パワハラギルマスをぶん殴ってブラック聖剣ギルドをクビになったので、辺境で聖剣工房を開くことにした   作:だいたいねむい

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第139話 『完璧超人製作秘話』

「まったく、当主候補とあろう者が何をやっているのですか! 確かにノンナ先生は貴方の命の恩人かもしれませんが……そうやって自分の命を前に投げ出せば意味がないでしょうに!」

 

「すまぬローレッタ……先生を愚弄され少々熱くなってしまったのだ……」

 

 猫背男を含む賊どもを捕縛し、区画の門番にどうにか事情を説明して持ち込んだセパでダリオ氏にかかった呪詛を『切断』したのち。

 

 案の定というか、ダリオ氏の婚約者であるローレッタさんは怒り心頭だった。

 

「本当に分かっているのですか?」

 

「す、すまん……」

 

 ダリオ氏は腕の手当てを受けた後、床に正座をして反省中だ。

 

 なんかこの構図……見覚えがありすぎて居たたまれないんだが?

 

「それにしても……やっぱり兄さんは兄さんだったッスね。なんか、安心したッス」

 

 と、そんな彼らの様子を眺めつつ彼女がぽつりと呟く。

 

 あきれ顔ではあったが、生暖かく見守っているような表情でもある。

 

 まあ……なんだかんだ思うことはあっても、やはり兄妹だということか。

 

 

 ひとまずリタの中では、ネメシオ商会の次期当主はダリオ氏で決まりだろう。

 

 あとは彼の頑張り次第というところだ。

 

 

 ただ、個人的にはいろいろと疑問点が多い。

 

 そもそもダリオ氏がノスフェラトゥを『命の恩人』と呼ぶのはなぜだろうか?

 

 これが一番の謎だ。

 

 ノスフェラトゥの性格はよく知っている。

 

 狡猾かつ老獪。

 

 自身の不死の力や状態異常に関する魔術や呪詛を使いこなし、搦め手も含め目的の為ならば手段を選ばないタイプである。

 

 先日俺たちの宿に忍び込んできたときの言動だって、実際のところ本心は分からない。

 

 当然、コイツとダリオ氏に何があったのかは分からないが、ただの善意で『命の恩人』なんぞになったわけがないだろう。

 

 

 もっとも、そのいきさつについてはダリオ氏が話したがっていたようだからな。

 

 このまま怒られてるのを見物しているのも退屈だし、ここは救いの手(?)を差し伸べておくか。

 

 一応、襲撃者たちを一番多く倒したMVPだしな。

 

「それで、ダリオさん。せっかく反省中のところ悪いんだが……あんたがノンナ……女史のことを『命の恩人』と話していた件についてはまだ話が途中だったよな。それについて俺たちも聞きたいんだが」

 

「そうか! 聞きたいか! 聞きたいであろうな!」

 

 水を向けた途端、ダリオ氏の顔がパッと俺の方を向いた。

 

「ちょっと、まだお話は終わっていませんよ!」

 

「よいではないかローレッタ。小言など、あとでいくらでも聞いてやる。商人というものは、決してお客人を待たせてはならないのだ」

 

「まったく、都合の良い……まあ、いいでしょう」

 

 ローレッタさんもこれ以上は俺たちの迷惑になると判断したようだ。

 

 大きなため息を吐きつつも、これ以上ダリオ氏を拘束するようなことはなかった。

 

「ふむ。では、俺と先生の運命的な出会いについて語らせてもらうとしよう」

 

 元の調子を取り戻したダリオ氏がソファに座り直すと、身振り手振りを交えて語り出した。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「……おいノンナお前……」

 

 俺はドン引きした。

 

 ダリオ氏が語った、彼とノスフェラトゥとの出会いは……ありていに言って目を覆いたくなるような酷い話だった。

 

 

 曰く、やさぐれていた在りし日のダリオ氏は、街で可愛い女の子を見つけてナンパした。

 

 彼は首尾よく彼女の『お持ち帰り』に成功したのだが……彼にとって幸か不幸か、ソイツがノスフェラトゥだったという訳である。

 

 もちろんノスフェラトゥが人族にいいように弄ばれるわけもなく、逆にボコボコにして(ここは言葉を濁していたが……死ぬ方がマシな目にあったのは想像に難くない)、さらに『眷属』にしてしまったそうだ。

 

 『眷属化』とは上級魔族たちが使う隷属魔術の一種で、眷属となった者はそれを施した魔族に対して自分の意思では逆らうことができなくなる。

 

 一般的に、そうして造り出した『眷属』はその魔族の奴隷となるか、戦闘において肉の壁として使い潰される。

 

 おまけにその魔族が自分の意思で『眷属化』を解くか『眷属』が死ぬまで、その効果は残り続けることになる……という、やられた方にしてみれば最悪最低の魔術なのである。

 

 そして王国では、先の対戦で多くの王国人が魔族たちにより『眷属』にされ、人間の盾として使役されたという経緯があった。

 

 それもあって、王国では貴族や王族などの要人にこれやったら国ごと滅ぼされても文句を言えないほどの極悪犯罪として非常に悪い意味で有名なのである。

 

「いや、これは不可抗力、正当防衛じゃ! それに今はもう『眷属化』は解いておる!」

 

 そんな俺の剣吞な視線を感じ取ったのか、ノスフェラトゥは青い顔で首をブンブンと振りながら弁明する。

 

「……本当か?」

 

「当然じゃ! このダリオが大商会の御曹司と知っておれば、もっと別の方法でやり込めたのじゃ」

 

 それもどうかと思うが……

 

 まあ当時のダリオ氏も悪いので何も言えない。

 

 そもそもこのエピソードを誇らしげに語るとか、頭の一部がゾンビ化でもしてるんじゃないかと疑いそうになるほど酷い話なのだが……

 

 さすがにそうでないことは、ダリオ氏の様子を見ていれば分かる。

 

 だから余計に彼がノスフェラトゥに心酔している意味が分からない。

 

「へ、へえぇ……それは最高に兄さんらしい出会い方ッスねぇ……ノンナさん、もし必要でしたらあたしからも兄さんぶん殴っておくッスよ?」

 

「だ、大丈夫なのじゃ気を遣わんでいい……!」

 

 一方リタはドン引きしつつも女性の視点からこの話を捉えているので、まあそういう感想になるだろうな、と言ったところだ。

 

 

 ただ、この話のどこに『命の恩人』要素があるのだろうか?

 

 どう考えてもダリオ氏がノスフェラトゥを間違ってナンパして酷い目にあった以外の意味を見出すことができないのだが……

 

 

 と考えて……俺は気づいた。

 

 彼が彼女を命の恩人と呼んで憚らない理由を。

 

 

 ネメシオ家が代々短命なのは、家系そのもの(・・・・)が問題じゃない。

 

 おそらくは――

 

 

「ノンナ、お前……ダリオさんに『眷属化』を掛けたときに、元々あった『短命の呪詛』に上書きしたな?」




 ※ダリオ氏とノンナ(ノスフェラトゥ)の出会いに関しては
  第63話『元不死魔族、蠢動する』をご参照ください。
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