FAIRY TAIL 〜夢幻の竜を継ぐ少女〜   作:ことのはや

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謎のオリキャラ出ます。今後出すかは未定。


夢竜の小さな冒険【後編】

――ようやく解放された。

 

誤解が解け、釈放されたガジルとエレメント4の面々は、すぐに兎兎丸の匂いを追って街を駆け出した。

 

「チッ……余計な時間食っちまったぜ……!」

 

ガジルが苛立たしげに舌打ちする。ネムの尾行を任せていた兎兎丸の匂いは、街の奥へと続いていた。

 

「おい!兎兎丸!ネムのやつはーー」

 

ガジルが焦りながら声を上げた瞬間、兎兎丸は素早く彼の腕を引き、壁の影へと引き込んだ。

 

「しっ……! 静かにしろって……!」

 

人差し指を立て、静かにするよう促す。

 

「なにすんだ、テメェ……!」とガジルが小声で睨むと、兎兎丸は小さく顎をしゃくった。

 

「いいから見てみろ、ガジル……!」

 

壁の向こうを指で示す。

 

ガジルは不機嫌そうにそっと壁から顔を出し、様子を窺った。

そこには――

 

ネムと、太ったメガネの中年男性が立っていた。

男の服には巷で流行りの漫画キャラが大きく印刷され、背負ったリュックには丸められた紙が何束かも入っている。

どう見ても怪しい。

 

耳を澄ますと、会話が聞こえてきた。

 

「ぐふっ……ネムたん、今回は依頼を受けてくれてありがとなんだなぁ……グフフ……」

「……いいよ。で、どこでやるの?」

「スイートルームなんだなぁ……グフッ、グフフ……」

 

ピシッ…!!

 

その瞬間、ガジルが覗いていた壁に細かいヒビが入った。

 

「ちょっ……落ち着けって、ガジル!!」

 

兎兎丸が慌てて制止しようとするが、それより早く――

 

「………あ、ああああああ!!!ネムちゃんが!!!ネムちゃんが変質者に!!変な男に連れていかれちゃいますーーー!!!」

 

ジュビアがパニックを起こし、アリアは涙を流しながら呟く。

 

「ああ,悲しい……怪しい人物にはついて行くなと教えたはずなのに……」

 

そんな二人を横目に、ソルは冷静に状況を見つめていた。

 

「ふーむ……ですが見たところ、彼が依頼人のようですし……」

 

顎に手を当てながら、慎重に言葉を選ぶ。

 

「もう少し様子を見ては?」

 

そう提案するものの、すでに止められる雰囲気ではなかった。

そして、案の定――ガジルは男を睨みつけたまま、微動だにしない。

 

「………………」

 

「ガジル!! ちょっ、シャレになんねぇって!」

 

兎兎丸の焦った声をよそに、ガジルの殺気はすでに臨界点を迎えていた。

 

 

 

 

 

 

— ✧ — ✧ —

 

ネムと中年男が向かった先――

それは、ハート柄の装飾が施された、派手すぎるピンク色の建物だった。

ホテルの名前は 『Lovely Hotel』。

 

「「「「「……………」」」」」

 

言葉を失うエレメント4+ガジルの面々。

 

……だが、彼らが硬直している間に、二人の姿はすでに建物の中へと消えていた。

 

ジュビアは青ざめた顔で、震える声を上げた。

 

「ま、まずいですよ!!!! ネムちゃんの初めてが……あの不埒な男に奪われちゃいます!!!」

 

その言葉に呼応するように、ソルが静かに呟く。

 

「……あの男……どう始末しましょうかねぇ……」

 

「……ああ、悲しい。だが、運命とは残酷なもの……」

 

アリアは目を伏せ、深く嘆息する。

 

「あの男は、これまで味わったことのない地獄を知ることになるでしょう……」

 

静かで、しかし確実に冷え切った殺気が漂い始めた。

 

そして――

 

「あの野郎……○△×□を×××して××××してやる……」

 

ガジルは規制音必須レベルの暴言を吐きながら、拳を握りしめ、ギリギリと歯を噛み鳴らす。

 

兎兎丸は戦慄しながらも、必死に制止しようとするが――

 

「ちょ……ちょっと待てお前ら!! 街中でそんな殺気撒き散らしてんじゃねえ……っ、おい!? まだ話の途中だってのに――!!」

 

だが、そんな言葉は届くはずもなく、すでに全員が建物の中へと消えようとしていた。

 

「……ったく、アイツらを止めねえと、下手したらホテルごと吹き飛ぶぞ……!」

 

舌打ちしつつ、兎兎丸は全速力で後を追った。

 

 

 

 

 

 

— ✧ — ✧ —

 

ネムの匂いを追い、たどり着いたのは最上階のスイートルーム。

 

「ここだ……! 間違いねぇ、ネムの匂いがする……!」

 

ガジルがドアを蹴破ろうとした――その時。

 

部屋の中から、ドア越しに聞こえた声。

 

「どうかな…ネムたん…某の……」

「うん……すごく…気持ちいい……」

 

「「「「………………」」」」

 

無言。

 

だが、次の瞬間――

 

水流斬破(ウォータースライサー)!!!」

石膏の奏鳴曲(プラトールソナート)!!!」

 

ドッガァァァァン!!!!

 

鬼神の如き形相で魔法を叩き込むジュビアとソル。

怒涛の水流と大地の衝撃が扉を粉々に砕き、破片が四方に弾け飛んだ。

舞い上がる粉塵の中、ガジル達は怒気を纏いながら部屋へと飛び込む。

 

そして――

 

「な、何事なんだな!!?」

 

豪華なベッドの上には、横たわるネム。

その傍らでは記録ラクリマを手に、呆然とネムを撮り続けていた男の姿があった。

 

「ちょ…ちょっ! アンタら! いきなり入ってきてどういうつもりなんだなーー」

 

「鉄竜ゥゥゥゥ棍ンンンン!!!!」

 

ドクシャァァ!!!!!

 

「グベハァ!!!!」

 

鬼のごとき殺気を放つガジルが、一瞬で男に肉迫。

鉄柱のごとき拳が男の顔面を直撃し、そのまま壁際まで吹き飛ばす。

 

ドガシャァァァン!!!!!

 

崩れる壁。 瓦礫に埋もれた男は、ピクリと痙攣しながら、かすかに震えていた。

だが、次の瞬間――

 

ズルッ!

 

「ヒッ……!」

 

強引に引き抜かれた男の体が、宙を舞う。

気づけば、その襟首はガジルの鋼の拳にがっちりと掴まれていた。

 

「……どういうつもりかはコッチのセリフだぜ、コラ……」

 

ゴリッ――と拳を鳴らしながら、ガジルがギラリと目を光らせる。

 

「この落とし前……どうつけてくれんだぁ? あぁ!!?」

 

顔を近づけ、低く唸るような怒声。

中年男は、ボロボロの状態で虚ろな目をしながら、カタカタと震え、

 

「ハヒィ…………」

 

情けない声を漏らすことしかできなかった。

ガジルはなおも鋭い視線を向け、ジュビアとソルの冷たい眼差しが男を射抜く。

怒気と殺気が充満する中――

 

「起きなさい、ネム」

 

それをよそに、アリアが静かに歩み寄り、ネムの肩を揺らした。

 

「……んー……なんかうるさい……」

 

ネムがのそりと起き上がり、寝ぼけた顔でアリアを見る。

 

「……え? ししょー、なんでいるの?」

 

まるで状況を理解していないように、ぽつりと呟いた。

目の前には、彼女の魔法の師匠であるアリアが立っている。

 

「安心なさい。もう大丈夫です」

 

そう告げるアリアに、そのまま抱きかかえられる。

 

「……え、え? ししょー? なんで??」

 

まだ状況が飲み込めず、ネムはぽかんとした表情のまま、されるがままになっていた。

 

 

— ✧ — ✧ —

 

 

――一方、その頃。

 

「た…たひゅ…け…」

 

壁に磔にされたボロボロの男を囲む、三人の影。

 

「ロリコン死すべし……慈悲はありません……」

 

ジュビアはまるで豚でも見るような冷たい目を向ける。

 

「男としてあるまじき……紳士として貴方を許しません……」

 

ソルは深いため息とともに、侮蔑を込めた視線を落とす。

 

そして――

 

「……@#%※……マジで……×××……ぶっ……○△×□※……ッッ」

 

ガジルは腕を鉄の剣へと変形させ、その切先を男の頬に突きつけながら、規制必須レベルの暴言を吐き続けていた。

 

そんな光景を目の当たりにしながら、ネムはぽかんとした表情で瞬きをする。

 

(……ん? なんでみんなこんなに怒ってるの?)

 

視線を少しずらせば、瓦礫に埋まりながらピクピクと震える男の姿。

 

「あー……」

 

ネムは軽くあくびをしながら、ぼそりと呟く。

 

「……なんか、すごいことになってるね」

 

まるで他人事のような言い方だった。

事態を全く理解していないのか、それとも――

 

そんなネムの言葉に、ジュビアたちは思わず振り向く。

 

「ネムちゃん! 大丈夫ですか!? こんな変質者に何かされませんでしたか!?」

「心配ありませんよ、ネム嬢。もうすぐ片がつきますので、ご安心を」

 

相変わらず男を処刑する気満々のジュビアとソル。

その横で、ガジルはギリッと歯を噛み締めながら拳を鳴らす。

 

「テメェ……どうやって始末してやるか……」

 

部屋に充満する殺気をよそに、ネムは小さく首を傾げる。

 

「んー……いや、そこまでしなくてもいいんじゃない?」

 

「……え?」

 

「え?」

 

「「「…………」」」」

 

まさかのネムの発言に、その場の全員が静止する。

 

その瞬間――

 

 

 

「お前らァァァ!! ストォォォップ!!!!」

 

ズザァァァッ!!!

 

全力疾走で駆け込んできた兎兎丸が、床にスライディングするように滑り込みながら乱入。

肩で息をしながら、荒々しく叫ぶ。

 

「そいつは変質者じゃなくて……!!」

 

息を大きく吸い込み――

 

「ただの魔導建築士(マギアクラフター)*1なんだよ!!!」

 

「「「「………は?」」」」

 

全員の思考が一瞬停止する。

 

殺気に満ちていた空間が、急激に温度を失い、凍りつく。

 

ガジルがボコボコ状態の中年男に目を向け、眉をひそめる。

 

「……マジか?」

 

驚愕と疑念が入り混じった視線を向けると、瓦礫の中から、ぴくりと動いた男が顔を上げる。

 

「……ま、マジでひゅ……」

 

唇が腫れ、ろくに喋れない状態で、なんとか肯定の言葉を絞り出した。

 

 

 

— ✧ — ✧ —

 

 

「ちょっと待て……何でお前がそんなこと知ってんだよ?」

 

ガジルが険しい顔で兎兎丸を睨みつける。

 

兎兎丸は溜息をつきながら、肩をすくめた。

 

「お前らが暴走してる間に、たまたまホテルの支配人と鉢合わせたんだよ……」

 

「支配人?」

 

ジュビアとソルが顔を見合わせる。

 

「ああ。事情を説明したら、こっちがビビるくらいの勢いで、『それはマズい』って言われたんだよ。どうやら今、このホテルは改装中らしくてな……」

 

兎兎丸はチラリとボコボコになった男を見下ろす。

 

「こいつはその改装と、家具の新調を任されてる凄腕の魔導建築士(マギアクラフター)……ってワケだ」

 

「「「「…………」」」」

 

全員が言葉を失った。

 

沈黙の中、ソルが静かにネムへと視線を向ける。

 

「ね、ネム嬢……先ほど、こちらのムッシュから一体どのようなことを頼まれたので……?」

 

ネムは、ぽやんとした表情のまま首を傾げた。

 

「んー……この人が作ったベッドの寝心地……? それを確認してほしいって依頼」

 

「……」

 

「…………」

 

「………………」

 

ジュビアの顔から、サーッと血の気が引いていく。

 

笑顔のまま、大量の汗をポタポタと流しながら、恐る恐る尋ねた。

 

「そ、それでは……その、気持ちいい……などの発言は……?」

 

「ん……このベッドが気持ちよく寝れるか聞かれただけ……」

 

「………………………………」

 

真っ白になっていくジュビア。

 

目の前で凍りつく一同をよそに、ガジルは建築士を睨みつけながら低く呟く。

 

「……なら、テメェのその独特な喋り方は……」

 

ボコボコの男は、痛みに顔を歪ませながら、かすれた声で答えた。

 

「……ただの個性でひゅ……」

 

一同「「「「…………」」」」

 

ーーこうして、すべてが明らかになった。

 

ネムへの依頼。

それは、改装されたホテルの部屋に設置するベッドの寝心地をチェックすることだった。

 

寝ることが大好きだと巷で噂される双竜のネムに「快適」と言わせることができれば、それはホテルの宣伝にもなる。

 

記録ラクリマが向けられていたのも、そのため。

 

リュックに詰まっていたのは、魔導工具や設計図。

服装は……ただ、男のセンスが壊滅的に終わっていただけ。

 

「「「「……………………」」」」

 

長い沈黙が流れる。

 

そしてーー

 

「……もう寝ていい?」

 

場の空気をぶち壊すように、ネムがぽつりと呟いた。

 

バシュッ!

 

「ぐふっ……」

 

気絶していた魔導建築士(マギアクラフター)の鉄拘束が解け、ボテッと床に倒れ込む。

 

⸻その音が、静寂をより深めた。

 

しかし、それをぶち破るようにーー

 

「こ、これは一体何事よ!!」

 

突然、威厳のある声が部屋に響き渡る。

 

ドカッ!!

 

扉の枠にガッとぶつかるようにして現れたのはーー

 

フリルがたっぷりと施された派手なドレス。

それをパツパツに着こなす、筋骨隆々の巨漢。

その体格は、アリアすら見劣りするほどだった。

 

((((また変なのが現れた!!))))

 

一瞬にして全員の脳裏に、同じ言葉がよぎる。

 

ソルは冷や汗を滲ませながら、そっと隣の兎兎丸に囁いた。

 

「兎兎丸……このムッシュ……あ、いやレディ?は、一体どなたですか?」

 

兎兎丸はゆっくりと振り向き、沈痛な面持ちで答えた。

 

「……さっき話した、このホテルの支配人様だよ……」

 

「「「「………………」」」」

 

今度こそ、本当に全員の思考が停止した。

 

⸻そんな中。

 

「あ、依頼人さん」

 

ネムだけが何事もなかったかのように、巨漢を見上げる。

 

「あらネムちゃん♡ 来てくれてありがとね♡」

 

支配人はフリルのスカートをひらりと揺らしながら、嬉しそうに微笑んだ。

 

「この人が……ネムちゃんの依頼人……?」

 

ジュビアが青ざめた顔で呟く。

 

「アイツが依頼人じゃなかったのか……?」

 

ガジルも戸惑いを隠せないまま、 瓦礫の中でピクピクしている男 をチラリと見る。

 

すると、フリルのドレスを揺らしながら、 巨漢の支配人 が朗らかに笑った。

 

「違うわよ♡ 彼も 私の依頼を受けてくれた人 。つまり、ネムちゃんの 仕事仲間 ね♡」

 

「「「「…………」」」」」

 

まさかの事実に、誰もが言葉を失う。

 

「……あっ♡ いっけなーい♡ 自己紹介がまだだったわね♡」

 

フリフリのスカートを優雅に持ち上げながら、 堂々としたポーズ を決める支配人。

 

「どーもー♡ Lovely Hotelの支配人、 ラブりん で〜す♡」

 

バァァァン!!!(謎の効果音)

 

「「「「…………………………」」」」」

 

完全に 思考停止 する一同。

 

目の前にいるのはーー

フリフリのドレスを着た筋骨隆々の巨漢。

 

だが、堂々とした態度で 当たり前のように 自らを 「ラブりん♡」 と名乗った。

 

「……ラブりん……?」

 

ジュビアが 呆然とした声 で、その名をぽつりと呟く。

 

「そ♡ ラブりん♡ いい名前でしょ? このホテルの名前は、 私の名前にちなんで付けられたものなのよ♡」

 

フリフリのスカートを 優雅に持ち上げながら 、支配人が 堂々と誇らしげに 笑う。

 

「なるほど……わたくしてっきり、いかがわしいホテルの類かと……」

 

ソルがふとした疑問を口にした瞬間 ーー

 

ズドン!!!!!!!!

 

「どこがいかがわしいんじゃボケェ!!!!!!」

 

先ほどの オネェ口調はどこへやら 。

メチャクチャ ドスの効いたオッサン声 が炸裂した次の瞬間ーー

 

ゴシャアァッ!!!

 

ラブりんの 燃え上がるような拳 が、ソルの顎を捉えた。

そのまま ソルは一直線に天井へとぶっ飛ばされる 。

 

「ノォォォォォォン!!!?」

 

ズボォォォォォッ!!!

 

天井に 頭から突き刺さるソル 。

そのまま 床からブラブラと足だけが見える状態 になった。

 

「………………」

 

誰もが 言葉を失い、 ただ 目の前の光景を見つめていた。

 

その中で、兎兎丸だけが確信を持ったように低く呟く。

 

「……やっぱり……間違いねえ……」

 

フリフリのドレスを纏いながらも、

異常なまでに鍛え上げられた筋肉。

 

優雅な口調とは裏腹に、

一瞬で人間を天井へと突き刺す拳の威力。

 

「筋骨隆々にオネェ口調、そしてその太陽の如き燃えるような拳……」

 

まるで 燃え盛る太陽のような圧倒的な存在感。

そして 兎兎丸は、確信を持って叫んだ。

 

「アンタ……! あの蛇姫の鱗(ラミアスケイル)の! 聖十のジュラに並ぶ、日輪のタケシ――!」

 

ズガァァァン!!!!

 

言い終わる 前に、支配人のアッパーが 炸裂 した。

 

「アヒンッ!!!???」

 

兎兎丸の体が宙を舞い、

ソルと 全く同じ角度で天井に突き刺さる。

 

支配人は 鬼の形相 で見上げながら、

どす黒い声で 低く、しかし怒号のように言い放つ。

 

「ラブりんだっつってんだろうがァ!!! オウゴラァ!!! 二度とそのゴツい名前を俺の前で出すんじゃねぇぞ!!!」

 

天井に突き刺さったまま、ピクピクと痙攣する兎兎丸。

あまりにも理不尽すぎる光景に、ジュビアたちは 凍りついた。

 

「………………」

 

誰もが言葉を発せず、ただ 唖然とするしかなかった。

 

だがーー

 

ファントムのエレメント4を、一撃で2人も……。

 

頭の中で 状況を整理し始めた 瞬間、じわじわと 戦慄がこみ上げる。

 

兎兎丸が言っていた、日輪のタケシーー

かつて蛇姫の鱗(ラミアスケイル)の 2大エース として君臨した男。

聖十のジュラと並び、聖十の座への推薦すらあったという伝説級の魔導士。

 

だが、彼はそれを断り、数年前に魔導士を引退したはずだった。

 

(……そんな大物が……な、何故こんなところに!?)

 

背筋を凍らせる疑問が、頭をよぎる。

 

「その……タ、タケ……」

 

「……あん?」

 

ズンッ。

 

ラブりんが低く、重く 返す。

 

「ひっ……!!」

 

ジュビアは即座に 首をブンブンと横に振る。

 

「いえっ……! その、ラブりんさんは……な、なぜそのような姿で……?」

 

その問いに、ラブりんはフッと笑い、シンプルに答えた。

 

「趣味よ。文句ある?」

 

ゴゴゴゴゴ……!!

 

答えるたびに凄まじい威圧が放たれる。

 

「あひぃ……」

 

あまりのプレッシャーに、ジュビアの体は大汗とともにみるみる縮み、気づけば本来の半分ほどのサイズになっていた。

 

支配人はゆっくりとネムに歩み寄り、柔らかい笑みを浮かべながら尋ねた。

 

「さて……ネムちゃん、一応尋ねるけど、これは一体どういう状況かしら?」

 

ネムは眠そうな顔でぼんやりと考えるように うーんと唸り、

 

「んー……ガジル達が、暴れた?」

 

ぽつりと、まるで他人事のように呟いた。

 

「ちょ!! 俺たちはお前を心配してだな……!」

 

ガジルが焦って弁明しようとする。

 

しかしーー

 

「言い訳無用!!」

 

ドゴォッ!!!

 

支配人のゴツい声による一喝が、部屋全体を揺らした。

そして、容赦なく告げる。

 

テメェらには罰として、1週間ここでタダ働きだ…… バニーの姿でね♡」

 

「………………」

 

アリアとジュビアはこの世の終わりを見たような顔で真っ白になり、

 

ガジルは静かに呟く。

 

「……やっぱり、そういう店なんじゃねぇの?」

 

その瞬間ーー

 

ドゴォッ!!!!

 

「グフォ!??」

 

支配人の筋骨隆々の拳が、ガジルの鳩尾を直撃した。

一撃で地面に沈められるガジル。

 

鉄竜(くろがね)ちゃん……口は災いの元よ♡」

 

支配人は ニッコリと笑いながら言い放った。

 

 

ガシッ!!!

 

支配人は ガジル、ジュビア、アリアの首根っこを掴み、容赦なく引きずるように 連れて行く。

 

「ちょっ!? 離しやがれ!!」

「い、嫌ですぅぅぅ!!! ジュビアはバニーなんて着たくないですぅぅぅ!!!!」

「……私は受け入れるしかないのですね……悲しい……」

 

それを完全に無視して、支配人はずるずると3人を引きずっていく。

 

そしてーー

 

「テメェらはいつまで突き刺さってんだ!! さっさと来んかい、ボケェ!!!」

 

ズボァァ!!!!

 

天井に突き刺さったままピクピクしていた兎兎丸とソルを、 強引に引っこ抜く。

 

「理不尽!!!」

「ノォォォォン!!!!」

 

2人の悲鳴にも似た絶叫が響き渡る。

 

そのままガジルたちと一緒に、強制連行開始。

 

ズルズルズル……

 

全員が問答無用で引きずられていくなかーー

 

ガジルは最後の希望を求め、 ネムに視線を向ける。

 

(おい、ネム!! お前ならなんとかできるだろ!?)

 

そんな懇願の眼差しを向けるがーー

 

ネムは 眠そうに目をこすりながら、のんびりとぽつりと呟いた。

 

「んー……がんばれ」

 

「だと思ったよォ!!」

 

ガクッ……

 

すべてを悟ったような顔 で、 抵抗する気力すら失う ガジル。

 

ズルズルズル……

 

もう魂が抜けたような顔のまま、

支配人に引きずられながら静かに闇へと消えていった。

 

嵐が過ぎ去ったかのように、静寂が訪れる。

 

魔導建築士は ぐったりとした体 を引きずりながら、か細い声で呟いた。

 

「……ネムひゃん……支配人に、今回の仕事……まひゃ今度やるって……伝えといて……くれない……でひゅか……?」

 

建築士は ぐったりとした顔 でネムを見上げながら、 息も絶え絶えに そう呟いた。

 

「……うん」

 

ネムはこくりと頷くと、そのまま ふらりとベッドに倒れ込む。

 

「………ねよ」

 

ぽふっ

 

ふかふかのベッドに沈み込んだまま、あっという間に寝息を立て始める。

 

建築士は、 その光景をぼんやりと眺めながら——

 

「……ぶひぃ……」

 

バタリ…

 

完全に燃え尽きたように、その場で崩れ落ちた。

 

——完。

 

*1
魔法を駆使して建築や修繕、構造物の設計・施工を行う職業」





オリジナルキャラクター詳細

名前:ラブりん(本名:タケシ)

元「蛇姫の鱗」の魔導士で、かつては聖十のジュラと互角と言われ、競い合ったほどの実力者。現在は引退し、「Lovely Hotel」の支配人を務めている。
※いかがわしいホテルではありません。

【見た目】
立派なコールマン髭を生やした、ゴツい筋肉質の男。しかし、何故かパツパツの女性ものの服を着ている。

魔法「陽炎魔法(サンフレア)」
太陽の光と熱を力に変える特殊な魔法である。この魔法を持つ者は、日中の太陽が昇るにつれて能力を高め、特に正午にはその力が最高潮に達する。しかし、日没と共に急激に力を失い、夜間はほぼ戦うことができなくなるという致命的な弱点を持つ。

某太陽ゴリラを参考にした魔法です。所謂ギャグチートキャラです。
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