女神は、存在した。
白磁器のような肌に純白のドレスを身に纏い、黄金のような光を放つ現人神が、そこにいた。
一瞬にしておびただしいマスケット銃を精製して、そのうち一つを右手に構えて悠然と撃ち下ろす。
雨のような弾丸は、しかしヴィラン達の命を奪うこと無く着弾と同時にリボンとなり縛り上げる。
「ほら、かかってきなさい」
「「「「うぉぉぉっ!」」」」
「舐めやがってこのアマ…!」
「ぶっ殺してやっ…」
撃ち終わった空のマスケット銃を捨てる前に男の顔を殴り飛ばし、同時にリボンで拘束する。
ご自慢の角で突進してきた男にはリボンをプロレスのロープのように張って、自分の力で吹っ飛んでもらう。
「ほらほら!最高の気分だ!」
リボンを使った立体的な動きで、ヴィランを翻弄し的確に仕留めていく。武器を持つものはリボンで絡め取り、その足技で沈めて、またリボンで拘束する。
蹴りで吹き飛ばした奴をリボンで捕らえ、振り回すことで一網打尽にする豪快な動きは、とても少女の細腕で繰り出されるとは思えない。
「もっと本気を出させて欲しいな〜!」
「くっそ……が…!粉々に砕けろ…!」
圧倒的だった。もはや個性の範疇に収まらない究極進化に、死柄木弔の意思に反して黒霧は撤退の為に死柄木弔の足元にワープゲートを開く。
「おいっ…!待て黒霧っ…」
「あ、こら逃げるな!」
「一斉攻撃をなさい!」
「「「「うおぉぉお!」」」」
全方位からの一斉攻撃。この程度対策してないと思ったの?
「
こっちだって全方位攻撃くらいできる。
無数のマスケット銃を私を中心に展開、さながらハリネズミのような見てくれにはなるけど、これで全方位吹き飛ばす。
バララララッ!!
「うわぁぁ!痛…くない??」
まともに食らったヴィラン達の手脚が他のヴィランへと向けられる。幾人かはそれで意識を刈り取られた。
「お、お前!なにすんだよ!こっちは味方だ!」
「ひ、ひぃ〜〜!助けてくれ!身体が勝手に!!」
「今お前達に撃ち込んだのはただのリボンの弾丸じゃない!お前達の体内でリボンが増殖し、筋繊維を支配した!思うがままの操り人形よ!」
「うわぁぁあっ!!ヒーローのやることじゃねぇ〜!!」
ヴィラン同士を気が済むまで闘い合わせてやろう。
「そして……ここからティロ・フィナーレ・リベレーション!」
弾丸の雨あられを撃ち下ろす。
もちろん脳無にやったように火力と貫通力をあげた殺人特化性能ではなく、リボン自体に治癒能力を付加しつつ、さっきみたいに筋繊維をリボンで支配してやる。
「よーし!このままリボンコプターで飛んで他のエリアのやつらも制圧してしまえ!」
ふしゅ〜〜〜……
「あ…あれ…?へ、変身が……」
ちぇっ……いいところで変身が解けちゃった。
ていうかホーリーマミ永続強化じゃなかったのか…
なんかドッと疲れたし…身体中ダルい………もういいや、ヒミコのところ行こう。
「危うく私、二度と会えなくなるとこだったんだよな…」
「イオリちゃん!!」
「ヒミコォーー!!」
「大丈夫なのですっ…イオリちゃん?」
イオリちゃんの方から抱きしめられた。
なんだか珍しいのです。
「ヒミコ…私、生き返れてよかった…」
「うん…うん!心配したんですよ!」
イオリちゃんは、女神様になってもイオリちゃんなのです。
私の大切な人です。不安そうな顔で、私を心配してくれる、優しいひとなのです。
「ぅ…ぐす…めちゃくちゃ痛かった、泣くかと思った」
「ちょっと泣いてるのです…ふふ」
と、肩を掴む力が強いのです。
よしよし、不安だったんですね。
そんな顔されたら、私だっていつまでも心配で仕方ないじゃないですか。また死んでしまわないか…
「ね、ねぇヒミコ…」
「なんです?」
「………な、なんでもない」
…?
顔を赤くしてかぁいい。
……そういえば、この前二人で見た映画では死地から戻った主人公が帰ってくるなりヒロインと熱烈なキスをしていましたね。
もしかして、キスしたいのでしょうか?
「なんですかぁ〜?キスしたいけど恥ずかしくなっちゃったんですかぁ?」
「違っ…!あの、うん……そんな洋画みたいな突然キスとか、私は無理だったっていうか……」
ふーん、そうですかぁ〜………
「意気地無し♡」
そう言って初めてのキスをしました。
この気持ちが普通の人の感じる愛なのでしょうか?
思ったよりは悪くないのです。チウチウの方が好きですけど。
「ほんと、いつまで待たせるんですか?私はチウチウできれば幸せだったから、別に言いませんでしたけど」
「イオリちゃんって全然自分がして欲しいこと言わないです。なんでもしたいこと言ってください、恋人なんだから…恥ずかしがらなくってもいいのです。トガだって…私だってイオリちゃんに与えたいのです」
「……イオリちゃん?……あぁ駄目です、気絶してるのです」
数分後、なんとか広場に戻ってきた緑谷出久達が目にしたものは、リボンで造られた神輿の上で気絶した袴田維折と、それを膝枕するトガヒミコ。
その神輿を担ぐのは、リボン増々ゴスロリに身を包む、縦ロールに髪を整えた元ヴィラン達だった。
「……相澤先生!これは…?」
「袴田が…死んで…」
「え!?袴田さんが…」
「生き返って」
「生き返って!?」
「ヴィラン達を洗脳した…」
「洗脳」
洗脳とは人聞きの悪いことだ。
ただちょっとヴィラン達をボコして『リボン教』に入信しただけのこと。彼らは今、幸せそうだ。
見慣れた暗いバーが、歪に大きく感じる。
段々とズキズキと酷く痛む両腕を引き摺りながら、椅子を支えに辛うじて立ち上がると、崩れ込むように椅子に座る。
「死柄木弔……腕の具合は」
「ハァ…ハァ……よく…見えるか……?」
「すぐに“冥”を呼びましょう」
「……そうしろ」
あまりの理不尽な痛みに怒鳴る気力も無い。
あり得ない、一度確実に殺したはずなのに。
「ハァ………あり得ない……クソゲーが…」
『こっぴどくやられたみたいだね、弔』
「ハァ…ハァ…」
先生の顔なんか見る気も起きない。
どうせ見る顔も無いんだし、無視してしまおう。
『んふふふ…弔…これも経験だよ…僕もオールマイトにはひどい目に遭わされたもんさ…』
どうせ、目も見えないんだしバレないだろう。
『弔…大丈夫かい?生きてる…?弔…弔……!』
死柄木弔は、とにかく疲れていた。
アラもう聞いた?誰から聞いた?
袴田少女のそのウワサ
シャイニーなセイントが雄英に、天の光と共に大降臨!!
ハートが傷ついた奴らは、救いの手を差し伸べられただけで、もーメロメロ
解放に導く聖女様に取り込まれて、手になり足になり頑張っちゃうって
ヴィランの間ではもっぱらのウワサ
スクイタマヘー!