異世界転々忍法戦記   作:濁酒三十六

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王都聖女襲撃編
悪夢の行方…


 大地が震え、地鳴りが響き、地表を阿鼻叫喚が広がる。町が燃えて城は崩れ…人々の命を呑み込んでいく。

 その惨状を異世界より召喚された聖女…小鳥遊 聖は絶望の眼差しで見ていた。

 

「どうして…、こんな…!?」

 

 頬を涙が伝い、膝を折る。

 

「セーイッ!!」

 

 彼女を呼ぶ男性の声がする方を探す。

 

「ホーク様、アルベルト様!!」

 

 聖は此方へ走るアルベルト・ホークの姿を見つけて彼に駆け寄ろうとするが、彼の後ろに巨大な山がそびえ見えた。周囲を業火が燃え広がり、空をも焦がした。凄まじい咆哮が空を引き裂いて巨大な山が動いた。山は大きく口を開くとその背…背鰭が次々に蒼白く光を帯びてせり上がり、顎を開いた口が光を吐き出して全てが光に溶けていきアルベルト・ホークと小鳥遊聖を呑み消してしまった。

 

「ホークさまあ!!」

 

 聖は仰向けになったまま宙に手を伸ばし空を掴む。彼女が見たのは光に同化した婚約者(・・・)ではなく見慣れた自分の部屋の天井であった。

 

「ゆ…め。」

 

 前髪が額にひっ付く程の汗を滲ませ、小鳥遊聖は上半身を起こした。掛布から出てベッドから降りると待ち構えていた様にノックがし、聖がいつもの様に「どうぞ。」と声をかける。ふっくらした中年女性のメイド長…マリーが部屋へと入り「おはようございます、セイ様。」と朝の挨拶をした。

 

「おはようございます、マリーさん。」

 

 夢のせいで少し疲れた顔で挨拶を返す聖の様子に気付いたマリーは彼女を気遣った。

 

「どうされましたか、何処か具合でも…?」

「いや…、少し、ヤな夢見ちゃいまして…ははは。」

 

 乾いた笑いと取り繕った笑顔で誤魔化す彼女をマリーさんも心配そうに微笑み返す。

 

「お疲れな様であれば今日のお仕事はお休みになられては…?」

「大丈夫ですよ、社畜で培った体力と根性は伊達じゃありません。」

 

 ふんっ、と鼻息を出して右腕に小さい力こぶを作ってみせた。マリーさんの心配そうな顔は綻ぶ。

 

「どうか御無理はなさらないで下さいませ。」

 

 …と言って水瓶と洗面道具を用意し、彼女のインナードレスを洗濯に持って行った。

 薬用植物研究所に勤務する聖はいつもの日課で薬草になる植物を育てている花壇に水をやり、魔法薬(ポーション)作りに励んだ。

 

「何その夢、怖い。」

「私も怖い。」

 

 同僚である白衣姿の若い青年…ジュードに夢の話をして彼の感想に聖も同意する。

 

「あの大きな山が火…?かなんか噴いて皆消えちゃう夢だとしてこの王都の近くに火山とかないよね?」

「火山…と言うよりドラゴンとかだったりして。」

「ドラゴンか…この国最後の魔物討伐で見たアンデッドドラゴンよりもずっと大きかったわ。」

「ドラゴンと言えばちょっと前にこの国から遠いパレッティア王国でドラゴンによる魔群暴走(スタンピード)騒動あったけど、そのドラゴン討伐したのがパレッティア王国元第一王女だったね。」

「ええ、王女様…て事は女性がやっつけたの!?」

「王女だから女性でしょ、今は王姉殿下になったみたいだけど。」

「?王女様じゃなくなったの?」

「御家騒動とかあって前パレッティ王国国王が公爵家である宰相の令嬢を養子に貰ってその御令嬢が女王に即位したんだって。」

「…何でそんな他国の内情知ってるの?」

「ふふん、秘密。」

 

 ドヤ顔をして煙に巻くジュードに聖は「けーち。」と少しむくれてみせた。

 

(ドラゴンやっつけちゃうとか…、元王女様強すぎでしょ。)

 

 聖はそんな事を考えながらポーション調合に勤しむ。パレッティア元第一王女にして現王姉殿下とはいずれ邂逅する運命ではあるが、まだ先の話ではある。

 

「そう言えば、宮廷魔導師団に最近交易を始めたソルシエ王国から短期間だけど友好の証として派遣魔導師が来るらしいよ。」

「へえ、この国の宮廷魔導師団に来るならかなり優秀なのかな?」

「さあ?」

 

 そんな話題が盛り上がり、二人の室内(いどばた)会議は続いた。

 

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