プロジェクト東京ドールズ:外伝 『忘却のイミテーション・ドール』 作:やさぐれショウ
「……!!」
目が覚めると、自室のベッド上にいる事に気付くノドカ。
「気分はどう?」
近くにはサクラの姿があった。
「……。」
「もう少し寝てた方がいいね。」
優しく微笑むサクラを見るノドカ。
「大丈夫、このままゆっくり−−−−」
彼女が何かを言いかけた時…ドアがノックされ、ゆっくり開かれる。そこには、メガネが特徴のスーツ姿の女性が立っていた。
「あ……えっと……」
サクラが戸惑っていると、女性はゆっくりと口を開く。
「は、はい!ちょうど今、目が覚めたところで…」
「そう。」
状況を説明するサクラに、崩さぬ笑顔を向ける小山内。そして…
「…ごめんなさい、外してもらえるかしら?」
…と、サクラに退室するよう促した。
「あっ……!す、すみません…!」
すぐに立ち上がり、お辞儀をして部屋から出ていくサクラ。2人きりになると、小山内は近くの椅子に座る。
「1週間ももたないなんて、計算違いだったわ。」
そして、ポケットから小さなケースを取り出す。
「貴女には辛い思いをさせてしまったわね、ごめんなさい…でも、これでもう……」
小山内がケースから取り出したのは、怪しげな薬液が入った注射器だ。それをノドカの腕に伸ばし、ゆっくりと薬液を注入した。
「忘れていないわね?」
「……!!」
小山内の言葉に、目を丸くするノドカ。
「自分がすべきことを…忘れないで、命令よ。」
「命令……OKママ……」
ノドカが眠りにつくと、彼女の腕にある注射痕が静かに消えた。それを見届けた小山内は椅子から立ち上がると、部屋を退室した。
「早い到着だったな。」
部屋を出てすぐの廊下には、斑目の姿があった。
「まるでノドカに発信機でも付いているようだ。」
「あら、身内が心配なだけよ。」
笑いながら言う小山内。
「身内…ね。」
斑目は少しの間沈黙を開け、口を開いた。
「やましい事がないのなら…もう少し『デザインドール』の情報を寄越してもいいんじゃないか?このままではあの娘の警戒は解けない。」
斑目は小山内の目をまっすぐ見て、彼女に問う。
「……。」
小山内は何も言わず、立ち去っていく。だが、去り際にこう言った。
「…渡せる情報は全て開示しているわ。」
「そうか…それなら世間話はどうだ。小山内−−」
「……!!」
斑目のこの言葉に、小山内は足を止め…何かに動揺するような顔をする。
「女手ひとつで育て上げ……さぞ苦労を重ねたことだろう。“生きていれば”……確か、ノドカと同年−−」
斑目の言葉を遮り、足早に去って行く小山内。ドールハウスを出ると、妖魔との戦闘から帰還した翔と遭遇した。
「…あら、貴方は確か……」
「……。」
すぐに笑顔を見せる小山内を黙って見る翔。
「…?」
「……なぁ。」
突如沈黙を破った翔にびっくりする小山内。
「何険しい顔してんだ?」
「…!?」
「何もやましい事が無けりゃあ、堂々としてれば良いだろ?」
「……身内が心配だったから来たのよ。」
(身内?そういやコイツ…あの新人の保護者を名乗ってたな……)
眉間に皺を寄せる小山内と、反対に無表情な翔。
「身内を名乗るのであれば、我が子を守ってやれや。」
「貴方に何が分かるの…?」
「俺は最前線に出てんだ、そこで戦うDollsを知っている。当然、そこにお前の子もいる。1つしかねぇ命をかけて、不特定多数の人間の命を守ってんだ…それなのにお前は……」
目を閉じていた翔は、キッと鋭い眼差しを小山内に向ける。
「!?」ゾワッ…
(…何なのよコイツ、凄まじい覇気……一体、何者なの…!?)
彼から放たれる覇気は、小山内を怯えさせるのには十分過ぎた。翔は鋭い目を向けたまま、小山内に言う。
「身内が心配だから来ただと…?今更過ぎるんだよ、ふざけてんのか?いつ命を落とすか分からねぇ状況の中で戦っているというのに、お前…本当に
「……。」
翔からの言葉責めに、段々苦虫を噛み潰したような顔になる小山内。
「言っておくが、俺は−−」
小山内は乱暴に言葉を吐き捨て、走り去って行った。そんな彼女の態度を見た翔は、ドールハウスへと入っていく。
(…ありゃあ真っ黒だ……ま、俺は全部知っているがな……)
彼は気付いていた。小山内はノドカの保護者ではない事…何か良からぬ事を企んでいる事……
(だが、あの女の好きにはさせん……