パワハラギルマスをぶん殴ってブラック聖剣ギルドをクビになったので、辺境で聖剣工房を開くことにした   作:だいたいねむい

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第144話 『等身大のセパ』

 ――ダリオ氏らが魔剣持ちのアジトを壊滅させたその翌日。

 

 俺とカミラは、セパの自動人形(オートマータ)化を進めるべく彼女の部屋を工房代わりにして早朝から施術を進めていた。

 

 もっとも、自動人形本体はカミラが自分の工房でしっかり仕上げてしまっているのでほぼ完成品である。

 

 俺たちがこのケルツでやったことと言えば、先日狩ってきたゲイザーの魔術回路を自動人形に転写し、最終調整を施したくらいである。

 

 まあその最終調整で半日ほどかかったのだが。

 

 そんなわけで、今はもう夕方である。

 

 

「よし、どうだいセパ君。うまく世界を認識することができるかな?」

 

『はい、五感はすべて正常のようです。……カミラ様は意外とちっちゃいのですね。えぇと、でも……とっても可愛らしいですよ?』

 

「ほっといてくれたまえ! ……だが喜ぶがいい、セパ君。そう認識できるということはつまり、施術は成功ということだ」

 

 宿のベッドから身を起こしカミラの側に立ったセパは、彼女の背丈とほとんど変わらなかった。

 

 彼女が造りあげたセパの自動人形は極めて精巧だ。

 

 手足の関節部分でそうだと判別できるが、顔の造りや浮かぶ表情は普段のセパと全く変わらない。

 

 ちなみにセパの本体である聖剣は、自動人形の腹部に格納できるようになっており、自由に出し入れ可能だ。

 

 もちろん開閉する蓋は閉じてしまえば継ぎ目が全く分からない。

 

 さすがはカミラ、『傀儡の魔女』の異名を取るだけある。

 

 完璧な仕事だ。

 

 ただ、人造精霊姿のセパの衣装をそのまんま再現するのはやめておいた方がいいと思う。

 

『わーい! セパ、あーしと同じ大きさじゃーん!』

 

『へぶっ!? ちょっ、レインはくっつき過ぎですよ!』

 

 と、そこに目をギラつかせたレインが突撃。

 

 彼女が繰り出した高速タックルを喰らい、再びセパはベッドの上に転がることになった。

 

「ようセパ。調子はどうだ?」

 

 カミラとの掛け合いで十分わかったので言うまでもなさそうだが、一応声をかけておく。

 

『お……驚くほど違和感がないです、が……ご主人、ちょっとこの大型犬を引きはがしてもらえませんか? 暑苦しいです』

 

「……ムリダナ」

 

『ご、ご無体なっ!』

 

『あぁ~セパ、ちっちゃい姿もいいけど、あーしらと同じ大きさでもめっちゃ可愛い~! あとで一緒に服買いにいこーよ! 絶対に似合うやついっぱいあるよー!』

 

 いくらセパが虚無な表情を浮かべて助けを求めて来ようと、恍惚の表情で彼女を抱きしめ頬ずりしているレインを引きはがすのは無理だ。

 

 レインはなんだかんだでパワー系だからな。

 

 もちろん本気を出せばどうにかなるかもしれないが、それでは今度は辛抱たまらんレインの矛先が俺に向かうことになる。

 

 そうなればこの場は修羅場だ。

 

 と思ったら。

 

『くっ……ふふっ、隙ありっ……!』

 

「ぬわっ!?」

 

 ベッドから白い腕がにゅっと伸びてきて、俺の腕を掴んだ。

 

 クソ、凄い力だ!

 

 油断していた俺はベッドの上に引っ張り込まれてしまう。

 

『うふふ……ご主人、逃がしませんよ……!』

 

 俺の上にまたがり『むふー』と満面の笑みを浮かべているのは、レインに絡みつかれたままのセパだ。

 

 というかこいつさっきメチャクチャ腕が伸びてなかったか?

 

 変な機能付けるなよカミラ!

 

 だが気づいたときには手遅れだ。

 

『くふふ……くふふふっ……! これまではレインだけズルいと思いつつ指を咥えて見ていただけですが、今日からは違います……! 今までの分まで存分に甘えさせてもらいますよ……!!』

 

「ああっ!? セパ君、君までも!?!?」

 

 言うまでもないが、修羅場になった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 その後しばらくして。

 

「……それにしてもご主人はなんだかんだで大きいですね。もちろん背丈のことですよ?』

 

 自動人形のくせに肌がツヤツヤになったセパが部屋を見渡して言った。

 

 なんでもいいが、誤解を招く言動はやめてほしい。

 

「……この中ならばそうだろうな」

 

 今この場にいるのは、俺とカミラ、セパ、レイン、それにリタとエキドナだ。

 

 ケルツ組はセパの施術が終了したあと(それと修羅場が収まったあと)、後学のためにと自動人形となった彼女の見学を申し出たのでカミラの部屋に集まってもらっている。

 

 ちなみに背丈の話でいえば、身体の大きさという意味ではエキドナが一番だ。

 

 何しろ蛇魔族だ。体長は俺の三倍くらいある。

 

 もっとも彼女の通常時の背丈は俺の頭一つくらい下なので、そういう意味では俺が一番高い。

 

 まあ、背丈ならばリタの兄貴であるダリオ氏が一番高いのだが……今この場にはいないからな。

 

 彼とセバス、そしてローレッタは今頃、別邸で魔剣持ち討伐成功の祝杯をあげていることだろう。

 

「それにしても、これほど精緻な自動人形は見たことがないッス。まさかこんな凄腕の魔道具職人が王国にいたなんて……ていうか聖剣の人造精霊で自動人形を動かすなんて聞いたことがないッスよ!?」

 

「素材自体のほとんどは私たちが入手できるものばかりだというのに……カミラさん、あとで各部の魔術回路の詳細を教えてくれませんか!? できれば講義もお願いします……!」

 

 二人にとっては、セパの元の姿を知っているだけに彼女の自動人形化は相当な衝撃だったようだ。

 

「ふふん。どうしようかね、ブラッド?」

 

 そこでなぜドヤ顔で俺を見るんだ。

 

 お前が凄いのは俺が一番分かってるっての。

 

 ただ……そもそも一連のセパの人間大化計画は、カミラの魔道具職人としてのノウハウだけではなく彼女が精霊術師であることも大きなウェイトを占めている。

 

 つまり、精霊魔術への深い理解なくして今回の成功はあり得ない。

 

 それにセパという強力な人造精霊の存在が不可欠でもある。

 

 おそらく魔物や死霊などでは同じことをやっても失敗に終わるだろう。

 

 

 ……とそこまで考えて、やめた。

 

 

 結局職人や魔術師は、未知の魔術が目の前にあればとりあえず貪ろうとする生き物だ。

 

 実利があるかどうかなんて、きっと二人には関係ない。

 

 なので、俺の回答はこうだ。

 

「いいんじゃないか? つーか俺も参加するぜ。せっかくだから精霊魔術の精髄をご教授願おうか」

 

「き、君は別に後でもいいだろう! というか、その……二人でゆっくり……」

 

「お、おう」

 

 とはいえ、最近はいろいろとすれ違うことが多かったからな。

 

 カミラと二人っきりの時間を作るのは(やぶさ)かではないが……

 

 顔を赤らめながら、公衆の面前でそういうことを口走るのはやめて欲しい。

 

「なっ、ななっ……!?」

 

「あらあらまあまあ……そういうことでしたら、また後日でも構いませんよ?」

 

「いや大丈夫だから!」

 

 ちなみにその後、調子に乗ったカミラの講義が翌日の明け方まで続くことになるとは……この場の誰もが予想していなかった(セパとレインははしゃぎ疲れて早々に寝入ってしまった)。

 

 

 

 

 ――ダリオ氏の別邸から慌ててやってきたセバス氏から、ファビオ氏が危篤状態に陥ったとの知らせがもたらされたのは……そんな徹夜明けの朝だった。




 ※セパとレインにもみくちゃにされてしまったブラッドですが、言うまでもありませんが極めて健全なもみくちゃでした。ご了承ください。
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