プロジェクト東京ドールズ:外伝 『忘却のイミテーション・ドール』 作:やさぐれショウ
ドールハウスに到着すると、カナは嬉しそうな声色で斑目を呼ぶ。
「斑目さん斑目さん!!翔君が…翔君が、帰って来てくれたんですよ!!」
(俺が帰って来た…何を言ってるんだ……?)
戸惑う翔を余所に、ドールハウスから斑目が姿を見せた。
「……!!」
翔を見るなり、目を丸くする斑目。
(普段の斑目さんとは思えねぇな……)
表情には出さないが、心の中では呆れている翔。
「…青、空……いや…翔……翔…!!」
目に涙を浮かべた斑目は、翔を力一杯抱き締めた。だが…
「気安く触んじゃねぇ…」
翔がそう言うと、斑目はすぐに翔を離す。
(やはり、翔は怒っているのか……私が、しっかり向き合わなかったばかりに……)
「さぁ翔君、遠慮せずどうぞ上がってください♪」
カナと斑目により、ドールハウスへと通される翔。そして、事務所へと案内された。
「これなら、アイツらも喜ぶこと間違いなしだな。」
「えぇ、あの娘達もずっと…翔君を待っていましたから♪」
翔が帰って来た事で盛り上がる斑目とカナ。だが、翔が待ったを掛ける。
「今俺がアイツらに会うのは、どうにも都合が悪い……」
「えっ、どうしてですか?」
「分かんねぇのか?アイツらは今が輝いている…ここですぐにゴールを与えてみろ、折角の輝きが一瞬で消えちまうだろ……後、マスターって奴にも会わん。」
今のDollsはどのアイドルよりも人気芸人よりも、誰よりも輝いている。そこに、新人のサクラもおり、さらには彼女達を近くで支えるマスターがいる。
「そうか…分かった、私は翔を尊重する。カナ、お前はどうする?」
「私も、翔君の意志を尊重します。」
翔の言葉を聞き、Dollsとマスターとは会わせない事を約束をした。翔が居候しているのも、斑目とカナの秘密にする事に……IXAシステムが適合している事も、斑目とカナはすんなり受け入れた。
「そろそろDolls一行が帰還する。カナ、翔の部屋に。」
「はい、では翔君。貴方の部屋まで案内します。」
カナの案内により、Dollsの女子寮から離れた部屋へと案内された。一人暮らしをする為の部屋と何ら変わりのない部屋だ。幸いにも、ファクトリーから近いため、翔はカナと共にファクトリーへと向かった。到着すると、現在メンテナンス中のIXAシステムを見ることが出来た。
「……。」
「翔君は仮面ライダーが大好きですもんね♪どうですか、忠実に再現したんですよ?」
「……まぁまぁだな。」
無表情のまま、翔は言う。イクサベルトもイクサナックルも、両サイドのフエッスルホルダーも、ナックルフエッスルも劇中に登場したモノと全く同じである。変身プロセスまでも、劇中同様の再現度だ。
「まもなくDollsが帰還します、勘付かれないよう配慮しますのでご安心ください。」
「……。」
Dollsとマスターが帰還し、一旦ファクトリーに足を運ぶと聞いた翔は、すぐさま撤収した。
「カナさん、只今戻りました。」
「おかえりなさい、マスター♪」
マスターとDollsを迎えるカナ。怪我人は誰もおらず、全員無事である。
「IXAシステムはどうですか?」
「特に問題はありません…とは、言えませんね……」
マスターの言葉を聞き、口角を下げるカナ。現在、IXAシステムは現状とあまり変わっていない。装着者への負担も大きく、ナックルフエッスル以外のフエッスルを読み取る事が出来ない。武器もイクサナックルしか無く、それ以外の武器は未だ開発に至っていない。
「カナちゃん…翔さん、居ないの……?」
ヒヨが寂しそうな顔をしながらカナに問う。彼女の問いに対し、カナは何も言えなかった。
「ヒヨさん、翔さんはもう……」
「…ね、ねぇやめてよ、また辛くなっちゃうじゃん…」
翔の話題が出る度に、辛そうな顔をするDolls。掛ける言葉が見つからず、黙り込んでしまうカナ。サクラとマスターは、これらの状況に戸惑っている。
(皆が言う『青空 翔』君って、一体何者なんだろうか…)
(『青空 翔』さん…一体、どんな方なのでしょうか……)
その頃、ドールハウスにある翔の自室では…
(この世界は恐らく……俺が住んでいるドールズの世界とは別の世界だろう。その証拠に、片山さんは居ないが、代わりにマスターという存在がいる。)
この世界について、今知っている情報を整理している翔。自分が本来住んでいる世界には、マスターという存在が居ない。ドールハウス専属医である『
(斑目さんも南田さんも、サクラ以外のDollsも俺を知っている……何が何だか分からんな……そもそも、何故俺はこの世界に飛ばされた…?)
思い当たる節が無く、密かに繋がりがある神ヘルメスと女神アフロディーテからは何も言われていない。
(…ま、この状況には嫌でも慣れる……どーした事か……)
行く宛も無い翔は、元の世界に帰れるまでドールハウスにて居候する事にした。