パワハラギルマスをぶん殴ってブラック聖剣ギルドをクビになったので、辺境で聖剣工房を開くことにした   作:だいたいねむい

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第103話 『セパのお願い』

『ご主人、私、人間になりたいです』

 

「は?」

 

 とある日の昼下がり。

 

 セパが珍しく工房まで降りてきたと思ったら、いきなりわけの分からんことを言い出した。

 

『分かりますか? ご主人。私は小さいです。……お胸の話じゃないですよ? 体全体が、です』

 

「そうだな」

 

 お胸のくだりはスルーした。

 

 ツッコむと無限に絡まれそうな気がする。

 

 それはともかくとしても……彼女が手のひらサイズなのは当然だ。

 

 短剣型の聖剣だからというのもあるが、セパという人造精霊はそういう風に『創られている』。

 

 それを別の形状に変更することは、不可能というわけではないが……結構な手間がかかるし、リスクもある。

 

 もちろんセパがそんなことを知ったうえで無茶を言っているわけではないことは分かっている。

 

 だが、急にそんなことを言い出したのには理由があるはずだ。

 

 ……うーん、そうだな。

 

「さてはお前、レインとケンカして煽られたな?」

 

『まっ、まさか! この私が、レインのような攻撃力だけが取り柄の駄肉聖剣に後れを取ることは天地がひっくり返ってもありえません! もちろん煽り返しましたとも!』

 

 煽り返したんかい。

 

 つーかやっぱケンカしてたんかい。

 

「なら別にいいだろ」

 

『いえ……まあ口喧嘩はいつも通り私の勝ちで終わりましたが……今回はそれとは別件です』

 

 セパはいつになく真剣だ。

 

 もっともこいつの場合、真剣な顔して意味の分からないことを口走るのはいつものことだが。

 

「……で?」

 

 先を促す。

 

『ふふふ……知りたいですか?』

 

 もったいぶるように、ニマァ~と笑みを浮かべるセパ。

 

『やはり知りたいのですね? そんな冷たい態度を取っていても、やはりご主人も、私のことが大好きなんですね~ウフフ……やはり私は愛され聖剣ですね! ご主人すら虜にする私の美貌……もはや罪の領域ですね……チラッ』

 

 わざとらしく身体を傾け、これまたわざとらしい流し目を俺に送ってくる。

 

 うわ……マジうぜぇ……

 

 そもそも、今は魔剣解析が佳境なのだ。コイツの相手をしている時間はない。

 

「……じゃ、休憩はこれくらいにしてそろそろ研究に戻るか」

 

 そう言ったとたん、慌てた表情でワタワタしだすセパ。

 

『ちょっ……ちょっと待ってください! そんなスンとした顔でお仕事に戻らないでください! 言います! 今すぐ言いますから!』

 

「じゃあさっさと言え。手短にだぞ。俺は忙しいんだ」

 

『ふぁい……実は、先日カミラ様のご自宅に招かれたさいに、かくかくしかじかで――』

 

 セパが理由を話しだす。

 

「……なるほど。要するに、お前はステラやマリアと一緒にじゃれあったりして遊びたいんだな」

 

『……その、まあ……端的に言えばおっしゃる通りです』

 

 なかなか素直でいいじゃないか。

 

 コイツも、いつもこうだといいんだが。

 

 ――先日のことだ。

 

 俺とカミラが共同研究を行っている最中、セパとレインはカミラ邸でお泊り会を開いていた。

 

 二人の話では、お泊り会はかなり盛り上がったそうで、あの真面目なマリアまで一緒になって、おしゃべりに興じていたとのことだった。

 

 その後、セパはステラと一緒に遊び疲れて同じベッドで寝落ちしてしまったらしいのだが……朝起きると、セパは思いっきりステラの下敷きになっていたそうだ。

 

 もちろん聖剣の人造精霊は、セパ程度のサイズでも人間が踏んづけた程度では傷一つ付かない。

 

 よしんば傷ついたところで、身体を構成している魔素がたちどころに傷痕を修復してまう。

 

 だから、彼女が悩むことなんて何もないはずなのだ。

 

 とはいえ、である。

 

 ステラからすれば、一大事であろうことは想像に難くない。

 

 朝起きたら、小さな友人が自分の下敷きになっていたのだ。

 

 それを見つけてしまったときの彼女の気持ちは察するに余りある。

 

 こんなことでステラトラウマを抱えることになってしまうのは……大変よろしくない。

 

『……それと、皆さんと一緒に同じ量の食事ができないのはちょっと寂しくて』

 

 セパはさっきとはうって変わって、神妙な表情だ。

 

 確かに、小さい体の割にセパはよく食べる方だ。

 

 もともと人造精霊には人間の食べ物を体内で魔力に変換して蓄えておく機能が備わっているが、セパほどの聖剣ともなるとそれなりの出力が要求されるからだ。

 

 しかし、人間と同じ量というわけにはいかない。

 

 自宅で食卓を囲んでも、彼女一人だけすぐに食べ終わってしまい、あとは俺やレインが食べる終わるのを待つだけ……というのが日常だった。

 

 まあ、彼女の気持ちも分からないでもない。

 

 それと……これは俺の都合でもあるが、セパの交友関係や食事問題だけでなく、最近は何かと身の回りの騒がしくなってきた。

 

 先日は商工ギルドから最終的に俺の意見を通したものの大量発注があったばかりだし、今後は状況によっては似たような案件を受けることになるかもしれない。

 

 そうなると、必要になるのは人手だ。

 

 レインにはたまに手伝ってもらっているが、セパも同じように動けるのなら助かることも多い。

 

 まあ、レインはすぐに仕事に飽きて遊びだしてしまうのだが……

 

 いずれにせよ。

 

 人造精霊のサイズ変更はなかなか面白そうな研究テーマではある。

 

 よし、決まりだな。

 

「セパ、お前の言い分は分かった。お前のサイズを大きくするのは人造精霊のいろいろと難しいが、なんとか方法を模索してみよう」

 

『本当ですか!? ありがとうございます、ご主人!』

 

 ぱあっ、とセパの顔が明るくなる。

 

 ……はあ。

 

 こうしていれば、コイツはちゃんと美少女なんだがなあ。

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