ここは、平和な袴田家。
デニム語者ベストジーニスト、個性消毒の母消看。
そして一応TS転生者袴田維折の計3名が暮らす家。
「チゥチゥ…チゥチゥ…ヂュゥゥゥ……」
最近はだんだん容赦がなくなってきたトガヒミコが、維折の首筋から血を吸い尽くしている。
一応、これは別に維折がとうとう捕食されて死ぬところとかではなく、個性訓練の一環である。
「ぁぁぁあ……死にそう」
「チゥチゥ…じゅるる…」
ひたすらトガが維折の血を悉く吸い付くし、維折はそれを全力でリボンの付加能力で治癒し続ける。
これは、そういう訓練なのである。
「けぷっ……もうお腹タプタプなのです…」
「死にそう…お母さん…今日もレバニラで…」
多分ベストジーニストに知られたら死ぬほど怒られそうだが、一応どんどんとキャパシティは上がっている。
「イオリちゃんはすごいですね…もう雄英高校に行くためにこんなに個性伸ばしをして…」
「トガは?雄英行かないの?学年違うけど」
「ヒミコって呼んでください。ヤなのです。同じクラスに行きたいのです」
「いや…トガは同じクラスは無理…」
「ヒミコって呼んでください」
最近はイヤイヤ期…いや、ヤーヤー期に入っている気がする。
子供の頃から抑圧されてたから甘えん坊なのかな?
「ヒミコは私より年上でしょ?無理だよ」
「ヤです」
「あの…嫌とかじゃなくって…」
「ヤ!」
トガって赤ちゃんなのかな……
ほっぺをぷっくり膨らませて腕を組んでフローリングに寝そべる姿は癇癪起こした赤ちゃんそのものだった。
「トガは…」
「ヤーーーーッ!!!ヒミコ!トガはヤ!恋人はヒミコって呼ばなきゃだめなのです!」
トガヒミコは、甘やかすとつけあがるタイプだった。
そんなところもかぁいいと思うけど。
「かわいい寝顔」
散々駄々っ子した後疲れて眠るトガヒミコの髪を撫でると、甘い香り…に混じって鉄臭い臭いがする。血の臭いこんなについてたら補導されそう。
「さてと…個性訓練に戻ろう」
足元におびただしい量のリボンが落ちている。
新しいものほど個性のキャパシティを越えて血に染まっているから切り取って捨てるとして……
「一応切り離したのも動かせるし…よし」
改めて、私の個性『リボン』に関して分かっている事を纏めておく。
一つ、手からリボンが出る。
このリボンにはなぜか治癒能力が付属している。
『ファイバーマスター』と『消毒』が合わさってもこうはならんやろ。この治癒能力というのが謎に凄く、リボンを巻き付けるとじんわりとだが治っていく。
治せる限界などは多分無い。必要なのはリボンの量だ。
リボン自体には治癒量の限界値みたいなのがあって、それをカバーするには新しくリボンを出し続ければいいのだが、今度はリボンを出せる量に限界がくる。
そのため行っていた個性訓練『血を吸われながらリボンで血を精製し続ける』なのだが、使い終わった治癒能力もないリボンが大量に余ってしまったのだ。
「よし!できた!」
今回そのあまりにも余ったリボンを新たな個性訓練リサイクルすることにした。手から出るリボンはもちろん、最悪普通の市販のリボンでも自由に操作出来るので、操作能力を上げるために物を作ることにした。
「トガですぅ…!」
リボンを編み上げて作った等身大トガヒミコ人形を前に、声マネとも言い難いか細い裏声を漏らす。
本人が寝てたから許されたが聞かれてたらまたミイラにされるところだった。
「というわけで、ヴィランになりそうな人を未然に更生させたいの。」
「ヴィランもヒーローも表裏一体…であれば掬い上げ矯正するか……立派な志だ。闘うばかりがヒーローではないと、まだその歳で理解しているとは……維折、新品のデニムをタテ落ちさせるように大変な事だが、きっと君ならできる」
ベストジーニストは熱心に娘の夢を応援する、よき父親であり、よきヒーローだった。
「維折、君はチェーンステッチだ」
「……?」
「ヴィランになりそうな者を逃さず掬い上げチェーンステッチによる美しいパッカリングのように鍛え上げるのだ」
「???」
あいにくとデニム語はさっぱりだったのだが、維折は聞き流した。自分はデニムリボンではないのだから、デニム語を覚える必要はない。
「……人の心を…こう、繋ぎ合わせるというか。包み込むようなね。グログランリボンのようにがっしりと噛み合った安心感のあるヒーローになりたいんだよね」
「すまない、デニム語で話してくれないか」
そうして維折はデニム語に対抗してリボン語を編み出した。編み出した、といえばまさしくリボンのように。
治癒持ちがトガちゃんを救うべき理由3選
1・かぁいい!
2・個性訓練と餌付けが同時に行えてお得
3・かぁいい!!!