プロジェクト東京ドールズ:外伝 『忘却のイミテーション・ドール』 作:やさぐれショウ
おかあさん
おにぎり
ともだち
あ、し……
まま
ともだち
心配そうな目をするノドカに、サクラは言う。
「大丈夫だよノドカちゃん……みんなが、いるからね!!」
ピグマリオンに取り囲まれたDollsと翔。それぞれ武器を持ち、ノドカを守りながら戦う。シオリ、レイナ、アヤはガンに持ち替え、遠距離攻撃を開始…敵が怯んだ隙に間合いを詰め、ナナミとユキで触手を退けて…ヒヨ、ヤマダでアタックを仕掛けるという作戦だ。銃声を起点にし、最終防衛ラインはミサキとサクラと翔だ。
「お願いします!!」
「「「OK!!」」」
「OK……です!!」
「あぁ、了解した。」
まもなく、チームリーダーによる銃撃が始まり…ナナミとユキが剣で新型ピグマリオンの触手を切断する。最後に、ヒヨとヤマダのハンマーでトドメを刺す。
「後ろから来るわ!!攻撃を休めないで!!」
背後から、別の新型ピグマリオンが迫る。すかさずヒヨが攻撃を仕掛けるが、避けられて頭上を通過された。更に、骨のようなピグマリオンも通過する。
「ミサキさん!!」
「くっ…!!」
ミサキは骨のようなピグマリオンに攻撃を命中させたが、新型ピグマリオンを打ち漏らした。
「っ!!」ドゴォッ!!
ミサキが打ち漏らしたピグマリオンは、翔のイクサナックルに殴られて撃破された。サクラも新型ピグマリオンに対抗できているが、別の新型ピグマリオンに攻撃され、地面を転がる。すると、ノドカが手を伸ばし…サクラの剣を握る。
「ノドカちゃん…!」
サクラはノドカに微笑む。
「ふふっ、ダメだよ!ここは先輩に任せて…」
「サクラ来てるぞ!!」
「ッ!?」
翔の声を聞き…サクラは剣でガードをし、攻撃を防いだ。しかし、新型ピグマリオンの触手に剣を絡まれた。
「ノドカちゃんは、この後…ライブが、あるんだから…一緒に…!!一緒に、ステージに立つんだから…っ!!」
その時、ミサキが撃破した筈の骨のピグマリオンが起き上がり、サクラに迫る。
「ッ!!」
慌てて翔が骨ピグマリオンに向かうが、そんな彼を新型ピグマリオンが攻撃し、吹っ飛ばした。
「があっ!?」
「S!!」
その間に、骨ピグマリオンはサクラに狂爪を振り上げる。
「っ!?」
その時、ノドカが咄嗟にサクラを突き飛ばし…狂爪はサクラに当たらなかった。それと引き換えに……骨ピグマリオンの狂爪は、ノドカの腹部を貫いていた。
「……!!」
「…ゴホッ…こん、どは……私、が……まもれた……」
それが、ノドカの最期の言葉だった。
「あ……」
サクラを庇ったノドカは、骨ピグマリオンと新型ピグマリオンの餌食となり、惨殺された。
「あ…ああ……」
それでも、ノドカは笑っていた……和花とサクラを投影し、彼女を守ったのだった。その後……
「アアアアアアアアッ!!!!」
サクラは発狂しながら、ノドカを殺害したピグマリオンと戦い…撃破した。ピグマリオンは全て撃破されたが、今度は…空に、次元の歪みが出現した。
「何…まだ来るの!?」
「そんな…S……え、す……えっ?」
翔が吹き飛ばされた方を見ると、砂埃がまっていて…近くには彼がいつも身に着けている黒いマスクが落ちていた。そして、砂埃に1つのシルエットが浮かび上がる。
「…いってぇなぁ、この野郎ォ……」
砂埃から出て来た姿に、Dollsは皆驚愕する。
「…え、嘘…し、翔君…!!??」
「えっ、翔さん…!?」
「ま、マスクが……!!」
「…え、Sさんが……翔君…!?」
砂埃から出て来たのは、血を拭う翔の姿だった。死んだはずの彼を目の当たりにし、Dollsは言葉を失っていた。
「……。」
「…化け物の次は妖魔か、俺が潰す……」
翔はイクサベルトを身に着けると、イクサナックルを構える。
「…翔さん、翔さんだぁ!!」
「翔ぉぉおおおお!!…ヒック、クスンッ…生きてる…翔が、生きてる…!!」
「翔…さん……♪」ポタポタ
Sの正体が翔であることを理解したDollsは、涙を流して喜んだ。
『翔く…いえ、Sさん!!』
「もう良い…正体がバレた。」
『…えっ!?』
「Sと呼ぶ必要はねぇ……俺はSではなく、青空 翔だからなぁ!!」
通信機越しのカナにそう言うと、イクサナックルを左手に押し当てる。
ナックルから低い電子コールが響くと、次にサイレンのような待機音が響き始める。
特に変身ポーズを取らず、翔はナックルをベルトに取り付ける。
ベルトのイクサジェネレーターが赤く点滅し、十字架のようなエフェクトが回転しながら翔の前に移動…スーツを形成し、翔の全身に重なり、仮面ライダーイクサへと姿を変えた。顔面部のシールドが閉じた『セーブモード』である。
「翔さんだぁ!!わーい!!」
「…ッハハ、まさか…変装してたなんて…流石のヤマダでも、気付けなかったわ……」
喜ぶDollsを背に、構えを取るイクサ。彼の前には、2つの顔を持った巨大な妖魔が出現した。『ピュア・アルカリア』と呼ばれる個体で、力も知能も重ね持つ強敵だ。しかし、イクサに変身した翔は『妖魔退治の専門家』と呼ばれており、数々の強力な妖魔を倒して来た。そのため……
「っらぁ!!」ドゴォッ!!
「!!??」
「ッ!!」ゴスッ!!ドゴッ!!ボコッ!!バキィッ!!
ピュア・アルカリアのような強力個体は、彼にとってはそれ程の脅威ではなかった。ピュア・アルカリアの爪攻撃を軽々と躱し、カウンターでダメージを与えて行く。
「……そうだったのね、翔君…♪」
「Sって仮名で活動し、私達を…そして、罪の無い人達を守ってくれてたんですね……」
「翔さんなら、あの怪物を…倒せるかもしれないわ…!!」
「翔、お願い…勝って…!!」
翔の勝利を祈るDolls。彼が使用するライダーシステムは不完全であり、使用者へ掛かる負担は凄まじい。最悪の場合、死亡する事もあり得る…それでも、セーブモードのイクサでピュア・アルカリア以上の戦闘力を見せる翔。武器はイクサナックルしか無いものの、ブレイクダンスのような回転蹴り、中段蹴りや踵落とし等の足技、背負投げや巴投げ等の投げ技、エルボーやストレート等の腕技等…多彩な技でピュア・アルカリアを追い詰めていく。ピュア・アルカリアを投げ飛ばしてすぐ、イクサは銅色の足の形をしたフエッスルを読み込む。
低い電子コールが響くと、イクサは空中に飛び上がり…ドリルのように高速回転しながら、ピュア・アルカリアに飛び蹴りを繰り出した。ピュア・アルカリアは完全に地面に埋まり、身動きが出来なくなった。イクサは空中へ再び飛び上がり、銀色のイクサナックルの形をしたフエッスルを読み込む。
そして、イクサナックルをベルトから取り外すと…空中から必殺技『ブロウクン・ファング』を放つ。ナックルから放たれた5億ボルトの熱線は、ピュア・アルカリアを焼き尽くし、ガラスが砕けるように爆散させた。
「やった…翔が、勝った!!」
「翔君、スゴいです♪」
「流石だわ、翔君♪」
勝利したイクサは変身を解き、翔の姿に戻った。彼が向かったのは、ノドカの遺体を目の当たりにするサクラだった。ノドカの亡骸を抱き締め、顔を俯かせている。
「……。」
そんな彼女を見て、翔は何も言えなかった。他のメンバー達も、暗い顔をしている。
『みんな、ご苦労だった。ライブの時間だ。』
「もう敵はいねぇんだろうなぁ?どうなんだ?」
『周囲にピグマリオン及び妖魔の反応はありません。翔君、戦闘は終わりました。お疲れ様です。』
翔が倒したピュア・アルカリアが、最後の敵だったようだ。
「…おい、どうするつもりだ?」
「……。」
翔の言葉に、何も答えないサクラ。
(こうなるのも当然か…仲間が命を落としたんだからなぁ……)
その時、シオリがこう言った。
「斑目さん、『Miracle Smile』は私とミサキさんの2人で」
「いいえ、私が歌います。」
シオリの言葉を遮るように言うサクラ。
「…サクラ、歌えるのか?」
「歌わせてください…ノドカちゃんと、約束したんです…!!」
目に涙を浮かべながら言うサクラ。それを見た翔は、「やると決めたからには、最後までやれ。手ェ抜いたら許さねぇからな?」と言った。メンバー達はライブ会場まで移動し、準備に取り掛かる。そして、夜になり…祭りのフィナーレとなるDollsライブが始まった。翔は観客に紛れ、Dollsを見守っていた。サクラは先程までノドカとのやり取りをしていたことを思い出し、涙ぐむ。近くには、ミサキとシオリが…ステージの恥には他のチームメンバーが…そして、1番前には…観客と共に翔がいる。そして…サクラの前に、楽しそうに笑うノドカの幻が見えた。サクラは涙ながらに、最後まで全力で歌い切った。
(ね、ノドカちゃん…1人じゃ、ないよ……?)
こうして、ライブは終わった。ライブ終了後、Dolls一行は斑目とカナと共にドールハウスへと帰還する。そこには、翔もいる。彼は終始、Dollsメンバーからくっつかれていた。
「えへへっ、翔〜♪」ギュ~
「離れろ、暑いだろぉが……」
女性が嫌いな翔は心底迷惑そうな顔をしている。それでも、メンバー達は彼から離れようとしない。
「や〜だ〜♪だって、やっと…翔に会えたんだもん…もう離れたくないよ……」
「…ちっ、重てぇ奴だな……あっちぃんだよ、離れろ…!!」
「わわっ!?もう、翔ったら……」
アヤを無理矢理引っ剥がしても、今度はユキがくっついて来る。
「翔さん、会いたかったです…♪」
「お前もくっつくんじゃねぇよ……」汗
「ヒヨもヒヨも〜!!」
「……この野郎。」イライラ…
「やめなさい、翔さんが困ってるでしょう?」
翔にくっつくユキとヒヨを制止するミサキ。
「そんな事言ってぇ、ミサキさんも翔さんにくっつきたいんじゃないんすか〜?」ニヤニヤ
「う、うるさい…!!///」
ヤマダにからかわれ、図星を突かれたのか顔を赤らめる。
「皆何だかズルいわ、私だって…翔君にくっつきたいのよ?」
「私もです、翔君…よろしいですか?」
レイナとシオリも翔にくっつきたいという欲望を抑えきれず、彼に同意を求めたが…彼からはあっさり却下された。
「ダメだ…暑いからなぁ……後、お前達はアイドルだろうが…スキャンダルとか捏造されたらどーすんだ…」
「その時はその週刊誌を社会的に抹殺してやります…フフ、フフフフフフフフ……」
Dollsに呆れながらも、彼女らと共に歩く翔。
(これで、9人のDollsは守れた……ん?)
ふと、夜空を見上げると…空には北斗七星が見えた。その近くには、1つの流れ星が見える。
(あの流れ星、段々デカくなってるな……何なんだ、一体…?)