、仕事は真面目にやっているようだ。

 

「私は()()()()の護衛をしたかったのですが…」

「司さんの強さ知ってるでしょ?りんなちゃんの出番はないよ」

「心配です。つーくんが年中発情期の光様に襲われたらと思うと不憫でなりません」

「ねえ…その『つーくん』って言うの不快だからやめない?」

「は?嫌ですけど?」

 

 私の提案を即却下しやがった。

 

 申川りんなは明浦路司を『つーくん』というなれなれしい仇名で呼ぶのだ。

 私がこの女を不快に思う点のひとつである。すっげぇモヤモヤするんだもん。

 なんか、私のコーチになる以前に黒狼街で出会っていたとか・・・

 司さんが狼亜の入隊試験に巻き込まれた際はツーマンセルを組んだのも良くなかったらしい。

 

「つーくんにも許可を頂いています。光様にとやかく言われる筋合いはありません」

「なんでそんなに懐いているのかが疑問?司さんと何があった?」

「光様には内緒ですよ。私とつーくんの絆エピソードは///」

「なんだよう。いいから教えろよォ」

「この前、二人で焼肉食べに行きました」

「なにそれ聞いてない!?いつの事だ?」

「光様が鴗鳥家にお泊りした日です。私からお誘いしました」

「クッソォォォ!なんで私を呼ばない」

「一家団欒を邪魔しては悪いと思ったので、気遣いのできる私って主思いですよね」

「確信犯めが」

「炭火でじっくり焼いたカルビを、つーくんにアーンして食べさせてもらう…至福の時でした」

「ちくしょう!うらやましいうらやましい!恨めしい!」

 

 二人っきりで焼肉とかふざけんなよ!

 黙っていた司さんも明日問い詰めようと思う。

 画面の向こう側にいるニヤニヤ顔女を今すぐ殴りつけた・・・ん?

 映像をジッと確認する。気になるのはりんなではなくその背景だ。

 何やら見覚えがありすぎるような?

 

「りんなちゃん。今どこから通信してるの?」

「加護家2階、つーくんの部屋からに決まっておりますが、何か?」

 

 何か?じゃねーよ!

 なんでいるんだよ?まさか今日そこに泊まる気か?

 

「加護家の警護についていた私は空腹のあまり、耕一様と羊ちゃん様に助けを求めたのです」

「バカか!?」

 

 外から見守るだけでいいって言ったのに!くだらん理由で警護対象と接触するなや!

 

「『光様に心無いパワハラを受けている』と涙ながらに語った私を、お二人は優しくおもてなししてくれました」

「ハラスメント受けてんのは私の方だ!」 

「お寿司がとっても美味しかったです☆」

 

 ああもう!羊ちゃんも耕一さんも、こんな奴もてなさなくていいのに。

 きっと二人はりんなの外面に騙されてしまったのだろう。

 戻ったら、あの女はクズで私はパワハラなんぞしていないと弁明しなければならない。

 

「『遠慮せず泊まっていきなさい』と言われたので、お言葉に甘えさせてもらい、今に至る次第です」

「甘えんなカス!」

 

 よく見たら、こいつが着ているの司さんのシャツじゃねーか!

 なんかブカブカだなーと思ったらそういう事かい。

 今日それ着て寝る気かよ。私に断りもなくなんてことをしやがる。

 

「一度『彼シャツ』というのを体験してみたかったのですが…」

「何?なんか不満でも?」

「つーくんの衣類8割強が光様臭いんですよね。スメハラです」

 

 はっはっはっ!そりゃそうだ。

 私も司さんのシャツやらなんやらは度々拝借しているから当然だよね。

 ざまあみろ、早い者勝ちだということだ。

 

「こうなったら、せめてベッドだけはりんなちゃんの(かぐわ)しい匂いをつけておきましょう」

「やめてー!半年以上かけたマーキングを上書きしないでぇぇー!!」

「フフ、疲れて帰って来たつーくんは私の匂いに包まれて安眠するんですね…ポッ///」

 

 うわぁー嫌だぁぁ!

 家に戻ったら超強力ファブリーズをぶっかけないと。

 

「冗談はさておいて、下着は光様のやつを嫌々借りております」

「勝手に人のタンス漁らないでよ!嫌なら脱げ!お前なんかノーパンノーブラで十分だ!」

「どぎつい下着ばっかで普通に引きましたよ。ガーターベルトとか12歳に必要ですか?」

「いや、それは、ね…いつ勝負の時が来るか、わからないから///」ゴニョゴニョ

「背伸びなどせず、年相応の下着で勝負してください。つーくんもその方が好みだと思います」

 

 たまにまともな事を言うんだよなあ。

 

「今、私ノーブラですよ」

「あっそ。どうでもいいわ」

「光様のブラが軒並みキツかったせいですね。バストの形が崩れるところでした」

「胸など飾りです。エロい人にはそれがわからんのです」

 

 フンだ!私はまだ成長の余地があるもん。

 今ちょっと勝っているからって調子に乗るなよ。

 

「胸囲の格差社会ですよw光様」

 

 やかましいわ!

 

 ●

 

「加護家は平穏そのものです。光様に悪事を働こうとする命知らずも、今のところ確認されておりません」

 

 いろいろ余計な事を言われたが、私の周囲はひとまず安心である。

 

「では、次は光様の報告を聞きましょう。合宿は順調ですか?」

「やっと私のターンが来た。聞いて聞いて~今日も司さんが……」

 

 私は合宿中にあった出来事をりんなに語り聞かせる。

 合宿の内容よりも司さんへの惚気がメインになってしまうは当然の事である。

 

「そちらには光様を含めた七星狼が3人もいるのですね。つーくんも合わせると戦力過多では?」

「あの二人はきっと、私よりいのりちゃんを優先するよ。そうしてくれないと困る」

 

 私には司さんがいてくれるだけで十分なのだ。

 

「結局、光様は本懐を遂げられたのでしょうか?」

「なんのこと?」

 

 私が首を傾げると、りんなはあからさまに落胆したようなため息をついた。

 

「光様は出発前、わざわざ私を呼びつけて宣言されました『合宿中に既成事実を作ってやるぜい』と、それはもう声高らかに」

「そんなことも、あったような、なかったような…」

「で?大口を叩いた光様はつーくんとやる事をやったのですよね?」

「き、キスはしたよ。マッサージでヒィヒィ言わされたし、今日は疲れちゃったから…」

「なんだ、まだぶち犯されていないんですか」

「言い方もっと気を遣ってくれる?」

 

 下劣なもの言いにビックリするわ。

 こいつ本当にサイテーだな。

 

「このままなら、りんなちゃんルート突入ですね。共通ルートの賑やかし要員お疲れ様でした。徐々にフェードアウトしていってくださいね」

「ヤダ―ッ!光ちゃんルートがいいのぉ!」

「光様ルートではノーマル、グッド、トゥルーエンドが各種1つずつ、バッドエンドが50パターン用意されています」

「私のルート過酷すぎぃぃ!」

 

 それでも、それでも司さんなら、最良のエンディングまでたどり着いてくれると信じてる!

 最後のスチルは私のウエディングドレス姿か、新たな命を宿した私と司さんの幸せいっぱいなヤツでお願いします。

 

「りんなちゃんルート断固反対!絶対阻止してやるんだからぁぁッ!!」

「うるさいですね。この処女躯不明器は」

 

 誰が処女躯不明だ!!

 

「私は司さんが使ってくれるその時まで、新品未開通なんだからね!」

「なんか光様、三十路過ぎても同じ事言ってそうw」

「そんな悲しいこと言わないでよォォ!!」

 

 居酒屋で管を巻きながら酒を飲む三十路の私(未通)・・・

 想像したら泣けて来るわ。

 

「いっそのこと抜きゲーみたいな島に移住したらどうですか?光様、見てくれだけはいいので島民総出で可愛がってくれますよ」

「その時はお前も道ずれだからな?性職者になる準備でもしてろ」

「お断りします。私は愛する人とだけラブラブエッチしたいんで」

「ビッチが何を言うか」

「心外ですね。私のどこがビッチだとおっしゃるのやら」

 

 私が何も知らないとでも思ったか?

 りんなが不特定多数の男と食事に行くところを度々目撃しているのだ。

 曜日ごとに連れている男が違ったり、年上が多かった気もする。

 これはもうビッチ確定だね。

 

「違います。性行為等は祖母に誓ってしておりません」

「じゃあ何してんの?」

「ご飯目的ですね。男の人に奢ってもらえるとご飯が進むんですよ」

「こいつ、おごらせ女子だ!」

「男性は私と食事できて嬉しい、私はご飯代が浮いて嬉しい。これぞWin-Winの関係」

「いい趣味してるなあ」

 

 順当に進化すれは立派なビッチになると思う。

 こういう愚かな女は反面教師するぐらいが丁度いいだろう。

 そういえば、私が司さんと再会した頃に恋愛相談をしなかったことを、りんなは今でも大層根に持っているらしい。

 私の判断は間違っていなかった。こんな奴に相談しなくて本当に良かったと思う。

 

「何か失礼な事を考えていますね?顔に出てますよ」

「いやいや別に、父親のわからない子供妊娠しそうとか思ってないっスw」

「……初エッチ痛がって失敗すればいいのに…」ボソッ

「リアルにやらかしそうな呪いかけるなよぉぉ」(´Д`)

 

 大事な場面でポカをやらかして来た私は今から震え上がってしまう。

 うう、やだなぁ。司さんに幻滅されたくないよお。

 

「それから光様とつーくんの仲はギクシャクし始めるのです」

 

 やーめーてーよー。

 

「やがてつーくんは光様の顔を見ただけで、勃起不全を起こすようになるのでした」

 

 ぼっ……何を言ってんだお前は!

 そんな事になったら、お詫びのしようもございません。

 

「フニャチンになったつーくんは、真実の愛に気付き私、申川りんなと結ばれるのでした。めでたしめでたし♪」

「めでたくねぇ!!めでたくねぇよぉ…」

「やーい。光様のフニャチン製造機www」

ブッ殺すぞ!!!!」(゚Д゚)ノ

 

 ムカついた!今のはムカついたぞ!

 今日一日で不名誉な称号をたくさん授与されたけれど、

 フニャチン製造機は今日のムカつきランキング堂々の第1位だわ。

 

「因みに2位は何だったのですか?」

「顔面18禁」

m9(^Д^)プギャー

 

 ぷぎゃーって本当に言いやがった。

 七星狼の権限でこいつ処刑できないかな?

 それは無理でも、ばぁやに頼んでお給料減らしてもらうぐらいはやってやる!

 

「なるほど、これが18禁のご尊顔ですかwモザイクかけときます?」

 

 それもう理凰に言われとるわ。

 司さんのマッサージで同じ目にあわせてやりたい。

 ゾルトラークの試し打ち木偶にするのもありだな。

 腹立つ顔は見えているのに手が出せない、今がリモートで良かったな!

 

 怒りのぶつけどころがない私は、私物のA6ノートにペンを走らせる。

 うん。これで良しっと。

 

「そのメモ帳はなんですか?」

「これ?これは復讐帳だよ。アンガーマネジメントのため『いつか殺してやる』と思った人の名前を書いてるの」

「それで今、私の名前を書いたのですか…さしずめ、光様デスノートですね」

 

 書いてすぐ効果を発揮しないのが残念だけどな。

 パラパラとノートのページを捲ってみる・・・ヨダカの名前が多いww

 

「すっごーい!りんなちゃんの名前合計13回も書き込んでるよ!」

「こっわーい!今までよく無事だったと自分を褒めてあげたいです!」

 

 赤ペンや極太マジックで書かれている名前を見ていると、当時の怒りがこみ上げて来た。

 絶体に許さんぞ申川りんな!!ジワジワなぶり殺しにしてくれる!!

 

 さすがにヤバいと思ったのか、りんなが私のご機嫌取りに挑戦しようとする。

 そういうの得意じゃないのに大丈夫か?

 

「光様は顔だけでなく心も綺麗だと信じております」

 

 心にもない事を言いおるわ。

 

「私の事も笑って許してくれる器の大きい方ですよね。さっすがぁ!」

 

 その程度で復讐帳の名前は消えないのだよ。

 足りない足りない、もっと褒めて!

 

「光様の美しさを例えるならそう、ラフレシアのように可憐でございます」

 

 お前ラフレシアについて詳しくないだろう?

 うんこの臭いがする世界最大の花だぞ。見た目も可愛くない。

 

「トリケラトプスよりカッコイイです」

 

 恐竜に例えられてもなあ。

 いまいちピンとこない。

 褒め言葉のチョイス下手くそかよ!

 

「スゴイナーアコガレチャウナー(棒読み)ゼットンみたいだなー」

 

 何故ここでゼットン!?

 宇宙恐竜ならいいって訳じゃないよ。

 

 今更何を言っても無駄無駄無駄ァ!私の機嫌はそう簡単に直らない!

 

「光様カワイイ!最高!今ならきっとつーくんも、むさぼるように襲ってくれますよ」

「そう?やっぱりそう思うかぁ。いや~参ったなぁ////」

「光様のチョロいところ私は好きですよ」

 

 りんなちゃんもこう言ってくれているし、明日も司さんへのアピール頑張るぞ~。

 フニャチン製造機ではないということを証明してやる。

 

 変わり者の部下とお喋りに興じてから、私は深い眠りに落ちていった。

 

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