パワハラギルマスをぶん殴ってブラック聖剣ギルドをクビになったので、辺境で聖剣工房を開くことにした   作:だいたいねむい

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第173話 『ルーキーの引率①』

「「「ブラッドさん、カミラさん、今日はよろしくお願いします!」」」

 

「おう、よろしくな」

 

「うむ、元気でいい挨拶だね」

 

 

 翌々日の早朝。

 

 ダンジョン『北方山脈第三工廠遺跡』の入口前で、三人の少年少女が俺とカミラに向かって深々と頭を下げている。

 

 一人はもちろんセオ君、あとの二人は、ラルフ君とミーナちゃんという。

 

 セオ君は剣士、ラルフ君は斥候職、ミーナちゃんは攻撃系統中心の魔術師で、三人とも幼馴染の十四歳だそうだ。

 

 そしてもちろん、冒険者パーティーを組む仲間たちである。

 

 そして、俺とカミラは……彼らの引率だ。

 

 

 ――聖剣の素材をドロップする『機甲竜(アイアンスケイルドラゴン)』は、オルディスの北にそびえる山脈に分け入った先、『北方山脈第三工廠遺跡』の下層に出現する強力な魔物である。

 

 もっともコイツは竜種のなかでは中堅以上の強さを誇るものの、グリフォンの『上位個体』以上かと言われれば微妙なところである。

 

 おそらくセオ君らでもどうにか倒せなくはない……程度の相手だ。

 

 だからこそ、リリア嬢は素材を自前で調達してくるように彼に伝えたわけだが……

 

 この依頼を彼らが受けるには、致命的な問題があった。

 

 ギルドのルール上、このダンジョンに立ち入ることができるのは等級B以上の冒険者を擁するパーティーだけとなっているのだ。

 

 理由はもちろん、ダンジョンの難易度が高いから。

 

 ここには、機甲竜のみならず、アイアンゴーレムや目から強力な熱線(レーザー)を放つ飛行型の魔物など、対処を誤ると簡単に死傷者が出るような強力な魔物が数多く出現するうえ、階層構造が複雑で迷いやすい。

 

 つまり、最近ようやくD級に上がったばかりの彼らだけでは、とても太刀打ちできるダンジョンではないのである。

 

 ちなみにこのダンジョン自体は冒険者の間では割と知られた難所だったため、セオ君がその名を聞いた瞬間、絶望のあまり白目を剥き崩れ落ちてしまうという一幕があったが……それはさておき。

 

 彼にとって幸運だったのは、その場に、無駄に等級Bなんぞを保有している冒険者がいたことだ。

 

 つまりは俺である。

 

 そして俺としても、『機甲竜の逆鱗』をゲットできるのならばしておきたい素材だった。

 

 こいつは金属に加えることにより強度を飛躍的に高める効果を持つが、強力な魔物からドロップする素材のため、なかなか素材屋に出回ることがないからな。

 

 それに最近は想定していたよりも冒険に出ることが多く、セパはともかくとしてレインの強化の必要性を感じていたのもある。

 

 まあ、渡りに船、というやつである。

 

 ……なんてことを、ダンジョン探索の準備をしつつ考えていたら。

 

 

「クク……初々しいねぇ。初めて君に出会った頃を思い出すよ。あのころの君は彼らよりずっとヤンチャで――」

 

 なんかカミラがニヨニヨした表情で俺とセオ君たちを交互に眺めながら、小声でそんなことを言い出した。

 

 十代前半の俺……思い出すだけで心にダメージが入るんだが?

 

「その話はやめようか」

 

「なぜだい? 彼らのことを理解するために、十代だった君の過去を振り返ることは必要なプロセスだろう」

 

「要らんわ! つーかそれ、絶対あと付けの理由だよな?」

 

 どう考えても手持ちぶさたで俺のこと弄りたかっただけだろ。

 

 

 ……そもそも、なぜここにカミラがいるかというと。

 

 冒険者ギルドで話がまとまったあと、所用でカミラの店に立ち寄ったさいに話の流れで数日家を空けると言ったら『私も同行しようじゃないか』と引き下がらなかったのでこうなった。

 

 なぜそこまで強引だったのかが分からないほど俺も鈍感ではないが……そもそもアイツ(リリア嬢)とは何もないんだがな……

 

 まあ、ルーキー三人をフォローするのに俺一人だけでは荷が重いので、彼女が助っ人に入ってくれるのは素直にありがたい。

 

 もちろんリリア嬢にも話を通したうえでの同行なので、そこも問題ない。

 

 ただまあ……こういう絡み方をしてくるのは想定しておくべきだった。

 

「ふむ……冗談はそれはさておき、なかなかワクワクする状況じゃないか。こうやって駆け出し冒険者たちと一緒にダンジョン攻略をするなんて、なかなか体験できるものじゃないだろう?」

 

「…………」

 

 やっぱ俺のことを弄りたかっただけじゃねーか。

 

 知ってたけどな!

 

 とはいえ、話題が逸れるならば全力で逸らすだけだ。

 

「まあ、確かにそうかもな。そもそも実力差のある冒険者間でのパーティー編成は、基本的には推奨されないからな。最近じゃギルドでも、パーティーを組んでも等級が一つ上か下の奴までにするよう指導しているらしいぞ」

 

「ほう、そうなのかい?」

 

「実力差が大きくなると、パーティーの統率が取りづらくなるからな。もっとも、等級ってのは実績ベースであって必ずしも冒険者の実力そのものを表しているわけでもない。たとえばセオ君らは、先日言った通りグリフォンを倒す程度には――」

 

「あの!」

 

 と、小声で会話する俺たちに割って入る声があった。

 

 三人組の紅一点、ミーナちゃんである。

 

 彼女は胸元でギュッと手を握りしめ、頬を赤らめつつ、俺たちに向かってこう言った。

 

「お、お二人は……その……とても仲が良さそうに見えますが、お、お付き合いとかされてるんですかっ!」

 

「ふふ……いい質問だね」

 

 とたんにカミラがドヤ顔になり、ファサッ……と赤髪をかき上げた。

 

 なんでそんなもったいぶった態度で大人の女を演出してるんだコイツは。

 

 とはいえ、取り立てて隠すほどのことでもない。

 

「そうだぞ。まあ、見ての通りだ」

 

「やっぱり! きゃー!」

 

 俺が答えたとたん、黄色い声を上げるミーナちゃん。

 

 答えを得て嬉しそうにぴょんぴょん跳ねているあたり、さすがは十四歳、恋する乙女真っ盛りといったご様子である。

 

 一方カミラは、なぜか真っ赤になって俺に食ってかかってきた。

 

「なっ!? ブラッド、君というヤツは……情緒の欠片もない……っ!!」

 

「ええ……」

 

 いや、俺とカミラの関係について保留したままダンジョン探索なんぞできるわけがねーだろ。

 

 ミーナちゃん、魔術師だぞ。

 

 ただでさえ魔術ってのはそのときの精神力に効果が大きく左右されるというのに、モヤモヤした気持ちのまま魔術を使われたらかなわん。

 

 機甲竜との戦闘時に、援護の攻撃魔術が不発に終わったりしたら目も当てられないんだが?

 

 ……解せぬ。

 

「………!」

 

「…………っ!」

 

 あと男どもは恨めしそうな目で俺を睨むんじゃない。

 

 つーか君らにはちゃんと可愛らしい幼馴染がいるんだから頑張れ。

 

『はあ……ご主人、さすがにそこは空気読んであげた方がいいですよ?』

 

『マスター、ときどき空気読めないときあるよねー……』

 

 お前らだけには言われたくないんだが?

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