プロジェクト東京ドールズ:外伝 『忘却のイミテーション・ドール』 作:やさぐれショウ
任務の途中で気を失ったノドカだったが、翌日には元通りになった。時刻は午前8:00…レッスン場にはサクラとノドカを除くDollsと翔の姿があった。翔はこの世界のDollsに対して、自分の正体を隠している。その証拠に、顔には黒いマスクを身に着けている。このマスクで目元を隠すことで、彼女達からは気付かれない。
(サクラとノドカの奴ら、何やってんだ…?もうレッスンが始まっちまうぞ……)
やがて、バタバタと走る音が聞こえて来ると、その音は段々大きくなって行く。その後すぐ、バタンッとドアが開き…
「すみませんっ、遅れました…!!」
サクラとノドカがレッスン場に来た。
「遅刻よ。」
「1分遅刻だ、遅くとも10分前には集合しろ。」
「すみません!」
ミサキと翔からの厳しい言葉を受け、頭を下げて謝罪するサクラ。ノドカはそんな彼女を見て、ペコリと頭を下げる。
「大丈夫ですよ。二人が遅れることは私から説明しておきましたから。」
「ま、仕方ないわ。あの戦闘以来だもの。」
サクラとノドカをフォローするシオリとアヤだが、翔は再び厳しい言葉を言う。
「仲間達とは繋がってんだろうが、せめて連絡ぐらいはしろ。」
「お〜、おっかねぇおっかねぇ…鬼のSさんっすねぇ。」
「あ?」
「……スンマセンした…」汗
翔をからかったヤマダだが、刃の如く鋭い目で睨まれ、すぐに謝罪した。
「…体はもういいの?」
ノドカに問うレイナ。すると、ノドカは自分の頭を指差し…
「ここの、ねぐせ…」
…と、言う。
「…は?」
理由がわからず、困惑するアヤ。
「ねぐせ、が、取れなくて…大変でした。」
ノドカの言葉を聞いたDollsは全員ポカンとし、翔はため息をつく。
「ノドカちゃん…!」汗
やがて、ノドカの髪の毛が跳ねた。その瞬間、メンバー達は笑った。翔は相変わらず無表情を貫いているが…
「ね、ねぐせって!!www」
「確かに、
「ねぐせは、なかなか取れません…」
アヤとレイナは笑い、ユキもノドカに共感を示している。
「ならさっさと直せ…」
呆れながら言う翔。シオリは色々準備をすると、ノドカを呼ぶ。
「ノドカさんこっちへ…直してあげるわ。」
シオリの言葉に頷いたノドカは、何故かサクラの手を引いて向かう。
「の…ノドカちゃん…引っ張ったら危ないよ!?」
「べったりですね。」
「あはは!カルガモのおかーさんと赤ちゃんみたい!」
冷静に言うナナミと微笑ましそうに見守るヒヨ。
「割り込み現象でしょうか?初めて見た者を親と思い込むというあの…」
「違ぇだろ…」
ナナミの考察を否定する翔。
「恐らく、アイツは満開野郎を信頼しているんだろう…理由は知らんがな……」
(おにぎりありがとうって、ノドカはサクラに言っていたな…多分それが答えだろう……)
気を失う直前、ノドカはサクラに言っていた事を思い出す翔。数日前、遅くまでシミュレーターで訓練をしていたノドカの為に、サクラがおにぎりを作った。それがきっかけになったのか、ノドカはすっかりサクラに懐いていた。
「…どちらにしても、ずいぶん個性が出てきたんじゃないかしら?」
「ね?この調子なら“アレ”も上手く行きそう!」
良い方向性に変わったノドカを見て、微笑むレイナとアヤ。
「あの、“アレ”って…?」
アヤの言葉が気になったサクラは、手を挙げて質問する。アヤは「ふっふっふーん♪」と得意げに笑い、質問に答える。
「そりゃモチロン、研究生ノドカのお披露目ライブ!!」
何でも、Dollsはとあるお祭りイベントでライブを披露することになっていた。そこで、新人のノドカもライブに参加し、世間に知ってもらおうと話していたのだ。新入りファンもおなじみのファンも入り交じる為、彼女を知ってもらうには良い機会だと考えたそうだ。
「やったねノドカちゃん!!ノドカちゃんのこと、みんなに知ってもらえるよ!!」
思わず喜ぶサクラだが、ノドカはきょとんとしている。そんな彼女を見て、ハッとするサクラ。そして…
「あ……」
(だけど…この間、倒れたばっかりなのに…大丈夫かな……)
この間の任務で倒れ、復活したばかりの彼女を心配する。それと同時に、ノドカお披露目ライブの構成についてチームリーダー達が議論を始める。
「構成はどうする?なるべく人数を絞った方がセンセーショナルだけど。」
「ソロは…さすがに難しいですしね……」
「かといってメンバー全員だとノドカの印象が−−」
すると、サクラが手を挙げる。
「あのっ!!」
メンバー達が注目する中、サクラは提案する。
「私とノドカちゃんのデュオで歌わせていただけませんか?」
それは、サクラとノドカが2人で歌うということだった。
「サクラさんとノドカさんで…?」
「はい…!」
サクラはノドカの手を優しく握りながら言う。
「私のワガママなんですけど、隣に立っていたいんです。何があっても、すぐにフォローできるように…」
そんなサクラを見て、翔は口角を上げる。
「中々面白い事言うじゃねぇか、俺は良いと思うぜ…?」
(可愛い子には旅をさせろ、だったか…新人には色々経験して貰わねぇと行けねぇからなぁ。)
「なら、『
この曲は、チョコのCMソングにもなっている歌だ。ヒヨは全然違う振り付けを披露し、ナナミに呆れられた。アヤもシオリの提案を良いと言う。すると、ノドカはこの曲を知っていると言い、歌い始める。だが……
「お経みたい〜!!」
「マジそれ!!ダンスはあんなに上手いのに…なんで!?」
「歌詞が入っているのは良いが、ボイトレレッスンは必須だな……」汗
お経を唱えるように歌う為、ヒヨは笑い、アヤは驚愕し、翔は困った。
「サクラ!!これは形になるまで相当時間が掛かるわよ?」
「だな、それなりに覚悟をしておいた方が良いぞ……」
「は、はい…!!」
アヤと翔の言葉にプレッシャーを感じるサクラ。だが……
「…大丈夫、です。サクラと歌えるなら…大丈夫です。」
…と、ノドカは言った。
「ノドカちゃん…!!」
(やっとノドカちゃんに先輩らしいことしてあげられるかも…!)
サクラはノドカの手を握り…
「一緒に頑張ろうね、ノドカちゃん!!」
…と、言った。アヤとレイナによる特別レッスンが始まると聞き、逃げようとするヒヨとナナミ……彼女達のレッスンは厳しく、過酷である。そんなレッスンから逃れようとする2名を、シオリと翔は逃さなかった。途端、ヒヨとナナミの叫びが響き渡った。
「……。」チラッ…
ふと、ミサキとヤマダに目を向ける翔。
(険しい顔してんな…多分、またノドカが戦闘で倒れねぇか心配しているか……それとも、ノドカがスパイだと疑っているか……か?んで、ヤマダに関しては…まぁ、特疾研を探るつもりだろう…アイツの情報収集能力は半端ねぇからな……)
妙な胸騒ぎを感じつつ、翔はDollsのレッスンを見守った。サクラは先輩としてノドカにしっかり教え、これなら大丈夫だろうと感じていた。
(ただ、問題は……奴、小山内だな……アイツの目の奥に、深い闇を感じる……ぜってぇ何かあるっつっても、もう知っている……奴はDollsに目ェ着けてやがるからな……せめて、9人のDollsは守らねぇとな……)