パワハラギルマスをぶん殴ってブラック聖剣ギルドをクビになったので、辺境で聖剣工房を開くことにした   作:だいたいねむい

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第39話 『またやっちまった……』

「またやっちまった…………」

 

 目覚めた俺は天を仰いだ。

 

 すぐ横には、幸せそうな表情で眠るカミラの顔がある。

 

 もちろんお互い裸である。

 

 うん。

 

 これはもう言い訳できそうにない。

 

 まあ、オルディスに来てからというものの、彼女が俺のことを憎からず想っていたことくらい……とっくに気づいている。

 

 さすがに俺もそれくらいの分別はある。

 

 そして……俺だって。

 

 もとより十年どころじゃない付き合いのある関係だ。

 

 仲だって悪くない。

 

 むしろ今までこうならなかったのが不思議なくらいだった。

 

 問題はきっかけがいつになるか、どういう状況でそうなるか、それだけだった、ということだ。

 

 で、おれは彼女に応えた。それだけだ。

 

 行方不明になったファルを探しにいくという真面目な状況でこうなることの是非はともかくとして、今後は彼女との関係はこれまでとは違うものになるだろう。

 

「……ん、おはようブラッド」

 

 そうこうしているとカミラが目覚めた。

 

「ああ、おはよう」

 

 こうしてみると、カミラはたしかに美少女である。

 

 赤髪に彩られた整った顔立ち。

 

 幸せそうに俺を見つめる、翡翠のような瞳。

 

 薄いが形の良い唇は幸せそうな笑みを湛えている。

 

 そしてどんどんと視線を下げていけば、女性らしく華奢な肩が露わになっているのが分かる。

 

 さらにその下には、形の良い二つの双丘。

 

 そんな様子を眺めていると、だんだん昨日の出来事が思い出されてきて、顔が熱くなってくるのが分かった。

 

 ……このままだと、またいろいろと元気になってしまいそうである。

 

 俺は慌ててベッドから起きると、そそくさと旅の支度を始めた。

 

「カミラ、そろそろ支度しろ。国境を越えてからもかなり歩く。野宿もするからな。しっかり準備を整えて置く必要がある」

 

「ふふ……そうだな。私もそろそろ支度をするとしよう。うーん……そのまえに、湯浴みだな。君も一緒にどうだ? この宿には、温泉が併設されていただろう。しかも混浴だ」

 

 カミラが上半身を起こすと、大きく伸びをする。

 

 滑らかな白い肌のすべてが露わになる。

 

「…………っ!?」

 

 俺は慌てて目をそらした。

 

 視界の端で、カミラがいたずらっぽく笑みを浮かべているのが見えた。

 

 ……アイツ、絶対分かってやってるだろ。

 

「……俺は後で入るよ」

 

 さすがにこれ以上彼女のおふざけに付き合っていると、旅に支障が出そうである。

 

 俺は黙々と旅の支度を進めた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「ここがその遺跡か」

 

「……はい、ぱぱ」

 

 聖剣『不死殺し(モタ)』が陰気な顔で頷いた。

 

 正直彼女に「ぱぱ」呼ばわりされるような歳ではないのだが……いちいち指摘するようなことはない。

 

 この明後日の方向に発揮される個性の強さこそが、能力の高さの源泉でもあるからだ。

 

 どのみち変えられるとは思っていない。

 

 若干カミラの視線が痛い気がするが、お前が創造した『人造精霊』だということだけは分かってほしい。

 

 目の前には、ほとんど緑に埋もれかけた寺院風の遺跡がそびえ立っている。

 

 年代は、おそらくオルディス周辺に存在する古代遺跡と同時代だろう。

 

 ルセラからはモタの案内が必要だった。

 

 彼女について徒歩で国境をこえ、山野を歩き、一泊の野宿を経て、たどり着いたのがここである。

 

「ずいぶんと荒れているね」

 

 カミラがあたりを見渡して呟く。

 

 寺院の扉は半壊しており、誰でも内部に侵入できる状態だ。

 

 というか、そもそも入口、というものが存在しない。

 

 ほとんど建物は倒壊しており、瓦礫の山という方が正確な表現だろう。

 

 天井は完全に崩落しており、壁もほとんど残っていない。

 

 唯一立っている石柱と、そこにへばりつくように残った壁面の彫刻から、ここがかつて寺院だったことを控えめに主張しているだけだ。

 

 この遺跡の地下に、リグリアへの転移魔法陣があるという。

 

 だが……

 

 内部に足を踏み入れてみれば、石床は荒れ放題、隙間という隙間から草が伸び放題。

 

 少し探してみたものの、地下に入れるような場所は見当たらない。

 

「モタ、お前を疑うわけじゃないが……本当にここなのか?」

 

「はい、ぱぱ。あ……ここが入口です」

 

 モタは自分の聖剣を胸に抱きながら、控えめな仕草で床の一角を指さした。

 

 そこには何もない。ただ、石床があるだけだ。

 

「何もないんだが……いや、待てよ」

 

 俺は違和感に気づき、彼女が指さした場所に屈みこんだ。

 

「……最近、ここの石床がずらされた痕跡があるな」

 

「なるほど。ここから地下に入るというわけだな。ブラッド、少しだけどいてくれないか」

 

「了解」

 

 彼女の意図を察し、位置を譲る。

 

「カミラ。この石板、たぶんかなり重いぞ」

 

「分かっているとも。こんな時の精霊魔術だ。君は黙って見ているといい。――『還流する精霊よ、我に力を』」

 

 カミラが魔術を唱える。

 

 彼女のローブの下が光を放ち始める。

 

 例の戦闘服を介して、魔力が増幅されているのだ。

 

 彼女の使う精霊魔術は込める魔力量や詠唱文言の量などがほかの魔術にくらべかなり多く、発動がどうしても遅くなる。

 

 そのハンデを埋めるのが、彼女の装備している戦闘服だ。

 

 たしか、どの魔術にも共通するような前置き的呪文を記述してあったり、魔力量を増幅するような処理を施しているんだっけか。

 

 見た目がエロすぎるのを除けば、かなり優秀である。

 

 まあ、今はローブの下に隠れているから問題ないが。

 

「――いでよ、《土塊(つちくれ)》」

 

 カミラの魔術が発動。

 

 次の瞬間、ボコッ、と石床が盛り上がった。

 

 床を構成する大きな石板が土塊と一緒にせり上がってゆき……黒々とした地下空間を暴き出した。

 

「間違いない、ここだ」

 

 石板の下には、地下へと続く階段があった。

 

「よし。ここからが本番だ。レイン、セパ」

 

「あいあーい!」

 

「ずいぶんとお久しぶりですね、ご主人?」

 

 魔導鞄(マジック・バッグ)から取り出すと同時に、レインとセパが実体化する。

 

 セパは新居からここまで来る間ずっと魔導鞄にしまっていたせいか、少々おかんむりである。

 

 まあ、うるさいから仕方がない。

 

 恨むのならば、自分のお喋りクソ聖剣っぷりを恨むがいい。

 

「同じ地下だというのに、なんだかぞっとしない気分になるね」

 

 カミラがそんなことを呟いている。

 

「まあ、工房とは違って何がいるか分からないからな」

 

 だが、進むしかない。

 

 俺は注意深く内部へと足を踏み入れた。

 

 

 

 目的の転移魔法陣は、すぐに見つかった。

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