プロジェクト東京ドールズ:外伝 『忘却のイミテーション・ドール』 作:やさぐれショウ
その日の夕方……ドールハウスに帰って来た翔は、マスターと別れて屋上へと向かった。Dollsメンバーはマスターを出迎え、作ったおにぎりを手渡した。
「あれ?翔さんは?」
「そう言えば、翔君が居ませんね…マスター、翔君は?」
マスターの姿はあれど、翔の姿が無いため…メンバー達はマスターに翔の居場所を聞く。
「青空君なら、僕と別れた後…上に行ったような……」
「上…?」
マスターの言葉に、困惑するアヤ。すると、サクラが言う。
「もしかして、屋上にいるのでしょうか…?」
「それなら、翔君のところに行きましょう?外で食事をするのも、たまには悪くないでしょう?」
「ま、そーっすね。」
Dollsとマスターは、翔が居ると思われる屋上に向かった。
その頃、屋上では……
「……。」
翔が1人、夕焼けの空を見ていた。次第に空には、星が輝き始める。
(……見つけた……)
彼の視線の先には、北斗七星が見える。その近くに、段々大きくなっていく1つの光も見える。それをジッと見ていると、彼の頭にある出来事がフラッシュバックする。それは、彼が命を落とし…2体の神の手により、【プロジェクト東京ドールズ】の世界へと飛ばされた時の記憶……光に包まれ、とある公園に降り立った。その時…明けの夜空に北斗七星が輝いていたのだ。
(…成る程、そういう事だったのか……)
光の正体を知った翔は、思わず自分の手を見る。彼の手は、少しずつではあるが…段々透けていくように見えなくなっていた。そこに……
ガチャッ……
「翔さん!!」
サクラを初めとするDollsと、マスターがやって来た。咄嗟にポケットに両手を突っ込む翔。
「…翔君、ここに居たんですね?」
「……何の用だ?」
「ヒヨ達、翔さんとマスターの為におにぎりを作ったの♪」
「……そうか。」
「翔、食べてくれる…かな…?」
「…あぁ、貰おう。」
翔はおにぎりを1つ手に取り、口の中へと運ぶ。
「「「…!!」」」
メンバー達には見えてしまった。翔の手が消えかかっている事に……
「……美味いじゃねぇか。」
無表情でおにぎりの感想を言う翔は、あっという間に完食した。
「翔さん…手が……!!」
ユキがそう言うと、翔は「あぁ、これか…」と言う。そして、北の空を指差す。
「あれが見えるか…?」
メンバー達は彼の指差す方角を見る。
「あれは…北斗七星ですよね?」
「それもそうだが…その隣だ……」
「んあ?流れ星っすか?てか、デカくね…?」
北斗七星の隣に見える流れ星は、次第に大きくなっていく…それは、メンバー達にも分かる程だ……そして、翔は静かに語り出す。
「明けの夜空に北斗七星が輝く頃、1つの光がこの地に堕ちる…それが、俺だ……」
流れ星には、微かに人の影が見え…それが、今まさに転生している自分である事が分かった翔。それが分かった後すぐ、彼の身体は少しずつ消えていっている。
「待ってよ、翔…意味分かんないよ……ねぇ、ちゃんと説明してよ…?」
「結論から言うと、俺はこの世界の住人じゃねぇって事だ……んで、あの流れ星にはこの世界に降りる俺が居るんだ。」
翔はそう言うと…「着いて来い」とどこかへ向かって歩き出す。突然歩き出した翔を慌てて追い掛けるメンバー達。やがて、やって来たのは…ドールハウスからそこまで離れていないとある公園……ここは、翔が初めて降り立った場所だった。
「もう一度言う……明けの夜空に北斗七星が輝く頃、1つの光がこの地に堕ちる……それが俺だ……」
北斗七星が見える頃、流れ星の光は段々大きくなっていく。それと同時に、翔の身体が光り始める。
「翔君、嫌よ…死なないで……私達を、置いて行かないで…?」
レイナは涙を流しながら翔に訴える。
「バカ、俺は死なねぇ…ただ、元の世界に…帰るだけだ……」
流れ星がこちらへ近づく度に、翔を纏う光も段々強くなる。
「こっちの世界に来た俺を、よろしく頼む。」
「翔さん…えぇ、分かったわ……短い間でしたが、お世話に…なりました……!!」
「泣くんじゃねぇよ、ミサキ…らしくねぇぞ?」
段々消えて行く翔は、微かに口角を上げた。
『…じゃあな?』
そう言い、彼の姿は消えてしまった。Dollsは涙ながらに、消えていく翔を見送った。そして…流れ星は彼女達がいる公園にゆっくりと落ちて来て、光の中から傷だらけの翔が現れた。メンバー達は彼を保護し、ドールハウスにある医務室へと運んだ。
「……?」
この世界に転生した翔が目を覚ますと、まず斑目が自己紹介をする。しかし、翔は斑目を警戒し…何も言わない。カナは名刺を出しながら翔に自己紹介をし、『私達は貴方の味方です』と訴えた。それでも、翔は信じなかった……そこに、マスターが彼に話し掛けると…彼は少しだけ、耳を傾けてくれた。そして、『自分は青空 翔だ』と自己紹介した。
「青空君、突然の事で戸惑ってるかもしれないけど…ここにいる人達は皆、君の味方だよ?だから、安心して欲しい。」
マスターの後ろにいるDollsも、翔に優しい笑顔を向けていた。そうして彼は、ドールハウスに保護され…専属の用心棒として働く事になったのだった。