プロジェクト東京ドールズ:外伝 『忘却のイミテーション・ドール』 作:やさぐれショウ
シオリが振り下ろした剣を受け止めたサクラは、「この戦いは間違っている」と抗議した。
「サクラさん!?何を……!!」
「お願いです、武器を納めてください…!!」
「サクラさん、危険ですから下がって」
「私達は仲間です!!」
シオリの言葉を遮り、叫ぶサクラ。しかし……
「何やってんだバカ野郎!!ソイツはお前を殺そうとしたんだぞ!!それが仲間な訳ねぇだろ!!」
…と、翔は怒鳴る。それでもサクラは怯まない。
「たった9人…いえ、10人だけの!!この世界に忘れられて…それでも巡り合って今を生きている…それが、私たち…Dollsなんじゃないんですか!?」
「サクラさん…ッ!?危ない!!」
「サクラ!!今すぐ離れろ!!」
シオリと翔が異変を察知して叫ぶも、時すでに遅し……
ブシュッ!!
ノドカの剣が、サクラの身体を貫いていた。ノドカはサクラの後ろにおり、背後から剣で突き刺したのだ。
「…ぅあっ…!!」
「「サクラァ!!」」
ノドカに刺され、その場に倒れるサクラ。
「…この野郎ッ!!」
「よくもサクラにッ!!」
翔とミサキは連携し、ノドカに攻撃を仕掛ける。しかし、翔の蹴り技もミサキの剣も、ノドカは華麗な身動きで躱し続ける。
「はやくサクラに治療を!!」
レイナの言葉を聞き、チームリーダーはサクラの治療を開始する。
「あら…ノドカったらギアが取れてないじゃない。」
そんなサクラに歩み寄る小山内。彼女の前に立ちはだかるヤマダ。
「ほら…治療なんてさせちゃダメよ?抜き取れないなら攻撃を続けて…ギアが空になるまで血を流させれば良いの…そうね……」
小山内はDollsメンバーを舐め回すような目で見回し……
「どのギアでもいいわ…頑張って?」
…と、狂気に満ちた笑顔を見せる。ノドカはスイッチが入ったように、更に攻撃的になる。ミサキを翻弄し、翔すら近付けさせない。
「Sさん、チェンジっす!!どっせええい!!」
翔と入れ替わる形で、ノドカ目掛けてハンマーを振り下ろすヤマダ。だが、ヤマダのハンマーは地面に衝突した。その後、ミサキとノドカは剣を交えるが…遂に、ノドカの剣がミサキの剣を弾いた。
「ミサキさ…!?」
そして、ヤマダのギアに剣を突き刺そうとする。その直後…
ガシィッ!!
「…言ったろ、させるかってなぁ…?」ボタボタ…
翔が左手でノドカの剣を握って止めたのだ。彼の手からは、真っ赤な鮮血が落ちる。
「なっ…!?」
「え、S…!!」
「S、さん…!!」
翔の行動に、唖然とするミサキとヤマダとユキ。
「……。」ググッ…
「……!!」ギチッ…ブシュッ……ポタポタ……
ノドカが腕に力を入れる度に、翔の左手から血が落ちる。
「おいどうしたァ?てめぇの力はこんなモンか、もっと本気で…殺すつもりで掛かってこいよォ!!」
翔はそう叫ぶと、右手のイクサナックルから衝撃波を放った。
「!?」
衝撃波が命中し、吹き飛ばされるノドカ。
「…あっ!!」
翔の左手には、痛々しい傷が出来ていた。
「アヤさんッ、早くッ!!」
「ヤマダに…そしてSに、何すんのよぉ!!」
「馬鹿…!!」
「アヤ!?待ちなさ…ッ、ユキは後方へ下がって!!シオリと共にサクラの治療を!!」
レイナはメンバー達に指示を出す。
「ナナミ、ヒヨ、態勢を整えなさい…アヤと前に出るから、サポートをお願い!!」
そして、6人態勢で翔と共に、ノドカに攻撃を開始するDolls。シオリとユキは、サクラの治療を行う。それでも、ノドカは高い身体能力を駆使して、攻撃を避け続け、反撃をしてくる。
「アハハハハッ♪そう、そうよ…!!ギアが1つ、2つ…嗚呼♪きっと『ノドカ』も喜ぶわぁ!!」
Dollsと翔と戦うノドカを見て、狂笑する小山内。
「私も行きます。」
「シオリさん…」
サクラの傷が癒えたタイミングで、シオリも加勢に入る。
「ユキさん、サクラさんをお願いします…!」
そして、戦闘に入る。
「…めて……」
「サクラ、さん…?」
「やめて……」
彼女の小さい声は、戦うメンバー達には届かない。ノドカの力は凄まじく、次第にDollsは押され始める。
「…うッ!!」
「っ、なんて力……」
「いけませんヒヨさん、防御戦じゃ勝てないです!!」
「わかってるよ、わかってるけど……」
「一旦下がれ!!俺が行く!!」
苦戦するDollsに代わり、翔は自らノドカと戦う。しかし、それでも互角だった。
「迷っちゃダメ…!!私が出ます!!」
「待ってシオリ!!まだSが…!!」
「…ちっ。」ガッ!!
翔の足とノドカの足が激突したタイミングで、彼は一旦距離を取る。そこに、シオリが剣を思い切り振り下ろした。
ガキィンッ!!
「…ッ!?」
シオリはノドカに剣を弾き飛ばされ…
(あっ……)
「シオリーー!!」
ガァンッ!!
「…っぶねぇ、おいシオリ…勝手に前出んじゃねぇよ……」
しかし、翔がイクサナックルでノドカの剣を受け止め、シオリを助けた。
「…え、Sさん…今、名前で……」
「んなこたァどうでも良い…一旦下がっ……?」
だが、次の攻撃が来ることは無かった。ノドカの動きが、止まったのだ。
「止まった…どうして…?」
近くからは、綺麗な歌声が聞こえてくる。目を向けると、サクラが歌を歌っていた。
「この曲って……」
「Miracle Smile……」
サクラが歌っているのは、ライブで披露する予定曲『Miracle Smile』だ。戸惑うメンバー達……その時、ノドカが持っていた剣をガランッと落とす。
「あ…私は……サクラと……一緒に……」
そして、両腕を広げるサクラの元に…フラフラと歩み寄って行く。そして、サクラはノドカを抱き締めた。
「サク、ラ……」
「うん、そうだよ…サクラだよ、ノドカちゃん…!!」
サクラの歌を聞き、正気を取り戻したノドカ……攻撃は止んだ。
『の…ノドカちゃん、停止しました……まさか、あの歌で?』
観測室で見守るカナは、困惑しながらも斑目に指示を仰ぐ。
『所長…ご指示を……』
『……。』
斑目は少し黙り込む。彼女の目先のモニターには、Enemyの表示が出ている。それは……ノドカの事だった。
『各員、目前の『敵』……適正反応が出ている個体を、討伐しろ。』
Dollsにも翔にも、斑目の言葉の意味はすぐに分かった。適正反応が出ている個体、目前の敵…それは、紛れもなくノドカの事だった。
「なっ…何故ですか、ノドカちゃんはもう…!!」
『もう…ピグマリオンと相違ない……』
「……!!」
ノドカはピグマリオンの肉芽を移植され、誕生したデザインドール…先程その肉芽を活性化させる薬液を打たれたため、ピグマリオンとして覚醒を始めていた。だからこそ……
『その娘はもはや人の世では行きられない…我々が救うことのできる存在では無くなった…討伐すべき敵だ……』
こうしている間も、ノドカは段々ピグマリオン化していく。
「でも…こんなに…こんなに温かいのに…!!」
Dollsメンバー達は、サクラの声を聞き…悲しそうな顔をする。翔も口角を下げる。
「Miracle Smileを…ステージで一緒に歌うって、約束したんです!!」
(サクラ…くっそぉ、本当に胸糞
どうしようもない状況に、苦虫を噛み潰したような顔をする翔。
「なっ……何をしているのノドカ…命令を聞きなさい!!」
「…黙れよ…」ガチャッ…
ヒステリックに叫ぶ小山内にイクサナックルを向ける翔。それでも彼女はお構い無しに、金切り声を上げる。
「ほら今よ!!眼の前のソイツのギアを…心臓を抜き取るの!!」
「…っせぇな…!!」ギリリッ…
段々イライラして来た翔は、ナックルを握る手の力を強める。それでも尚、小山内は発狂しながら言う。
「早く!!ノドカに心臓を!!心臓しんぞうしんぞうしんぞーッ!!」
「ッ!?おい、後ろだ!!」
「しーー」ゴフッ!?
小山内の背後には、新型ピグマリオンが迫っており…背後から彼女の左胸を貫いた。
「なっ…!?」
「ちょ、ちょっと…!!ウソでしょ…!?」
新型ピグマリオンは亡骸と化した小山内を持ち上げる。その直後、2体目…3体目と、新型ピグマリオンのみが続々と現れる。
『新型ピグマリオンです!!包囲されています…!!1、3…いえ、5!?』
『くっ…ノドカの漏れ出るフィールに惹かれたか!!』
『まだ増えていく…!!』
やがて、新型ピグマリオンの群れはDollsと翔を取り囲んだ。
「おいおいマジすか……」
「数はどれくらいだ?」
『…恐らく10体を超えています!!』
「……!!」
絶望的な状況に、サクラはノドカを抱き締めたまま…青ざめていった。