【リボン】のヒーローアカデミア   作:嘘しか言わん狐

13 / 27
袴田維折は動かない

バスに乗ってUSJへ向かう道中も、私は神経を張り詰めてあの異常な虫から始まる異変の事を考えていた。

あの虫、なんらかの個性だとするなら…十中八九個性だとは思うが、アレが情報を集めていたから死柄木弔が来なかったのか?

 

「私なんでも思ったこと言っちゃうの、緑谷ちゃん」

 

「あ!?は、はい!蛙吹さん!」

 

「梅雨ちゃんと呼んで…貴方の個性オールマイトに似てる」

 

似てるっていうか同じだし。

デク君も早いところフルカウルくらい覚えてもらわないと、原作と違ってるこの世界じゃ何があるか分からないし。

 

「まぁでも、派手で強いと言ったら爆豪と轟じゃね?」

 

「でも爆豪ちゃんすぐキレるから人気でなさそう」

 

「ンだとコラ!出すわ!!」

 

「ほら」

 

「将来的に15位くらいで落ち着きそう」

 

「だとテメェコラ!舐めプリボンがブッ殺すぞ!」

 

「ほら」

 

この頃のかっちゃんならまぁ恐れることもない。

この前の嫌がらせ試合で大体の実力は把握できた。

 

「人気出そうで強いって言ったらやっぱ袴田だろ」

 

「圧倒的な練度と出力、精密動作性も飛び抜けている。どれほど研鑽を積んだのか想像もできないが…」

 

「見た目も個性も可愛いもんね!闘い方はあれだけど…

 

最後の方なんて言ったか聞こえなかったんだけど、葉隠ちゃんになにかこう、罵倒された気がする。

 

「やっぱ袴田の個性って出力凄いよな、俺を伸ばすんならどうしたらいいかな」

 

「上鳴の個性?毎日死ぬほど使って脳味噌焼き切って回復したら強くなるんじゃない?」

 

「死んじまうよ…」

 

現に私はそうやって強くなったし。

皆だって強くなるだろう多分。

 

「なぁなぁ、じゃ俺は?」

 

「砂藤君?毎日死ぬほど個性使って脳味噌ブチ切って寝ずに宿題やったら強くなるんじゃない?」

 

「えぇ…り、理には適ってる…のか?」

 

「じゃあ私は?」

 

「芦戸ちゃんは毎日死ぬほど個性使って両手溶け落ちても回復しつづければ強くなれるよ」

 

「まず回復ができないよ!」

 

「私が手伝ってあげようか?」

 

リボンの治癒能力を上げるのにも丁度良さそうだし。

皆鍛えたら原作よりも強くなるんだろうなぁ。

だって最高にかっこいいA組だもんね。

 

「僕も知りたいな☆もっと個性を使いこなしたいんだよね☆」

 

「青山君はとにかく死ぬほど個性使って胃も腸も剥がれ落ちるまで漏らしたら良いんじゃないかな」

 

「メルシィ☆試してみるよ」

 

「お前最近素直だよな…」

 

「…袴田は火力の上げ方しか教えてくれてねぇぞ」

 

「脳筋だろやっぱ」

 

皆を強くして、A組最強にして、その上で私が最強になる。

それでこそ最強のヒーローだよね。

 

 

「お前ら、着いたぞ。さっさと降りろ」

 

「はーい」

 

 

USJ……いよいよ始まるんだ。

さぁこい…さっさとかかってこいヴィラン連合。

出来れば裏切ってこっち来ない?一緒にアフォぶん殴ろうぜ。

 

「相澤先生、オールマイトは?」

 

「また活動限界ギリギリまで。あいつらもいる事で内通者対策にここに来るのを早回しにしたというのに少々予定がズレましたね」

 

「仕方ありません、このまま続けましょう」

 

……内通者対策?早回し?あれ?

警報がならないんじゃなくて…警報がなるイベント自体、日程が先だった……?

 

内通者対策……するんなら、私達(ヴィラン予備軍)を警戒してかな。じゃあヴィラン連合は来ないのか……

 

 

「全員ひとかたまりになって動くな!」

 

 

黒いモヤが広がって中から沢山のヴィラン達が現れる。

こうしてみると異形型が随分と多いな。

…じゃなくて来てるじゃん!誰?来ないって言ったの!

 

「なんだよ、オールマイトいないじゃん。あのクズ情報が間違ってんじゃないのか?……まぁ、子供を殺せば来るのかな」

 

死柄木弔……ガリガリと首を掻き毟る手が沢山ついた特徴的な姿は間違えようもない。

隣には黒霧と……脳無……脳無…そして脳無か。ん?

 

なんか脳無3体いない?私の目が貧血で霞んでるとかでは無いよね……?

 

「我々はヴィラン連合、本日は平和の象徴に息絶えて頂こうと思いまして…」

 

「ヒミコ、離れないでね」

 

「分かってます」

 

脳無はヤバい。

ちょっと油断したら死ぬ。

そのくせ精神攻撃も効かない!

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらん!」

 

相澤先生の華麗な立ち回りはとても参考になる。

捕縛布の扱いは、私のリボンの闘い方にも応用できる。

じっくり見せてもらおう。

 

「イオリちゃん!来ます!」

 

黒霧のワープゲートだ。

13号先生がやられてしまった、相澤先生に集中しすぎてた。なんで私はこう……周りが見えないんだ…!

 

 

 

「散らして、嬲り殺す」

 

 

 

ヒミコと手を繋いで来るワープゲートに備える……

が、私達は取り残された。なぜだ…?

 

「お前らだろ、リボンの奴って…厄介そうだって報告を受けてるよ…警戒しろってさぁ……」

 

「それは嬉しいね」

 

「袴田、渡我、逃げろ!俺と13号に任せておけ!」

 

「ヤです。逃げるのなら助けを呼べる飯田君です」

 

「あいにく私達は戦闘の方が得意でね」

 

わざわざそっちから私に用があるって言うんだ。

逃げるのは失礼だろう。

 

「この脳無どもはお前らを殺すために造ってもらったんだ、さぁやれ脳無!」

 

私達用の脳無…か。見たところ片方はシンプルなパワータイプ、もう片方は両手に鎌みたいなのが付いた斬撃型か。

パワー型の脳無の身体をリボンで絡め取って…

 

『ぐじゅゅゅるるる!』

 

脳無の全身から刃物が飛び出した。

確かに刃物ならリボンは破れる。ちょっと原始的だけど。

 

「ティロ・フィナーレ!」

 

「ははは!対策してないと思ったか?そいつらには防弾の個性も付いてるんだぜ!」

 

ゴムみたいにブヨブヨの体表のせいでリボンの弾丸が弾かれた。なるほど…これではダメージは与えられない。

まともにやりあえば確かに負けるかもしれない。

 

「相澤先生!改造人間なら殺しちゃっていいんですよね!」

 

「なに…?おいまて!」

 

「よーーく見ててくださいよーーーっ!!!」

 

「さっさと消してやるのです!」

 

ヒミコと二人、最初から最大火力だ。

リボンが極大の大砲を形成していくと同時に、相澤先生の目が紅く光ると脳無の個性が抹消される。

これなら少しは消しやすいだろう。

 

 

「アルティマシュート…」

 

「ティロ・フィナーレ!」

 

 

ドォォォ!

 

 

迸る黄金の閃光が脳無を飲み込む。

ジリジリと焼けて溶けて、削り取っていく圧倒的な火力…だがそれでも、脳無はまだ消え去っていない。

それどころか一匹の脳無が焼け溶けた上半身を放り投げて逃げてしまった。

 

「クソッ…一匹逃がした…が!このままこいつを焼き尽くす!」

 

せめて一匹。後少しで殺し切れる。

一匹でもやらないとまずい。

 

「なんだよ……このチート野郎…!」

 

ジュッ!と音を立てて、一匹の脳無が消し飛んだ。

いきなり最大火力を撃ってようやく…

この程度で疲れるなんて…まだ私も弱いな。

でもまぁ、これで脳無も敵じゃないことがわかったな!

 

「楽勝〜♪もうなにも怖くない」

 

「イオリちゃん!!」

 

「袴田!!」

 

「あ…!」

 

あっダメだ、避けれない。

 

 


 

 

 

雨が降る。緋色の雨が降りしきる。

脳無の凶刃に斬り裂かれ、雨と共に落ちていく。

地に落ちて、血に染まる。

 

 

 

「イオリちゃん!イオリちゃん…?ヤ…ヤ…!ヤぁ…!」

 

 

 

引き裂かれた右腕が、深々と抉られた内臓が、止めどない鮮血が、凄惨な死を思わせた。

 

「は…ははははっ!!バカが!油断して死んだ!」

 

「っ野郎!!!」

 

「強いなイレイザーヘッド!生徒の為に怒って特攻!感動的だなぁ!」

 

 

相澤の肘がボロボロと崩れるが、それに怯んでいる暇はない。死柄木弔の身体が強く地面に打ち付けられ、右腕の骨が容赦なくへし折れる。

 

「ぁぁ…くそ、痛いな…!脳無!コイツをやれ!」

 

どこもかしこも、血に塗れた。

こんなにも甘く薫る血に囲まれて、しかしトガヒミコはただ、涙を流して少女に寄り添う。

 

「もう一人も殺してやるよ!」

 

死柄木弔の全てを崩壊させる五指が渡我被身子に届く事はない。

袴田維折の血が染み付いた真っ赤な捕縛布が死柄木弔の腕を捕らえ、双眼を見開いて怒りの拳を振り下ろす。

 

「がはっ……!いっ……てぇ……!」

 

死柄木弔はへし折れた腕の激痛に悶えながら、個性の使えない時間を計る。……明らかに、さっきよりずっと多い。

 

「はは…怒りでパワーアップってか?それともその涙のおかげか?生徒の為にそんなに怒って強くなって…」

 

相澤の瞳に涙が滲む。

すでに数分、目を閉じていないからだろうか。

崩れ落ちる渡我被身子の姿に、かつて友を失った自分の姿を幻視したからだろうか。

あるいは、その両方か。

 

「ほんとう…かっこいいなぁ…!イレイザーヘッド…!」

 

「イオリちゃん…見てください、これ…トガのままで、リボン…出せるようになったんですよ?…驚きましたよね、ねぇ…びっくりさせたくて…黙ってたんですよ…?」

 

リボンで、傷口を縫い合わせる。

癒やしの力があるのだ、助かるはずだ。

間に合わないわけがない。間に合う、はずだ。

 

到底、間に合わないリボンで縫合した身体を抱き寄せて懇願するようにヒミコは分け与える。

己の血を、与えてもらった愛を。

 

「お願いします…全部あげるから…」

 

維折の姿に変身して、ワイヤー・シリンジャー二つを繋ぎ合わせ、自分の血を直接維折に流し入れる。

 

 

 

「起きて…起きて…ください……」

 

 

 

ただ、ヒミコの涙の音がした。

 

 




やめて!リボンの特殊能力で、アルティマシュート・ティロ・フィナーレで焼き尽くしたとはいえまだ一体残ってるのに、巴マミリスペクトで油断してる維折の魂まで焼き尽くされちゃう!


お願い、死なないで維折!


あんたが今ここで倒れたら、トガちゃんや相澤先生のメンタルはどうなっちゃうの?


ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、死柄木弔に勝てるんだから!



次回「死柄木死す」デュエルスタンバイ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。