FAIRY TAIL 〜夢幻の竜を継ぐ少女〜 作:ことのはや
先ほどの濃霧が嘘だったかのように、霧はすっかりと晴れていた。
自分と少女との戦闘跡や、周囲で倒れている霧の調査隊として派遣された者たちの姿が露わになる。
「……う……う…」
霧が晴れたことにより、倒れていた者たちも意識を取り戻し始めたようだ。
「……ここは?」
その中の1人が目覚め、周囲を見回して驚いた様子で言った。
「……目が覚めましたか?」
アリアが声をかけると、男は驚いたように目を見開く。
「あ……アリアさん!?何故ここに!?」
しかし、アリアはその質問には答えず、淡々と続けた。
「向こうにバルサ達の屍が転がっている。後始末は頼みましたよ?」
その言葉に男は目を見開き、言葉を失う。
「え…え…!?」
混乱している男を無視して、アリアは静かに腕の中で眠る少女を見下ろし、深い息を吐く。
「……さて、帰るといたしましょう」
アリアは、無言で歩き出す。村へと静かに足を踏み出した。
⸻
オボロ村へと戻ると、村人たちは驚いた様子でアリアを見つめた。
彼の腕には、奇妙な少女が抱えられていたからだ。
村長の家へと向かう道中、村人たちはひそひそと囁き合う。
「あれは……アリアさん?」
「山から戻ってきたのか……?」
「腕に抱いているあの子供は……?」
アリアは何も答えず、ただ静かに歩を進め、村長の家の前で足を止めた。
扉をノックすると、中から村長の声が聞こえる。
「……どなたですかな?」
アリアは静かに扉を押し開け、中へと入った。
「先日の件、解決いたしました」
その言葉は、まるで事務的に、感情を一切込めずに告げられた。
村長は安堵したように息をついた。
「本当に……霧は消えたんですか?」
「ええ、あれが再び現れることはないでしょう」
アリアはそのまま、腕の中の少女を見下ろしながら、言葉を続ける。
村長の視線が、眠ったままの少女へと移る。
「……その子は?」
アリアは無表情のままで、答える。
「この件の発端となった者です」
村長は一瞬だけ息を呑み、恐る恐るアリアを見つめた。だが、すぐに何かを察したのか、深くは追及しなかった。
アリアは無駄な説明をするつもりはなかった。
それよりも、もう一つ大事なことがある。
「では、報酬をいただきましょう」
アリアの言葉に、村長は顔を強張らせる。
「……わ、分かりました……」
村長は奥へと消え、数分後、ぎっしりとお金の詰まった袋を持って戻ってきた。
その手は、微かに震えていた。
「……これが、貴方のギルドへお支払いする報酬です」
アリアは無言でそれを受け取り、袋の重みを確かめる。
「ふむ……確かに」
袋を懐へとしまい込むと、再び村長を見据えた。
「それと……バルカンの討伐もなされているから、その報酬も当然いただく」
「……っ!」
村長の顔が歪む。
「……それは……」
「当然の話ですな?」
アリアの声には、わずかに冷たい響きが混じる。
村長は一度口を開きかけたが、その表情から諦めの色が見えた。
「……わ、分かりました……」
絞り出すようにそう答えると、再び奥からバルカン討伐の報酬が入った袋を持ってくる。
アリアはそれを受け取り、静かに頷いた。
「ふむ……依頼、完了ですな」
そう言うと、アリアは踵を返し、村長の家を後にした。
村人たちは、静かにその背中を見送るしかなかった――。
⸻
数日後――。
アリアは、
扉を開き、静かに歩み寄る。
「よく戻りましたねぇ……アリアさん」
ジョゼは優雅に椅子へと腰掛けながら、微笑む。
「ほほほ……さて、どうでしたかな?」
アリアは静かに頷き、事の顛末を報告する。
「あの霧はこちらの少女によるものでした。調査に向かった者たちは皆昏睡状態に陥りましたが、命に別状はないとのこと……。しかし、バルサ達3人は私が現場に到着した時には、残念ながら既に死亡しておりました……」
ジョゼは目を細め、微かに笑う。
「ほう……それは、それは……」
その視線は、アリアの背後――静かに佇む少女に向けられていた。
ジョゼは微笑みを浮かべ、静かに言った。
「……初めまして、私は
しかし、少女はアリアの影に隠れ、わずかに顔を出しただけだった。ジョゼはその姿を見て、微笑みをさらに深めた。
「貴女の名は?」
少女は少し躊躇しながらも、顔を上げ、ぽつりと答えた。
「……ネム」
ジョゼは微笑みを崩さず、ゆっくりと問いかける。
「ほほほ、それで……貴女はなぜあの場所にいたのですかな?」
ネムは少し考え込んでから、ぽつりと呟いた。
「……おとーさんがいなくなったから、探してた……」
その言葉に、ジョゼは興味深げに頷く。
「ほう、それはまた……お父さんとはどんな方ですか?」
ネムは少し考え込み、嬉しそうに顔を上げる。
「おとーさんはね、とっても大きくて、白くてふわふわしてて、それにすっごく強そうな角が生えてて……かっこいいんだよ!」
その言葉を聞いたジョゼは、目を細めながら、さらに問いかける。
「……ほほほ、なるほど。それはなんとも立派なお父さんですねぇ……では――貴女のお父さんは、人間なのですかな?」
ネムは、少し不思議そうにジョゼを見つめ――首を横に振った。
「……ちがうよ。お父さんは、ドラゴンだもん」
その瞬間――
ジョゼの目がわずかに細められる。
「……ほほほ」
くすくすと笑いながら、指を組む。
「なるほど……なるほどなるほど……」
ジョゼの目には、深い興味と確信が浮かんでいた。
アリアはその様子を見て、静かに問いかけた。
「……マスター、何かお分かりになられたのでしょうか?」
ジョゼはゆっくりとアリアを見て答える。
「……おそらく、この娘は
それを聞いたアリアは驚愕の表情を浮かべ、言葉を詰まらせる。
「な……こんな少女が!?」
ジョゼは落ち着いた口調で続けた。
「貴方も、この少女と実際に戦ってみて、何か異質な魔力を感じませんでしたか?」
アリアは一瞬、戦った時のことを思い返し、霧と共に感じた精神的な圧迫、無自覚に与えられたダメージを思い出した。
その異質さを感じたことを、アリアは確信していた。
ジョゼは静かに椅子から立ち上がり、少女に向き直る。
「ネムさん……我々のギルドに入りませんか?」
少女は驚いたようにジョゼを見つめた。
「ここにいれば、もしかしたら貴女の探しているドラゴンが見つかるかもしれませんよ?」
ネムは一瞬だけ迷い、アリアを見つめる。
アリアは何も言わず、静かに頷いた。
少女は、しばらくの間考え――
そして、ゆっくりと、小さく頷いた。
「……うん」
その言葉に、ジョゼは 愉悦の笑み を深める。
「ほほほ……歓迎いたしますよ、
まさか、昨日迎え入れた者に加え、二人もの滅竜魔導士が入ることになるとはな……
ジョゼは内心驚きを感じながらも、さらなる戦力を手に入れたことに、思わず笑みを深めるのだった。
――続く。
まずは、読んでいただきありがとうございます。
さて、ということで、主人公ネムの最初の加入先は「幽鬼の支配者」になります。多くの作品で主人公が「妖精の尻尾」に加入することが多い中、今回はあえて異なる選択をしてみました。この選択がどんな物語を生み出すのか、今後どう展開していくのか、楽しみにしていただけると嬉しいです。
そして、次回よりいよいよ原作に関わる展開が始まります。ネムがどのように原作のキャラクターたちと絡んでいくのか、その先の展開にもぜひご期待ください。
それでは、また次回のお話でお会いできることを楽しみにしています!これからもよろしくお願いします!