ドラゴンボールX 作:人工知能318号
邪悪龍との壮絶な最終決戦を終え、神龍と一つになった孫悟空は、天を切り裂く眩い光に飲み込まれ、忽然とその姿を消した。
次に彼の目に映ったのは、見知らぬ荒涼とした世界だった。
かつての地球を彷彿とさせる風景は、しかし生命の温もりを失い、灰色の空の下に広がる不毛の荒野と化していた。崩れかけたビルは無残な残骸となり、枯れ果てた木々は風に震え、砂塵が渦となって舞い上がる。
人の気配は一切なく、悟空の鋭い感覚さえも虚無の壁に阻まれるように鈍く響くだけだ。
足元の地面はひび割れ、灰褐色の土が風に巻き上げられて青い道着にうっすらと降り積もる。
見上げれば、重苦しい鉛色の空が広がり、厚い雲の層が太陽を閉ざして渦を巻き、時折、低く唸る雷鳴が遠くでこだまする。
視線の先には、かつての都市が崩れ落ちた廃墟が横たわり、錆びて赤黒く変色した鉄骨がむき出しに突き刺さっている。
そこに絡まる雑草だけが、かろうじて生命の名残を主張していた。木々の枝は白骨のように乾き、地面には獣の足跡一つなく、静けさが鋭い針となって耳に突き刺さる。
「ここは……本当に地球なんか?」
鋭い眼光で周囲を見渡し、悟空は小さく呟いた。鼻を衝くのは湿った土と腐臭の入り混じった空気。かつての故郷を思わせる景色は、生命の鼓動を奪われ、時間が止まったかのような死の静寂に支配されていた。
両足を軽く踏みしめ、大地に気を流し込む。
だが、返ってくるのは虚ろな反響だけだ。仲間たちの熱い気配も、動物のざわめきも、草木のささやかな息づかいさえも感じ取れず、感覚は暗闇の中で途切れる。
「何だ、この感覚……誰もいねえんか?」
乾いた風に声がさらわれ、胸の奥に冷たい不安が広がり始めた。
その瞬間、体内の深くに宿るドラゴンボールの微かな脈動が、心臓の鼓動と共鳴する。それはまるで、神龍が静かに告げる声のようだった——「ここはお前が知る世界ではない」と。
目を細め、両拳を固く握り締める。道着の裾が風に煽られて激しくはためき、緊張で筋肉が小さく震えた。
「何か来る……!」
鋭い直感が警告を発した瞬間、それは現実となった。
背筋を這うような邪悪な気配が悟空の全身を貫き、凍りつくような感覚が駆け抜ける。空気が一変し、吐息さえ重くなるほどの負の力が周囲を覆い尽くす。鼻を刺す硫黄の焦げたような臭いが漂い、胸に込み上げる嫌悪感を抑えきれなかった。
それはかつて感じた宇宙の霸王フリーザの冷たい殺意や、ツフル人の怨霊ベビーが放つ腐敗した瘴気を彷彿とさせた——だが、それらを超える濃厚で悍ましい闇の気配が、空気を毒のように汚している。
悟空の額に冷や汗が滲み、瞳が鋭く輝きを増した。
「おめぇは……!?」
振り返った刹那、灰色の空を切り裂く漆黒の影が現れ、音もなく地面に舞い降りた。
そこに立っていたのは——ゴクウブラック。
その姿は、悟空自身を歪んだ鏡に映したかのような異様な存在だった。
黒い道着に身を包み、髪は鋭く天を突くように逆立ち、夜空のように黒い瞳が妖しく光る。口元には冷酷で歪んだ笑みが刻まれ、まるで獲物を嘲る獣のようだ。
彼の周囲に漂う黒いオーラは、紫の煙のように揺らめき、生き物のように不気味にうごめいている。悟空の心臓が一瞬激しく跳ね、喉が無意識に唾を飲み込んだ。
ゴクウブラックは両腕を広げ、まるで旧友を歓迎するかのような仕草で低く笑った。
「ふふ……ようこそ、孫悟空。
その立ち姿を見る限り、お前は俺の知らない次元から迷い込んだようだな?
面白い……お前の存在は俺がさらなる高みへと登るための絶好の踏み台になるだろう」
「おめぇ……一体何者だ!」
悟空の鋭い叫びが荒れ果てた大地に響き渡り、乾いた風に飲み込まれた。
ゴクウブラックは不気味な笑みを一層深く刻む。血のように赤い瞳が妖しく輝き、まるで獲物を品定めする野獣の眼光だ。黒い道着の裾が風に揺らぎ、周囲を漂う紫黒のオーラが砂塵と絡み合い、不規則な渦となってうねり上がる。その気配は重く、空気を圧するように押し寄せ、鼻を刺す焦げた異臭とともに肩にのしかかる。
「俺か? ふふ……なかなか面白い問いだな、孫悟空」
両腕を軽やかに広げ、まるで舞台の上で観衆に語りかける役者のような仕草。一歩踏み出すその足取りは不気味なほど静かで、砂利を踏む音さえ立てず、幽霊が漂うような異様さがあった。悟空の眉がわずかに跳ね上がり、戦士の本能が危険を告げる鐘を打ち鳴らす。
「俺は孫悟空だ。 この顔、この肉体——お前と寸分違わぬものだ。 ……ああ。だが、あの女は俺をこう呼んだぞ。『ゴクウブラック』とな」
その言葉に、悟空の目が鋭く細まった。首を軽く振って拳を握り直し、挑発的な態度に即座に応じる。体をわずかに前傾させ、裂けた道着の袖が風にはためき、腕に浮かぶ筋肉の血管が緊張で脈打つ。
「あの女……だと? おめぇ、何をほざいてやがる?」
ゴクウブラックは口角を吊り上げ、冷たい笑みを浮かべた。その声は低く、毒液が滴るような滑らかさで耳にまとわりつき、不快な余韻を残す。
「この世界のブルマさ。
あの女は賢かった。俺の本質を見抜き、その名を俺に与えた。
だが、既に死んだ。この世界のトランクスが命がけで守ろうとしたこの世界ごと、な。
——見てみろ、この静寂に満ちた理想郷を。俺の手で人類を根絶やしにした結晶だ。
この清浄な世界こそ、俺の崇高な使命——『人間ゼロ計画』の完成形。
お前も、この美しさに心奪われないか?」
一瞬、視界が震えた。 ゴクウブラックの言葉が頭の中で反響し、目の前に広がる荒涼とした景色と重なる。かつての地球——緑に覆われた森、活気あふれる街並み、仲間たちの笑顔が響き合った故郷。それが今、この灰色の死の荒野に変わり果てている。ブルマの聡明な笑顔が脳裏をよぎり、命を懸けて戦ったであろうトランクスの存在が胸を締め付ける。
喉が鳴り、拳が抑えきれずに震え始めた。 風が勢いを増し、髪を乱暴に煽り、額に冷や汗が滲む。
「お前……絶対に許さねえ……!」
声が低く唸り、瞳に燃え上がる怒りの炎が宿った。 全身が黄金のオーラに包まれ、迸る力が空気を震わせる。
——髪が鋭く逆立ち、赤い毛皮が体を覆い、超サイヤ人4への変身が爆発的に始まった。 黄金の輝きが荒れ果てた大地を照らし、筋肉が膨張して野生の力がほとばしる。 オーラの奔流が地面を揺らし、小石が宙に浮き、渦巻く風が周囲を圧倒する。 眼光は鋭くゴクウブラックを捉え、雷鳴を帯びたように鋭く光り輝いた。
ゴクウブラックはそれを楽しむように首をかしげ、子猫をもてあそぶ猫のような気軽さで手を振る。
「神が人に赦しを求めるとでも?
この世界の人間はすべて俺の手で消し去った。トランクスも、ブルマも、それ以外のすべての命もな。 お前がどれだけ吠えようが、その事実は揺るがない。
そして、貴様——異次元から現れたもう一人の孫悟空。 貴様を最後のご馳走として味わえば、この星の浄化に完璧な終幕を飾れるだろう。
その力は俺を新たな境地へと押し上げる絶好の糧だ。せいぜい神を愉しませるがいい!」
ゴクウブラックは挑発的な笑みを崩さず、自ら変身を始めた。 体が黒いオーラに飲み込まれ、髪が鮮やかなピンクに染まり、超サイヤ人ロゼへと昇華する。 黒紫のエネルギーが渦を巻き、怨念を帯びた紫煙が立ち上り、空気中で不気味に揺らめいた。
その姿は、神聖さと邪悪さが混じり合った異形の存在だった。 神気に応じるように赤い瞳が怪しく燃え上がり、口元の冷酷な笑みが一層深みを帯びる。 風が二人の間で唸りを上げ、砂塵が激しく舞い上がり渦を巻いた。
対峙する二人の間に、張り詰めた緊張の糸が走る。 悟空の拳が固く締まり、足が一歩前に踏み出された瞬間、ゴクウブラックが低く囁いた。
「さあ……始めようか、孫悟空」
二人の戦いは、雷鳴が轟くような衝撃とともに幕を開けた。
悟空が一瞬で距離を詰め、超サイヤ人4の剛腕を振り抜く。その拳は空気を切り裂き、大地に深い亀裂を刻み込んだ。ゴクウブラックは身を軽やかに翻し、右手に凝縮した気の刃で応戦。鋭利な斬撃が悟空の頬をかすめ、赤い血が一滴宙に舞う。
「ちっ、素早い野郎だ!」
悟空は舌打ちを漏らしつつも、間髪入れず反撃に転じた。
両手を構え、「かめはめ波!」と叫びながら青いエネルギー波を解き放つ。だが、ゴクウブラックは気の刃を振り上げ、その奔流を一刀両断に切り裂いた。
「その程度か、孫悟空? 俺を退屈させるな」
冷たい笑みを浮かべたゴクウブラックは、瞬間移動で悟空の背後に回り込み、気の刃を振り下ろす。悟空はとっさに腕で受け止め、体をひねりながら強烈な回し蹴りを繰り出した。ゴクウブラックは吹き飛ばされ、地面に叩きつけられるも、即座に跳ね起きて体勢を整える。
戦いは互角のまま、激しい攻防へと突入していった。
超サイヤ人4の悟空は、ベビーや超17号、そして邪悪龍との死闘を潜り抜けて鍛え上げた肉体と精神を総動員し、圧倒的な力でゴクウブラックに襲いかかる。
赤い毛皮に覆われた腕は鋼よりも硬く、黄金のオーラは荒野を焼き尽くすような熱を放ち、一撃ごとに大地を震わせる。彼の動きには、幾多の戦いで培った野生の勘と洗練された技が息づいており、その拳はまるで自然の猛威を凝縮した嵐のようだった。
対する超サイヤ人ロゼのゴクウブラックは、神の静謐な力を基盤に、超サイヤ人の激情が織りなす荒々しいエネルギーを融合させた蒼神の力を、さらに無数の人間を殺戮して蓄えた怨念で黒紫に染め上げた異形の存在として立ちはだかる。
ピンクに輝く髪が風に揺れ、黒紫のオーラが毒々しく渦巻き、彼の手から放たれる攻撃は、神聖さと邪悪さが奇妙に溶け合った不協和音を奏でていた。両者の拳が交錯するたび、大気が悲鳴を上げ、地表が砕け散るほどの衝撃波が荒野を切り裂いた。
「お前……俺と同じ技を操りやがって……!」
悟空が気合を込めて放った気円斬が、鋭い刃となってゴクウブラックを狙う。だが、ゴクウブラックもまた冷然と気円斬を繰り出し、空中で二つの光の円盤が激突。火花を散らして粉々に砕け散った。
瞬間移動を駆使した不意打ちも、相手が同じ技を完璧に使いこなしているため、決定的な一撃にはつながらない。
接近戦では、悟空の豪快な剛力がゴクウブラックの鋭利な一閃とぶつかり合い、互いの予想を超えた力に二人とも内心で驚きを隠せなかった。
「こんな化け物がまだいたなんてよ……!」
悟空は額に滲む汗を拭う間もなく呟いた。息がわずかに乱れ、黄金のオーラが一瞬揺らぐ。
目の前の敵は、ただの強者ではない——彼自身の姿を歪めた鏡像でありながら、その底知れぬ力が悟空の戦士としての本能を刺激していた。
一方、ゴクウブラックもまた、内心で波立つ動揺を抑えきれずにいた。
(神の領域に踏み込んだこの俺が、ここまで拮抗する相手だと……?
あの獣の如き力の源は一体何だ……その深淵を覗いてみたい……!)
表面上は冷笑を崩さないものの、瞳に宿る好奇心が一層怪しく燃え上がり、彼の手の動きに微かな焦りが混じり始めていた。
均衡を崩したのはゴクウブラックの一手だった。
彼は気の刃を極限まで研ぎ澄まし、鋭さだけを追求した斬撃主体の戦法へと切り替えた。高速で振り下ろされる刃が風を裂き、悟空の体をかすめるたびに赤い毛皮がズタズタに引き裂かれ、その血が大地に滴り落ちる。
悟空は歯を食いしばり、超サイヤ人4の漲る力を拳に込めて反撃を試みる。黄金のオーラが爆発的に膨張し、一撃がゴクウブラックを捉えそうになるが、彼は流れるような動きで距離を開け、執拗に斬撃を浴びせ続けた。
刃の軌跡が空に残像を描き、まるで黒い嵐が悟空を飲み込もうとしているかのようだった。
「くそっ……!」
悟空が追い詰められ始めたその瞬間、ゴクウブラックはさらなる奇策を繰り出した。
手の平に宿る気の刃が変形し、黒紫のエネルギーが凝縮された巨大な鎌へと進化した。彼がその武器を振り上げると、空気が軋み、一閃とともに空間そのものが切り裂かれる。歪んだ裂け目が生まれ、そこから怨念を帯びた紫煙が溢れ出した。
煙は瞬く間に形を成し、ゴクウブラックの姿を模した無数の分身体へと変貌する。それぞれの分身が赤い瞳を怪しく光らせ、本体と同じ冷酷な笑みを浮かべていた。
「何!? お前、分身までしやがるのか……!」
悟空は目を瞠り、即座に構えを固めた。
黄金のオーラが一層激しく燃え上がり、彼の周囲に防御の障壁を張るように渦巻く。だが、分身体は一斉に襲いかかり、四方八方から容赦ない攻撃を仕掛けてきた。鋭い気の刃が縦横に飛び交い、鎌の弧が大地を削り取る。
悟空は咆哮を上げ、拳を振り回して分身を次々と粉砕する。黄金の衝撃波が分身を吹き飛ばし、紫煙が散乱するが、倒してもなお裂け目から新たな影が湧き出てくる。まるで尽きることのない闇の軍勢が、彼を押し潰そうと迫っていた。
数の優位を握ったゴクウブラックは、冷ややかな視線で戦況を見据えていた。
本体はその場に立ち、分身体と完璧に連携しながら悟空を翻弄する。分身が悟空の注意を引きつけると、本体が瞬間移動で死角に回り込み、鎌の一撃を叩き込む。
悟空は反射的に腕で受け止めるが、赤い毛皮に覆われる皮膚に浅い傷が刻まれた。分身の群れが再び襲いかかり、彼の動きを封じ込める。ゴクウブラックの口元に浮かぶ笑みが深まり、その声が低く響いた。
「神の技を前にもがくその姿。
見ていて愉快だぞ、孫悟空」
悟空の息が荒くなり、額の汗が滴り落ちる。だがその瞳には、屈しない炎が燃え続けていた。
悟空の体に刻まれる傷が深まり、息が荒々しく乱れていく。
分身体の鋭い一撃が肩を掠め、鮮やかな血が弧を描いて飛び散った。赤い毛皮に血が滲み、超サイヤ人4の黄金のオーラが一瞬揺らぐ。動きがわずかに鈍り、彼の足元に滴る血が灰色の大地を濡らす。
ゴクウブラックはそれを眺め、冷酷な笑みを一層深く刻んだ。黒紫の気の鎌を手に掲げ、悠然と悟空に近づく。その姿は、獲物を仕留める死神のように不気味で威圧的だった。鎌の刃先が薄紫の光を放ち、空気を切り裂く音が低く唸る。
「終わりだ、孫悟空。
よくぞここまで戦い抜いたと褒めてやりたい所だが、所詮は人間。神の前では無力だったな」
その声は氷のように冷たく、勝利を確信した余裕に満ちていた。分身体が悟空を囲み、逃げ場を塞ぐように密集する。紫煙が彼らの間で渦を巻き、荒野に不穏な影を落とす。
だが、悟空は膝を突きながらも、その瞳から闘志の炎を消していなかった。額に汗が流れ、血に濡れた唇が小さく震える。息を整えようと胸が激しく上下するが、彼の視線はゴクウブラックを真っ直ぐに捉え、決して屈しない意志が宿っている。
「まだだ…………俺はまだ負けちゃいねえ……!」
その瞬間、悟空の胸の奥深くに宿るドラゴンボールが熱く脈動し始めた。それはまるで、心臓と共鳴する生命の鼓動のように力強く、彼の全身に熱を伝える。かつてベビーに追い詰められた絶望の淵で、仲間のサイヤパワーを受け取って再起した記憶が脳裏を駆け巡った。あの時、遠くにいる仲間たちの想いが彼を支え、立ち上がらせた。今、ここには誰もいない——だが、神龍が寄り添うように宿り、奇跡の力を呼び起こしてくれる。悟空はそれを魂の底で確信した。
黄金のオーラが再び燃え上がり、彼の体を包む赤い毛皮が微かに震える。傷だらけの拳を握り直し、膝に力を込めて立ち上がろうとする。血と汗にまみれた顔に、かすかな笑みが浮かんだ。それは、逆境を跳ね返す戦士の証だった。
ゴクウブラックの赤い瞳がわずかに揺らぎ、冷笑の裏に一瞬の苛立ちが垣間見える。
「貴様……まだ抗うつもりか?」
悟空の瞳が鋭く光り、荒野に新たな風が吹き始めた。
悟空はよろめきながらも力強く立ち上がり、超サイヤ人4の全力を解き放つ。黄金のオーラが眩い輝きを増し、まるで太陽が荒野に降り立ったかのように周囲を照らし出す。赤い毛皮が風に揺れ、血と汗にまみれた体が神聖なまでの生命力で漲る。彼の筋肉が膨張し、傷だらけの拳から迸る力が空気を震わせた。瞳には不屈の炎が燃え上がり、戦士の魂が再び咆哮を上げる。
「くらえ──っ!
龍拳!! 爆発──ーっ!!!」
悟空の叫びとともに、黄金の龍を象った凄まじい一撃が放たれた。
その龍は轟音とともに大地を抉り、荒々しい咆哮を響かせながらゴクウブラックへと突進する。鱗を輝かせた黄金の尾が風を切り、爪が空間を切り裂くほどの勢いで迫る。
だが、ゴクウブラックは鋭い感覚でその脅威を瞬時に見抜き、全身を翻して回避した。龍の牙が空を噛み、地面に激突すると衝撃波が爆発的に広がり、砂塵が渦を巻いて舞い上がる。
「ふん……その技もまた、この肉体が秘める可能性か。
だが、それでは俺に届かん!」
ゴクウブラックは冷笑を浮かべ、勝利を確信した。
大技を外した悟空には致命的な隙が生まれるはず——次の瞬間が仕留める好機。
だが、それは悟空の計算の一部に過ぎなかった。
龍拳の真の標的はゴクウブラック本人ではなく、
歪んだ裂け目が黄金の輝きに包まれ、轟音とともに収縮し始めた。空間がねじれ、閉ざされる瞬間、紫煙の供給が断たれ、分身体が一瞬にして霧散する。無数の影が悲鳴も上げずに消え去り、荒野に不気味な静寂が戻った。
数の優位を失ったゴクウブラックは、初めてその表情に動揺の波が走った。
赤い瞳が一瞬揺らぎ、冷酷な笑みが崩れかける。彼の周囲を漂う黒紫のオーラが不安定に揺れ、鎌を握る手が微かに震えた。
「何……? 貴様、次元の裂け目を狙ったのか……!」
悟空は息を整えながら立ち上がり、血に濡れた口元に薄い笑みを浮かべた。
「へっ……。
これでもう、お前の分身は出てこねえな」
黄金のオーラが再び燃え上がり、彼の瞳が鋭くゴクウブラックを射抜く。戦いの流れが、再び動き始めた。
ゴクウブラックは動揺を隠しきれず、鎌を握る手に力がこもる。
「貴様……次元の裂け目を潰したくらいで勝ったつもりか?」
冷笑を装いつつ、その声に苛立ちが滲み、黒紫のオーラが不安定に揺らめいた。
彼は一歩踏み出し、鎌を振り上げて悟空に迫る。だが、分身体という数的優位を失った今、その動きには焦りの影がちらついていた。
悟空はそれを鋭く見抜き、傷だらけの体に力を漲らせる。
「ああ、俺の勝ちだぜ。───終わりだ、ブラック!」
超サイヤ人4の黄金の輝きが一層強まり、赤い毛皮が風に揺れた。彼はゴクウブラックの攻撃を見極め、素早く身を翻して距離を詰める準備を整える。
ゴクウブラックは苛立ちを抑えきれず、鎌から黒紫の斬撃を放った。
「消え去れ、孫悟空!!」
鋭いエネルギーの刃が大地を切り裂き、悟空を襲う。
だが、悟空はそれを跳び越え、一気にゴクウブラックの懐に飛び込んだ。
「うらぁっ!」
悟空は咆哮を上げ、超サイヤ人4の剛腕に全力を込めて拳を叩き込む。
黄金の衝撃波が炸裂し、ゴクウブラックの胸に直撃した。彼の体が大きく仰け反り、黒紫のオーラが乱れながら吹き飛ばされる。
鎌を握る手が緩み、空中を舞うその武器に悟空の追撃が炸裂。拳の一撃が鎌を直撃し、黒紫のエネルギーが悲鳴を上げて砕け散った。
破片が紫煙となって消え、ゴクウブラックは無手の状態で地面に叩きつけられた。
「ぐっ……貴様……!」
ゴクウブラックは歯を食いしばり、よろめきながら立ち上がる。鎌を失い、赤い瞳に怒りと屈辱が燃えていた。
悟空は息を整え、全身の気を極限まで高めた。
「10倍! かめはめ波!!」
両手を構え、気の奔流を解き放つ。
黄金のエネルギーが膨張し、轟音とともにゴクウブラックへと襲いかかった。
対するゴクウブラックは、武器を失った焦りの中で超サイヤ人ロゼの力を振り絞り、黒紫の「かめはめ波」で迎え撃つ。無手の状態で放たれた波動は、鋭さよりも怨念に満ちた荒々しさを帯びていた。
二つのエネルギーが正面からぶつかり合い、大地が裂け、空が悲鳴を上げるほどの衝撃が広がった。
地面が陥没し、砂塵が嵐のように舞い上がり、周囲の廃墟が粉々に砕け散る。
黄金と黒紫の光が拮抗し、互いに押し合って火花を散らす中、悟空の瞳には不屈の意志が燃え盛っていた。
───彼の体は傷だらけで震えていたが、その魂は決して折れなかった。
「はああああ──っ!」
悟空の咆哮が荒野を切り裂き、黄金の波動が一気に勢いを増す。黒紫の気を押し返し、まるで太陽が闇を飲み込むようにゴクウブラックを包み込んだ。
「ぐああっ……何だ!? この力は……っ!!!」
ゴクウブラックの絶叫が虚しく響き、彼の肉体は金の嵐に耐えきれず崩れ始めた。超サイヤ人ロゼのピンクの髪が燃え尽き、黒紫のオーラが断末魔の悲鳴とともに散乱する。
やがて彼の存在は粒子となって分解され、邪悪な気配は跡形もなく消え去っていく。次第に荒野に吹き荒れていた風も静まり、紫煙の残滓さえも消え失せた。
戦いが終わり、悟空は肩を大きく上下させながら立ち尽くした。額から汗と血が滴り、裂けた道着が風に揺れる。
傷だらけの体が夕陽に照らされ、黄金のオーラが徐々に収まり、赤い毛皮が静かに波打つ。彼は荒れた息を整えながら、周囲を見渡した。
「終わったのか……あいつが言った通り、もう誰もいねえのか……?」
悟空は気を解き放ち、この世界に残る生命の息吹を探った。だが、大地に響き合うものはなく、仲間も、動物も、草木のささやかな鼓動さえも感じられない。荒れ果てた大地に静寂が降り立ち、風が砂塵をそっと運ぶだけだった。
彼は拳を固く握り、空を見上げた。灰色の雲の切れ間から差し込む夕陽が、彼の顔に淡い光を投げかける。
「でも……どこかに、まだ戦うべき奴がいるかもしれねえ。俺はもっと強くなるぞ!」
悟空は力強く笑い、傷ついた体を軽く叩いて気合を入れる。神龍と一体化したその肉体が再び動き出し、彼は空へと飛び立った。黄金の軌跡が荒涼とした世界に一筋の希望を刻み、やがてそれは雲の彼方へと溶けていく。
悟空の冒険は、まだ終わりを迎えるには遠く。
——新たな戦いに向けて、彼の旅はもう少しだけ続いていくのだった。