深夜3時過ぎの加護家2階の一室。
先週のいのりショックと、昨日の光ショックによるダメージで心身共に疲弊した男、
明浦路司は深い眠りについていた。
部屋の中、寝具の上にはもう一人の人物がいた。
彼の穏やかな寝顔をゼロ距離で見つめる少女だ。
眼光凄まじい少女の名は狼嵜光。司の新たなパートナーである。
束の間の眠りから目覚めた光は手に入れた宝物を愛でている真っ最中。
自身の持つ鋭敏な感覚を総動員して、司という男の情報を身の内に取り込んでく。
それはとても甘美で幸せな時間だった。例え睡眠不足に陥ろうともまるで苦ではない。
「……私の…」
私のものだ。
ずっとずっとずっと私の私の私だけのものなんだ。
絶対に離さない。何処にも逃がさない。誰にも渡さない。
やった!やったよ!ついにやった!
この日をどんなに夢見たか、この時をどれほど待ち望んだか。
そんなの考えたこともなかったでしょ?
でも、いいよ。これからだから・・・
あなたが知らない私の全て、表も裏も何もかも、じっくりたっぷり教えてあげる。
「ふふ……」
恍惚の表情で光は笑う。
膨れ上がった執着心と内に眠る激情を隠さない顔は狂気に満ちていた。
今の光を見たら司がドン引きすること請け合いである。
「いの、り……さん…」
「……む」
不意に司の口から言葉が漏れた。
極めて小さな呟きだったにもかかわらず、光の聴覚は愛しい人の声を逃さない。
単語の意味を理解した瞬間、光は一気に不機嫌になる。
コラコラコラ、そこは私の名前を呼ぶところでしょ。
本当に仕方のない人。
その未練、必ず断ち切ってあげるから。
あなたの一番は私なんだってこと、骨の髄まで刻みつけてやるんだから。
光は布団を被り直し司の胸元へ顔を埋める。
うん、いいね。このまま眠ってしまおう。
●
いのりちゃん。
今回の件、苦渋の決断だったよね。
悩んで苦しんで考え抜いて、司さんを切って夜鷹純を手に入れた。
金メダルという夢のために犠牲払った。
今打てる最善手をいのりちゃんは打ったんだ。
・・・とでも思っているんでしょ。
私に言わせたらそれ、最悪手だから。
気付いていたはずだよ。知っていたはずだよ。
それなのに、偽物の輝きに目が眩んじゃったのかな?
いのりちゃんはきっと大事に大事に育てられたんだね。
だから
私にはその当たり前がなかった。
だからこそ、いちはやく
鴗鳥の家に行くまでは知らなかった。
理屈抜きの無条件で応援してくれる誰かがいること。
そうしたいと思う誰かがいてくれること。
その奇跡が、それこそが
これは私の持論だけど、
人生ってのは自分だけの
そして私は手に入れたよ?
最高に素敵な
これと比べたら
偽物というか玩具だね。子供だましのおもちゃ。
みんなおもちゃを手に入れるために悪戦苦闘の大乱闘。
まさにデスゲーム!生き残るのは誰だ!
最重要アイテムを先行入手して後は悠々自適に攻略開始。
これが私のやり方だ。
ま、プレイスタイルは人それぞれだし好きにすればいいよ。
いのりちゃんには私が持っていた隠し武器ナイトホークをあげちゃう。
ちょっとヤニ臭いけど我慢してw
エントリーしたからには勝たないとね。
このゲーム難易度だけはマジ鬼畜だから、
さすがの光さんといえどもうかうかしていられな・・・・・
「……ぅん…ひかる…‥ォェ」
「○▼※△☆▲※◎★●!?!?!?」
二転三転する思考の渦から光は現実へと引き戻された。
ちょちょちょ!!今の聞いた?聞いたよね!
いのりちゃんのこともゲームのことも考えている場合じゃねぇ!
ひかるって言った!司さんが寝言でひかるって言ってくれた!
うひょー!超ーうーれーしーぃぃぃ!
コンビ結成初夜にして名前呼んでくれたよ!
これもう結婚秒読み開始じゃない?勝ったな!
『オエ』とか聞こえたのは気のせいだろう。
夢の私を見てゲロ吐いたとかじゃないよね?・・・ないよね?
いのりちゃんの名前を呼んだ時よりも、うなされているのも気のせいだよね。
これはもうやるしかありませんな(使命感)
何をかって?
チューですよ。接吻に決まっとるやろがい!
本命の口と口は、起きている時に司さんからしてほしいのでパス。
なので、司さんのオデコに狙いを定めます。
これは鴗鳥家のゴッドマザー直伝の技だから間違いないのだ。
怖い夢を見たときにエイヴァさんにデコチューされると落ち着くのよこれが。
因みに私のファーストキッスは6歳の時・・・スケートリンクさん////
へへ、顔面からコケてしまってな。冷たいキスでした////
あいつマジ硬すぎww前歯折れたかと思ったわwww
私のファーストキスは置いておいて。
これから何度もするであろう愛情表現、その最初の一回を決めちゃおう。
司さんのデコにロックオン。狙い撃つぜ!
「………ん」チュッ
どうぞ末永くよろしくね。私の