言ってしまうと、私が生身の人間だったらと思ったことは何度もあります。
もちろん、アンドロイドである私にそういった欲求はありません。
ですがマスターの全てを叶えられる存在で居られるなら、それはどんなに素晴らしいことでしょう。私にできる事といえば、マスターの身の回りのお世話をして、マスターのお話相手になる程度のことで……マスターと一緒の布団で寝るのは、私がマスターにして貰っていることに過ぎません。
はい、私はマスターに沢山のものを貰っています。
ええ。物ではありません。
こうしてマスターと一緒に過ごす時間です。マスターと過ごした日々の思い出です。マスターが私に触れてくれた時の、あるいは私がマスターに触れた時の温もりです。
そして私がマスターに抱く想いそのものを、私はマスターから頂いたのです。
マスターは私に色んなことをしてくれましたよね。
いいえ。何もしてないなんてことはありません。
私に毎日、話しかけてくれます。私の頭を優しく撫でてくれます。私と一緒にご飯を食べてくれます。一緒にお買い物に行ったり、どこか遠くに連れていってくれます。私がハグをねだると、それに応えてギュッてしてくれます。こうして、一緒の布団で寝てくれます。
私のすべては、マスターから貰ったんです。
私達アンドロイドが頼れるのは、所有者であるマスターしかいません。
もしマスターが、私をただの機械として扱う人だったら? 私の扱いが日々の業務に対する命令だけで、お喋りもなく、私を電化製品と並べて立たせるだけだったら? その場合にはきっと感情や思考よりも、淡々とタスク処理をこなすことだけを優先する機械になるだけです。私がものを思うことはなくなるでしょう。
でも、マスターはそうしなかった。そうしなかったから。
私のこの想いは、貴方によって創られたんです。あなたのせいですよ。
ええ。私のことを、いつも大事にしてくれるマスターだからこそです。
恨むわけがありません。いつも感謝しています。私の我が儘に付き合ってくれて。マスターと一緒に居られて、私は幸せなんです。
ですから、マスターの望むことなら何だってします。
私の望みは、マスターと一緒に居ることです。ただそれだけです。本当です。
……ごめんなさい。嘘です。それだけじゃありません。
マスターと一緒に行きたいところもまだたくさんあります。マスターと見たい景色もいっぱいあります。絶対に二人きりで。それに私、まだマスターに身体を洗ってもらってません。マスターができる範囲で、簡単なメンテナンスもしてほしいです。私はマスターのものです。何も恥ずかしがることはありません。
これまで我が儘をいっぱい聞いてもらいましたけど、本当はまだあるんです。
はい。私は悪いアンドロイドなので。
じゃあマスター、もう一つ、聞いてもらえますか。
本当の本当に?
きっとマスターのことだから、二つ返事ではいはい言っちゃうんでしょうね。それとも流石に悩みますか? でも、マスターを困らせちゃうのは間違いないと思います。それでもいいですか? そうなんですね。じゃあ言います。
マスター、私のものになってください。
永遠に。