おーい羂索! 夢バトルしようぜ夢バトル! 作:空吉
俺がこの数年の自主練で身につけたことといえば、そこらへんの物体に呪力を通して一時的な武器──呪具? になるんだっけ? なんか長く使い込んでないとならないんだっけ?──とすることと、呪力を弾丸やビーム(!)として放出することである。
このように、目標に人差し指を突きつけて────
「オラッ【ガンド】ォ!!」
指先から呪力の塊が発射され、比較的小型な呪霊の頭(?)部分を吹き飛ばす。ザフッ、と音がして、そいつは消滅した。わりと威力あるなこれ。
つーか全然術式の訓練してないやん! 違うよしてたよ! してたけどあんまり戦闘に使えないから呪力操作の果てに身につけた型月式ガンド撃ちやってんの!
ふふん、夢があるだろう。個人的にもお気に入りだ。ガンドって確か北欧の呪いの一種だし、まあ類似技術なんじゃね? 知らんけど。
一息ついて、
結局、俺が部室に着いたころには、先輩が【宿儺の指】の封印のお札を剥がしかけていた。
そこに「俺にももっかい見せて〜」と指先でちょい、と触れた瞬間、お札がペリリリッと勢いよく剥がれてしまったもので。いや正直結構ノンキしていた俺もこれにはビビった。
この現象をあとで伏黒……恵くんに伝えたら、封印が極度に弱まっているところに、呪術師(俺のこと)が何の対策もなく触れてしまって耐えきれなくなったのだろう、との話。いや反省だなこれは。
ともかく、札が剥がれたそこには、前世に漫画やらアニメで見たことのある【宿儺の指】が存在していた。リアルに見ると結構……グロというかなんというか。屍蝋だから当然かもしれんが。
しかしじっくり眺め回す時間もないままに、即座にその場で呪霊が発生(どういう仕組みなんだよこれ)した。
それに真っ先に気づいた俺が、ひとまず弱そうな呪霊を反射的に祓って退路と隙を作り、命からがら部室──家庭科準備室を借りていた──から退避。廊下に出て、扉を鍵ごと閉め、障害物として使用。残りの呪霊を一時的にでも閉じ込める。
そこからは迷ったものの、まずは外に出るべきかと階段を降りようとしたところで、下の階から現れたデカめの呪霊を真正面から見てしまった先輩方が失神。急いで、しかも頑張って祓ったものの、時既に遅く。
【悲報】俺氏、貧弱なため2人を抱えて逃げられず。
結果、廊下で壁を背にすみっコぐらし状態で助けを待つしかなくなったとさ。部室が4階だったからね……。廊下だと「ああ! 窓に! 窓に!」案件とかがありそうで迷ったんだが、幸い術式の『過去視』で学校の敷地内くらいなら見えるので、索敵もどきはできるし。そういや術式の名前って勝手につけていいのかな? 楽だから『過去視』で通してるけど。
その後ちょっとがっこう○らし的雰囲気でバリケードとか作りかけて、呪霊にそれってあんまり意味ないな、と考え直した。まだ盛り塩の方が効果ある気がするな。しっかりした結界とか張れればよかったんだけど。呪術師の技術としてあるんだっけ?
俺も内心パニックになってるのかもしれん、落ち着かないと……というわけで、とりあえず家庭科準備室から持ってきた食塩と、神社で貰った清め塩(家にあったのでお守り程度に持ってきていた)を混ぜて嵩を増し、自分たちを囲むよう四角に配置。効果あるかは知らんが。
武器としては一応家庭科室から刃物類もくすねていて……年季入ってるからか呪具化してるやつないこれ? 学校系ホラー? 実は誰か刺したとかある?
で、呪霊が現れたときは、俺が正直ものすごく頑張って呪力砲やらガンド撃ち、時折刃物に呪力を込めて投擲したり、隙を見て直接切断するなどで祓っている。ただし刃物は壊れる。今はギリギリ呪具化してるっぽいのだけが残った。……この刃物について深く考えたら終わりかもしれねえ。
しかし、昔から道端でたまに見かける低級呪霊を実験台にしていたのが役に立つとはね……。
益体もないことを考えながら周囲を見回す。【宿儺の指】は持っているのだが、嵐の前の静けさか、今のところ呪霊の襲撃はない。
【宿儺の指】だけでも手放したらいいのでは? と考えもしたけど、そこら辺の呪霊が食って襲い掛かられたらもっと終わりだし。
──しかしまあ、正直この世界のことを理解してからずっと考えていたんだが、この世界は幽霊も妖怪も、呼称はともかくその実態は全部【呪霊】ということになるんだろうか。世知辛いというか、夢がないというか……。
口裂け女も呪霊だった気がするし、都市伝説とか洒落怖の怪異なんかも呪霊になっちまうんでしょ? 多分。仮想……怨霊……? みたいな名前の……前世のインターネッツでそういう話題を見た気がするんだよな。
怪異だけじゃなく、所謂『霊能力者』みたいな、和物のファンタジーやら伝奇に出てくるような職業の人とかですら、話に全然出てきた覚えがないんだよな……。
僧侶とか……巫とか……道士……陰陽師……呪術全盛期は平安なのに〜、本来なら陰陽師の時代なのにィ〜〜!! 全部『呪術師』で括られちまったら、某ホラー映画のあの胸熱な霊能者アベンジャーズが再現できないじゃん、教えはどうなってんだ教えは。
芦屋はいた気がするけど、安倍もしくは土御門が音沙汰ないの何でェ〜〜???? 菅原道真の名前は出てるくせに、やっぱり日本三大怨霊のあれ? 御三家ってそういうこと?
歴史ある家も呪術師家系って感じだし、でも学校で習うような一般的な歴史は前世と同じだし。陰陽師とかはカバーストーリー的なアレ……表の歴史での名称とか? ああでも巫女服の人はいた気がするな、神職の家系だったりしたのか?
海外には呪霊出ないとかいう話があった気がするからそっちは変わんなさそうだけど、あれ、でもアイヌとかはいた気がするな……。
そもそも信仰系の案件における呪霊の発生や変質とかさ……信仰と恐怖や畏れは表裏一体のものではみたいな……やっぱりその辺りの歴史とか技術体系の話をですね……せっかくオカ研なんだしどなたか論文でも……ここらへん深掘りすると深淵に辿り着きそうだからやめとくか。しかも俺はそこまでの頭も知識もない。
ところで、俺が1人でここまでダラダラ考えていられるの、おかしいなと思いませんでしたか? そう、皆さんもお分かりだろう………………助けが!! 来ないのである!!
えっおかしいよな? 確かここで虎杖とか伏黒とか来てくれるはずだよな??
これ俺だけ朝まで生? そんなことある!?(善逸並感)
…………はあ。廊下の向こうからはついに、結構な大きさの、あからさまに今までより強そうな呪霊がやってきてしまった。というかなんか合体してない〜?
とりあえず牽制で、目部分を狙ってガンド撃ってはみたものの、頬部分を微妙に抉るだけで終わった。こうなると弾数必要になるし、
やれることはやってみるか……まず余っていた塩に呪力を込めて撒いてみる。お、ちょっと呪霊の腕を弾いた。少しは効くのかよ。
あとは武器……にしても、呪霊のあの大きさではこんな呪具とはいえこんな刃物が通用するとは思えんが……とりあえず目を狙って投擲。狙いが良かったか、なんとピンポイントに呪霊の左目部分にシュゥゥゥーッ!! 超! エキサイティン!! 呪霊は一度左目を押さえると、呻きながら刃物を抜き、握りつぶした。うーんこの。
結局のところ、ガンドやら何やら自分にできる方法で、ちまちま時間稼ぎしつつ相手を削っていくしかない。
格闘戦とかも考えたけどまあ普通に無理だろうな。多分呪力での身体強化は出来ていると思うんだけど、それを決定打にするには
かと言って、術式で何とかしようにも、いい手が思い浮かばず。
さすがに万事休すか? もうどうしようもないしあれやるか。それでは皆さん、片腕を拝借。その腕を高く振り上げて──さあ一緒に叫ぼう!
「
目にも止まらぬ速さで、白と黒の大型……中型?のワンチャンが俺たちに迫り来ていた呪霊の手と足を食いちぎっていく。
「あんた!! 大丈夫か──って」
「……恵くん?」
うーむ、知ってはいたけれども感慨深いものがある。あんなに小さかった子が、いつの間にかこんなに大きくなって……。
多分恵くんも俺に既視感を覚えているのだと思う。目をすっかり丸くしているからな。まあ俺って成長したとはいえ発育不良で以下略。
「って恵くん後ろ──」
「!!」
俺の忠告に、はっと振り返って玉犬を戻そうとしたが間に合わないか、防御態勢を取って────窓が割れ、入ってきた人影が呪霊を勢いよく蹴飛ばす。
我らが主人公、虎杖悠仁のダイナミック・エントリーだ!!
「ウオーッ虎杖ーッ! 先輩たちも無事だぞー! いや気絶してるから無事じゃないかも、怪我はないぞー!」
「おわっ
俺が虎杖にペンライト振り回す気分で歓声を上げ、虎杖が戸惑っている間に、さすがに二度も隙を作らない恵くんは、玉犬たちの噛みつきと自分の裏拳で呪霊を祓った。手際が良いっすね。
こちらに歩いてくる2人に、さすがの俺も安心から大きなため息をついた。
「いや本当助かったよ。化け物に襲われたのに、俺じゃ先輩たち運べなくて立ち往生になっちゃってさ、こんなところで朝まで籠城かと思った」
「いや、遅くなっちまってゴメン。みんな怪我ないの安心した」
「……お前、呪術師だったのか? 紫苑。残穢が残ってる」
「呪術師? 残穢……? ホラー小説? あれクソ怖いよな。え? 違う? この力が使える人のこと【呪術師】っつーの? あんまり呪ってる感じしねぇけどね……てか久しぶりじゃん恵くん、デカくなったよなぁ」
「2人とも知り合い?」
「小学生のころに一年だけ同じ学校だった」
えー!! 世間狭い!! みたいな話と、虎杖の爺さんにまつわる『正しい死』の話と。
「あと【宿儺の指】持ってるのお前だろ」
「あっ、そうだ。恵くんに渡したらいい? お札剥がれてるんだが平気?」
「俺持っとくよ」
「……一応言っとくけど食べ物じゃねーからな? 食うなよ?」
「華祥寺の中の俺の印象どうなってんの!?」
なんていう特級呪物の受け渡しと。半分くらいはフリのつもりではなかった。もう半分は、うん。とまあ、そんなに時間を取って話していたわけじゃないんだけど。
その瞬間、俺の脳裏にニュータイプ光と例のティリリリリみたいな音(フレクサトーンという楽器らしい)が駆け巡った──気がした。それに従って『過去視』を発動させると、
「ヤベェ恵と虎杖そこ避け────」
俺は何回時既にお寿司──遅し──になればいいんだろうな。
反応した恵くんが間一髪で虎杖を退避させたが、瓦礫と粉塵が舞う中で、肝心の恵くんが更に壁を抜かれ、そのまま渡り廊下の屋根まで吹っ飛ばされるのが見えた。
虎杖は慌てて壁に空いた穴から飛び降りたが、俺が同じことやったらお陀仏すぎる。仕方がないので危険が去ったのを確認してから、先輩たちを残して3階まで降りる。
廊下の窓を開け放って身を乗り出すと、いつの間に【宿儺の指】を取り込んだのか(やっぱり食ったんか?)、虎杖は宿儺に変身し、新たな人物がその場に現れていた。
────五条悟だ。
その人を見た瞬間、
あ、この人俺と
生き物としての格が違う、それはその通りで、俺はあんなに強い生き物にはなれないし、そう生まれていない。つまり、そういう視点じゃない。
前世でも散々見たから知識としても持っているが、実際に見て、確信した。『
虎杖も恵も、『今を生きる人類』だ。宿儺は違うけど、でも多分、俺たちと同質じゃない。
いつの間にか事態は落ち着いていた。宿儺と五条悟の戦闘も終わり、虎杖は気絶させられていた。
俺がただ呆然と
「で、君も来るよね? 呪術高専。見た感じ、もう呪力操作は完璧に近いし……君でしょ? 【指】に釣られた呪霊祓ったっていう子。恵から聞いたよ。改めて──名前は?」
「──
「……へえ、もう結構イカれてるね。学長の面接もこれなら余裕でしょ。ようこそ、歓迎するよ」
なんだか大概酷いことを言われている気もするが、事実なので致し方ない。窓を乗り越えて彼らに近づき、周囲を見渡す。
破壊された校舎。
ラスボスを体に同居させている主人公・虎杖悠仁。
結構な怪我をしている幼馴染の伏黒恵。……あとで手当てしてやろう。
そして俺の今世の目標におけるキーパーソン、五条悟。
改めて目標を再確認する────そうして俺は、
「ところで君、性別どっち?」
「ちょっと五条先生」
「俺は男だよ! でも最高に可愛いでしょ?」
「僕ほどじゃないけどね〜」
「あんた女顔ってわけじゃないじゃん! さすがにアイマスクしてても分かるし! 俺は女装したら完璧女の子になれるんだかんな!」
「…………紫苑も張り合うなよ」
ペース早めに投げていきたいんだけど筆が早い人間じゃなくてですね コツが知りたい