ソードアート・オンライン短編集 武器職人の休日 作:ドフトエフスキー
とりあえず、全5話を予定としています。暇潰しに読んでくれたら嬉しいです。
ある休日の昼の事である。私はやる事が無かったので、ALOの世界に入って武器をひたすら作って暇を潰していた。
暇潰しと言っているが、高レベルの武器を製作できる武器製作スキルが上がるので武器職人である私にとって大切な事なのだが、これが非常につまらない。
店の奥にある工房で、素材アイテムを適当に数個選択して机の上に出して、ハンマーで数回叩くだけである。
SAOの時代は、生きるか死ぬかの瀬戸際だったので、武器ひとつ作るのも真剣だった。しかし、SAOからALOにコンバートしてからは、机の横に椅子を置いて、座りながら適当に選択した素材アイテムを叩いて製作していた。
私が欠伸しながら8つ目の武器を作り終えた時である。
「リズさんは、いますか?」
幼く可愛らしい声が店内の方から聞こえた。私は作った武器とハンマーを工場の隅に適当に置いて、カウンターに出ると小さな背丈の女の子がいた。
「どうかしたの、シリカ?」
「いえ、私の武器を研いで欲しくて来ました」
シリカはニッコリと笑いながら、腰に差してある短剣をカウンターの上に置く。この違法ロリ・・・シリカは、数少ない私の武器を使ってくれるお得意様でもあり、同じ相手に恋するライバルである。彼女の種族はケットシーなので両耳が動物の耳になっており、それがまた可愛らしさを倍増している。
私はカウンターの上に置かれた短剣を持って、鞘から抜いて刀身を確かめると刃が所々欠けているし、刃文も汚れていた。
「よくまぁ、こんなになるまで持ったね。刃文が汚れるって相当手入れしてない証拠だよ」
「えへへっ、最近は色々と忙しくてサボってたから・・・」
「武器職人として言わせてもらうと武器が可哀想だよ? 壊れたらどうするのよ」
そう言って私は工房に入り、研磨機の前でメニュー画面を表示して、研磨機の稼働をタッチする。すると研磨する所が回転するので、私は持っている短剣の刀身を軽く当てる。両面当てると数秒後、完了の文字が表示されると研磨機も回転を止めるので短剣の刃をもう一度見る。
刀身が欠けていないか、刃文の汚れが取れているかを確認する。 うむ、我ながら見事な腕である。
短剣を鞘に戻して、店の方に戻る。
「お待たせ、シリカ。整備は終わったよ」
「ありがとうございます、リズさん。これで安心してクエストに挑戦できます」
「へぇ、クエストに挑戦するんだ? 一体どんな奴なの?」
「レアアイテムがゲットできるクエストです。噂だとそのレアアイテムは、短剣の素材になるみたいなので・・・」
「なるほどねぇ、シリカが今使ってる武器もそろそろ限界だもんねぇ」
私がそう言うとシリカは目を伏せた。すると足元にいたピナがピョンとシリカの頭の上にのって、励ますように鳴いた。
シリカはSAOの世界で最も珍しい職業のひとつ、モンスターを仲間にするビーストティマーである。ピナと呼ばれるモンスターは、小さい体のくせに種族は何とドラゴンである。
「そっ、そんなに落ち込まないでよねぇ。私までも落ち込んでくるじゃない」
「ごめんなさい、この武器と長く冒険していたので・・・」
シリカは悲しそうな表情でそう呟いた。
ちょっと、シリカ。その体型でその表情と台詞は反則だよ。これじゃ、私が悪役みたいじゃない!
もし、シリカを泣かせる事でもしたら、私の店の経営に支障が出るかもしれないし。
「こっ、今回の整備代は無料にしておくよ」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
「良いってことよ。私の心は海のように広く、全てを包み込む慈愛に満ちているのよ」
「どうでもいい話ですね・・・」
シリカの言葉を無視して、私は鼻歌を歌いながら工房の中へと入った。工房の隅っこに雑に置かれている武器たちを見てため息をつく。スキル上げのために製作した武器を売り物として売ってもいいのだが、店内のスペースは限られているので適当におけばいい訳ではない。
中には樽の中に武器を突っ込んで売る人たちもいるが、私は自分が製作した武器を自分でゴミ扱いするのが嫌いなのでやっていない。でも、それだと置けるスペースがなぁ・・・
むぅ、と考えていた時である。武器の置き場所ではなくて、シリカのことで不意にあることを思い出した。
「シリカ、まだいるー?」
「はい、いますよ。どうかしましたか?」
「いや、あんたがクエストをするってことは他に誰かいるんでしょう? 誰とやるのー?」
「・・・・・・」
「シリカー? どうなの? 誰とクエスト・・・」
「キッ、キリトさんと2人で・・・」
刹那、私はアイテム欄から私が製作した中で最も威力のあるハンマーを装備して工房から飛び出した。
「シリカ? それは何の冗談かな?」
「いえ、その、キリトさんの方から誘ってきたので・・・」
「でも、あいつの武器は大剣だよね? 短剣じゃないよ、シリカ? 本当のことを言ったら?」
「えっーと・・・ごめんなさいっ‼︎」
そう叫んで、シリカは店の扉を乱暴に開けて出て行ってしまった。無論、私はその後を追う。
「くぉらぁシリカァ‼︎ 抜け駆けは駄目だって言ったでしょう‼︎」
「だってだって、アスナさんとばっかり遊んでいたから、私も構って欲しいなぁと・・・」
「あんたみたいなあざとい生き物は、マニア受けしか需要はないのよ‼︎ それにアスナはキリトの恋人でしょうが‼︎
」
シリカを追いかけながら、ハンマーを振り上げてスキルを発動する。普段の私では絶対に出せない凄まじい加速と共に振り上げたハンマーで叩き潰すものである。
でもシリカはそれを軽々と避けてしまうのだ。彼女の場合は第三の目、ピナの目があるからである。あの魔物がシリカに危険を教えているからこそ、後ろ向きでもスキルを軽々と避けてしまうのだ。
「って言うか、私も混ぜなさいよ‼︎そんな楽しそうなことをしているなんてズルいわ、畜生め‼︎ そんで、短剣の整備代を払いなさい‼︎」
「嫌です、断固拒否します‼︎ このクエストはキリトさんとの中を深める大切なイベントなんですよ⁉︎ それを年増でケチなおばさんを混ぜたら、空気が汚れます‼︎ 」
「なぁ⁉︎ 私をババァ扱いしたなーッ‼︎ 絶対に殺す‼︎ もう謝っても許さないんだから‼︎」
こうして、開店中の店をほったらけにして、私はシリカの後を追いかけたのであった。なんともまぁ、平和な話だことで。
不定期に更新します。