襲撃から二日程経ち、大まかな被害がまとまった。アシュレイ家邸宅の使用人、私兵とカタリナ達のソルシエ王国護衛兵の殆どが
今、小鳥遊聖は王宮に呼ばれて国王書室へと通されていた。室内には他にアルベルト・ホークにカイル・スランタニアがいて外の
本来なら何処の馬の骨とも解らない人物が国王と顔を合わせるなどあり得ない話なのだが、先日の貧民街での事件を解決した功労者であり聖女である小鳥遊聖を襲った襲撃者を討ち取ったとして国王の前に呼ばれたのである。
しかし国王…ジークフリート・スランタニアの顔はかなり険しく、誰とも目を合わせずに口を開いた。
「何から話せば良いものか…、謎の集団による聖女強奪未遂。トラブルとはいえセイ殿が聖女である事が他国の公爵令嬢とその家臣に知られ、ホーク団長が連れて来た男がセイ殿
一体何が起こっているのか…。」
ジークフリートは面前で両手を組み重ね、額を乗せた。因みに聖が自分で聖女とバラしてしまった件はこの事件のせいとしている。
「父上、先ずはソルシエ王国へ全てを伝える書状を送りましょう。カタリナ・クラエス公爵令嬢はソルシエ王国…ジオルド・スチュアート第三王子殿下殿と婚約関係にあります。
今は彼女をこのまま国に帰す事は出来ません。それ故の彼女の迎え…そして会談を開き今回の件への謝罪と今後のソルシエとより強固な協力関係を…」
「カタリナ孃を人質とする気か?」
国王ジークフリートが息子のカイルに目を向けたがカイルは意に介さず話を進めた。
「否定はしませんが今、カタリナ孃を国外に出す事事態が危険です。
彼女の使い魔が聖女強奪を阻止したのですから彼等は彼女を敵として認識した筈、このまま帰したなら高い確率で襲われます。
そうなれば第三王子殿下の婚約者を見捨てたとしてソルシエとの関係は悪化するだけでは済まないでしょう。
そして彼女の身が此方にあるならソルシエは会談の席に着くしかありません。」
「王子様の言う通りだな。」
カイル殿下に同意を込めて壁に寄りかかった獣兵衛が呟く。
「…それしかないか。急ぎ、ソルシエ王国へ書状を書こう。セイ殿、ホーク第三騎士団長、其処な男の事は二人に任せたい。
カイルにはまた別件がある。どうか引き受けてはくれまいか?」
ジークフリートは立ち上がり、二人に対し頭を下げた。その光景を壁際で牙神獣兵衛が少し驚いた表情で見つめた。
(一国の権力者が下の
そして聖女であるセイと第三騎士団長アルベルト・ホークは此方に頭を下げて頼み込むジークフリートに真摯な表情を向けて答えた。
「分かりました。国王様、牙神…ジュウベエ・キバガミ様の事は私達にお任せ下さい。」
「ジークフリート国王、彼を連れて来たのは私です。彼女と一緒にその責務、必ずや果たします。」
「すまない。…カタリナ・クラエス孃も巻き込んでしまい、本当に申し訳ない。だがどうか、セイ殿を守る為に力を貸して欲しい。」
二人だけでなくカタリナへも謝罪の為に頭を下げるとカタリナは慌てふためき両手をブンブン振った。
「そそそそんな、ああ頭を上げて下さい国王様、私は大丈夫ですから!
それに私にも関…」
関係あるとでも言おうとしたのだろうが、ふと聖を見ると絶対普段はしないであろう眉毛をつり上げ目玉をひん剥いた顔を彼女に向けてブンブンブンと黒髪を振り乱した。
「かん…かん…、わたしも…力いっぱい、頑張りますっ!!」
誤魔化しながら、それこそ拳を握って力一杯に応えるカタリナに対し、国王は優しげに微笑み返した。