パワハラギルマスをぶん殴ってブラック聖剣ギルドをクビになったので、辺境で聖剣工房を開くことにした 作:だいたいねむい
「ブラッド様。どうか……どうかお力添えを頂きたく」
徹夜明けの俺たちのもとにやってきたセバス氏は深く頭を下げ、震える声で絞り出すようにそう言った。
話を聞いてみれば、昨夜からリタたちの父親であるファビオ氏の容態が悪化し、危篤状態に陥っているという。
「とうとう、ッスか……」
俺と一緒に話を聞いていたリタは目を伏せ、ギュッと自分の腕を掴みながら彼の話を聞いていた。
元々病床に臥せっていたから、ある程度覚悟はしていたのだろう。
だが、いざその時が来れば冷静でいられないのは当然のことだ。
「リタ……」
「リタ君、なんと言葉を掛ければよいか……」
俺たちと一緒に話を聞いていたエキドナとカミラは彼女に痛ましそうな視線を送っている。
セバス氏はそんな様子を見渡してから一瞬目を伏せ、それから俺に向き直った。
「昨日の尋問、お見事でした。この一件により、ダリオ様が次期当主となることに異を唱える者は存在しなくなったはずです。しかし……今がその時かと言われれば、それは否です」
「……ファビオさんの件は気の毒だと思う。だが俺はただの聖剣錬成師であって、治癒魔術師じゃない。俺では力になれないと思うが」
そうセバス氏に言ったものの、おおよその察しは付いている。
「ブラッド様の聖剣……セパ様は呪詛を無効化する力があると仰っておりましたな」
「……ああ」
まあ、そういうことだ。
「ファビオ様の病のことはすでにお嬢様から聞き及んでおりましょう。それが呪詛であることはだいぶ前から分かっていたのです」
「……『短命の呪詛』か」
「はい。その呪詛を、ブラッド様の聖剣で断ち切って欲しいのです」
「…………」
まあ、ダリオ氏の呪詛の話を知ってから、『もしかして』と思ってはいたが……やはりそうか。
呪詛は一定の条件を満たせば他者へ伝染する。
代表例が『腐れの呪詛』だ。
あれは呪詛によりゾンビと化した者に噛まれることにより伝染する。
『短命の呪詛』については伝染する条件が不明だが、リタの話では彼女とダリオ氏を除く、一族のほとんどの者が若くして亡くなっていると聞いた。
最初はそういう病気かと思ったのだが、それならばフォビオ氏と血のつながりのないリタたちの母親まで若くして亡くなる意味が分からない。
おそらくは彼の側にいることと、何らかの関係性があることを条件として伝染するタイプの呪詛なのだろう。
だからといって、ファビオ氏に長く仕えていると思しきセバス氏や側近たちが死んでいないのだから、おそらく彼の身内であることが条件の一つだとは思うのだが。
ダリオ氏はともかくとして、リタが元気なのは、十代半ばで国を飛び出したからだろうか?
いずれにせよ、胸クソの悪い呪詛である。
もちろん俺としてはファビオ氏を助けることについては
なにしろ可愛い後輩の親父殿だからな。
「だが、いいのか? どこの馬の骨とも知れない男に、大商会の当主の命を預けてしまうことになる。寺院の神官を呼び寄せた方がマシだと思うが?」
「貴方が馬の骨? 今さら何を仰るのですか」
セバス氏は心外だとばかりに鼻を鳴らす。
「それに、神官様についてはすでに何人もお呼びして解呪を試みております。……しかしながら、どの神官様もファビオ様に掛けられた呪詛を
「……そうか」
強力な呪詛の中には、本人しか解呪できないとされるものが存在する。
そいつが上級魔族だとすれば、少なくとも王都にいる高位の神官でなければ手も足も出ないだろうな。
だが、ノスフェラトゥが『眷属化』により上書きすることにより一時的にでも無効化することに成功している。
その程度の呪詛が、セパで切断できないわけがない。
「分かった。やれるだけのことはやってみよう」
「おぉ……! この恩、必ずや返して見せます」
俺が頷いたの見て、セバス氏の顔が明るくなった。
「ただし、先に言っておく。聖剣セパで呪詛を断ち切るさい、延命の魔術などを施している場合はそれも一緒に断ち切ってしまうことになる。だから『実は普通の病でした』という場合は死期を早めることになる。その場合、責任は負えないがいいか」
仮に処置が間違っており俺が自分の命をもって償ったとしても、それでファビオ氏が生き返ることはない、という意味だ。
「……分かりました。何が起きてもブラッド様の責を問うことはないと誓いましょう」
セバスはしばし逡巡したが、すぐに首を縦に振った。
どうやら正確に俺の言わんとしていることを理解したようだった。
「では、ファビオ様の元にお連れいたします」
「分かった。すぐに準備をする」