では、良い幻想郷を………
輝蛍side
藍さんに聞いた、幻想郷の南西の端にある荒地。そこには日の光は差さず代わりにその地にある鉱石が鈍い光を放つと言う。生えている草花は腐り、地は痩せ、生き物は腐った肉と骨と化し地に転がってその死臭で空気を濁らせる。まさに地獄絵図、楽園の欠片などあったものではないそうだ
輝蛍「やれやれ、そんなところに何用なんだか……」
俺は手に持ったコンパスの方向を確認しながら目的地に向かう。このコンパスは藍さんに貰ったものだ、どうやらこの幻想郷の磁気やらなんやらの干渉を受けずに方角を正確に指し示してくれるものらしい。”妖怪の山の河童さん”が作ったとかなんとか……スゲェな
輝蛍「さてさて、見えてきましたか…………なっ!?」
約400m先の空を見て思わず叫んだ。星が広がる黒いカーテンをスパッと切って、紫色のぼやけたカーテンが新しく始まっていた。そのカーテンからは圧倒的な不快感と死んだ空気が一気に体にまとわりついた
輝蛍「これが、楽園の末路……」
それは藍さんに聞いたものや想像していたものなんかじゃ説明が足りなかった。とにかくグロテスクだ……
こんなところにあの人は待っているのか
俺は収まりそうにない吐き気を我慢して目的の人を探した……
?side
私には………愛する妻がいた
村で2人で店を開いてた、最初は客なんて来やしなかったが2人で助け合いながら店を続けた。時が経つに連れて店は繁盛し客も増え、妻も私も日に日に幸せの度合いが増していった。だが………………
きゃあああああああああ!
その幸せも長くは続かなかった
血と肉に飢えた妖怪共が村を破壊し人々を喰らいはじめたのだ。私達の緑豊かな村は僅か5分で荒れ果て、血の海に肉と骨の残骸が畑や田を埋め尽くした。いつもは聞こえた村人達の声も妖怪共の呻き声や奇妙な笑い声に変わってしまった
妖怪共に気付かれなかった私と妻は必死で逃げた、妻の腹には私達の子供もいた。
一家で生き延びるために山の奥へ奥へと息を切らし涙と鼻水を垂らし顔がぐしゃぐしゃになってまで逃げた、逃げ続けた
静寂の中に2人の荒い息だけが聞こえたのを今でも覚えている、五臓六腑が疲弊して体中から汗が吹き出た。無理もない普段運動など散歩の時に歩くくらいだ、いきなり走れば汗も吹き出る。なによりも自分達が喰われる、その恐怖を心だけで認識しきれなかったのだろう
逃げ切ったのは良かったが妻の様子がおかしかった、それもそのはずだ。腹には生まれる寸前の子供を抱えて山奥まで走ったのだ。安静にしていなければならないのに無理に体を動かせば母体にも子供にも悪影響が出てしまう。
私は急いで妻を休ませるべく山を越えてある隣村に妻を抱えて震える足に鞭を打った。鬼に追われて逃げて来て体力なんてものは空に限りなく近い状態だったがそれでも守らなきゃいけない人がそこにはいたから頑張れた。だがその頑張りは…………………無駄になったのだ
いやあああああああああああああ!
山奥に住んでいた妖怪に背後から襲われ妻が捕まってしまった。私は妻と子供だけは喰われてはならぬと恐怖を勇気に変え妖怪に突撃した。しかし妖怪は私を相手にもせず妻をそのまま闇の中へと誘っていった……
絶望の波が一気に体中を駆け巡った
そんな、そんな、そんなそんなそんな……………………そんな!!!
私は顔を真っ青にしながら山中を走り回って妻と妖怪を探した。探して、探して、探して、探し尽くした。口がカラカラになっていたのを忘れ、筋肉が軋み悲鳴をあげているのを忘れ、自分がどうしてこんなところにいたのかすら忘れた
フラフラになり疲弊し脳も揺れて意識がなくなりつつあったその時に、見てしまった
血で真っ赤に染まった妻の服や履物を、地面に散らばった肉片を、バラバラに砕かれて粉々になった骨を、そしてその残骸の中に一つ光る、指輪を……………………
私はその時体から力が抜けるのを理解した……
守ろうと心に決めた者を一瞬にして奪われた。長い月日を経て育て上げた新しい生命の息吹をも……
憎い、憎い、憎い…………!!!
力なき人が妖怪共に立ち向かうことも出来ずになすがままにされる、この”幻想郷”が憎い……!!!
力がなかった己が……憎い!!!
殺してやる、壊してやる、潰してやる、滅してやる……………!!!!
この”幻想郷”に人間意外の力など必要ない…………!
変えてやる、この幻想郷を!!!!
ルーミア「おじちゃ〜ん?」
?「…………あぁ、ごめんよ。少し考え事をしていたものでね」
ルーミア「おじちゃん、泣いてるよ」
?「……!?………………大丈夫だよ、私はなんともないよ。さぁ行こう」
輝蛍side
輝蛍「………………あ、いたっぽいな」
俺は酷く濁った大河の近くに、この空間の色彩とは全く合わない紅白の色を見つけた。俺は着地し、近くへ駆け寄った
霊華「来たか、少年」
紅白装束の長髪の巫女はにやっと笑いながら此方を振り向いた
輝蛍「こんなところに呼ぶぐらいなら、迎えに来て欲しかったですね。恩人さん」
俺が皮肉たっぷりに挨拶すると霊華さんはハッハッハと笑って誤魔化した
霊華「まあまあ、さぁ付いてきてくれ。少し話をしよう」
スタスタと歩いていく霊華さんの後を俺は付いていった
霊華「さぁ、着いたぞ!ここが…………秘密基地?みたいなもんだ!」
俺は驚いた。この生きた地獄の中に”真実の楽園”があったのだ。空から日の光が差し、大輪の花々が咲き乱れ、透き通った水が川を流れていた。生き物の鳴き声こそ聞こえないが”楽園”と呼ぶには相応しい環境だ
そしてそこにやや大きめのウッドハウスがあった。この劣悪な環境下でどうやってここを見つけたんだと思ってしまった
霊華「さぁ入ってくれ、お茶を出そう」
輝蛍「本当に、あの件では助けてもらいました。ありがとうございました」
俺は頭を下げた。霊華さんはよしてくれと頭を上げるように言うが、上げることが出来ない
あの時に霊華さんがいなかったら、目覚めることが出来なかっただろう
霊華「あの時ゃお前も災難だったよなぁ力尽きたら体にセーフティ掛かっちまって体と心がほぼ分離状態。まさにゾンビだったわけだわな……」
輝蛍「でも俺の事を助けてくれたのは、なんで?」
俺が真面目に質問したのに対して、霊華はバカ笑いをしながら教えてくれた
霊華「理由なんて簡単さ!一つ、私が先代であっても博麗の巫女だから。一つ、お前の声が聞こえたから。一つ、お前の親父を知っているから」
輝蛍「はぁはぁ………………はぁ!?」
ささっと話していたので聞き逃しそうになったけれど、一番最後の理由がおかしい!!
輝蛍「なんでうちの父さんを知っているんですか!?」
霊華「なんでうちの父さんの事知ってるんですか!?って、アレ?聞いてないのか?お前の親父は元は幻想郷の住民で、私の仕事のパートナー」
輝蛍「…………ええええぇぇぇぇぇええ!?」
はい、ここまでです!
なんか、ボスの回想が半分以上でしたね…
次回は輝蛍にスポットを当てていきたいと思います
では、さよなら〜