おーい羂索! 夢バトルしようぜ夢バトル! 作:空吉
少年院事件の翌日。病院から戻ってきていた釘崎と伏黒は、今度は呪術高専の医務室に呼び出されていた。もちろん五条からである。虎杖と紫苑の今後に関して話があるらしい。
「昨日はあいつらに会えなかったのよね。
紫苑も虎杖も危ないところだったとは聞いたけど、結局2人とも生きてるんでしょ? 伏黒は何か聞いてないの?」
「いや……体に問題はなかったはずだが」
虎杖も紫苑も、確か【
しかし虎杖はあの後意識を取り戻してからも、少しぼんやりしていると言っていたし、紫苑は眼精疲労がヤバいなどと宣っていた。ただの呪力、または術式の使いすぎである。
「……容態急変、とか? まあ行けばわかるか」
少しだけ硬い表情になった釘崎と共に医務室へ急ぐと、部屋の中では五条が菓子をつまみながら「早かったね〜」と手を振って出迎えた。
その隣には髪の長い、白衣を着た女性が立っている。何やら気怠げな雰囲気だが、伏黒はこれがいつものことと知っている。
「恵は知ってるから、野薔薇にまず紹介しとくね。
この人は高専所属医師の家入硝子。僕の同期でーす。反転術式のアウトプットができるよ」
「家入だ。まあ大体の怪我なら治してやれる。
あとは女子も少ないからね、何かあれば釘崎も気軽に来な。忙しい時も多いけど」
「釘崎野薔薇です!! 野薔薇でいいです!! ていうか反転術式のアウトプットってすごい難易度高いんじゃ……」
「僕の同期ってホント優秀だよね。まあ僕は最強なんだけど」
「硝子さんって呼んでもいいですか!?」
「いいよ、好きに呼びな」
割り込んだ五条を慣れたように無かったことにして、釘崎は家入に懐いたようだ。こういった環境では、頼れる同性の大人に懐くのは当然のことだと伏黒は考える。もちろん家入の実力ありきで、釘崎もそれを感じ取っていると思われるが。
スルーされたことに口を尖らせて文句を言う五条に、伏黒はさっさと本題を突きつけた。
「それで、わざわざ呼び出して何なんですか。虎杖と紫苑はどこに?」
先ほどから気になっていたのだ。虎杖と紫苑のことで呼び出したわりに、医務室のベッドは全て空だった。他に人の気配もない。
「あー、それなんだけどね。硝子」
「ああ、うん。彼らはしばらく面会謝絶だ」
一拍程度の空白。それから釘崎が素っ頓狂な声を上げた。
「面会謝絶!? そんなに悪いの!? まだ病院ってこと!?」
「いや、一応2人とも元気ではあるよ。病院の検査も問題なく終わって、私の診察でもまあ許容範囲だった」
家入の言葉を引き継ぐ形で五条が続ける。
「だから正しくは『戦線離脱』かな。
特に悠仁はちょっと……昨日の一件で色々あって、扱いを慎重にせざるを得ないんだよね。
本当、生徒に話すことじゃないんだけどさ〜。
五条は飄々と「今は僕しか知らない隠れ家的なところにいるよ」と答えた。
「紫苑は?」
「紫苑はまあ精神的には問題はないんだけど、一回死んでるし、急に術式使いすぎたからね。体の方がまだついてこないみたい。
ついでだから悠仁のサポートに付いてもらおうと思って。同じ場所にいるよ」
やはり脳に負担がかかっていたのか、と思い返した伏黒に、五条から「恵が見たことについては他言無用ね」とこっそり釘を刺される。
昨日は様々なことがありすぎて詳細を追及する余裕もなかったが、彼の覚醒した術式も【
だから、これも方便の一つではあるのだろう、とひとつ頷いて了承の意を伝えた。
「えぇ……? じゃあなんで医務室はこういう話して大丈夫なんですか?」
釘崎が至極最もな疑問を呈するが、家入と五条はなんでもないことのようにさらりと答える。
「そりゃ医務室は私の庭だからさ。不届者は入れないよ」
「そういうこと〜。最も信頼できる場所の一つだよ」
五条がそこまで言うのでは納得するしかない。
「……でも、ふーん。そっか。しばらくいないのね、あの2人」
ぽつりと野薔薇から溢れた呟き。
それは存外、寂寥感と、何よりも『自分は彼らに助けられたのに、彼らが大変な時には何もできなかった』という悔恨の響きが大きく。
それは伏黒も似たような思いを抱えていたから、よく理解できた。
「──まあ時間もそんなにかからず合流すると思うから、その間は待っててあげてよ。悠仁も紫苑も、それが一番嬉しいと思うよ」
五条にしては何だか不思議な声音だと、伏黒たちは思った。それを受けて家入が軽く目を伏せたことも少し気になったが。
「ま、これで話は終わり。
僕はまだ用事があるから、2人はグラウンドに向かって。2年の先輩に会ってきな」
「先輩?」
「釘崎は初対面か。高専には2年生が4人いるんだ。うち1人は海外にいるから、今は3人だけどな」
伏黒が説明しつつ、釘崎と医務室を出ていく。その後ろ姿を五条と家入が見送った。
「……で、匿うにしてもずっとじゃないだろ。虎杖と華祥寺はいつ復帰させるつもり?」
「交流会までには。若人から青春は取り上げちゃいけないからね。それに……」
「それに?」
「ンッフフ、いや。『可能性』は育てないとな〜と思って」
「……その含み笑い、本ッ当に気持ち悪いからやめろ」
それこそ少年院の一件から、五条は何だか
これでは誰かから『様子のおかしい人です』と言われても仕方がない。
こんな五条は、最近あまり見なくなっていた。まあ、
秤や乙骨のように、自分に並べるかもしれない術師を見つけた時も
変なことにならなきゃいいけどな、と、五条から視線を外し、窓から景色を眺める。
昼下がりではあるが、日差しは強い。あたりはそんな日差しに照らされて、全てが眩く輝いている。
今年の夏もまだまだ暑くなるな、と少しだけ現実からの逃避を試みた家入であった。
その一方で、五条に言われた通りグラウンドに向かった伏黒と釘崎は、そこにいた2年の先輩である禪院真希、狗巻棘、パンダの3名に、姉妹校交流会に誘われていた。
釘崎は伏黒から紹介を受ける際、狗巻の語彙とパンダについて流されたことに若干戸惑っていたが、それはそれとして。
「「やる」」
「へえ、即答」
に、と真希が口角を上げた。伏黒も釘崎も、眼差しは鋭い。
「今すぐに力をつけたいの。どんな手段でも」
「だから俺たちは時間を無駄にする気はないです。意味がないと思えばすぐ切り上げます」
「ハッ、私から一本取れたら許してやるよ」
「今年の1年は生意気だな。その方がやり甲斐あるけど」
「おかか……」
こうして彼らの近接戦闘訓練が始まった。
そのうち、制服での運動に我慢ならなくなった釘崎がジャージを買いに行ったりしていたが、伏黒が術式の扱いに関するヒントを得たりと、充実した時間となったと言えるだろう。
「そう、まず五条悟を戦闘不能にすること。
そして、両面宿儺──虎杖悠仁を仲間に引き込むこと。
この2つの条件を呪術師との戦争前に達成できれば、君たち呪霊は勝てるよ」
「死んだのではなかったか? その虎杖とかいうガキは」
「一応生きてはいるよ。もう1人の高専の生徒は死んだかもしれないけど」
とあるファミレスにて、羂索はそう漏瑚──大地の呪霊と語らっていた。
現状のままでは、どう足掻いたとしても『五条悟は倒せない』。だから『封印』した方が勝率が高い。そのために【獄門疆】なる呪物を使うのだ、と。
呪物コレクターである漏瑚は【獄門疆】は自分のコレクションに加えると興奮し、『五条悟は自分が倒す』と宣言して、先にファミレスを出て行った。店内に数多の焼死体を残して。
しかし、と羂索はひとり考える。
もちろん、漏瑚のみで五条悟を倒すことができるなどということはあり得ないし──少し、気になることもあった。
【宿儺】の実力を確かめるため、隠れて少年院に派遣していた監視用呪霊が突如消失したこと。偶然祓われたのか、それとも。
それに、この一件の後処理に五条悟が介入してきたことも何かある。虎杖悠仁はともかく、もう1人の高専の生徒についてまで記録を改竄する必要があったのか?
(第一目的である宿儺の現在の実力は確かめられたから良かったけど……高専側の内通者とも、もう少し連絡を密にするか)
そう決めて、羂索は拠点に戻るために席を立ち上がった。相変わらず漏瑚はやることが派手だな、などと思いながら。
「「へぶしっ」」
多分高専の敷地内のどこかの地下室。誰かが噂でもしているのか、俺と悠仁は2人揃ってくしゃみをする。ツカモトを抱えたままで、だ。つまり呪力操作を乱した悠仁だけが──
「うごあっ」
と、結構な威力のパンチを受けることになった。俺のツカモトはすやすや寝ている。ちなみに虎杖の抱えたツカモトの2Pカラーだ。
「あー集中切らしちゃダメつったろ悠仁〜コーラ拭けよ」
「むしろなんで紫苑は平気なん……?」
「俺はその辺補正かかってるから。【天与呪縛】つーんだと。基本的には『生まれながらにして何かを失う代わりに、呪力量が多い』みたいな事例が多いとか。
五条センセー曰く、俺の場合は『発育不良』の代わりに呪力量と呪力操作にプラス補正がかかってるらしい」
「へえ〜、そういや紫苑は最初っから呪力の弾丸とか飛ばせてたもんな」
手に持っていた資料を一旦閉じる。
今は悠仁と共に、呪力操作の訓練の真っ最中だ。
ただし、基本的に訓練内容は同じだが、悠仁は映画を観ているし、俺は五条センセーの権力により持ってきてもらった、高専に保管されていた任務の記録や、なんと五条家に伝わる呪術の指南書や歴史書といったものを読ませてもらっていた。
というのも、理由があるのだ。
どうせ隠れていて動けないのだから、やはり呪術の基礎を文献で学びたいと言ったら、希望を叶えてもらったのがひとつ。
案の定〝帳〟を始めとした結界術の基礎や【天与呪縛】などの基礎知識がバリバリ載っていた。多分試したら使える。後でやろう。
ふたつ目、俺の『過去視』は『サイコメトリ』が近いと言ったが、今回は『どこまで遡れるのか』『どの範囲まで見えるのか』等々を細かく把握したかったのだ。まあ術式の軽い練習である。
結果としては、まあそれを書いている人の姿くらいは普通に見えた。俺としてはさらにそこから──例えば任務の記録なら、その任務自体の詳細な映像……記憶くらいは読み取りたいと思ったのだが、まだ断片的なものだった。練習あるのみかもしれない。
いずれ例の百鬼夜行の記録も読みたいが、持ってきてもらった中にはさすがになかった。ちっ。
とりあえず読み取った記憶は、【魔眼】を通じて繋がっている【鯨】に送ってやった。『ふしぎなおくりもの』めいている。
または、気分としてはポケモン金銀でお母さんにお金を預けている時のような感じかもしれん。伝わるのか? この表現。
しかしとにかくこの訓練では、俺の術式たる【
というか、【魔眼】を持ったのなら当然どこまで極められるか試したいだろう──型月式魔眼のあれそれとか!!
そのために、まずは基礎を学びつつ術式の訓練がしたいな〜とわがままを言ったら五条センセーが伊地知さんをパシッたりして(……)色々持ってきてくれたので、後で2人にはお礼をしなければと思う。
それにしても、改めて見ても悠仁の方の映画の数もすごいな。
ネタが切れそうだったら、寮の俺の部屋から石黒版銀英伝の円盤全巻セットとか、感情を揺さぶられる作品てことで、ファフナーROLとかまどマギ劇場版3部作とか持ってこようかと思ったが、普通にいらんなこれ。全部センセーの私物? あとで借りるかな。
──おっと、噂をすれば、だ。軽い未来視が発動した。
「お疲れサマンサ〜! 調子どう? あー、悠仁は相変わらずだね」
「くしゃみで集中切れましたね。見てた感じ、慣れればすぐだと思うんですけど」
「覚えはいいからね。紫苑は……うん。もういいでしょ、さすがに。この訓練じゃ変わんないよ」
「まあ確かにそれはそうかなって」
というわけで、読み終わった資料と2Pカラーツカモトを五条センセーに返却した。ここから出たらお礼をしたいと思う。
「じゃ、僕はまた用事があるからすぐ行くね。悠仁はその調子で頑張って。紫苑はサポートよろしく」
「あい〜」
悠仁は腫れた頬をそのままに、ジト目で五条悟センセーを見ながら「こんなんで強くなれんの?」とぶつくさ呟いていた。
「そうだ。悠仁、寝ている間に宿儺と話した? 内容覚えてる?」
「話……話はした、と思う。でも確か宿儺もなんかぼんやりしてる感じだったんだよな。考え事してるっつーか。
紫苑が【魔眼】で治してくれたんだろ? その時の影響かな」
「えっ何それ……宿儺の精神に影響与えるほどのことはした覚えないんだが……魂は確かに悠仁の代わりに潜らせたけども。えっそれのこと?」
「うーん……まあもっと詳しく思い出したら教えてよ」
そう言って出口へ向かう先生を俺は少しだけ呼び止めた。
「
「……なるほどね! ありがと〜」
そう言うと、センセーは今度こそ足取り軽く部屋を出て行った。まあ本当に大丈夫そうだ。……ワンチャン領域展開も生で見られるな。唆るぜこれは(石神千空並感)。
「……なんか危ないの?」
「いやセンセーは全然危なくない。むしろ俺たちかも」
「ええ〜!?」
しかしこういう『未来視』していると考えるのが、『ニュータイプ』の先読みも似たような感覚なんだろうか、ということだ。
そもそも『ニュータイプ』目指せるかもとは思ったが、それはこの術式を極めた先にあるものなのか、それとも全く別のスキルなのか?
今後も突き詰めて考えていく予定だが、『ニュータイプ』に覚醒できるとして、急がないと目的に間に合わない気が…………頑張ろう、うん。
タイトルのネタ切れじゃないよ(震え声)
もうGQuuuuuuX地上波放送が来月か……待ち遠しいですね、ご友人……
スパロボ新作もまさか出てくれるとは……GQuuuuuuX参戦もお待ちしていますよ……!!