パワハラギルマスをぶん殴ってブラック聖剣ギルドをクビになったので、辺境で聖剣工房を開くことにした   作:だいたいねむい

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第141話 『修羅場の差』

「連中のアジトが分かりました」

 

 別室で魔剣持ちたちの尋問を行っていたセバスが、居間に戻ってきた。

 

「ご苦労。ずいぶんとあっさり吐いたものだな」

 

 ダリオ氏が言う通り、セバス氏が魔剣持ちどもを別室に連行してから十数分程度しか経っていない。

 

 俺とリタはさすがに今ホテルに戻るのは危険だということで、事の次第がはっきりするまではこの邸宅に留まるよう、ダリオ氏から言われていたのだが……これは案外早く帰れそうではある。

 

 いずれにせよ賊の狙いがほぼ間違いなく魔族である以上、今後リタが危険に晒される可能性はかなり下がったと言えよう。

 

 とはいえ、セバス氏の表情はあまり明るくない。

 

「最後に倒した者以外は、ですがな。最初に襲ってきた三人は、魔剣を装備していたもののどうやらただの冒険者崩れのようで、食い詰めて組織に取り込まれた者たちのようです。それゆえアジトの場所以外の大した情報は持っておりませんでした。もっとも、そのアジトですら敵の本拠地と言えるかどうかは怪しいところですな」

 

「むう……所詮は下っ端か。敵の規模はどうだ? 何か分かったことはあるか?」

 

「敵の規模は……そうですな、それなりに大きく、周到であるとしか」

 

 ダリオ氏の問いに、セバス氏は渋面を作って言った。

 

 尋問の成果は芳しくなかったようだ。

 

「そうか。……それで、最後の者はまだ口を割らないのか?」

 

「……残念ながら」

 

 最後の者、というのはエキドナを襲撃したヤツか。

 

 アイツはただのチンピラというよりは、暗殺稼業専門のような雰囲気だった。

 

 だとすれば、そう簡単に口を割ることはないだろうな。

 

「ふむ……お前の尋問術をもってしても、か。なかなか骨のあるヤツのようだ」

 

「力及ばず、申し訳ございません」

 

「気にするな。そもそも商会の体面上、お前も手荒な真似はできんだろうからな。だが、そうなると……」

 

 と、ダリオ氏の視線がこちらへ向いた。

 

「ブラッド殿は、連中のことを知っていると言っていたな」

 

「ああ」

 

 まあ、来ると思った。

 

 ダリオ氏が俺たちの座るソファの対面にある椅子に腰かけると、少し身を乗り出しながら言った。

 

「何か、貴殿の持っている情報は何かないだろうか? もちろん、礼はする。商会の関係者には、先生以外にも魔族は多い。連中の狙いが魔族の魂だとすれば、それらの者たちも標的になる可能性があるということだ。俺は彼ら彼女らを護るためにも、やつらを叩き潰さねばならん」

 

「…………そうだな」

 

 別に隠すような話でもない。

 

 俺はダリオ氏に、王国での顛末を中心に魔剣持ちどもの情報を知りうる限り話してやった。

 

「むう……連中は全員、あのような魔剣を装備しているどころか、邪神にすら変化することすらできるのか……」

 

 以前倒した魔物使いの話をしたら、ダリオ氏の頬がちょっとだけ引きつった。

 

 確かに人間が邪神の力を得て襲ってくるとか言ったら、普通はビビるよな。

 

 まああの魔剣自体は未完成だったらしく最後は暴走して自滅していたが。

 

「先輩、仕事独立してからどんだけ修羅場くぐってきたんスか……」

 

 隣で聞いているリタがなぜか俺にドン引きしているが、俺はあいつらの所業にドン引きだ。

 

 普通、邪神の魂を込めた魔剣なんて危なっかしくて作ろうとも思わんだろ。

 

 つーかどこで邪神の魂なんぞ手に入れてきたんだ。

 

「だが……俺は負けん!」

 

 だが彼は健気にもグッと拳を握ると、ガタッと椅子から立ち上がる。

 

「と、とにかく! 今は捕らえた賊からできるだけ情報を得るのが先決だ。いかに相手が強敵でも、情報を得ることができれば突破口も見えてくるはずだ。セバス、尋問を続けてくれ」

 

「はっ!」

 

 あ、ちょっと今現実逃避したな。

 

 まあ、なるべく敵の情報を集めてから攻め込むのは間違っていないが。

 

 なにせ相手は魔剣持ちだからな。

 

 少なくとも奴らの持っている得物の傾向くらいは掴んでおきたい。

 

 

 と、その時だった。

 

 

「のう、ダリオや」

 

 それまで部屋の隅で黙ってこちらの様子を伺っていたノスフェラトゥが声を掛けてきた。

 

「何でしょう先生」

 

 ダリオ氏が即座に反応する。

 

(わらわ)にその尋問とやらを任せて欲しいのじゃが……ダメかの? きっと役に立てると思うのじゃが」

 

「それは構いませんが……相手の魔剣は没収しているとはいえ、それなりの実力者のようでした。危険ですぞ?」

 

「構わぬ。妾とて生半可に修羅場をくぐっておらんわ。あの程度の小童、即座に吐かせて見せようぞ」

 

 おお……これはまた大きく出たな。

 

「……分かりました。先生のお申し出とあれば、俺が拒否する道理もありません。是非ともよろしくお願いいたします。……セバス、いいな?」

 

「もちろんです」

 

「うむ。妾に任せておくがよい。……おぉ、そうじゃ。尋問に際し、もう一人ほど、同行させたい者がおるのじゃが」

 

「それは構いませんが……ローレッタはその手の訓練を受けておりませんぞ?」

 

「お主の婚約者ではない。妾が欲しているのは……あ奴じゃ。正確には、あ奴とあ奴の持つ聖剣じゃがの」

 

「……俺?」

 

 言って、ノスフェラトゥが指さしたのは……俺だった。

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