FAIRY TAIL 〜夢幻の竜を継ぐ少女〜 作:ことのはや
――
ゴゴゴゴゴ……!!!
――ギルドが、震えている。
それは単なる地震ではなかった。
それは “マスター” マカロフ・ドレアーの怒り だった。
「ジョゼェェ……!!!」
魔力が爆発する。
圧倒的な力の波動が広がり、壁という壁に亀裂が走る。
床が軋み、天井から石片が崩れ落ちる。
それでも、マカロフは止まらない。
一歩、また一歩。
その歩みは、大地を揺るがす巨人のごとき威圧感を放ちつつ、最上階へと続いていく。
— ✧ — ✧ —
――最上階、ジョゼの間――
ズガァァァンッ!!!
魔力を帯びた巨大な拳が扉を粉々に砕き、爆発的な衝撃波が室内を駆け巡る。
部屋の奥――。
悠然と椅子に座る ジョゼ・ポーラ の姿があった。
彼は、不気味な笑みを浮かべながら、マカロフを見据える。
「これはこれは……」
ジョゼが ゆったりとした口調 で言う。
マカロフは地響きを起こしながら近づき、怒りの表情を露わにする。
「あれは何の真似じゃ……お?」
「お久しぶりですねぇ、マカロフさん……6年前の定例会以来ですか……」
ジョゼは、まるで旧友にでも語るような口ぶりで続ける。
「いやぁ……あの時は参りましたねぇ……ちょっとお酒が入ってたもので……」
――次の瞬間。
「世間話しに来たわけじゃねぇんだよ、ジョゼ!!!」
ドゴォォォン!!!
巨大な拳が、ジョゼを玉座ごと吹き飛ばす。
衝撃波が爆発し、室内の壁という壁に深い亀裂が走る。
しかし――
「ほほほ……それはそれは……」
手応えが、ない。
砂埃が晴れたその先には――。
ブッ……ブッ……と乱れるジョゼの姿。
「思念体じゃと……!? 貴様……このギルドから逃げたのか?」
ジョゼの影が うっすらと揺れ、歪む。
「聖十大魔道同士の戦いは、天変地異さえ起こしかねない……」
「私はただ……合理的な勝利を好むものでしてねぇ……」
マカロフが 怒気を纏いながら吠える。
「何処におる!! 正々堂々来んかい!!」
しかし――
ジョゼは何も答えない。
ただ 薄く笑いながら、静かに指を動かす。
すると――
ジョゼの隣に、ぼやぁぁっと白いローブを纏った少女の思念体が出現する。
さらに、その少女の足元に、両手を縛られたルーシィの姿が映し出された。
「ーー!? ルーシィ!!??」
マカロフの表情が驚愕に歪む。
「な……何故……!?」
そんな彼に向かって、白いローブの少女が
ゆっくりと眠たげに瞬きをしながら、静かに言葉を紡いだ。
「このお姉さんが、私たちの目的だから……」
「……目的……じゃと?」
マカロフの問いに、少女は 欠伸をかみ殺しながら、淡々と続ける。
見た目は幼子。
しかし、思念体越しにも伝わる ゾクっとするような異質な気配を纏っていた。
マカロフの眉間に、深い皺が刻まれる。
「……何者じゃ、お主は?」
少女は、ゆっくりとマカロフに目を向け、
淡々とした口調で自己紹介をする。
「私の名前はネム。夢幻の
「ーーー!?……お前さんが双竜と呼ばれとる小童の1人か……」
マカロフの瞳が鋭さを増す。
「おい、小娘……ルーシィに何をしたァ!!」
怒気を滲ませた声が響く。
ネムは 軽く首を傾げると、静かに答える。
「そんなに怒鳴らなくても……安心して、ただ眠ってもらってるだけ……」
「先日の3人みたいに、悪夢はまだ見せてないよ」
「……ッ!!」
マカロフの拳が、ギリッと音を立てて握り締められる。
「……そうか、レビィ達3人をやったのは……お前さんか……」
怒りに震えるマカロフに対し、ジョゼは ニヤリと笑みを浮かべた。
「優秀でしょう? ウチの魔導士は」
「ほほほ…こちらに戦力の殆どを連れてきたのは、失敗でしたねぇ……」
ジョゼが 不敵に笑う。
その言葉に対し――
ネムは 静かに、しかし確信を持って答えた。
「うん……おかげで、楽に仕事を終わらせられた」
マカロフの表情が 険しく固まる。
「……何故、ルーシィを狙った……!!」
ネムは 眠たげに瞬きをしながら、淡々と口を開く。
「……狙った、ねぇ……」
言葉を一度噛みしめるように、小さく息を吐く。
まるで、「その言い方が少し違う」とでも言いたげに。
「ただ、“依頼” を遂行しただけだよ……」
すると、ジョゼが 愉悦に満ちた笑みを浮かべる。
「我々はとある人物からルーシィ・ハートフィリア様の確保を依頼されているんですよ」
「……な……何じゃと……!?」
マカロフは 思わず驚愕の声を上げた。
その様子を見て、ジョゼは ゆったりとした動作で肩をすくめ、楽しげに目を細める。
「おやおや……ご自分の仲間の素性すら知らぬとは」
「薄情な方ですねぇ、マカロフさん」
ジョゼの視線が ふとルーシィに向けられる。
「しかし今は ネムさんの魔法 でこのように眠っておられますが……」
「もし、ネムさんが 少しでも調整をしくじれば……」
「彼女は、耐え難い悪夢を見ることになるでしょうねぇ……?」
ゾクリ――。
まるで 凍りつくような威圧感。
ジョゼの言葉を合図に、
ネムは何の感情も浮かべない 無機質な瞳 でルーシィに手を伸ばす。
その仕草は まるで、機械的な動作のように、静かで――恐ろしく冷たい。
「よせぇ!!!」
マカロフが 怒号を放ち、ネムへと踏み込もうとする――。
だが 次の瞬間。
「……ッ!?」
背後に、“異様な圧” を感じた。
ゾワリ、と背筋が凍る。
マカロフの動きが、一瞬だけ止まった。
――音もなく。
“何か” が背後に現れた気配。
マカロフは、 本能的に察知する。
(しまった……!! こやつ……気配がない……!!!)
反射的に振り返る。
そこには、 両目を布で覆った大柄な男が、静かに佇んでいた。
「かっか……かっ……」
低く、くぐもった声が響く。
その瞬間――
ブワッ!!!!
突如、マカロフの背後から、 激しい魔力の波動が広がった。
「……ッ!?」
マカロフが 直感的に危険を察知する。
「悲しい!!!」
まるで抑えきれない感情が爆発するかのように、
背後から 嗚咽混じりの叫び声 が聞こえた。
マカロフが 反射的に振り向く――が、遅い。
ドグンッ!!!!!
大気が震え、圧倒的な魔力が渦を巻く。
両目を布で覆った大柄な男が、涙を流しながら両手を掲げていた。
次の瞬間――
アリアの 両掌から、虚空に歪んだ波紋が広がる。
ズオオオオオ……!!!!
圧倒的な魔力が マカロフの全身を包み込み、 吸い取るようにねじ伏せた。
「くぁああっ!!!!」
マカロフは 謎の空間に包まれ、吹き飛ばされる。
同時に―― 体から魔力が一気に霧散する感覚。
「……なっ……!!?? 何じゃこれは!!! 力が出ん!!!」
「ほほほ……」
ジョゼが 余裕たっぷりに笑う。
「エレメント4の一人、大空のアリアさんの魔法は、相手の魔力を空に、すなわち”無”にする魔法なのですよ」
「ぐ……ああああああぁぁぁぁ…」
マカロフの 叫びが虚空に響く。
そして――
マカロフの身体が、一階へと落ちていった。
ジョゼは 満足そうに腕を組み、地上へと視線を落とす。
「ほほほ……これはもう、我々の勝ちですかねぇ?」
— ✧ — ✧ —
そこでは、“
ズドンッ!!!
突如、轟音とともに 上空から何かが落ちてきた。
「えっ!?」
「何だ!!??」
「何が落ちて……」
舞い上がる砂埃の中、戦っていた魔導士たちが目を凝らす。
そして―― それを見た瞬間、戦場に衝撃が走った。
「……ッ!!?」
そこに横たわっていたのは、 顔色が青白く、息も絶え絶えの……
“
「マ……マスター!?」
エルザの 驚愕の声が響く。
マカロフは青ざめた顔で苦しげに口を開いた。
「あ……あ……う……あ……ワ……ワシの……魔力が……」
「じ……じっちゃん!!!!」
ナツが 血相を変えて叫ぶ。
「マスター!!!!」
エルザも 慌ててマカロフを抱きかかえる。
ガジルは、 そんな光景を見下ろしながら鼻を鳴らした。
「ちぇっ……せっかく盛り上がってきたところなのによぉ……もうお楽しみは終わりかよ」
エルザは 必死にマカロフを揺さぶる。
「マスター!!! しっかり!!」
グレイは、 驚愕の表情を浮かべながら、マカロフの周囲を見回す。
「ど……どうなってんだ!!? あのマスターから全く魔力を感じねえ!!!」
「お……おい……それじゃあ、ただのじーさんになっちまったっつーのか……!?」
エルフマンが 震えた声で呟いた。
ナツは ボロボロの身体を引きずりながら、マカロフに駆け寄る。
「じっちゃーーーん!!」
「おい、じっちゃん!! しっかりしろよ!!」
エルザに抱きかかえられたマカロフは、 苦しげに息をするだけだった。
「ありえねぇ……どうやったら、あのマスターがやられるんだ……」
「一体、上で何があったんだ……」
そんな
「奴らのマスターがやられた!?」
「ま……マジか!!」
「おい……」
「おう、ヒヒヒ……いけるぞ……! これで奴らの戦力は半減だ!!!」
「こっちにはまだ、双竜も、エレメント4もいるんだ!!」
戦局が変わったのを察し、ファントムの魔導士たちは 次の瞬間、歓喜の声を上げた。
「今だ!!! ぶっ潰せぇぇ!!!」
好機と見たファントムの魔導士たちが、一斉に突っ込んでくる。
しかし――
「調子に乗んじゃねえぞコラァァ!!!」
ナツが 炎を纏った拳を振りかざし、迎え撃つ!
グレイやエルフマン、ロキもそれぞれの魔法を駆使し、必死に応戦する。
他のメンバーも全力で抗い、何とか踏みとどまろうとするが――。
徐々に押され始め、倒れる者も出始める。
「ぐっ……!!」
「くそっ……!! 止めきれねぇ……!!」
戦場の空気が変わる。
次第に
そして――
先ほどの優勢が 一気に崩れ去る。
マスターの喪失によって士気が低下し、
「このままではいかん……!!」
エルザの目が鋭く光る。
マカロフという戦力を失い、士気も落ちた今、 このままでは全滅する。
「撤退だー!!! 全員ギルドに戻れーー!!!」
エルザの鋭い声が戦場に響く。
「バカな!!! まだやれる!!」
「漢は退かんのだーー!!!」
グレイやエルフマンが叫び、他のメンバーも口々に反論する。
しかし――
「ダメだ!! マスターなしではジョゼには勝てん!! 撤退する!! 命令だ!!!」
エルザの強い口調に、皆の表情が悔しげに歪む。
「ぐっ……ちっくしょう……!!!」
仲間たちは 歯噛みしながら、撤退を始めた。
— ✧ — ✧ —
そんな様子を 天井から見下ろす二つの影。
――双竜の片割れ、
「悲しいな……」
アリアが ポツリと呟く。
「ん? アリアか……相変わらず不気味なヤローだな」
ガジルが 薄く笑いながら振り返る。
「よくあのジジイをやれたな」
アリアは ゆっくりと首を振る。
「全てはマスタージョゼの作戦……素晴らしい!!」
――突如、大量の涙を流し出す。
「いちいち泣く泣く鬱陶しい……」
ガジルが 鼻を鳴らし、腕を組む。
「で、ネムの奴、ルーシィってのをちゃんと捕らえたのか?」
アリアは 静かに頷く。
「ああ、彼女はしっかり任務を果たしている。今は本部に幽閉中だ」
「そうか……」
ガジルは へっと笑いながら肩をすくめる。
「居眠りで失敗してなくて安心したぜ。ま、あの雨女も同行してるし、杞憂だったか」
「貴方はもう少し彼女を信用してはどうか?」
アリアが 静かに問いかける。
「ケッ……お前は普段のアイツのグータラ具合を知らないから、んなこと言えんだよ」
ガジルが鼻を鳴らし、腕を組む。
アリアは 涙を流しながら静かに頷いた。
「……それはまた、なんとも悲しいことですね……」
そんな彼らの会話が夜風に紛れ、戦場の喧騒へと溶けていく。
だが、その言葉の一部は、確かにナツの耳に届いていた。
『で、ネムの奴、ルーシィってのをちゃんと捕らえたのか?』
――天井から聞こえてくる会話。
その中に 「ルーシィ」 という名前が含まれていた。
「……何!!?」
ナツの表情が一瞬で変わる。
「どうしたの、ナツ!?」
ハッピーが 慌てて問いかける。
『ああ、彼女はしっかり任務を遂行している。今は本部に幽閉中だ』
「……っ!!!」
「ルーシィが捕まった……!?」
その言葉が ナツの脳を一気に沸騰させる。
「ガジルゥゥゥ!!!」
怒りの咆哮を上げ、ナツは天井を見上げる。
ガジルは そんなナツを見下ろしながら、ギヒッと笑う。
「いずれ決着をつけようぜ、
そう言い残し、アリアと共にスーッと姿を消していく。
「待て!!!」
ナツは叫ぶが、そこにはすでに誰もいなかった。
「ーーくそっ!!!」
拳をギュッと握りしめ、悔しげに天井を見上げる。
「ねぇナツ……どうしたの?」
ハッピーが不安げに尋ねる。
ナツは 奥歯をギリッと噛みしめながら、低く呟いた。
「ルーシィが捕まった……」
「えっ……!?」
ハッピーの 顔が青ざめる。
「撤退だ!! 退けぇ!!」
ボロボロの負傷者を抱えながら、後退を余儀なくされる仲間たち。
そんな中――
「来い」
「お?」
ナツは撤退とは逆方向へと向かいながら、ファントムの魔導士の首根っこを掴み、別方向へと走り去る。
「ナツ!! どうするの!!?」
「決まってんだろ!! ルーシィを助けに行くんだ!!」
走りながら、ナツは掴んでいるファントムの男に顔を近づける。
「おい、言えよ……ルーシィはどこだ?」
ファントムの魔導士は震えながら答える。
「し…知らねえよ……誰だよ、それ……」
次の瞬間―― 男の身体が炎に包まれる。
「うわ! 熱っ! あちィィィーーー!!」
ナツは 低く、ドスの効いた声で言う。
「言え」
ナツの瞳が 怒りで燃え上がる。
「これ以上仲間を傷つけられたら……てめえを灰にしちまいそうなんだよ」
「ひっ……し……知らねえ!! 本当に知らねえ!! けど……俺たちの本部はこの先の丘にある!!」
「そこか……」
ナツは ギラリと目を光らせ、拳を握る。
「ならさっさと案内しろ……!」
ボッ!!
拳にまとった炎が、一気に燃え上がる。
「ふざけたマネしたら、その瞬間、消し炭にするからな!!」
ファントムの魔導士は ビクリと肩を震わせ、必死に頷いた。
— ✧ — ✧ —
――本部まで、あと少し。
しかし――。
突如、あたりが 霧に包まれる。
「!?」
ナツは 足を止める。
ハッピーは 羽を震わせながら、キョロキョロと周囲を見回す。
「ナツ……なんか変だよ……」
霧が、じわじわと濃くなっていく。
「この時期に、こんな霧なんて……普通じゃないよ……!」
その異様な気配に、ナツも 眉をひそめ、霧の向こうを睨んだ。
すると――
ファントムの魔導士は、 顔を引きつらせ、ガタガタと震え始めた。
「こ、こいつは……!!?」
霧が じわじわと辺りを覆っていく。
男は 冷や汗を垂らしながら、唇を震わせる。
「ま、まさか……ネムさんの……!?」
「……ネム?」
ナツが 眉をひそめ、霧の中を睨みつける。
その時――
『……焦げ臭い竜の匂いが近づいてくるから、来てみれば……』
どこからともなく、静かに響く声。
まるで 霧そのものが言葉を発しているかのように、空気に溶け込むような不気味さ。
次の瞬間――
ナツの目の前に、
白いローブを纏った、白髪の少女が”スーッ”と現れる。
ナツが掴んでいる男を見つめると、少女は 冷淡な声で問いかけた。
「ねえ、あなた……
「なのに、どうして”妖精の人”と一緒に本部に向かってるの?」
男は 顔を青ざめさせながら震えた。
「ね、ネムさん……こ、これは……ち、違うんです!!」
しかし――
「裏切り者」
少女の瞳が、 感情の欠片もない冷たさを帯びる。
次の瞬間――
ボワッ……!!
彼女の掌に、 黒い玉がじわりと生まれた。
それは 不気味に脈動しながら、禍々しいオーラを纏い、男へと向かって放たれる。
「ヒィィィィィィ!!!」
男は 絶望に染まった表情で、身動きすら取れない。
黒い玉が、 男の目の前へと迫る――。
「っ……!!」
その瞬間――!!
ナツは、男の首元の服をガシッと掴み、思いっきり引っ張った。
――ドォンッ!!!
黒い玉は すんでのところで男には当たらず、地面へと直撃する。
禍々しいオーラが、闇のように滲み出し、地面に吸い込まれるように離散した。
「……はっ……はっ……」
男は、震える手で胸を押さえ、全身から冷や汗を流していた。
今の一撃が直撃していたら、自分は――。
そんな恐怖が頭をよぎり、 男はただ息を整えることしかできなかった。
「……チッ」
ナツは そんな男を一瞥し、荒々しく舌打ちすると、すぐに言い放つ。
「案内はもういい……ここから先は俺たちで行く、早く行け」
男は ビクッと肩を揺らすと、何度もコクコクと頷き、そそくさとその場を立ち去った。
霧の中へと消えていく男の姿。
しかし――
ナツは 一瞬たりとも視線を逸らさず、目の前の少女を見据えていた。
ゆっくりと、低く問いかける。
「……仲間じゃねぇのかよ」
ナツの 問いかけに、少女は表情ひとつ変えずに答える。
「……マスタージョゼに背いた時点で、もう”仲間”じゃないよ」
その言葉には、迷いの一欠片もなかった。
「……冷たい奴だな」
ナツは 鼻を鳴らすように言うと、改めて目の前の少女をまじまじと見た。
不思議な雰囲気を纏い、
まるで感情を持たないかのような 無機質な瞳。
ナツが 霧の中の少女を睨みつける。
すると、少女は 静かに一礼しながら、淡々と告げた。
「初めまして、
「
「ーー!? お前が……!!」
ナツの 瞳が驚きに見開かれる。
ハッピーも 思わずナツを見上げ、息を呑む。
「こいつが……エルザが言ってた……」
“もう1人の
しかし、ネムは 淡々とした口調のまま、静かに問いかける。
「この先に……何の用?」
「分かりきったこと聞くんじゃねーよ!」
ナツは 拳をギュッと握りしめる。
「ルーシィを助けに行くんだよ!!」
「……それで、たった1人で行くつもり?」
ネムは 小さく首を傾げながら問いかける。
「ハッピーと2人で、だ!!」
ナツは 鋭い眼差しで睨みつけ、力強く言い放つ。
ネムは そんなナツをじっと見つめ、一瞬だけ瞬きをした。
「でも……ここから先には行かせない」
その瞬間――
ネムの体から、白い霧が静かに立ち上る。
それは音もなく広がり、ナツとハッピーの足元を呑み込むように広がっていく。
次第に視界がぼやけ、辺りは霧の中へと沈んでいく。
そして、ネムの姿もまた、霧に溶けるようにスーッと消えていった。
「霧がーー!?」
ナツは さらに濃くなっていく霧を睨みつける。
ネムの姿が完全に消えたことに気づき、警戒を強めながら身構えた。
『……貴方は、本部には辿り着けない……』
『ルーシィを助けることも、ね』
霧の中から、まるで幻聴のように、静かに響く声。
ナツは周囲を見渡すが、霧が濃すぎて何も見えない。
それどころか、声の発生源すら分からなかった。
『……ここで眠って、
霧がさらに濃くなり、ナツとハッピーの視界を奪っていく。
しかし――
ゴォッ!!
霧の中、赤々とした炎が勢いよく燃え上がる。
「へっ……そう簡単に眠らねーよ」
ナツが拳を握りしめ、口元に不敵な笑みを浮かべる。
「――燃えてきたぞ!!!」
――続く。
次回からついにネムの本格的な戦闘シーン。
火と夢幻の滅竜魔導士――激突の時。
そして今回、初めてネムのフルネームが判明しました。
ぜひ、お楽しみに!