ビデン村に火の手が上がり、辺りから悲鳴が聴こえて来た。小四郎と朱絹が駆け走り悲鳴の聴こえた方へと急ぐ。燃える家屋が一軒、また一軒と炎が燃え上がり、悲鳴も増えていた。
「小四郎!」
朱絹が追われる家族を前方に見つけると小四郎は両手の片手鎌を家族に襲い掛かろうとした敵に向けて投げる。鎌は回転しながら敵の頭部へ深く突き刺さり倒した。
「この村の避難する場所は何処で御座いますか?」
朱絹が助けた家族に尋ねると村の避難場所は剣道場の様だ。その近くにあるモルデアの家に烈海王が向かっている。
「なら急いで道場に行け!」
小四郎は家族を促して避難させた。
「二手に分かれたのは正解だったか、しかし敵もまた忍びとはな。…此奴等が鬼門衆か。」
「何故この村を襲ったのでしょうか?」
「まだ解らぬ。だが今は今は鬼門衆を退けるだけだ!」
「でしたら、見つけ次第の各個撃破…貴方の得意戦法ですね。」
朱絹が小四郎に笑いかけた。今思えば甲賀との忍法合戦の際も何時も傍らに居てくれた気がする。
「朱絹殿…。」
「
日本から異世界に
「そうだった、朱絹。」
二人は敵の数が気になるが今は手当たり次第、倒しながら村人を逃がす手助けに地を駆けた。
モルデアの家を二人の護衛レベリオ騎士とクルニが外に出て守っていた。周囲では燃えた家が暗がりを照らし、村の人の悲鳴が上がっていた。
「私、村の人を助けに行くッス!」
「駄目だ。俺達の任務はミュイとフレンさんの護衛だ、隊長のお前が離れてどうすんだ!」
護衛の一人である赤毛短髪の少年…エヴァンス・ジーンが単独で動こうとするクルニを叱りつけた。
「でも村で声がっ!?」
「お前は動くなっつってんだよ、離れるなら俺達だろ。ちゃんと命令しろ。」
もう一人の騎士もエヴァンスに同意して頷く。クルニは一息吐いて少し落ち着く。
「分かったッス、じゃあ二人で村の人を道場へ誘導して欲しいッス。
私もミュイさんとフレンさんを道場に連れて行くッス。」
「了解だ、クルニ隊長!」
二人の騎士は家を離れ、村人を助けに行った。クルニは家の中に戻り、フレンとミュイに安心を与える為に話しかけた。
「今、エヴァンス達が村の様子を見に行ったッス。此処だと私達も家から道場に移るッス。」
「クルニさん、村で何か起こってるのか?」
ミュイに聞かれたクルニは誤魔化そうとも考えたが、ミュイは自分より賢い。それに大切な事を黙っているのは彼女に対して誠意がないと感じた。
「…村が謎の賊に襲われてるッス。エヴァンス達が村の皆を道場へ避難させるッスからミュイさんフレンさんも避難するッス。」
クルニは避難は一次的なものと説得し、二人を道場へと護衛に着く。その途中、一人の男が立ち塞がった。男の手に吊るしていた玉の様な物を足元へと投げ寄越して来た。
「ヒッ!?」
ミュイとフレンが小さくも悲鳴を上げ、クルニは青褪めながらもツヴァイヘンダーを男に向けて構えた。
「誰ッスか、こんな酷い事!!」
男は一歩前に出る。毬栗短髪の髷に鼻から顎下まで覆面で隠した男…、荒木又右衛門である。
「乳臭え顔してる割にゃあ、ゴツい得物持ってるじゃねえか雌餓鬼ぃ。
…俺は荒木又右衛門、
又右衛門の目が黒光りしてニヤケ目に歪み、クルニの表情は怒気を孕んで歪んだ。
「そんな事はさせないッス!」
クルニがツヴァイヘンダーを上段で脳天狙って振り下ろし、又右衛門はそれを頭上にて刀で受け流した。剣先がズンッ!と鉄棒で叩きつけたかの様に地面にめり込み又右衛門は詰め寄って斬り込むがクルニは即座にツヴァイヘンダーを戻し又右衛門の斬撃を踏ん張って防いだだけでなく弾き返して間合いをかなり離した。
「やるじゃねえか雌餓鬼ぃ、
「1軒近く?そんなに飛んでないッスよ。…かなり強い斬撃ッスね、覆面さん。」
「覆面が気になるかい?」
「少し…。」
「…なら見せてやんよ、ちびんなよ雌餓鬼ぃ。」
「…下品ッス。」
…などと言葉を交わす。しかし又右衛門が覆面をずらすとフレンは腰砕けになり、彼女を支えたミュイも恐ろしくて又右衛門を直視出来なかった。
鼻がなく鼻骨が露出し、頬、唇が無く肉が削げて歯茎が丸見えの素顔。又右衛門は死人の様に濁り…しかし生者が持つ嫌らしく腐った瞳でクルニを睨めつけた。