百獣海賊団の家族問題が少しだけマシだった場合の話   作:もちごめさん

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ぼくはおでんだ ①

「――ぼくは……おでんだ!」

 

 

 赤い二本角を生やし、毛先が青緑色の白髪を後ろで括った女児、ヤマトは、父親やその部下たちがせわしなく働く中、堂々とそう言い放った。

 

 子供らしい高音が辺りに響き、皆の手がピタリと止まる。そうして続く反応は、凡そ一辺倒なものだ。

 

 

「……ヤマトお嬢、今、何と……? おでんがどうとか、よくわからない言葉が聞こえた気がしたが……」

 

「ムハハ! ついに耳まで腐っちまったみたいだなァ、キング! 『ぼくはおでんだ』なんて、そんな意味不明なことをお嬢が言うわけねぇだろうが!」

 

「黙れクイーン。お前もそう聞こえてるじゃねぇか」

 

 

 最高幹部の二人――燃える翼を背負い、頭までマスクで覆い隠した全身黒づくめの大男、キングと、丸々とした巨体と機械仕掛けの右腕を持つ、これまた大男のクイーン。

 そんな二人に続き、他の部下たちも聞き間違いかと息を吐き、各々の仕事へ戻っていった。

 

 まともに相手にされない。それが当然だ。

 なにせヤマトの言う『おでん』とは、光月 おでんという侍のこと。この国、ワノ国の大名で、正当な将軍の跡取りだと国中の皆から目されていた男のことであり――そしてその男はつい先日、現将軍の黒炭 オロチに釜茹での刑に処されてしまっていたからだ。

 加えてそのおでんを処刑場へと送ったのが、他ならぬヤマトの父親、カイドウなのである。

 

 父親が殺した、敵対していた男の名を騙る娘。つまりはそんな状況。「ああそれはいいですね」などと答えられるはずもない。

 故に、皆がヤマトの言葉を聞き間違いだと決め付けてしまいたくなるのは至極当然のことなのだ。

 

 が、幼いヤマトにはそんな皆の心の機微がわからない。

 もとい、わかっていたとしてももう彼女は止まらない。それほどに、この数日で彼女の内に宿った想いは強く――そしてそれは、キングたちの必死の思い込みをも力づくで叩き潰してしまうのだった。

 

 

「聞き間違えじゃないよ! ぼくは、おでんだ! おでんとして、ワノ国を開国するんだ!」

 

「「「「「……え、えぇーーーーーーっ!!?」」」」」

 

 

 クイーンを筆頭に、皆、眼が飛び出さんばかりに驚いた。

 普段はクールなキングすら、言葉を失い絶句する。ヤマトの瞳の真剣さ、宿った使命感に似た憧れは、それほどのものだった。

 

 が、驚愕一色の皆に対し、キングの絶句はもう少しだけ複雑だ。

 恐怖心。マスクから覗く二対の視線が、息を呑みこみゆっくりと己の背後を振り向いた。その先、怖れの根源たるその人を、恐る恐るに伺い見やる。

 そして――当人。ヤマトの父親であり、この集団、百獣海賊団の総督であるカイドウは、普段通り獣のように剛毅な顔をほんの僅かな苛立ちで歪め、口にした。

 

 

「……今、おれたちは忙しいんだ。さっさと準備を済ませて侍の反乱の鎮圧に行かなきゃならねぇ。ヤマト、お前の冗談に付き合ってる暇はねェんだ」

 

「冗談なんかじゃないよ! ぼくは本気だ! 本気でおでんになりたい……ううん、なるんだ!」

 

 

 不機嫌を露にする父親に、しかしヤマトは怯むことなく言い返した。その強い意志を、直にぶつける。

 

 

 カイドウは、たちまちその眉間のシワを深くした。

 腹が立ったのだ。ヤマトが敵だったおでんに憧れていることに――ではなく、『おでんになれる』と、そう信じていることに。

 だから返す言葉で突き放そうとした。お前がおでんになれるはずがない。諦めろと。

 

 だが――寸前、ふと思い至る。

 とある日の、海賊としての略奪帰りの船の中。たまたま目につき、気まぐれに手に取って、どうせならと暇つぶしとして流し読んだ、育児書のある記述。

 

 それ曰く――『子供は自分の気持ちをうまく言語化することができません。だから子供の目線になって、焦らずじっくり話を聞いてあげましょう』とのこと。

 

 カイドウは、そもそもヤマトがどうしておでんになろうとしているのかさっぱり理解できていなかった。それ故の即断。どうせヤマトのその“軽い”憧れに意味などないのだからと切り捨てようとしたのだが――曰く、それは間違いらしい。

 

 

「………」

 

 

 カイドウはしばし考えた。考えて、そして決めた。

 

 

「おいヤマト。お前、なぜおでんになりたいんだ」

 

 

 育児書に従って、カイドウは椅子にしていた大岩から腰を上げると、ヤマトの前にかがんで問うた。

 キングやクイーン以上の巨躯ではそうやってもヤマトと目線を合わせることはできないが、それでもそうやって見せられた対話の意思は、ヤマトの心を確かに解く。

 故に決意に満ち満ちた顔にほんの僅かに喜色が混じり、そしてヤマトはわざとらしくやれやれと肩を竦めた。

 

 

「違うよお父さん。ぼくはおでんになりたいんじゃなくて、おでんになるんだよ!」

 

「……なら、なぜおでんになるんだ。第一、お前はおでんと会ったことすらねェだろう」

 

「会ったことはないけど……見たんだ、おでんが処刑されるとこ。……ぼく、あの日おでんが処刑されるって聞いて、花の都まで見に行ったから」

 

「なに……!?」

 

 

 ヤマトが花の都――ワノ国の首都まで赴いていたというのは、カイドウにとって初めて知る事実だった。

 今カイドウたちが居を構える鬼ヶ島は孤島であり、花の都へ向かうには船で海を渡らなければならない。故にヤマトのその行動力には驚く他なかったが、しかし当のヤマトはその当時、処刑の様子を思い出し、溢れる思いでいっぱいいっぱい。

 クイーンたちの「えーーーーーーっ!! いつの間に!?」なんて驚きの合唱も耳に入らず、訥々と語り始めた。

 

 

「……なんていうか、すごいって思ったんだ。おでんはあんなにすごいのに、それがなくなっちゃうなんて、悲しくて……。だから、ぼくが代わりにならなきゃだめなんだ! ぼくがおでんみたいなすごい侍になって、おでんの代わりにワノ国を開国するんだ! ……って、そう、思ったの……」

 

 

 口ごもりながら徐々に決意で高揚してきた声調が、しかし後半、一気にがくんとか細く消えた。

 ヤマトが目の前にするカイドウの苛立ちが、とうとうはっきり見て取れるほどに膨れたからだ。

 

 そこでようやく、ヤマトは自分のこの想いが父親にとっては好ましからざる思想だということに気が付いた。

 頭が冷えて、思い至る。開国というそれ自体の意味は幼いヤマトにはよくわかっていなかったが、しかしこれはおでんが掲げた目的だ。

 おでんがその家臣、赤鞘九人男と共にカイドウを打ち倒し、達成しようとした目的であり、つまり開国を掲げることはカイドウとの敵対を宣言するも同然の行いに他ならない。

 そんなことをされて、父親が怒らないはずがない。そう気付き、ヤマトは居心地悪く身を縮めることとなった。

 

 

 だが実際のところ、カイドウの苛立ちの元はそこではない。

 先ほどと同じだ。ヤマトのおでんになるというその決意が、あまりにもからっぽで軽かったから。それが勢いばかりが激しいだけの、薄っぺらな憧れでしかないように感じたからだ。

 そんな気概でなれるほど、おでんという男は小さくない。おでんを小さく見られることは、戦い、彼を強者と認めたカイドウにとって些かならず癇に障ることだった。

 故に喉元までヤマトの想いを否定する言葉が出かかって――しかし、またも寸前で止まった。

 

 その理由も、やはり例の育児書だ。

 

 曰く――『子供の夢を否定してはいけません。それがどんなものでも、否定ではなく理解を示してあげるところから子供の成長は始まるのです』。

 

 逡巡し、そしてやはり、カイドウはその記述に従った。

 

 

「……ああ、そうだな。おでんはすごいやつだ」

 

「! で、でしょ!? そうだよ、おでんはすごい侍なんだ!」

 

 

 カイドウの顔色を窺っていたヤマトの顔が、途端に弾けるような笑顔に変わった。父親が自分と同じ想いに共感してくれたことに、得も言われぬ幸福が満ちる。

 が、しかしその笑みはすぐに陰った。共感の言葉を得たからこそ、ヤマトの胸中では困惑が割合を増し、僅かながらの隔意も芽生えて呟いた。

 

 

「でも……お父さんもおでんがすごいってわかってるなら、どうしておでんを殺しちゃったの? あんなにすごいおでんがいなくなっちゃって……お父さんは、悲しくならないの……?」

 

 

 なにしろおでんを打倒し、捕らえ、処刑場に送ったのは他でもないカイドウだ。そして釜茹での釜の中で、死に行くおでんに最後のとどめを刺したのもカイドウその人なのである。

 自分と同じようにおでんを想っていながら、なぜそんなことができるのか。ヤマトの内心に滲み出たそんな思いが、彼女に眉尻を下げさせた。

 

 

「ならねェ。情けは敗者への侮辱だ」

 

 

 が、カイドウにとってはそれこそが“薄っぺらな憧れ”だった。

 互いに部下を引き連れた荒野での戦いで、おでんはカイドウに敗北した。その時点でもう、おでんは死んだのだ。

 とはいえそれはとある邪魔により、カイドウとしても不満足な、大きなケチが付いた決着になってしまっていたのだが――だからこそ、尚のことそれはカイドウにとって譲れない一線となっている。

 

 

「いいかヤマト。死は人の完成だ」

 

「死は、人の完成……?」

 

「そうだ。敗者がダラダラと生き永らえても恥を晒すだけだ。だからおれは、おでんがそんな無様を晒す前に終わらせた。……そうしてこそ、そいつの名は語り継がれるほど立派なもんになる」

 

「……よくわかんないよ」

 

 

 カイドウは育児書に従って、精一杯言葉を噛み砕いて己の信念を語った。

 が、それでもヤマトが理解するにはなお難しい。頑張って理解しようと頭を回すも、結局その頭はコテンとハテナマークに埋もれて傾いた。

 

 

「負けたのが恥ずかしいなら、もう一回戦って勝てばいいんじゃないの? そうしたら恥ずかしいのもなくなるよ」

 

「だが敗者の烙印は消えねェ。……それに、おでんも生き永らえようとはしなかっただろう」

 

 

 一息。カイドウは熱くなり始めている己を静め、おでんを示して言葉を続ける。

 

 

「処刑を見たならあいつの言葉も聞いていたはずだ。あいつが一度でも命乞いをしたか? 『助けてくれ』だとか、情けねェ台詞を一言でも吐いたか?」

 

「で、でも『チャンスが欲しい』って……」

 

「あれであいつが守ったのは自分の命なんかじゃなかったろう。もしもあいつが本当に己を惜しんでいたなら、嘘でも何でもオロチの奴に縋りついていただろうよ。裸踊りのバカ殿のようにみっともなく、『オロチ将軍に絶対の忠誠を誓います』だとかな。……まあそれでオロチが奴を生かすとも思えねェが、煮えた油に飛び込むよりは、まだしも可能性はあったはずだ」

 

 

 だがおでんはそうしなかった。

 そしてそれを、ヤマトも直にその眼で見ていた。だからこそ、カイドウの言葉に反論ができない。

 

 であれば、ヤマトも納得するしかなかった。あの日の処刑でおでんの命を絶ったのは、カイドウでもオロチでもない。おでん自身が、既に己が死ぬことを受け入れていたことを。

 

 

「……どうして、おでんは諦めちゃったんだろう。町のみんなだって、おでんに生きてほしいって思ったのに。……ううん。そうか、それが……『死は人の完成』、なの……?」

 

「………」

 

 

 カイドウは無言で頷いた。信念がようやく伝わったが、しかしそれは多少(・・)と付く程度でしかない。やはりまだ、手放しで認めることはできなかった。

 

 事実、ヤマトもまだなんとなくでしか理解できていない。カイドウの言う通り、おでんはあの場で死ぬ以外になかったと理解はできたが――その内心、根本のところは未だ納得には程遠い。

 

 

「……やっぱり、わかんないよぼく。『死は人の完成』って、なに? どうしたら、ぼくもおでんやお父さんみたいの気持ちがわかるようになるのかな……」

 

「簡単だ。強くなればいい」

 

 

 故にカイドウはそう続けた。

 他の方法など、カイドウは知らないのだ。

 

 

「おれもおでんも……まあ、侍もだ。全員、お前よりもはるかに強い。弱いお前が強いおれたちを……おでんを理解するなんて、そもそもからして無理な話だ。だからヤマト、お前、おでんだなんだという前に、まずは強くなれ。せめて自分の口でおでんのどこがすごいのか、語れるようになってから憧れろ」

 

「強く……! 強くなれば、ぼくもちゃんとおでんになれる……!?」

 

「……ああ」

 

 

 光明に、ヤマトが再び目を輝かせた。カイドウとしては希望ではなく絶望を与えたつもりであったのだが、まあいいだろうと頷いてみせる。

 おでんおでんと煩いのは難点だが、そのやかましさを強くなる熱意に回すのであればそれでいい。むしろ歓迎すべきだろう。暴力を愛する百獣海賊団の総督として、戦力が増えるのは喜ばしいことだ。

 

 そして何より、この喜びは全て育児書のおかげなのである。

 自分だったらただ怒鳴り散らして終わらせていただろうこの事態。しかし育児書の言う通りに従ってみれば、こんな思いもよらぬ成果が湧いてきた。

 

 つまりカイドウは、素晴らしい指南書に巡り合うことができたのだ。男親且つ一人親であるカイドウにとって、これほどありがたいこともそうはない。

 きっと他にも重要なことが書かれているに違いない。流し読みするばかりだったが、改めてきちんと読み込んでおくべきだろう。そんな期待すらしてしまうほどで、カイドウは頼もしき指南役に満足感を得たのだった。

 

 

 しかしともあれ、それに浸るのは後回し。カイドウはやる気満々なヤマトから眼を放し、立ち上がった。

 今は侍の反乱を叩く準備が先だ。反乱それ自体はおでんという旗頭を失った以上、もはや大した脅威ではないが、それでも早く片付けなければ後々の計画に面倒が生じてしまう。

 故に、今までのカイドウとヤマトの問答に気を取られてしまっている部下たちに、カイドウは檄を飛ばそうとして――

 

 

「お父さん、ぼく、頑張るよ! 頑張って、おでんみたいに強い侍になる! そして……いつかお父さんのことも(・・・・・・・・・・・)倒してみせるよ(・・・・・・・)!」

 

「―――」

 

 

 ヤマトが元気よく言い放ったその声に、ピタリと動きを止められることになった。

 カイドウだけでない。部下たちの空気もまた、凍る。皆あんぐり口を開け、幾人かは運んでいた資材をがちゃんと取り落とした。

 

 そんな中で、クイーンが恐る恐るに笑い声を捻り出した。

 

 

「む、ムハハハ……! こ、今度こそ聞き間違いだよな? ヤマトお嬢、今、カイドウさんを倒すとか――」

 

「だから聞き間違いじゃないってば! ボクは何時かおでんとして、お父さんを倒すよ! だっておでんはお父さんを倒そうとしたんだし……それにお父さんも、おでんみたいに誰かに倒されたいんでしょ? だから、ぼくが倒してあげるんだ!」

 

「「「「「……え、えぇーーーーーーっ!!?」」」」」

 

「倒しちゃうんですか!? カイドウ総督を!?」

 

「その歳で下剋上宣言!? 鬼姫様、怖いもの知らずにもほどがありますよ!?」

 

 

 ヤマトがクイーンの怯え声を切って捨てると、部下たちの驚愕が一斉に爆発した。

 そして全員、その悲鳴には恐怖の色が滲んでいる。先ほどはキングだけがカイドウの心情を読み取ることが叶ったが、しかし今度のそれは遥かに明白。『倒す』なんていう、言い訳のしようもないほどの反逆の意思が示されてしまったのだ。

 

 仮に部下がそんなものを表明すれば、カイドウはたちまち憤怒で新たな床の染みを作り出してしまうことだろう。あるいはキングがその炎で消し炭にするか、クイーンの手により恐ろしいウイルスの実験台にされるかだ。

 とはいえ今回、それを言ったのはカイドウの実の娘。キングもクイーンも冷や汗をかくばかりで動けない。ただカイドウの反応を、恐怖と共に見守ることになり――

 

 

「ウォロロロロ!! おれを倒す? 嬉しいこと言ってくれるじゃねェか、ヤマト!」

 

 

 そして飛び出た心底から楽しそうな笑い声に、ズルッと肩の力を持っていかれることになった。

 

 

「そんな日がくるとは、正直思えねェが……ウォロロロロ!! そうなったら傑作だな! 楽しみにしてるぜ、ヤマト。おれの娘よ」

 

「うん、楽しみにしててよお父さん! ぼく、頑張って強くなるから!」

 

 

 脱力。つまり安堵。キングもクイーンも、そして他の部下たちも、皆同様にヤマトの言葉を信じていない。

 カイドウを倒し、勝つなどということは、カイドウの強さを知る彼らにとってまさに夢物語なのだから、それも当然だ。ヤマトも子供ながらもなんとなく、そんな空気を感じている。

 だが、それでもやはりヤマトの中に宿った想い――おでんから受け継いだ意志の欠片が消えることはない。傷つきも、曲がりもしない。

 薄っぺらでからっぽな憧れではあれど、それは既に深くまで根を張った意思なのだ。

 

 故にカイドウは喜びの声を上げた。己の娘が、それほどまで強くおでんと――そして己に、その意思の矛先を向けてくれたのだから。

 いつかその憧れに中身が詰まる、その時を夢想して。

 そうして放たれた父親の激励を、ヤマトもまた確固たる意志で受け止めるのだった。

 

 ――そして、受け止めた後にふと気付いた。

 

 

「……あっ! ちょっと待ってお父さん!」

 

「あぁ?」

 

 

 呼び止められて、仕事に戻ろうとしていたカイドウが再び振り返る。

 ヤマトはそんな、わかっていない(・・・・・・・)父親にやれやれとわざとらしく首を振り、そして、三度言い放った。

 

 

「ぼくはいつかおでんになるんだよ? なのに()って、ふつーに考えておかしいじゃん。ぼくは……男だよ!」

 

「……なんだと?」

 

「おでんになるには、まずおでんみたいにならなくちゃ! だからさ、刀とかも欲しいなぁ。侍はみんな刀を持ってるものだし……あ、そういえば、おでんは昔、はーれむの乱? っていうのをしてたんだよね。 ぼくもやってみたい! いいでしょ、お父さん!」

 

 

 今度は驚愕の声も出てこなかった。

 カイドウが激励を送ってしまったせいで、きれいさっぱりなくなってしまった遠慮の枷。そうして堰が崩れ、溢れ出てきた突拍子もない発言の数々に、皆理解が追い付いていない。

 

 

「……ヤマトお嬢が、ハーレム……? 幼女が大人の女をはべらすのか……萌えるな……!」

 

「おい、正気かお前。お嬢は……じゃなくて坊ちゃんはまだ二桁にもなってないんだぞ?」

 

 

 一部の特殊な部下を除いて、みな頭から煙を吹くことになったのだった。

 

 

「……一度、遊郭にでも連れて行ってやるべきか……?」

 

「いやカイドウさん、さすがに教育に悪いと思う」

 

 

 カイドウも例外ではなく、辛うじて正気を取り戻したキングがそれを諫める。

 そしてついでによからぬ妄想を抱いたバカ者たちへの処遇を頭の中で描きつつ、ともかく諸々こちらの仕事が終わった後でと、ヤマトをこの仕事場の外へと誘導するのだった。

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