「大丈夫ですか、今毒を中和しますね。」
聖はメイドに両掌を向けて「アンチドート。」と唱えると雀蜂に刺された患部がみるみる内に引いた。アンチドートは解毒魔法、彼女は行く先々で倒れ苦しむ使用人を見つけては雀蜂に刺された毒を解毒していた。続いて愛良が“
しかし既にかなりの雀蜂が屋敷に入り込んでいる様で今の愛良の魔法での除去は難しい。虫除けの魔法を聖が広範囲に使用して追い払ったとしても周囲の街に被害が及ぶ可能性があった。
殺虫する魔法は愛良は近接でなければ使えず、聖は虫といえども命を奪う魔法である為に覚える事を許されていない。…ここで聖女と云う肩書が邪魔をしていた。
(一寸の虫にも五分の魂とは言うけど、それ言ったら召喚される前は一杯…)
それ以上は顔をしかめ思考を止めた。その時である。外より凄まじい咆哮が雷鳴の様に響き、屋敷全体を震わせた。廊下の窓のガラスが全て割れて二人は壁側へと避難。外を覗くと雀蜂の大群がボロボロと砂の滝の様に地面に落ちて行った。
「何が、起きたの?」
聖がそう呟くと愛良は目を輝かせて聖の右手を両手で掴み取った。
「凄いです聖さん、どんな魔法を使われたんですか!?」
「いやいや、私じゃないわ。王様からは虫でも命を奪う魔法は禁じられてるわ。…でも今の“狼”の様な咆哮にかなり強い魔力が感じた。雀蜂の群をやっつけたのはあの遠吠えの主よ。」
聖は猛々しい咆哮に乗せた魔力が外を侵略していた雀蜂の大群を全て落としたと確信する。全てを包み込んでしまう強い闇…しかし誰かを助けたいが為の一心による強く心強い魔力に感じた。
(これ…もしかしてカタリナ様の言う闇の魔力なの?)
そんな疑問が頭を過る彼女の後ろから聞き慣れないしゃがれた男性の声が聴こえた。
「運が良いのか悪いのか、外の
二人が振り向いた背後には小柄だがまるで大岩を背負ったかの様な盛り上がった背中…細い両手両足…右手には二股の槍が握られた片目の醜い傴僂男がそこにいた。
聖はまるで魔物に出会した様な…もしかしたらそれ以上の危機感が彼女の身体を強張らせた。
「貴方は…誰ですか…?」
聖が何者かと尋ねると傴僂男はクックックッ…と嗤う。
「鬼門八人衆が一人、蟲蔵。“聖女”よ、儂と共に来てもらおうか。」
「嫌です。」
「ならばお前の連れている娘を殺す。」
聖と愛良の顔が青褪める。
(殺す?…今、この人愛良ちゃんを
聖の目は強い敵意を滲ませ、蟲蔵を名乗る男を睨む。
「強いながらも何も知らない未熟者の
蟲蔵は槍を両手に構えると背中がモゾモゾと蠢き、見窄らしい農民の様な着物の隙間という隙間から雀蜂が次々に飛び出して来た。
岩の様に盛り上がった背中は雀蜂の巣であった。