パワハラギルマスをぶん殴ってブラック聖剣ギルドをクビになったので、辺境で聖剣工房を開くことにした   作:だいたいねむい

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第81話 『竜vs竜狩り ②』

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!?」

 

 迫りくるリンドルムの大群に圧倒されたのか、さすがのフレイも顔を引きつらせ叫んでいる。

 

「「「「ゲハハハハッ! ……侮ったな竜狩りイッッ! 今宵、お主は我のモノとなるのダッッ!!!」」」

 

 とんでもない数のリンドルムが同時に声を発するせいで、声が重なって聞こえて気色悪い。

 

 ついでにどのリンドルムも欲望にまみれた表情なのもポイント高い。

 

 あれは絶対、フレイに取りついたどさくさに紛れていかがわしいことでもしようと企んでいる顔だ。

 

 なんて卑劣な攻撃なんだ……!

 

 まあ俺が錬成した聖剣だし、指示通りの運用方法だが。

 

「うわぁ……あの表情で襲われるのは、さすがに気持ち悪いな」

 

「まったくだね。訓練は真面目に頑張っていたけども……本性を現したか。まあ、フレイにとってはいい気味さ」

 

 俺の隣で観戦していたアリスとカミラが引き気味の表情をしているが、二人の気持ちは分からないでもない。

 

 あれに襲い掛かられたらドン引きなのは間違いないな。

 

「うおおおおおおぉぉぉぉッッ!?!?」

 

「グハハハハハハーーーー!!」

 

 次々と襲い掛かるリンドルム。

 

 哀れフレイは、このままリンドルムの群れに埋め尽くされその肢体を嬲り倒される運命を受け入れざるをえないようだ――

 

 ……と思ったのも、つかの間のことだった。

 

 ――ドンッ!!!

 

 千体を超えるリンドルムの増殖体が群がり出来上がった『生ける竜塚』が、突如膨れ上がり、爆炎とともに消し飛んだ。

 

 残っていたのは、後ろで指揮していた本人と数体の増殖体(デュー)だけだ。

 

「ふうぅ……やるじゃねえか子竜ちゃんよ。ちょっと焦ったぜ」

 

 中から現れたのは、無傷のフレイだ。

 

 さすがに余裕の表情とまではいかないようで、『大食い(ヴォーラ)』を肩に担ぎながら不敵な笑みを浮かべつつも、もう片方の手で頬を伝う汗を拭っている。

 

「へえ……フレイもさすがにこの程度じゃ堪えないか。……これも『大食い』の力かな?」

 

「ふむ。推察するに『大食い』の大蛇化を防御に転用したのだろう。蛇の身体を自分に巻き付かせれば、リンドルムの攻撃は届かない」

 

 アリスとカミラが解説しているとおり、フレイは『大食い』によって事なきを得たようだ。

 

 さらにリンドルムたちを吹き飛ばした爆発は、『大食い』が竜の魂を喰らうことで取り込んだ力を解放したことによるものだろう。

 

「むム……やはり一筋縄ではいかないカ。……それハ、炎竜のブレスだナ?」

 

「正解。まあ、お互い挨拶は終わりってことだな」

 

 フレイがニヤリと笑みを浮かべ、『大食い』を構え直した。

 

「……まさか初っ端で『魂』を全放出させられるとは思わなかったぜ。子竜ちゃんも、ブラッドたちと修行ごっこをしていたわけじゃねえってことか。だったら……オレもそれなりに誠意をみせなけりゃ、だな」

 

 フレイの雰囲気が変わった。

 

 さきほどのヘラヘラしていた態度は消え去っている。

 

 代わりに彼女の全身から立ち昇るのは、触れればズタズタに斬り裂かれそうなほどの強烈な殺気だ。

 

「残りの何十秒かを逃げ回って凌ぐなんてダセェ真似はしねえよ。全力でテメェをぶっ潰す」

 

「くッ……」

 

 あまりの威圧感からか、リンドルムが顔を歪める。

 

 だが、その足は一歩も後ずさっていない。

 

 『竜狩り狩り』も構えたままだ。

 

 もっとも一歩踏み出すことまではできなかったようだが。

 

 それでもこの圧力に耐えきったのは、彼女がアリスとカミラの地獄のような特訓を耐え抜いたという自負からだろう。

 

「今度はこっちから行くぞオラァ!」

 

 フレイが咆哮する。

 

 『大食い』を担いだまま身体を縮め、地面を蹴った。

 

 次の瞬間には、『大食い』がリンドルムの首筋に迫っていた。

 

「くッ……!」

 

「パイセンッ!!」

 

 デューが間に割り込もうとするが間に合わない。

 

 とはいえ、竜の反応速度は常人より十倍以上は速い。

 

 リンドルムはギリギリのところで『大食い』と自分の首の間に『竜狩り狩り』を差し込むことに成功していた。

 

「ぐアッ……!?」

 

 ガキン、と重く鋭い音が響き、リンドルムが宙を舞う。

 

 どうやら受け止めるのが精いっぱいだったらしい。

 

 とはいえまだ彼女の首は繋がっているし、その視線は『大食い』を振り抜いたフレイをしっかりと捉えたままだった。

 

「ハハッ……! だがこれで終わりだぜっ!」

 

 空中に飛ばされてしまえば容易に体勢を立て直すことができない。

 

 フレイはそこまで読んだうえで、リンドルムを吹き飛ばすように斬撃を放ったようだ。

 

「喰らいやがれッ!!」

 

 フレイが素早くリンドルムに肉薄。そのまま上段から叩きつけるように『大食い』の刃を振り下ろした。

 

 だが。

 

「まだダッ!」

 

「なにっ!?」

 

 そしてそこでリンドルムが竜であることのアドバンテージが生きる。

 

「ガアアアァァァッ!!!!!」

 

 瞬時に人化を解き、ミニドラゴンへと戻る。皮翼を広げ体勢を立て直すと大きく顎を開き、目の前まで迫ったフレイの眼前に火焔ブレスを吐き出した。

 

 スケルトン兵ならば一瞬で蒸発させる業火の塊だ。

 

 さすがのフレイでも、喰らえば火傷では済まない。少なくとも彼女はそう判断したようだ。

 

「にゃろッ!!!」

 

 フレイは竜すら凌駕する反応速度で、これをギリギリ躱して見せる。

 

 彼女の頬には、煤一つ付いていない。

 

「ははっ、やるじゃねえか! 舐めてたぜ、エルダードラゴン……いや、リンドルム!」

 

「名前を呼ばれて光栄、ダッ!」

 

 リンドルムも、ブレス攻撃だけで終わらせてはいない。

 

 竜から一瞬で人化し、今度は『竜狩り狩り』そのものでフレイに斬撃を浴びせにかかる。

 

「デュー!」

 

「おいっす! 竜狩りサン、自分を忘れてもらっちゃ困るっすよ!」

 

 さらにリンドルムの合図とともに、『竜狩り狩り(デュー)』が操る残りの増殖体全員が一斉にフレイに斬りかかった。

 

 タイミングは完璧だ。

 

 だが。

 

「甘え甘え甘え甘え甘え甘え甘え甘え甘え甘えーーーーッッ!!!」

 

 フレイが咆哮し、『大食い』をメチャクチャに振り回す。

 

 その軌道はデタラメに見える。だが確実に増殖体たちを斬り刻んでいた。

 

「くあっ……!? パイセン……あとは頼んだっす……」

 

 断末魔のような呟きを残し、すべての増殖体が消滅した。

 

 残るはリンドルム一人だけだ。

 

「クハアァァァ……楽しいなァ。こんなに(たかぶ)る戦いは、十年ぶりだぜぇ。……あと三十秒ってところか。まだまだ遊べるなぁオイ」

 

 『大食い』を担ぎ、獣のような前傾姿勢を取るフレイの目は爛々と輝いている。

 

 彼女の吐き出す呼気が、白い蒸気となって虚空を漂う。

 

 その悪鬼もかくやという壮絶な姿に、リンドルムの顔が引きつった。

 

 ……が、彼女もまた、それでもわずかに笑みを浮かべている。

 

「ま、まだマダッ……! 我だっテ、負けるわけにはいかぬノダッ!」

 

 そう絶叫して、『竜狩り狩り』を構え直した。

 

 

 決闘の残り時間、あと二十五秒。

 

 

 二人の激闘はまだ始まったばかりだ。

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