【リボン】のヒーローアカデミア   作:嘘しか言わん狐

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敵情視察

雄英体育祭までの僅かな時間、私とヒミコはA組の為にトレーニングダミー(エンデヴァーではない)を用意して戦闘訓練を行っていた。

 

ついでにいつの間にか出来ていた『リボン教』だが、着実に広まってきているようでなんか知らんが日本の犯罪率が下がってきたそうだ。

 

「でれねーじゃん!何しに来たんだよ!」

 

「敵情視察だろザコ」

 

お、B組と普通科だ。

B組にも二人、ヴィラン予備軍の知らん奴がいるはずだ。

 

「意味ねぇからどけモブ共」

 

「知らない人の事とりあえずモブってい…」

 

「このアタシに向かって偉そうな口聞いてんじゃあねェぞチンカスゥ゙!!!」

 

 

「今爆豪分裂した?」

 

「ヴィラン予備軍なのです」

 

 

初めて合った時の爆豪君を思い出す。

ていうか今アタシって言った?女?今のが?

 

 

「誰だぁ゙…テメェ、どけったのが聞こえねぇのか!」

 

「下っ端の塵ぁブチ殺すぞゲボガスッ!さっさとテメェの短小個性抜きな!!今すぐ木っ端微塵にしてやらぁ゙!!!」

 

「モブが引っ込んでろや!どうせイキっとるだけの没個性だろーがよ!」

 

「ブッ殺ォ゙す!!!」

 

カシュッ!とライターに火をつけるような音がした。

 

BAooooo!!

 

Boooooom!!

 

爆発に爆発が重なり、けたたましい轟音と衝撃で窓ガラスが粉々に吹っ飛んでいった。

 

「あ゛ぁ゛っ゛!?…同じタイプの個性…だとォ゙!!」

 

「このイカれ女ぁ…!いきなり撃ってきやがった!」

 

「おいおいおい…!不味いんじゃねぇの!?」

 

「相澤先生呼んでこい!」

 

「落ち着きなよ粉実(こなみ)!!今度は何にムカついたの!?!」

 

粉実と呼ばれた少女は理性がぶっ壊れたように獰猛な目を向ける。爆豪勝己とは違う、それよりもよっぽど頭がおかしい。今の爆豪は、あくまでも防御の為に個性で応戦しただけだ。

 

なにもかもブッ壊してやりてェ

 

どう見ても爆豪は被害者…というかこの粉実とかいう女、ヴィラン予備軍っていうより普通にヴィランだろ!!

 

「ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙……撃ってこいやぁ゙…!効かねぇぞぉ゙…アタシに爆発はよぉ゙…!!」

 

「何しとんだイカれ女が!成績に傷がつくだろうが!」

 

「みみっちぃ…」

 

この女…だめだ、完全にイカれてる。

私が矯正しないと……

 

「ブッ殺すゥ゙…!ブッ殺す、ゲボカスが!」

 

少女の名前は『粉実解理(こなみかいり)』。個性は【粉塵】!!

文句無しのヴィラン予備軍にして、B組の問題児である。

後に、A組の誰が呼んだか付いたあだ名は『自制心と理性の無いかっちゃん』B組ではいつも寝てるのに起きたら全部破壊する事から『眠れる破壊神』と呼ばれ恐れられている女の子だ。

 

こんな奴だが、オール・フォー・ワンは一切関与していないし、内通者とかでもない。ただただ頭がおかしいのだ。

 

「おい、粉実だったか?」

 

「うるせぇ話しかけんじゃっ……」

 

プツン、と糸が切れたように動かなくなる。

なるほど…心操人使の、洗脳…か。

 

「ヒーロー科って皆こうなのか…?割とマジで幻滅したなぁ…」

 

「こんな異常者と一緒にされるのは心外なんだけど」

「一部の例外で全体を判断しないで?」

「これがそう何人もいるわけないだろ」

 

めちゃくちゃ引き攣った顔の紫髪の少年、心操人使だ。

しかし洗脳か…めちゃくちゃ強いな。

個性の相性とかガン無視だもんな。

 

「あんた、普通科の人だったよね、ありがとう助かったよ。コイツ…ちょっと…うん、色々アレでさ。ほんとうありがとうね」

 

オレンジのツインテールの女の子が申し訳無さそうに動かなくなった粉実を引き摺っていく。

 

「……別に…おれは…」

 

俺の個性……悪く言われなかったな……

感謝されたことなんて、初めてだった。

 

 


 

 

身体中ズタボロのボロ雑巾。

脚を包帯で吊るされて、リカバリーガールにもなぜ生きてるのか不思議、と言われるくらいにはひどい目に遭った。

 

「ちくしょう〜〜〜痛ぇよぉ〜〜〜…」

 

力内吸大は、殊の外タフだった。

 

普通は死んでいるような大怪我を受けて死んでいないあたり、彼は確かに実力者…ではあるはずなのだ。

 

「ほら、ハリボーだよ、ハリボーお食べ」

 

「ァ…ありがとうございますゥ、いただきます…」

 

「まったく……原因不明の怪我だなんて勘弁しておくれよ、そうポンポンと怪我されちゃたまったもんじゃないよ」

 

「す、すんません…」

 

リカバリーガールがベッドのカーテンを閉めて出ていくと、力内はハリボーを口に放り込む。

ああ、俺の人生、いつも失敗ばかりだな。

 

俺だって、ただヒーローになりたかっただけなのに。

 

ジジジジ……

 

 

「力内吸大…本名は…必要無いか…33歳。元はヒーロー志望で、地方の無名なヒーロー高校に通っていた…」

 

「なっ……お前、だれだ!どっから!?」

 

「在学中、正義感からヴィラン3名と無許可で交戦、殺害する。実刑判決を受け…堕ちるとこまで堕ちた転落人生を送り、オール・フォー・ワンに個性を与えられ顔と戸籍を変えた。ヴィラン予備軍更生プログラムに選ばれるように経歴を詐称されただけの手遅れのヴィラン」

 

「お前は一体何者なんだよ!?リカバリーガール!リカバリーガールはどうした!?」

 

女は、いつの間にかそこにいた。

椅子に腰掛けて白い髪から赤い目を覗かせて、ただそこにいた。

 

「リカバリーガールには聞こえない。ボクの個性の影響でね……こういった拷問だとか脅しは得意なんだよね」

 

カーテンの向こうにいるリカバリーガールは、こちらに背を向けたまま何か書類をまとめているようだった。

 

「お…オール・フォー・ワンの手下か…!?俺を殺しに…きたのか?」

 

「残念だがちょっと違う。チャンスをあげるよ。雄英体育祭で一人、誰か殺しておいてくれるかな」

 

「そ、そんな…無理だ…!こ、この身体なんだぜ?それに体育祭は大勢の人が見てるんだぞ!?」

 

「ボクはお願いをしてるんじゃない。命令してるんだ、キミ如きのチンピラでもせめて弔の役に立ってから死んでくれたまえよ」

 

女の声に、一切の情は無い。

目の前の力内という男など、いつでも殺せる。

殺さないのではなく、何の役にも立たなかったゴミをリサイクルでもしてやろうと言うような、独善的なもの。

 

「別に誰でもいいよ。でも嬉しいのは袴田維折。もしくは緑谷出久かなァ……誰でも嫌がらせになるけど、目障りなのはその二人」

 

「こ…これは……アンタの独断か…?」

 

「ボクに向かって質問するなよ、袴田維折か緑谷出久を殺せ!雄英体育祭の…一番目立つところでだ。どっちか一方でいい、分かったかチンピラ」

 

「んぶっ……おごぇッ!?」

 

力内の口から血と共に大量のハサミが溢れ出した。

鋭い痛みに悶えながら、血と、裂けた肉を吐き出す。

 

「はぁ…はぁ…!な、なんなんだ…こいつは…」

 

「んふふ…ほら、見てみろよな」

 

「へっ……お、おいそりゃあ誰の……!」

 

女が手に持っていたのは、左手だった。

斬り落とされた何者かの左手だ。

 

「お前の腕だよ」

 

「う、う、うそだろ…!?お、お前暗殺しろと言っといて人の腕を…!」

 

「いっそこのまま捨ててやりたいが治してやるさ…便利なもんだろう?ボクの〝能力〟……いや、個性はさぁ…」

 

切り取った左手をあてがえば、ピッタリと元通り接着する。

女の個性は、元は単純な「切断」だけを目的とした個性だった。それを極限まで鍛え上げ……覚醒させたので、こうしてかなりの利便性を獲得している。

 

「もしも失敗したら君はボクと、ボクの部下が拷問して嬲り殺す。それじゃあ、ボクはテレビの向こうでキミの無様な頑張りを見ててやるよ」

 

「ま…まて………!お前一体……!」

 

 

カチチチ…ジジ…

 

 

布を切るような掠れた音が微かに鳴る。

女はもう、どこにもいなかった。

 

 


 

 

死柄木弔は、本来仲間になるはずの存在を喪っている。

トガヒミコは明確に袴田維折に付き、愛を育んでいる。

 

トゥワイス…分倍河原仁もそうだ。

彼は現れなかった。救いの女神とやらに心を囚われてしまった。この時点で原作通りの作戦は使えない。

 

『血狂い』マスキュラーは手に入ったが、奴だけで襲撃は出来ない。戦力が足りなすぎる。

 

「遅かったな……冥」

 

「なに、敵情視察さ。弔、戦力はどうするの?ボクは君に従うよ、愛しいボクの王♡」

 

「あぁ………………お前の部下はどうした」

 

弔は心底嫌そうな顔をしているが、冥が気づくことはない。この女は基本的に、都合の悪い事は切り離して考えるタイプだった。

 

「一人はまだアメリカだ。万に一つもオールマイトとスターアンドストライプの共闘なんてあってはならない。今のボク達では手も足も出せずに負けるだろう…そのための見張りさ」

 

女の名は『死柄木(めい)』。死柄木弔の姉役だが、直接の血の繋がりは無い。

彼女の個性は【ハサミ】……『繋ぎ合わせる個性』の袴田維折と対を成す、『切り離す個性』の持ち主である。

袴田維折同様異物である彼女の個性もまた、既に覚醒している。

 

「ボクの直接の部下の中で今まともに動かせるのは豹堂(ひょうどう)だけかな。アメリカにいるケンソウはすぐにはこれない……」

 

少なくとも、合宿襲撃作戦には間に合わない。

ヒーロー側にばかり都合のいい事が起きてる気がする。

 

「今度の作戦で緑谷君(原作主人公様)が死ねば楽になりそうだけど……結局オールマイトをどう始末するのかって問題は付き纏う。だけど劣勢な時にこそ諦めちゃダメだよ弔、こんなどん詰まりな時にこそ冷静に策を練り、大局を見極めるのさ」

 

「緑谷…出久ねぇ…誰だっけ?」

 

「オールマイトが特別目をかけているガキ」

 

「そりゃ目障りだな」

 

ウイスキーのボトルを手に取るとハサミを蓋にねじ込む。

 

「あー……なんだっけ内通者、力道だっけ?役に立つのか?」

 

「力内ね、別に期待はしてないけど…ゴミは分別しなきゃだろ?ボクはオール・フォー・ワンと違って環境にも気を使えるヴィランなのさ」

 

冥は長い白髮を耳にかけて椅子に腰掛けると、ウイスキーを口に含んで薫りを味わう。

 

「さぁ弔、体育祭でも観て気分転換しよう」

 

「そんなもん気分転換になるかよ……どうせあのリボンが映るんだろ、見たくないねあんな奴」

 

「よほど手痛くやられたんだね…可哀想に弔、ボクが何でもしてあげるからね!お姉ちゃんが添い寝してあげようか?」

 

「いらねぇ、戦力を集めてくれ」

 

死柄木弔は冥の雑な治療のせいでいまだじんわり痛む腕を抱えて気怠そうに机に突っ伏した。




野生のオリキャラと外来種が出てくる回でした
次回からは体育祭になるはずです
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