パワハラギルマスをぶん殴ってブラック聖剣ギルドをクビになったので、辺境で聖剣工房を開くことにした   作:だいたいねむい

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第77話 『三者面談』

「さきほどは店を助けてくれたこと、二人には感謝する。ありがとう」

 

 駆けつけた衛兵がチンピラと用心棒の魔剣使いをしょっ引いていったあと、俺たちは近くのレストランへと移動した。

 

 店はまだ営業中だし、立ち話は通行人の邪魔になるから、という配慮だ。

 

 カミラとアリスは初対面だ。

 

 皆でテーブルに就いたタイミングで簡単な紹介を俺から済ませる。

 

 その後、カミラは俺たちに頭を下げたのだった。

 

「最近、さきほどの『エンシャント・スピリット』をはじめ取引先のいくつかに魔道具の納品がしやすいよう、実験的に短距離転移魔法陣を置いているのだが……今日は少々仕事が立て込んでいてね。すぐには到着できなかった」

 

 なるほど。

 

 カミラ邸とここらの地区とはかなりの距離があるにも関わらず、すぐに駆けつけてこれたのはそういうことか。

 

 あまり外出したがらない割には家にいないことも多かったから、どうしているのかと思っていたが……

 

 俺の自宅にも欲しいんだが?

 

 やっぱり正式に魔術師ギルドに加入する必要があるのだろうか。それとも、まさか以前リグリアへ向かった時の遺跡から解析したのか? あのとき、カミラはかなり入念に調べていたからな。

 

 今度どうやって導入したか聞いておこう。

 

 それはさておき。

 

「あの店はチンピラに狙われていたのか?」

 

「ああ。最近は、妙に盗賊とかチンピラの類が活発に活動しているらしくてね。ここしばらく、ほかの店からも相談を受けていたというわけだ。……二人に怪我はなかったかい?」

 

「このとおり無事だ。相手も大して強くなかったしな」

 

「兄さまと僕にとっては、ちょっと刺激的な余興といったところさ」

 

 実際、チンピラたちを成敗したのは買い物を邪魔された八つ当たりが理由の大半だった。感謝されたり気遣われると、どうにもむずがゆい気持ちになる。

 

「ふむ。ならば、よかった。……それで」

 

 カミラがにこやかな顔で頷き……言った。

 

「君たちはどういう関係なのかな?」

 

 おっと……やはりその質問が来てしまったか。

 

 別にやましいことはないのだが、状況が状況だけにどう答えていいか迷う問いだ。

 

 ちなみにカミラは笑顔だが目が笑っていない。

 

 完全に俺とアリスの仲を疑っている目だ。

 

 一言でも言い方を間違えると、確実に修羅場になるヤツである。

 

 男女の機微に鈍感な自覚のある俺でも、それくらいは分かる。

 

 そんな中、会話の口火を切ったのは……意外にもアリスだった。

 

「改めて、お初にお目にかかる、『傀儡の魔女』殿。まさかこんなところでお会いできるとは!」

 

 彼女はテーブルに手を突き深く頭を下げ、それからカミラから見えないよう、俺の方に視線だけを寄越した。

 

 そのまま彼女の口が小さく動く。

 

 俺には(まかせて)と喋ったように見えた。

 

「……実は」

 

 アリスが顔を上げる。

 

 そして、まくしたてた。

 

「『魔女』印の衣服や装備品は、数あるブランドの中でも僕の一番のお気に入りでね。魔道具のデザイン、使い心地、それに魔術処理のクオリティも……すべてが高い次元で融合している。こんな魔道具、今まで王国には……いや、商人の国トレスデンですら、存在しなかった」

 

 さらにアリスが続ける。

 

「王都の貴族たちの間では、入荷される度に争奪戦になっていてね。もちろん僕も使いを店に並ばせたりして、頑張っていたのだけど……ライバルが多くなかなか手に入らなくてね。だから今日はたくさん買わせていただいたよ。……まさか貴方が兄さまの知己だったとは思わなかったけれど」

 

「そ、そうかい。それはなによりだ」

 

 辛抱堪らず、といった具合で喋りだしたアリスのカミラを見る目は……完全にファンというか信者のそれだった。

 

 あまりの勢いに、カミラは完全に気勢を削がれている。

 

 そのおかげか、完全に本題は棚上げな印象になってしまっており、俺たちの関係性についてはさらりとスルーすることに成功していた。

 

 

 察するに、おそらくアリスは一気に自分のペースに持ち込んだ後、カミラの態度が軟化したところを見計らって俺たちの関係を説明をするつもりなのだろう。

 

 脳筋とはいえ、さすがは現役の貴族である。

 

 そして一連の流れを演じた以上、彼女は俺とカミラがどういう関係かも気づいている。

 

 まあ、最初からアリスに話していればよかったといえばそうなのだが……わざわざ「俺とカミラはそういう関係です」なんて伝えるか?

 

 確かにアリスは大事な妹分だとは思っている。だが、聞かれもしないのに俺から話す話題ではないだろう。

 

 まあ、そのせいでこういう状況に陥っているわけだが。

 

 とはいえ、俺もこれ以上アリスに助けられているつもりはない。兄貴分としての矜持は保っておきたかった。

 

「アリス、やっぱり俺から話すよ。別に何かやましいことがあるわけじゃないし」

 

「……兄さま」

 

「ふん。じゃあ、聞かせてもらおうじゃないか」

 

 カミラが鋭い視線を俺に寄越し、続きを促してくる。

 

「アリスは、昔俺が剣術を教えていたことがあってな。冒険者をやめて聖剣錬成師になったあとのことだ。今から五年以上前のことだが――」

 

 カミラに、ざっくりとアリスとの関係を説明してやる。

 

 あとは、この街にやってきた経緯や、その後のことなど。

 

 彼女は黙って聞いていた。

 

「……なるほどね。ブラッドと勇者殿(・・・)の関係は理解した。今はリンドルムとかいう竜に聖剣を使わせようと訓練を施しているということも、その過程で素材集めに協力していることも。そういうことならば、仕方ない」

 

 俺が話し終わると、カミラは腕組みをしながら頷いた。

 

 まだ難しい顔をしているものの、口調はすこし穏やかになった。

 

 どうやら、一定の理解は得られたようだ。

 

「しかし、あの『竜狩り』フレイか……あの痴女まで一枚噛んでいるとはね。まさかあいつもブラッドを狙っているのか?」

 

 カミラはフレイのことが気に食わないらしい。

 

 そういえば以前二人と一緒に冒険をした時期があったが……カミラとフレイは性格が正反対だったこともあり、しょっちゅう喧嘩をしていた気がする。

 

 彼女はしばらく考え込んでいたが、やがて顔を上げた。

 

「……ふむ。私もその聖剣づくりとやらに参加することにしようじゃないか」

 

 ……えっ。

 

「い、忙しいんじゃないのか?」

 

 俺は別に構わないどころか歓迎だが、仕事の方は大丈夫なのだろうか。

 

 彼女が続ける。

 

「仕事はどうにかする。あの痴女竜狩りを負かすことができる機会があるというのに、指をくわえて見ているなんてできるものか。今すぐリンドルムとかいう子竜の元に案内するんだ。奴に勝たせるんだろう? 私が直々魔術の真髄を叩き込んで、最強の竜へと鍛え上げてやろうじゃないか」

 

「お、おう……」

 

 そんなわけで、リンドルム強化計画は考えうる限り最強の布陣となった。

 

 アイツ、聖剣ができる前に死なないといいんだが。

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