パワハラギルマスをぶん殴ってブラック聖剣ギルドをクビになったので、辺境で聖剣工房を開くことにした   作:だいたいねむい

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第199話 『王都からの手紙』

 §   §   §

 

 親愛なるブラッド・オスロー殿

 

 

 やあ兄さま、元気かい?

 

 うん、分かっているとも。

 先日に続いてまた手紙……? って、そう思っているんじゃないかな。

 

 まあそうだよね。

 僕には分かるんだ。

 兄さまのことは何でも知っているからね。

 

 そう、あれは7年前と同じ――

 

(俺のプライバシーに関わることなので中略)

 

 ――冗談はさておき、さっさと本題に入ろうか。

 

 実は、今回は急を要する案件でね。

 この手紙は知り合いの飛竜使いに頼んで、空路で届けてもらった。

 

 だからこの手紙をしたためたのは、おそらく兄さまが封を切る数日前ってことになると思うんだけど……

 

 端的に言えば、僕の友人に聖剣を一振り錬成してほしい。

 

 どんな聖剣かって?

 それは彼女に会って、直接聞いてほしい。

 僕が彼女から聞き取ってここでいろいろ書き連ねたとしても……多分、半分も伝わらないと思うから。

 

 それに、僕としては兄さまに彼女を紹介したいと思っているんだ。

 きっと驚くと思うよ!

 

 けれども、本当に申し訳ないんだけども……僕も友人も諸事情で王都から離れることができなくてさ。

 

 というわけで、兄さま。

 王都にある僕の屋敷に来てもらえないだろうか?

 

 もちろん、滞在の間はクロディス家の名にかけて兄さまに不自由な思いをさせるつもりはないし、旅費や仕事に必要な素材類は言ってくれれば僕が手配するから心配しないで。

 それに、仕事に必要であれば、兄さまの知り合いをオルディスから連れてきてもらっても構わない。

 

 それと……この手紙を見たら、できればすぐに王都まで来てもらいたいと思っている。

 

 ああ、大丈夫。

 ちょっとしたコネで、魔術師ギルドが管理している転移魔法陣を使わせてもらえることになったんだ。

 だからオルディスから王都までは、文字通り『あっ』という間に来ることができるよ!

 

 もちろん魔術師ギルドのオルディス支部にも伝えておくから、準備ができたらギルドマスターのアルフレッド氏を訪ねてほしい。

 僕の名を出せば、きっとすぐに対応してくれるはずさ。

 

 それじゃ、一日も早く兄さまに会えることを祈っているよ。

 

 

 アリス・フォン・クロディス

 

 

 §   §   §

 

 

「…………王都に招待、だと?」

 

 アリスは貴族とは思えない自由人なのは良く知るところだが……これまた、なかなかの無茶振りだった。

 

 オルディスから王都までは、馬車で一か月は掛かる。

 

 すぐに来いと言われても、当然だがそう簡単にはいかないのだ。

 

 まあ、今回は魔術師ギルドに掛け合っているみたいだが……というか、アリスはアルフレッド氏ともコネがあるのか。

 

 もしかしてあの頭……彼女みたいな連中に無茶振りされまくった心労の結果なのだろうか。

 

 だとしたらご愁傷様だ。

 

「……手紙の日付は五日前か」

 

 いくら空路とはいえ、王都からここまで一日や二日で飛んでくるの不可能だ。

 

 手紙はおそらく昨日とか、今朝早くに到着したものと思われる。

 

 時間的にはまだ『すぐ』の範疇だな。

 

「それにしても、たった一通の手紙を出すのに、飛竜のチャーターか……」

 

 手紙を眺めつつ、思わず独り()ちた。

 

 飛竜は、竜種の中では下等種に分類されるが、魔物としては強力な部類に入る。

 

 当然、飛竜を使役する魔物使いはそれなりの腕利きだ。

 

 というか、王都で飛竜を扱えるのは『王国竜騎士団』だけだったように記憶しているが……

 

 まさか軍竜を私用で使っているわけじゃないだろうな!?

 

 いや、さすがに騎士団払い下げの老竜を飼っている魔物使いとかに頼んだのだろうが……どれだけ大金を積めばそんなことが可能なのか見当もつかない。

 

 とはいえ、彼女もそうまでして俺に連絡を取らなければならない切羽詰まった事情があるということだ。

 

 ならば、兄貴分としては駆けつけなければならないだろう。

 

 それにちょうど仕事に空きも出たことだし。

 

 それに、である。

 

「悪くないタイミングだ」

 

 そう独り()ちた。

 

 ケット・シーの隠し財産を探すためにも、王都へはなるべく早いタイミングで向かおうと思っていたのだ。

 

 渡りに船とはこのことである。

 

『ドウシタ、ニンゲン。嬉シソウナ顔ダナ』

 

「いや、存外早くチャンスが巡ってきたと思ってな」

 

 王都に向かうには、馬車で一か月はかかる。

 

 そのための、諸々の準備や王都での滞在費も必要だ。

 

 それらのほとんどすべてをすっ飛ばして、王都へ向かうことができる。

 

 もちろん、求められた仕事はしっかりこなすつもりだが……その合間に宝探しをするくらいは許されるだろう。

 

「……そうなると、腕のいい精霊術師も必要だな」

 

 王都に知り合いの精霊術師はいなくもないが、こちら側(オルディス)に移住してからは連絡を取っていない。

 

 ザルツのこともあるし、そもそもの付き合いが切れてしまっている可能性もある。

 

 ……夕食の際に、カミラにも声をかけてみるか。

 

 最高の聖剣を錬成するためには、彼女の力が必要だからな。

 

 アリスも、それを想定しているからこそ、『誰かを連れてきていい』と言っているはずだ。

 

 とはいえ、さすがにアイツも店があるしマリアやステラもいる。

 

 乗ってくるかは分からないが……出張期間によっては、仕事を手伝ってくれる可能性はある。

 

 とにかく、ワクワクする仕事になりそうだ。




【ちょい補足】
 転移魔法陣は魔術師ギルドの秘匿技術なので、一般の物流・郵送のために転移魔法陣を開放していません。
 加えてアリスは、手紙に施された魔術式封蝋が転移魔法陣の魔力により綻びたり変質して開封できなくなることを恐れました。それゆえの飛竜チャーター便です。
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