プロジェクト東京ドールズ:外伝 『忘却のイミテーション・ドール』   作:やさぐれショウ

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拾陸 事件のその後

ドールハウスの観測室にて、斑目が資料に目を通していた。そこに、カナがやって来る。

 

「所長、特疾研の調査は……?」

 

「あぁ、翔の調査とこちらの推測通りだった。」

 

今回の事件の詳細は……フィギュアスケートのジュニア杯が行われいた会場近くの公園で、居眠り運転をしていたトラックが暴走……多数の死傷者を出したと。だが、これは世間に公表できるよう都合良く解釈された仮の詳細だ。本当の詳細はというと……

 

はぐれピグマリオンがトラック運転手を捕食し、その上で起こった事故であった。唯一身元人が確認できた被害者は、フィギュア選手であった『能代希美』と、今回の黒幕であった小山内の実子『小山内(おさない) 和花(のどか)』だった。和花はトラックの衝突で即死……希美ははぐれピグマリオンに両足を切断され、意識を失ったが辛うじて一命を取り留めた…そのはぐれピグマリオンは、政府部隊により倒された。暴走したトラックのドライブレコーダーからは、トラック上部のピグマリオンを指差す希美と、彼女を庇った和花が映っていた。ピグマリオンが見えていたのは、希美のみと考えられる…ピグマリオン移植への高い適正値が関係していると斑目は考えている。その後、黒幕の小山内が死んだ事で、移植研究は凍結……彼女はドライブレコーダーに映った愛娘が死ぬ瞬間を見て、狂気を募らせたそうだ……そして、何故ドール達のギアを狙ったのかと言うと…特疾研の地下室から、冷凍保存された小山内 和花の遺体が発見された。ドール達のギアを奪い、それを彼女に適合させ…愛娘を蘇らせようとしていたのだ。だが、ギアは和花には適合しなかったようだった。

 

「…そう……そうですよね……」

 

「…全くだ、聞いてて反吐が出るぜ……」

 

「「っ!?」」

 

その時、観測室に翔が入って来た。

 

「…翔…!!」

 

「化け物を人間に移植だぁ?ふざけんじゃねぇってんだよ…これ以上、俺みてぇな人の形をした怪物を生み出すなってんだ……」

 

「…俺みたいな…人の形をした、怪物……どういうことですか?」

 

「これを見ろ、俺についての資料だ……」

 

翔が渡したのは、時空管理局が密かに進めていた生物兵器による妖魔殲滅計画の資料だった。そこには……

 

「「!!」」

 

翔の身体に、『アマゾン細胞』という生物兵器を打ち込み…ストライカーの指揮をしつつ、妖魔殲滅をさせる高い知能を持つ生命体にしようとする事…そして、彼のアマゾン細胞についての経過と、彼を実験失敗個体とし、除名するという項目が書かれていた。彼のみならず、全ての世界(チャンネル)にいる隊長全てに、アマゾン細胞を打ち込んでいるという項目も書かれている。

 

「翔が、人間じゃない……そんな、バカな……」

 

「ストライカーの隊長に任命された時点で、俺はもうとっくに人間じゃ無くなってんだ…この腕輪がある限り、俺は人間の姿を保っていられるんだ。つっても、腕輪ん中にはアマゾン細胞の覚醒を制御する薬が入ってんだがな……時空管理局という極悪組織はな、俺達隊長をも…生物兵器として散々利用していたんだ……」

 

彼の左腕には、『アマゾンズレジスター』と呼ばれる腕輪が巻かれており…この中に、覚醒制御薬が入っている。その為、彼は人の姿を保つ事ができるのだ。

 

「…ひ、酷い……!!」

 

「アンタらも、いずれ…これと同じような事を知るだろう……つーわけで、返せ。」バシッ!!

 

「あっ!?」

 

翔は資料を奪い取ると、観測室を退室していった。その後、今回の事件についての資料は纏められ、厳重に保管される事となった。

 

 

 

 

 

その頃、とある病院にて……

 

「……ふぅ。」

 

検査入院を終えたドールハウスのマスターが、退院した。そこに、翔が姿を現す。

 

「…よぉ。」

 

「…ん?君は、一体…?」

 

「青空 翔…アンタが入院している間、Dollsの臨時マスターとして働いていた。挨拶ぐれぇしねぇと、失礼だろぉが…なぁ?」

 

「わ、態々その為にここまで来たの?」

 

「それだけじゃねぇ、アンタの同行者として勝手に来ただけだ。」

 

マスターは病院からドールハウスまで、歩いて行かなければならない。その為、彼はマスターに何かあってからでは遅いと考え、自ら同行者として彼を護衛する事にしたのだ。

 

「おら行くぞ。」

 

「あ、うん…!!」

 

翔の後を慌てて着いていくマスター。

 

「冗談だ、アンタのペースに合わせる。慌てる必要はねぇよ…」

 

「あ、ありがとう…」汗

 

翔は退院したばかりのマスターを気遣い、彼のペースに合わせて歩いた。

 

 

 

その頃、ドールハウスでは……

 

「カナさん危ない!!」

 

「えっ…きゃあっ!?」

 

「わわわっ!?」

 

カナとDollsメンバーがぶつかってしまい、資料や缶詰等が地面に落ちてしまった。

 

「いたた〜〜……」

 

「ヒヨ、カナ、大丈夫!?」

 

「前見て歩かないからですよ…!」

 

「あう…ごめんなさいカナちゃん……」

 

「ううん、私こそごめんね!」

 

お互いに謝ったところで、ナナミが散らばった資料を集め終えた。

 

「これ、集め終わりました。すみません……大事な物なのに……」

 

資料の1番上には、ノドカの……能代希美の資料があった。

 

「そう、極秘資料ですよ!…なんて、もう処理の終わった案件ですけど…管理はしっかりしないといけませんよね。」

 

「処理の、終わった……」

 

カナの言葉を聞き、悲しげな顔をするナナミ。

 

「ナナミちゃん…?」

 

「ナナミ……」

 

「…いえ、何でもないです。」

 

「そう…?」

 

カナとレイナに心配されたが、ナナミははぐらかしてみせた。

 

「それじゃあはいこれ…」

 

カナはレジ袋いっぱいの缶詰等をメンバー達に渡す。

 

「ふふっ、こんなにたくさん…パーティーでもするんですか?」

 

「えへへ、マスターも帰ってくるんでしょ?翔さんも帰って来てくれたし、さ・し・い・れ!いっぱいもってくんだ〜〜!!」

 

「マスターには長い検査お疲れ様でしたって労いを……翔君にはマスターの代わりになってくれてありがとうって感謝と、おかえりなさいっていう気持ちを込めてね。」

 

「それでお料理ですか、いいですね!」

 

Dollsは帰ってくるマスターと、マスターの代わりになってくれた翔に感謝を込めて料理を作るようだ。

 

「だけど、怪我しないように気を付けてくださいね?」

 

「…それは大丈夫ですよ。作るのは“おにぎり”だけなので……」

 

「差し入れにおにぎり…?おにぎりだけ?」

 

メンバー達の言葉に、困惑するカナ。

 

「なぜかしらね…今日は皆…そういう気分なの……」

 

レイナはそう言うと、空を見上げる。晴れた空に、そよ風が吸い込まれていったのが見えた。その後、Dollsは女子寮にておにぎりを作っていた。あるメンバーは教えてもらいながら、あるメンバーは変わり種を作ってみせたり……あるメンバーは手本のような綺麗なおにぎりを作ったり……そして、試食をしてみたりと……

 

「美味し〜、幸せ〜〜♪ねぇサクラちゃん!マスターと翔さんの喜ぶ顔、ワクワクしちゃうね?」

 

「うん…とっても楽しみ!」

 

帰って来るマスターと翔の喜ぶ顔を想像し、楽しみにするメンバー達。サクラには…ノドカの面影が見えていた。

 

「みんなで一緒に食べようね…!」

 

大皿には、メンバー達がそれぞれ作ったおにぎりが並んでいた。

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