おーい羂索! 夢バトルしようぜ夢バトル! 作:空吉
それを呪いと呼ぶのならば、前世での死の間際、俺は自分で自分を呪ったのかもしれなかった。
転生しても、『未練』を断ち切ることができないように……いやまあ断ち切るつもりも全くないが。
症状からして、急性心不全とか心筋梗塞だとかそのあたりだった、と思う。仕事が終わり、家路を急いでいる時に発症した。人がいるところで倒れたのですぐに救急車を呼ばれたはずだが、間に合わなかったのだろう。
誰も恨みはしない。ただ、よりにもよってこの時期にそれを引き当てた自分と、その運命をひたすらに悔やんだだけだ。
でも、本当に、本当に楽しみにしていたのだ、
だから、自分に対する後悔が募りに募ってそのうち怒りに変質してしまって、さらには例えば──半天狗を追いかけていた時の炭治郎のような形相で(実際は俺がどんな表情だったかは知る由もないが気持ち的な面で)、「許さないぞ……地獄の果てまで行っても追いかけて(?)続きを見るからな……」などと考えているうちに死んでしまったのも、是非もないヨネ! と俺は考えている。
そうしてこの世界に生まれ変わってから5年ほど。
この時分の俺は、この世界は現代日本かつ前世で死んだ年代より過去であり、コンテンツの流れもほぼ同じであることを理解した。
本当に、心から嬉しくて、とりあえず家の神棚に手を合わせた。神様転生してないけど。
ともかく、やり直せるのだ、今度は絶対に死なないぞ──希望を持ってそう決意し、同時に自分に『術式』があることに気づく。
思考が止まった。しばらく理解ができなかった。
え? 『術式』って何? いや『術式』は知ってる、じゃあ俺が転生したの『呪術廻戦』の世界……ってコト!?
──急転直下、俺が一体何をしたというのだ、とその場に崩れ落ちた。
『呪術廻戦』について、前世では本誌で完結まで読んでいて、アニメも見たことがある。だが、それだけだ。詳しいなどとは口が裂けても言えない。序盤の方などはもう記憶が曖昧過ぎる。精々【死滅回游】あたりからならまだ記憶も新しい程度だ。
それこそ術式の『過去視』で見られるならと試したが、さすがに世界は越えられなかったか、忘れている記憶は思い出せないのか、結論、不可能だったのだ。
だが、それでも知っている。この世界は──いずれ東京が壊滅する世界ということだ。ただでさえ、【呪霊】が存在する以上、前世よりも死が身近にある世界なのだ。
一体どうして、そんな世界に生まれ変わらねばならない……? ただ
さらには【天与呪縛】とは、もはや泣くのを通り越して途方に暮れた。例えそれが与幸吉やフィジカルギフテッドの者たちほどの呪縛でなくとも、である。
『発育不良』の代わりに『呪力量の増加と呪力操作の精密性を得る』という、中途半端なそれのために、俺の肉体は同年代の平均より随分下くらいまでしか成長しない。
それを自覚した日から、まあしばらくは呆然と生きてきた気がする。白目ポプ子的な感じに。今世の両親にも随分と心配をかけていたようだ。
まあ今でも『発育不良』のために健康面で心配をかけてはいるが、病弱というわけではないので一旦置いておかれている。
しかしそれも小学校に入学してしばらく経つまで。言うなれば俺は、そこで『その日、運命に出会う』というやつを体験した(こう表現すると東堂みたいになるからアレなのだが、的確な表現であるから仕方がない)。
小学校に入学して何ヶ月か経った頃。いまだに転生ショックから立ち直れていない上、親が転勤族であるために小学校からこの土地に来た俺は周囲にまだ馴染めず。その日は1人でぼうっと徒歩で下校していた。ふと、同じような年齢の子供たちが遊んでいる公園が目に入った。
ここを通れば近道だな、と思って、周囲も碌に確認しないまま歩き進めて──「あ!!」という少女の声の後に、ベチッ、と何かが額に当たる。
いや全くこちらの不注意で、ああすみません……と思いながら当たった勢いで思わず仰け反ると、それは子供用の柔らかいボールだった。
弧を描く軌道のままに目で追いかけてキャッチしつつ、まだ日が高く、ネイビーではない青い空が視界に入る。白い飛行機雲が走っていた。
はた、とそれに思わず惹きつけられて──すってんころりと仰向けに転んだのである。ボールは離さなかったが。
「ごめんなさい! 大丈夫!? ケガはしてない!?」
「
「それでもボール当てちゃったんだからあやまるのは当たり前でしょ!」
律儀に駆け寄ってきて、心配そうに俺を覗き込んだご
「えっ!? やっぱり痛かった!?」
「あ、違います……おれの不注意で。ごめんなさい、ありがとう。怪我もないから大丈夫。これボールです」
ボールを返却しながら頭を下げる。
何が琴線に触れたのか今となっては謎だけれども、間違いなくその2人の善性に触れたことがきっかけで、目が覚めた。彼らは、この世界で生きている。やっと地に足がついた気がした。それが何か、頭でなく心で理解した。
(────この気持ち、まさしく愛だ)
失礼だな、友愛だよ。……いやマジで。
まあともかく、その件をきっかけに彼らと知り合いになるものの、伏黒の恵くんとは同じ学年でも別クラスだし、津美紀ちゃんとは学年も違う。
さらにはその1年後に、また親の転勤で盛岡まで引っ越したこともあり、彼らとはそれきりになってしまった。
引っ越す直前、「大きくなっても肝試しとかで危ないところに行ってはいけないよ……特に津美紀ちゃん……」なんて言葉をかけてしまったが、2人とも頭の上にクエスチョンマークを浮かべていた。それはそう。
でも、あの日『もしもあの時津美紀ちゃんに忠告しておけば』とは思いたくないからな。自己満足ではあるが。
俺の方は、その日の出来事の影響か、なんとみるみるうちに精神状態が回復し、新たな趣味を見つけるまでに至ったのだ。
まあどれだけ食べてもどれだけ寝ても、あんまり身体が成長しないので華奢な体つきのままで、かつ自分の顔がわりと……いや結構高いレベルで整った女顔であることに気づいた時に「じゃあ女装でもするか」という思考に至ったのは、ちょっとまだ精神的なダメージの名残があったのかもしれないが、誰に迷惑をかけるでもないから良しとした。
兎にも角にも元気になって、そうして次に考えたことは当然、「この世界でGQuuuuuuXの続きを見るには」ということだ。
どうにかして──いや何としてでも、必ず生き残る。生き残らなければ、生まれた意味も生きる意味もない。
そのために、某仮面ライダー(※リアタイできなかった……この世界のコンテンツは2年早いから……)のように『戦わなければ生き残れない』というのであれば、迷いなく戦う。幸いにして、そのための才能を持っている。
だから、強くならなくては。なんか……呪力操作? の練習とか、術式の研究みたいなことは1人でやるとして……やはり結局のところ、高専に入って学ぶべきだろうか。そりゃそうだろうな、そのための専門学校なわけだし。
呪術界の誰かと接点が持てたらいいんだけど……返す返すも、伏黒姉弟と連絡先の交換をしていなかったのが悔やまれる。
しかもやったことが助言だけって。どうせなら五条悟まで渡をつけてもらえばよかったものを……。いや時間軸的に既に五条悟と知り合っていたどうかは分からないか……。
もう本当に、ストーリーもキャラクターもうろ覚えなのが痛いよな……。津美紀は最終決戦あたりに出てきてくれてた(※ただし別人)からギリギリ記憶にあった。伏黒は言わずもがなだけど。
しかも唯一行えた助言すら、「確か津美紀の方が呪われて変な女に乗っ取られる」みたいな断片的な記憶が元だから、合ってるかわからないし。そもそも助言程度で何とかなったら苦労しないし。
未来で何とかなるのを待つしかないのか……?
ああ、俺って、ほんとバカ…………。
そして時は流れ、2018年6月。俺が通っているのは宮城県仙台市の杉沢第三高校。もう親の転勤に付随する引っ越しや転校にも慣れたものだ。所属している部活(正しくは同好会だが)はオカルト研究会。
ちなみに俺が所属したことで定員数問題は解決したが、虎杖の陸上部云々の騒動は発生した。
そう、なんとあの主人公・虎杖とはクラスは違えど部活……同好会仲間なのである!
キャラクターとの接点問題は、意外と何とかなったらしい。実は盛岡でもかの日車弁護士先生と仲良くなって、『逆○裁判』を一緒にやった。まあこの人【死滅回游】編にならないと出てこないはずだから、それを阻止したい俺の予定では、いくら才能の原石でも呪術師になる運命ではない人だ。……出てこないよね?
閑話休題、実はいつストーリーが始まるのかは全く分からん! 虎杖の行動気にしてれば分かるだろ多分、の気持ちでやってきており。
現在、夜。学校の裏門前。同好会の佐々木先輩が「今日は夜に学校集合ね! 虎杖が百葉箱で見つけてきた、お札が巻かれた謎の物体の正体を解明するんだから!」などと張り切っていて、メンバーの俺はちゃんと集合したわけだ。何だこれミステリー?
さすがにこれは覚えている、特級呪物【両面宿儺の指】。あれが……なんかどうにかこうにかなって、虎杖が食うはずなのだ。実はもうストーリーは開始していたというわけだ。俺でなきゃ見逃しちゃうね……嘘です。
しかし、その『どうにかこうにか』部分で先輩たちが万が一にでも命を落とさぬために、俺が頑張らないといけない。そのために──というわけではないが、『呪術』修行、もとい自主練に、結構な時間をかけたものだ。
ところで俺は、『発育不良』で貧弱かもしれないが病弱ではなく、身が軽い。何が言いたいかというと、閉じられた裏門をひょいと飛び越えることくらいは何てことない、ということだ。
綺麗な着地10点満点を決めて部室へ急ぐ。時間には余裕を持っているが、先輩たちはもう到着しているだろう。
──もしもあの裏門を飛び越えて、学校に忍び込んでいなければ。
原作通りにストーリーが進んでいただけかもしれないが。『物語が動き出す瞬間』をこの目に焼き付けられたことで、俺が目指した輝きは、輝きのままでいられたのかもしれない。
キリが良さそうだったから一旦切りました
長文が書けなくなっていて困っています