FAIRY TAIL 〜夢幻の竜を継ぐ少女〜   作:ことのはや

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ようやく原作に入ります。


静寂を裂く者たち

 

――静寂の街。

 

ここはフィオーレ王国・マグノリア。

魔導士ギルド『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』が拠点を構える街。

 

昼間は人通りで賑わうこの街も、深夜になると、しんと静まり返る。

そんな夜の闇の中を、私はひとり歩いていた。

 

「……眠い……。良い子は寝てる時間なのに……」

 

ぶつぶつと文句をこぼしながらも、足は止まらない。

なぜ私が、こんな時間にこんな場所へ来ているのか――

 

それは、数時間前のこと。

 

 

 

 

――幽鬼の支配者(ファントムロード)本部

 

「ネムさん。貴方には、派手に“火種”を撒いてもらいましょう。奴らが黙っていられないほどにね」

 

「……今から?」

 

「ええ、今からです」

 

私は窓の外を見る。すでに日は傾き、空が群青に染まり始めていた。

 

「……今からだと、マグノリアに着く頃には深夜だよ?」

 

「昼間は、たっぷり眠っていたはずでしょう?」

 

「…………」

 

言い返せなかった。

その私を見て、マスタージョゼは満足げに微笑む。

 

「では、頼みましたよ――ネムさん」

 

 

 

 

 

 

 

……というわけで、今に至る。

 

今日は一日中、仕事をサボって寝ていたツケが、こんな形で回ってくるとは思わなかった。

仕方なく、私はマスターの指示通り、ここマグノリアへ赴いている。

 

「……でも、まぁ……かえって都合はいいかも」

 

マスターの狙いは、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に戦争を仕掛けさせること。

ならば方法は一つ――襲撃。

 

白昼堂々の襲撃はリスクが高すぎる。

何より、マカロフやエルザ、ラクサスといった、油断ならない連中を一度に相手取る羽目になりかねない。

 

だからこそ、深夜のこの時間帯なのだ。

だが――

 

「……んー……どうしようかな……」

 

問題は、襲撃の“方法”だ。

誰かを襲おうにも、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーの顔も住所も知らない。

ギルドを直接壊すのが一番手っ取り早いけど……()()()()()()()()()()()()()()()

 

めんどくさいなぁと考えていた、そのとき――

 

「はあ……なに唸ってんだ、お前は」

 

不意に聞こえた声に振り向くと、そこには見慣れた大柄な男がいた。

 

「……ガジル?」

 

なんでここにいるの?――そう言葉にしなくても、顔に出ていたのかもしれない。

ガジルは鼻で笑い、肩をすくめる。

 

「ギヒ、たまたまマスターとお前の話が耳に入ってな」

 

「……暇なの?」

 

「うるせぇよ」

 

コツンと拳で頭を小突かれ、私は「あうっ」と情けない声を漏らす。ガジルは肩を揺らして笑った。

 

「普段ボーッとしてるお前が、どんなヘマするか見に来てやったんだよ」

 

ギヒッと不敵に笑うガジルに、私はふっと笑い返す。

 

「……くす、性格悪い」

 

「言ってろ」

 

「……ねぇ、せっかく来たなら、ちょっと手伝って?」

 

「ケッ、都合のいいヤツだな、お前は」

 

そんな軽口を交わしていると、目の前に目的地が見えてきた。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルド。

昼間は人々で賑わっているその建物も、今は灯りが消え、眠りについた城のように静まり返っている。

 

私は少しだけガジルの方を見て、ひとこと。

 

「……ガジル」

 

「ギヒ、任せとけ」

 

ネムの意図を汲み取ったガジルは、その場から勢いよく跳躍し――

 

「――鉄竜棍!!」

 

ズガガガガガンッッ!!!

 

無数の鉄の柱が夜の静寂を破り、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドへと容赦なく突き刺さる。

轟音が、夜のマグノリアに響き渡った。

 

「ギヒ、ま、こんなもんか?」

 

「……ん、さすが」

 

鉄の柱が食い込んだギルドを見つめながら、私は呟いた。

 

「……これで、奴らは動くと思う?」

 

「たぶん……この程度じゃ、あの屑どもはまだ動かねぇな」

 

ガジルは腕を組み、わずかに口元を歪める。

 

「……だが、“象徴”であるギルドを壊された今、奴らの怒りと警戒は間違いなく膨らんだ。となりゃ、次に狙うのは――」

 

「……“個”だね」

 

私がそっと返すと、ガジルは無言で頷いた。

 

そうして私は、再びギルドの建物を見つめる。

 

奴らが、確実に動かざるを得ないように――仕掛けるために。

 

私たちは、静かに夜の闇へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

— ✧ — ✧ —

 

 

――翌日。

 

「……予想通り、動かなかったね」

 

寝袋にくるまりながら双眼鏡を覗いていたネムが、ぼんやりと呟いた。ギルド内は多少慌ただしくなっているが、こちらに攻めてくる気配は――ない。

 

ネムは双眼鏡を下ろし、はぁと長いため息をつく。

 

「……これで攻めてきてくれたら、帰って寝られたのに……」

 

ぼやくネムに、少し離れた場所で朝食の準備をしていたガジルが振り返る。

 

「予想してたろ。文句言ってねぇで、さっさと出てきて手伝え」

 

フライパンでは、ベーコンと卵がじゅうじゅうと音を立てている。

 

2人がいるのは、ギルドから少し離れた建物の屋上。ネムが監視を続ける間、ガジルは黙々と朝食を作っていた。

 

寝袋からモゾモゾと這い出したネムは、食器を並べながらぼそりと呟く。

 

「……用意周到だね」

 

「飯より睡眠を優先するお前のことだ。どうせ寝袋しか持ってねぇんだろ?」

 

図星を突かれたネムは、ぷいっとそっぽを向く。

 

「……はぁ、やっぱりな」

 

ガジルはひとつため息をついて、焼き上がった卵とベーコンをパンに挟み、皿にのせて差し出す。

 

「ほら、食え」

 

「わあ……おいしそう……」

 

ネムはその場にぺたりと座り込み、パンを手に取ると、ぱくりと一口かじった。

 

「……美味。さすが料理の鉄人……いや、この場合、鉄“竜”?」

「くだらねえこと言ってんじゃねえ。……で、何か分かったか?」

 

ガジルは食べながら、ちらりとこちらに目を向ける。

 

ネムもあむ、とパンをもう一口かじりながら、ぼそりと呟いた。

 

「……ん。ある程度の情報は……」

「相変わらず便利だな、お前の魔法は」

 

私が覗いた限り、ギルドを襲撃した犯人が“幽鬼の支配者”であることは、すでに知られているようだった。内部では怒りも渦巻いているが――

 

「戦争になれば、お互いタダじゃ済まない。最悪、評議員にギルドを潰されるかもしれないって。だから手が出せないんだって……」

 

「……なるほどな。予想通りってわけか」

 

ガジルはうなずくと、次の問いを投げた。

 

「で、他には? 気になる情報とかあったか?」

 

「……たぶんだけど。S級のラクサスとミストガンは、今ギルドにいないみたい。エルザは“火竜(サラマンダー)”と一緒に任務中で、今日の昼に戻るって」

 

火竜(サラマンダー)か……」

 

ガジルが目を細める。

 

「たしか、こいつは俺たちと同じ――」

 

「「――滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)」」

 

ふたりの声がぴたりと重なる。

 

「……それと、どうやら“標的”もその人たちと一緒に行動してるみたい」

 

「ギヒ、なるほどな……」

 

私は最後の一欠片を口に放り込み、もぐもぐと咀嚼しながら言う。

 

「んく……ってわけで、火竜(サラマンダー)たちと一緒にいる限り、その人たちは狙えない」

 

「ガジガジ……チッ、しょうがねえか……」

 

ガジルはパンだけでなく、フライパンまで齧っている。

(……てか、なんでフライパンまで食べてるの……?)

 

標的がいる以上、私の魔法では襲撃できない。無差別に広がる霧の中じゃ、巻き込まずに済ませるのは難しいし――

それに、エルザが相手じゃ手加減もできない。

 

私は立ち上がり、肩を伸ばしながら言った。

 

「……じゃあ、予定通り。今夜、仕掛ける」

 

ガジルはフライパンの端を口にくわえたまま、不敵に笑う。

 

「ギヒ、いいねぇ……ようやく楽しくなってきやがった」

 

私はにっこりと笑い、寝袋を取り出す。

 

「……じゃあ、夜になったら……起こして……ふにゃ……」

 

「おい、コラ……」

 

ガジルが頭を掻きながら、呆れたように見下ろす。

 

「すぴぴぴぴ……」

 

すでに寝息を立てている私を見つめ、ため息を吐く。

 

「ったくよ……俺様相手にこんな態度とれるのは、お前ぐらいだぜ」

 

それでも文句を言いながら、ガジルは私の隣に腰を下ろし、夜が来るのを静かに待った。

 

 

 

 

 

 

 

— ✧ — ✧ —

 

そして夜が訪れ――。

 

――視点:レビィ

 

昨夜、私たちのギルド『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』は襲撃を受けた。

 

犯人は、ライバルギルドである『幽鬼の支配者(ファントムロード)』。

突然の襲撃により、ギルドの建物はめちゃくちゃにされ、被害も少なくなかった。

 

――けれど、幸いなことに、やられたのは建物だけだった。

仲間に大きな被害が出なかったのが、唯一の救い。

 

とはいえ、これで終わったとは思えない。

敵の狙いが何なのかはまだ分からないし、またいつ攻めてくるかも分からない。

 

「念のため、複数人で行動したほうがいいと思うわ」

 

ミラのその一言で、私たちはシャドウギアのメンバーと共に行動することになった。

 

街には、平和な夜が訪れているように見える。

 

……けれど。

 

ザァァァ……

 

突如として、霧が発生した。

 

「……なんだ? この霧……」

 

ジェットが足を止め、警戒するように周囲を見回す。

 

ドロイも低く呟いた。

 

「ただの霧じゃねぇな……」

 

ピリッ――とした緊張が、肌を刺す。

この霧は、自然に発生したものじゃない。何かがおかしい――。

 

3人の間に無言の警戒が広がる。

 

そして、その静寂を破るように――

 

「よう、お前ら」

 

不意に、背後から声がした。

 

振り向くと、そこには黒い衣服を纏った男が立っていた。

月明かりに照らされたその肩には――『幽鬼の支配者(ファントムロード)』のギルド紋章。

 

「……幽鬼の支配者(ファントムロード)……!」

 

私たちは即座に戦闘態勢に入る。

 

男――ガジル・レッドフォックスは、鋭く笑いながら言った。

 

「ギヒヒ……さぁ、楽しい遊びの時間だぜ?妖精さんよォ」

 

――続く。

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
次回も頑張ります!
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