おーい羂索! 夢バトルしようぜ夢バトル!   作:空吉

5 / 11
いつも読んでくださってありがとうございます。
閲覧、お気に入り、評価、感想、ここすき等、全てが励みになっています。


第3話 領域(せかい)って、自由ですか?

 

 これは思っていたよりダメっぽいな、と初見で判断した。知ってはいたけども。

 何がといえば、そりゃ少年院だ。窓からの報告で【呪胎】が確認され、たまたまその時、校内にいた補助監督さん方に菓子折りを差し入れつつ挨拶をしていた俺が、術式の性質から、ひとりの補助監督さんと共に先んじて派遣された。言わずもがな、伊地知さんとである。

 現着し、最初に規制線を敷いた外からその呪胎を目視、さらに内側に入って『過去視』で施設の中を見たところ、なんと『1秒前まで』が追えなかった。せいぜい『30分前まで』が限度だったのだ。

 どす黒く濃い呪力が建物内に満ち満ちていることのみしかわからない。この呪力が【過去視の魔眼】の効果を遮断しているらしい。力量差があるとこうなるのか、とひとつ学びにはなったが。

 

「こーれ本当にアカンですわ伊地知さん。俺の【過去視の魔眼】が遮断されるの初めてなんすけど。当然なんすけどね! 任務そんなにやってねーよって話! 

 しかしまあ、これ()()()()()()()()()()()()()()()()。緊急かつ異常事態で、『生存者の確認と救出』に目的を絞ったとしても当然俺らの手には余りますけど、()()んですよね?」

「…………はい。先ほどから何度も上に確認していますが、決定は決定だ、との一点張りです。……せめてもの応援要請もしているのですが、空いている術師がおらず……」

「ッスよね〜〜。あ、みんな来た」

 

遅れて着いた虎杖たちに改めて現状を報告。『戦わず』『逃げる』『死ぬ』──選択肢はなく、しかしそれでもやるしかないとの結論に至る。

 確か総監部になんか……あるんだよな……? 黒幕的な何かの意思とか……? 覚えてないけど。

 施設内に取り残された受刑者のご家族を見て虎杖が表情を強張らせていたり、まあ恵も釘崎も表情は硬い。斯くいう俺もさすがにいつものテンションではいられない。

 しかし虎杖も釘崎も、助けられる人物は助ける、という意思は変わらないらしい。恵は、まあこの中ではリアリスト的な面があるしね。でも叶えられることならばそうしたい、という気持ちもあると思われる。少年漫画らしい善性であることだよ(詠嘆)。

 本当に──こればかりは、死ぬ気が本当になくても難所中の難所。そのため、こっそり伊地知さんに耳打ちをしておく。

 

「伊地知さんだし言うまでもないこととは思うんですけど、申し訳ないけど応援要請は続けてほしいです、五条()()最優先で……まあ色々あるし来れないと思うけど。

 えーと、あと、これも心苦しいのですが……やれることはやるんですけど、本当に万が一の時は、逃げられるやつから()()()ので……その時は……五条先生に……よろしく伝えといておくれよな……」

「し、承知しましたが、なぜ4部のジョセフ風なんですか……?」

 

ユーモアと願掛け。まずは落ち着かないとね。

 というか伊地知さんジョジョ読んでるのか、まあジョジョだし大体の人は読んでるよね(事実に基づく偏見)。

 

「ああしかし、心苦しいなんて思わないでください。

 当然のことです、等級が合わない任務なのですから……どうか皆さん、命を最優先に」

「──はい。本当にありがとうございます。

 俺って伊地知さんのこと、本当に信頼してますからね。あ、プレッシャーじゃないですよ」

 

 伊地知さんもぐう聖。人格者がいるのにそれ以上に組織がアレなのって涙が出ますよ……あっ! つーかいくら難しくても何があっても生きるぜ俺は馬鹿野郎俺はやるぜ。それはそれとして備えられるところは備えておくぜ。

 

 というわけで、突撃! となりの少年院! 大和魂を見せてやるッ!!

 〝帳〟が下りる。まずは施設内部侵入前の索敵準備。本来俺が出来たはずなのだが、先述の事情で役立たずなので、今回は玉犬(白)にも出てもらうのだ。アニマルセラピーもできるぞ! この子が消えちまうってマジ? クゥン……。犬が死ぬ漫画って注意書きを付けといてくれ。

 

「俺が先行して扉を開ける。虎杖たちは続いてくれ」

「じゃあ殿は俺やるわ」

「頼む、紫苑」

 

 恵が玉犬を伴い扉を開けて、殿は俺。扉を開けた先の生得領域に他のメンバーが目を奪われている中、多少そんな感じの記憶があった俺は、意識的にドアを保持していた。それに釘崎、嫌だろ、こんなメゾネット……。

 まあそれは置いといて、こういう場合は体を全て敷地内に入れないように……つまり境界を越えないように片足のみを外に出したまま。索敵と現状把握が終わるまで、開いたドアをキープして──────

 ぐん、と()()に予想もしない強い力で腕を引かれた。まあ勿論、足は地面を離れてしまうわけで。べしょり、頭から倒れ込んだ。入り口消えちゃった……あーあ。

 

「うわっ紫苑!? どうした!?」

「待て、入り口は!?」

「ゴメンネ、弱クッテ」

 

がっくりと項垂れてから、虎杖の手を借りて立ち上がる。釘崎は持っていたハンカチで顔の汚れを拭ってくれた。

 前からちょっと思ってたけど、みんな優しいけどもしかしてこれ小さい子供に対する優しさ? 俺そんなに頼りないかな? そうかも……。

 

「くそ、()()()()()()()か……! 大丈夫だ、玉犬が出口を探せる。紫苑、1人にして悪かった」

「ウウン…………あの感じ、2人でも、俺じゃなくて多分虎杖だったとしてもダメだわ。

 力の問題じゃなくて、入った時点でおしまいのパターン。注意してる奴がいても、無理矢理にでも引き摺り込む仕掛けだな。ありがちだし気をつけてたんだけど……」

 

そして中に入って全貌を視認してしまえば、『過去視』が作用するようになるわけか。じゃあ取り残されてる人間と、呪霊の位置も分かるかな。

 出入り口に関しては、玉犬の鼻で探せる点からして、多分『出現するタイミング』があって、それまでは無理、と。

 

「一応この領域の中を『見て』みたい。中に入ったからか『1秒前』までが見られるようになったからな。

 地図作成(マッピング)ができるならそれもやりたい。出入り口は『発生』するまで多分()()()()()だろうから置いとく。

 一分一秒を惜しまなきゃいけないところ申し訳ないが、結果的に安全性を高めると愚考致します……し、俺が今できることといえばこれなので……方針としてはどう……でしょうか」

「なんで敬語になるんだよ。うし、じゃあ伏黒と俺で警戒するか」

「術式と適性からしてそうなるわよね。仕方ないから書記ってやるわ」

「今の状態じゃ右も左も分からない上、生存者の捜索にも時間がかかる。『過去視』に頼った方が早いだろ」

 

俺の言葉に迷いなく頷き、ぽんぽんと役割分担を終えていく彼らにほっと息をつく。

 前世の陰の者らしさが発動してしまった上、リーダーでも何でもないのに従ってくれて……いい子で頼もしいですね……みんな逃がしてやれるといいが……。

 ポケットからペンと折り畳んだコピー用紙を広げて(荷物を最低限にしたらこれしかなかった、書きにくくて申し訳ない)、今いる地点を基準に設定。

 

「対象は『この生得領域内全て』、『1秒前』までを追跡──【過去視の魔眼】発動」

 

 え〜〜〜隣の部屋には何もなし……ここから階段があって……進んで……部屋で……人が……しかし多分、もう……けど実際に確かめる必要がある……。

 あとは時折どこにも繋がっていない変な空間があって、これは入り口がどこにでも発生し得る特殊マップ……罠みたいなものと考えて良いだろう。仮面に……なんだあれキノコ? のような呪霊等々がわんさかいるので注意。

 などとつらつら口に出したことを元に、釘崎にはその都度書き取ってもらった。生存者のところは少し濁してしまったが、それで察することはできただろう。

 

「……今はこんなところかな。……ただ、先に【魔眼】が遮断されたのは施設内部が呪胎の生得領域化していたからだとしても、今のところ……特級相当の呪霊が確認できない。

 孵化……進化? いや、変態を遂げるっつーんだっけ? するまで秒読み予想だったんだが……まだなのか? いずれにせよ注意すべきと考える。

 先ほどの出入口消失のように、内部構造が変わることを考えて……常に『過去視』を左眼で発動させたまま備える」

「──そうか、分かった。だがまだ特級呪霊に成っていないなら、どちらにせよ内部を探索できるのは今しかない。負担を強いるが、進むぞ」

 

恵の言葉に頷く。それから地図を頭に叩き込んで、玉犬を先行させながら進む。時折、地図を書き換えた。全員の表情が怖い。

 

「──ここだな」

 

ひとつの部屋に入る。そこには上半身だけの遺体と、無理矢理に体を丸められた人であったものが、転がっていた。

 最近まで命だったものが云々、みたいな光景を本当に見ることになるとは思わなかったし、「惨い」とそれでもしっかりと口に出せる釘崎は、やはり修羅場を潜ってきたこともあるのだろう。耐性というのか、慣れというのか。職業柄というのも悲しい気もするが。

 

「──持って帰る。あの人の息子だ」

 

1人だけ人の姿を留めていた遺体を抱え出す虎杖。名札がついていたから分かったのだろう。それに反対する恵とさらに反論する虎杖の口論がヒートアップしていくのを聞いていられず、思わず「虎杖」と努めて冷静に口に出した。

 

「気持ちはわかる。でも今の俺たちには本当に余裕がない、『遺体を置いていく』……現実的に考えたら恵の言う通りだ。──せめて、名札だけ切り取って、持って帰ろう」

「──っ、でも、じゃあ! 伏黒は何で俺を助けたんだよ!!」

 

瞬間的に言葉に詰まる恵と俺に、釘崎までもが諌めようと声を上げてこちらに寄って──くる前に、俺は思わず『過去視』を発動していた。

 何者かの呪力の『起こり』が確かにある。そんな、唐突に? ──あの謎空間!! なぜ感知しなかった? 待て、玉犬は──間一髪生きているが、こちらの『呪力の起こり』の方がまずい、こちらが【特級】だ。

 

「釘崎進むな! ──無理だ間に合わない、恵、玉犬を釘崎に付けろ!!」

「──ッ『玉犬』!!」

 

俺のその言葉が、ギリギリで玉犬『白』の命を散らすタイミングを遅らせた。

 とぷん、と突如現れた闇の入り口に引き摺り込まれる釘崎を追って、白が────【特級呪霊】の攻撃を間一髪回避して、釘崎と共に闇に沈む。あの先は──ああ、あの空間の呪霊であれば、釘崎は時間さえかければ祓える。『白』のサポートがあれば尚更。数が多いが、それまでに──伏黒の式神のいずれかで、助けにいけるだろう。

 先ほどから過去を見て予測したことなのか、それとも原作の知識が蘇っているのか分からない。分からないが思考が高速で回っている。

 だから。俺と、虎杖と、恵の目の前に現れた特級呪霊に、動けなくて。当然のことだ。

 無理矢理に【屠坐魔】を振り上げた虎杖を恵ごと突き飛ばして────俺は、右胸から肩にかけてを、ばっくりと切り裂かれた。

 

 血が吹き出して、何もできずに、その場に倒れる。バシャン、と音がした。大量の水、いや、俺の血だ。呼吸ができない。傷は肺に達している。虎杖たちが叫んでいる。体が痙攣している。

 俺って体格が標準以下だから、もちろん血液の量も少なくて。つまりは死に至るまでの出血量も、標準より少ないわけ。致命傷だ。

 急速に霞む意識の中で、虎杖が俺を庇うように単独で残り、恵が釘崎救出に動いたのを見た。式神たる『白』の繋がりでも辿って、原作より早く見つけられるかもしれない。

 

不思議と、死ぬという意識がなかった。事ここに至って、俺はまだ死ぬ気がないのだ。現実逃避なのか、それとも────

 

景色が混ざる。そして廻る。万華鏡のように。

それを最後に、意識が落ちた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「おや? ──私に気がつくのに、随分と時間がかかりましたね」

「ええ…………突然のCV石○彰……誰……カヲルくん……?」

 

万華鏡の中にいるような空間だった。万華鏡の欠片になるのは、俺が見てきた『過去』だ。

 相手の姿はない。強いていうなら、この空間が『相手』であった。

 

「個を示す名前はありません。

 ふむ、そうですね、あなたの知識に倣って『世界線』と称しますが……この世界線は『手順書』の術師が現れる世界線ではないのですが。

 あなたは『私』を『見た』。つまり『呪った』のです。その世界最古の呪術たる【魔眼】で。覚えているでしょう、蒼天を」

 

────覚えている? 

────そうだ、覚えている。津美紀にボールをぶつけられて見上げた、飛行機雲の走る蒼天を。その蒼天に見惚れて、愛だと知って──────違う。

 

「俺は、その向こうにいるお前に惹かれたんだ。お前を『見た』。

 もっと正確に言えば、『目が合ってしまった』──世界の記憶を集めながら、空を泳ぐお前と。そうだな、【幻影の呪霊】。そうか、お前を『見た』ことが、俺の全てを変えたんだな」

 

古来より、日本上空を泳ぐように周回しながら、呪力を蒐集し、その呪力に宿る記憶に力を与える【特級呪霊】。ここはその生得領域か?

 ああ、しかし、まさか原作に近いと思っていたこの世界に存在したとは。でも『ファンパレ』時空でもないということか。

 

「はい。【魔眼】を持つ術師が、私と目が合ってしまったのなら、それは『縁』を結んだということ」

「お前それ一歩間違うとドンモモタロウの言い分だぞ」

 

とにかく。寝そべっていた俺は、ゆっくり立ち上がる。死ぬ気が起きなかった理由がわかった。

 ──俺が見た、いや魅入られていたのは【特級呪霊】であり、そいつがまさかセーフティとして機能してくれていたとは。

 

「現世に戻るから、力を貸してくれ。未来を拓くにはお前が必要なんだ。お前も、興味が湧いたから俺と『繋がり』を持ったのだろう。代わりに前世の記憶でもなんでも閲覧して蒐集したらいい」

「そうですね──まあ、良しとしましょう。

 あなたから蒐集した記憶、それが私には面白く思えた。それが価値。その価値の分、あなたに力を貸して差し上げる。これは『縛り』」

「了承した。話が早くて助かるよ──『縛り』を結ぶ」

 

一度だけ、心臓が大きく跳ねた。他者と結ぶ『縛り』──それを破った時の罰は、計り知れないが。

 

「では、戻りましょう。あなたは死にかけたことで、幾つか能力を得、また進化した。──この世で蒐集する記憶、楽しみにしていますよ」

 

もしもあの日、こいつと目が合っていなければ。世界に向かって飛び出していくことすらも、きっとできなかったのだ。

 

今、誰かの声が遠くから聴こえている。答えなければ。

万華鏡の空間が、鏡のように変化して俺の姿を映し出した。

俺の双眸は、『人の心の光(キラキラ)』を宿して輝いていた。

 




お知らせ:オリ主の簡易プロフィールを前話の後書きに追加しています
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。