パワハラギルマスをぶん殴ってブラック聖剣ギルドをクビになったので、辺境で聖剣工房を開くことにした 作:だいたいねむい
「魔族どもに
セバスさん、ノスフェラトゥと一緒に別室に入り、例の魔剣持ちに噛ませていた
とたん、ヤツは頭を上げてそう怒鳴り声をあげた。
とはいえヤツは魔剣を取り上げられたうえ椅子に手足をきつく縛られているので身動きは取れない。
だが、こちらを睨みつける目はまだ死んでいなかった。
いや、もしかしたら死ぬ覚悟だからこその、憎悪と怒りで燃えたぎる瞳なのか。
まあ何となくどういう背景を持つ人物なのかは察せられるが、それでも身内に近しい者を殺そうとしたヤツだ。
同情するつもりはない。
「フン。お主が魔族を心底憎んでいることは分かったのじゃ。じゃが、
「魔族は皆死ね!」
呪詛を吐き、ノスフェラトゥを睨みつける魔剣持ち。
その目は血走り、今にも彼女を食い殺そうとしているかのようだった。
「……ダメじゃな。この者の魂は憎悪と憤怒で焼き焦がされ、まるで生きながら怨霊と化しておるようじゃ」
呆れた様子で頭を振るノスフェラトゥ。
「で、そんな生ける怨霊のコイツを、お前の尋問でいろいろ吐かせることはできるのか?」
問題はそこだ。
自信満々でやってきたのに「やっぱダメなのじゃ」では話にならない。
コイツが帰還しなければ組織が作戦失敗に気づくのも時間の問題だ。
その前に本拠地を叩くことができなければ意味がない。
「まあ、見ておれ。……とその前に、じゃが。お主の聖剣『セパ』とやらは、本当に呪詛を切断できるのじゃな? どんなものでもか?」
『失礼な! 私に切断できない呪詛などありませんよ』
と、ノスフェラトゥの言葉が煽りに聞こえたのか、いきなりセパが実体化して抗議の声を上げる。
「まあ、少なくともお前の使う状態異常ならば問題ないだろうな」
「ぐっ……少々鼻につく返答じゃが……まあ、よい」
俺とセパの言葉にちょっぴりプライドが傷ついたのか、ノスフェラトゥの頬がピクリと引きつる。
だが、ヤツもここで俺たちに食ってかかるほどアホではなかったようだ。
大きく深呼吸をして気分を落ち着かせ、フンと鼻を鳴らしただけだった。
「あの、ノンナ様、ブラッド殿……これからお二方はこの者にどのようなことを行うのですか?」
セバスが聞いてくる。
そういえば、彼はノスフェラトゥの本当の恐ろしさを知らないか。
ならば一応説明しておく必要があるな。
「本来、コイツは『状態異常』に関する魔術や呪詛を得意とする魔族だ。今から魔剣持ちにやろうとしていることは、毒などの状態異常や強力な呪詛を付与して、その苦痛でもって口を割らせるというやり方だな。そして、俺はその呪詛を一瞬で解く方法を持っている。ここまで言えば、賢明なアンタなら察してくれると思うが」
「むう、それは……なんというか……我々ではとても思いつかない恐ろしい方法ですな」
セバスがすべてを察したようで、ドン引きした様子でノスフェラトゥを見ている。
まあ当然と言えば当然だ。
呪詛は、普通は寺院などで高位の神官による解呪魔術を施してもらわなければ治すことができない。
それに呪詛を付与されたが最期、肉体や精神を不可逆的に蝕まれ、仮に呪詛から逃れても廃人と化してしまうことだってある。
……それらの典型例は、『腐敗の呪詛』だな。
まあ、セパの『切断』はそれすら無効化してしまうのだが。
「ふむ、能書きはいいじゃろう。ククク……セバスよ、妾の正体を知った以上はしっかりとその恐ろしさをその目に刻むが良いぞ」
「お前、そのセリフは敵に向けて言うヤツだぞ……」
「フン! 毒でも呪詛でも掛けるがいい。その程度で俺が口を割るとでも思っているのか? 見くびるな!」
「安心するのじゃ、名もなき賊よ。尋問が終わったとき、
ニイィ……と邪悪な笑みを浮かべるノスフェラトゥ。
あー、思い出した。
かつて敵同士だったときのコイツ、だいたいこういう笑みを浮かべてたわ。
「……お前、やっぱ魔族の中の魔族だよ」
まあ、出てくる度にボコボコにしたけどな。
それはさておき。
というわけで、ノスフェラトゥの尋問……もとい拷問が始まった。
彼女が使ったのは『腐れの呪詛』『反転の呪詛』『錯乱の呪詛』あたりだろうか。
内容はあまりに凄惨を極めたものだったため割愛する。
結論から言えば……ノスフェラトゥが二、三の呪詛を試した辺りで魔剣持ちはあっさりと心が折れ、持っている情報をすべて吐くことになり、セバスは真っ青な顔で途中退出することになった。
※『腐れの呪詛』
付与された箇所から肉体が腐ってゆく。
最終的にはゾンビ化する。
『反転の呪詛』
付与された箇所から肉体が徐々に裏返ってゆく。
苦痛で発狂し、最終的には死ぬ
『錯乱の呪詛』
混乱して異常な行動や言動になる。
錯乱時の記憶は失わないため、本領発揮は『我に返った後』。
繰り返すたびに自我が崩壊していき、最終的に廃人と化す。