おーい羂索! 夢バトルしようぜ夢バトル! 作:空吉
「や、悟。久しいね」
自らが殺したはずの夏油の姿を認め、五条の脳内を3年間の青い春が駆け巡り始めた
「その封印待ったあああああ!!!!!!」
瞬間、五条悟の姿が獄門疆の前から消失し──その場所には、呪術高専の生徒が1人、たたらを踏みながらも着地していた。
微かに聞こえた拍手の音からして、東堂葵が効果範囲ギリギリで発動した【不義遊戯】により現れたその生徒は、叫びながら駆けてきた勢いのまま『位置交換』をされたのだろう。
そのために羂索は刹那の間意識を逸らし、五条悟の封印が失敗したことを認識して思わず舌打ちが漏れた。
タイミングは完璧だった。獄門疆は既に開門していたし、五条悟の様子からして、
その絶妙なタイミングで五条悟を救出せしめた第三者────現れた生徒の姿を認識して、羂索は思わず片眉を上げた。
その生徒は華奢な体つきをしていた。
肩より長い艶やかな黒髪に、所謂『軍帽風』の帽子を被り。制服は、上着はケープに。スカートはハイウエストのコルセットとプリーツスカートを基調に、フリルやチェーンなどで装飾されて──つまりはミリタリーロリィタと呼ばれる類の衣装に改造されている。
見目は完璧な『少女』だった。
その生徒は着地後間髪入れず、くるりと身を翻して──羂索と視線が交差する──獄門疆をその〝眼〟に映して手を伸ばす。
「『獄門疆』『開門前』──『
その言葉と発動した術式で、この生徒が誰か、何をするつもりか──羂索は刹那の間に全てを理解したが、不意をついた分、一手その生徒が先を行った。
瞬く間に『開門前』に戻った獄門疆が、生徒の掌に収まる。
「東堂パイセンこれもこれも!!!! パスパス!!!!」
生徒の言葉が終わらぬうちに、遠くから再度拍手が響き、獄門疆は消失し、代わりに小さな円盤状の物体が生徒の手に在った。
羂索が拍手の音の方向に視線を走らせると、棒立ちの群衆の向こうで、2人分の人影が、遠く離れた上り階段から上階へと消えていく。五条と東堂だろうな、と羂索は無感動に思考した。
その間に、生徒は円盤状のそれを耳にはめ込むように装着すると、視線だけを羂索に向けた。
生徒の会話は続いている。
「ヨシ!
「……五条悟がものすごい
「怖スンギ。だからセンセーには言ってたじゃん、
先生には悪いけど……俺の目標のためにはアンタが居なくなったら終わりなんだからさ、頼むよーって伝えて。なんかあったら乙骨パイセンにも申し訳が立たんしな……。
大丈夫だって、『未来』はまだ見えてんだし諦めてねェよ。悠仁たちにもよろしく」
会話が途切れる。生徒は軽く息をついて、いかにも「営業用に作り上げた」ような、それでいて満面の笑みを見せながら、羂索に向き直った。
「
「……まあ、君程度ならすぐに殺して追いかけられるからね」
「そりゃごもっとも」
『夏油傑』と呼ばず羂索の名前を知り得ていることなど、気になることもあったが、高専に保管された情報から、羂索はその生徒の術式と効果について把握している。
さらにはその行動についても一定の理解がある。──
「『術師を入れない〝帳〟』がつい先程上がったのは認識していたけど、君の仕業か。
東京高専1年、
「〝帳〟を上げたのは俺じゃないけど、まあ実質そうですね。
どこに何がどういう意図で仕掛けられて、誰がそれを守っているかまで、『過去』を『見て』全部教えてきちゃったんで。
それに高専には申告してないから知らんかったかもだけど、俺『術式反転』も会得済みなんスよね。
過去視の術式反転──まあそのまま『未来視』だから、アンタの名前もこれからやろうとしてることも、まるっとお見通しだ! ってわけ」
「……なるほどね。これは君を軽く見ていた私のミスかな。
ところで君、実際に見ても
その時、紫苑に電流走る──!!
「いや
そう言うと、紫苑はあくまでも一定のリズムで歩き、訝しげな表情を浮かべる羂索の方へと近づいていく。
そうして──不意に思い切り踏み込んで、呪力を放出して小さな爆発を起こし──これはいつかどこかで、宿儺が空中を駆ける際に使う技術であったが──瞬間的に急加速して、羂索の目前に迫る。
それに反応し、すかさず術式で紫苑の動きを止めようとした羂索よりも、なお速く。
紫苑は、速さと体重を乗せた左拳を──羂索の顔に叩き込んだ。
「男に見えなくて何が悪いんだよ!! 俺が最強に可愛いから女装してるだけだ!!」
◆◇◆
「全然改札の前じゃないけど地下鉄の駅ではあるからまあ、ね?
羂索さんさぁ、本気でガードする気なかったでしょ。まあ俺ってフィジカル
一応身体強化と
「──それでようやく並より上程度の膂力か、【天与呪縛】も大変だね。代わりに呪力操作がそれなりに緻密なのかな」
「マジで高専に申告してる情報全部知られとるじゃん……四十六室、じゃなくて総監部終わってんよ〜」
顔に拳を叩き込んだというのに、よろめく程度ですぐに立ち直った羂索に少し虚しくなりつつ、紫苑は
そして「じゃ、まず『術式の開示』から始めますよ」と指折り数え始めた。
「ご存知の通り、俺の術式は【
縛りや拡張術式で色々弄ってて、過去と未来を見るだけでなく、それを現実に投影して現象を改変できるようにした。
今この一対一の状況作ってるのは未来視の拡張術式【遷延】。つっても
獄門疆の【
「……なるほどね。漏瑚たちが【無量空処】から復帰しないのも【遷延】の効果。
そして与幸吉の蘇生は【巻き戻し】で行われたというわけか。
今回は有無を言わさず堂々と『術式の開示』を行うことで効果時間も伸ばしている」
「おっとバレテーラ。ミニメカ丸しか見せてないんですけどね……」
この人本当に怖いな……早く髙羽と組ませてバカサバイバーしないと……などと紫苑の思考が若干逸れる。
「それで? 自分の命を懸けてまで私とお喋りなんて、何が目的なんだい」
「そりゃあもう、渋谷事変の、というか東京壊滅に繋がる計画と【死滅回游】の阻止っすよ。
いや、あなたと一度話してみたかったのもありますけどね? 俺ってあなたの
羂索の問いに、紫苑は眉間に寄った皺を伸ばしたりぐりぐりと揉んだり、芝居がかったような仕草で軽い調子の言葉で答える。
しかし、彼の声色はその理由が全くの本心であることを示していた。
「あとね、その体も返してもらいたい……いや、必ず返してもらいますよ。他でもない五条先生の『マヴ』の体だからな。
【
あっそうか、反重力機構ってことは本来虎杖のカーチャンは
まあずっと天元様の追っかけして1000年も目標のために取り組める人だしね、あーそーゆーことね完全に理解した(わかってない)。
他人に聞かせる気のない思考をペラペラと述べた後、唐突にスン、と表情が抜け落ちて、その光のない瞳が羂索を見つめた。
「あのねえ、困るんですよ……東京壊滅なんかされたら本当に困る。
いいかね羂索氏──2年だ。この世界のコンテンツの流れは『2年』早いんだ。この世に生まれてから今まで、ずっと確かめていたんだよ。
DX日輪刀が発売されたのを見た時から考えてはいたが……この世界のコンテンツは『とある漫画』がないだけで、他はほぼ全て同じだったのさ」
「つまりは、だ。2025年に公開した
今が2018年、あと5年……いや続編の可能性等も考慮してあと10年は、東京を破壊されたら困るんだ……」
紫苑の感情が急激に昂り始めたのか、彼からゆらりと立ち昇る呪力の多さと質に、口を閉ざして彼の言葉を聞いていた羂索は思わず口角を上げる。
【天与呪縛】なだけあって、素質は思っていたより良いものを持っているのだな、と評価を若干修正した。
そうしてついに、堰を切ったように紫苑が吼える。
「だからよォ────羂索ゥ! 夢バトルしようぜ! 夢バトル!! お前の『人類への期待』と、俺の『未練』の戦いだ!!」
「何事もなく未来に進んで、
──これは、未練という名の重力に魂を引かれた少年の、『もしも』を作り上げた戦いの記録である!
君は生き延びることができるか──。
作者のこれがやりたかっただけだろシリーズかもしれない
Plazmaの歌詞が使えない痛恨のミス
書きたいところだけ書いてシリーズ化するかもしれません
オリ主:華祥寺紫苑(16) 東京高専1年
GQuuuuuuXのテレビ放送前に転生しちゃった人。外見はミリロリ女子中学生のオスガキ。絶賛南行き。