異世界転々忍法戦記   作:濁酒三十六

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異世界に持ち込まれた因縁

 アシュレイ邸にスランタニア王国第一騎士団…宮廷魔導師団が救援に到着し、屋敷内の使用人達が次々に担架で運ばれていた。殆どの者が被害を受け、刺された後がない者は聖により解毒魔法を受けた者であったが外にいた者は重傷な者ばかりでやはり数名の死者が出てしまっていた。

 騎士団の総指揮をしていたカイル・スランタニアは婚約者のエリザベス・アシュレイを心配しながらも救援指揮に徹していた。

 座り込み、魔導師達の手当てを受ける使用人の中にただ一人…立ち上がりその場から離れるメイドがおり一人の騎士がそれを見つける。

 

「おい、大丈夫なのか?まだ休んでいた方が…」

 

 するとメイドは突然騎士に口吻をし、騎士は困惑…否、身体が痺れて動けなくなりそして人形の様に崩れて倒れてしまった。倒れた騎士は二度三度痙攣して動かなくなり、彼の足から数匹の蛇がスルリと茂みに逃げて行き、メイドは美人ながらも蛇の様な顔でほくそ笑みアシュレイ邸から姿を消した。

 アシュレイ邸の異変に駆けつけたアルベルト・ホークが屋敷内で婚約者の名を呼んで探していた。

 

「セエエイ、セエエイッ!!」

 

 彼は貧民街での任務を終えて騎士団宿舎に戻っていた際にアシュレイ邸の異変により緊急警報を受けたが其処にセイが居ると分かった途端にたった一人で宿舎を飛び出してしまったのである。

 第一騎士団の制止もそれを見つけたカイルの呼び止める言葉も振り切り屋敷内に入りセイを捜していた。

 セイを呼ぶ声は虚しく反響するだけだが廊下の先で飛び跳ねる様な音を聞いてそちらに足を向けた。

 

(セイ?…だが足音がおかしい、別人か。)

 

 そして目の前で人影がハッキリした時、キンッ…と何かを弾く音が眼前で響いた。

 

「おい、お前馬鹿か。目の前の奴は敵だよ、気配でわかんねえかのか?」

「ジュウベエ殿!?」

 

 牙神獣兵衛。アルベルトが貧民街で出逢った浪人…そして“ニホンジン”である。彼は第三騎士団宿舎からついて来ていたのだ。

 獣兵衛は鞘に収まった刀で廊下に弾き落とした一本の長針を見下ろす。

 

「外の雀蜂(むし)に…喉針か。まさかと思うが…“鬼門八人衆”とか言わねぇ…よな?」

「キモンハチニンシュウ…?」

 

 獣兵衛が呟いた言葉をアルベルトが繰り返す。二人の前に現れたのは何と聖を捕らえるのに失敗し、逃走した蟲蔵であった。既に二股の槍を構え戦闘態勢の蟲蔵に獣兵衛は刀で右肩をポンポンと叩き左手を裾に潜らせ余裕を見せた。

 

「全くテメエ等しつけぇんだよ、異世界(こんな所)にまで化けて出て来やがって。“此処”には江戸幕府も闇公方(やみくもう)もねえぞ?

それともまたこぞって黄金探しか、黄金虫。」

 

 獣兵衛に煽られて蟲蔵は驚きと苛立ちに悔しげに顔を歪ませる。

 

「“牙神獣兵衛”、何故お前がこの世界にいる(・・・・・・・・・・・・)!?」

「知るか、神様仏様に本気で聞いてみたが分かんねえってよ。」

 

 そう軽口を吐き捨てて獣兵衛は鞘から刀を抜いた。

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