スランタニア王宮、カイル第一王子の書斎にはカイルの右腕であるダミアン・ゴルツが控えていた。
「パレッティア、レベリス両王国の冒険者ギルドマスターを我が国に招待した会議開催前に大きな騒ぎとは…。父上もそうだろうが、私としても頭が痛い。」
現宰相の息子…ダミアンと二人だけなので少し弱音を吐くカイル。ダミアンはそんな彼に事務的に今回の捕らえた者達の状況を伝えた。
「捕らえた侵入者は皆牢内で口内に仕込んでいた毒で自害。さすがに聖女様やアイラ孃達には伝えられませんね。」
「当たり前だ、聖女はともかく…アイラは仕方なかったとはいえ魔法で人を殺めてしまったのだ。
間に合わなかった自分が不甲斐無い!」
「今アイラ孃にはエリザベス様が付きっ切りで看病して下さっております。
今は国王よりお任せされた公務に御専念下さい。」
カイルはアイラが心配ながらも彼女に出来る事がないとダミアンに諭され、素直に「…分かった。」と承諾して机の上の資料を見た。
「既に両国より来る客の名簿が来ているのだな。両国ギルドマスターに…レベリスの方は皆平民のみの様だが、パレッティアには王家の人間が一人いるな。」
「“アニスフィア・ウィン・パレッティア”。元第一王女にして現王姉殿下です。
王族でありながら冒険者ギルドに所属、
「ドラゴンを元王女と元公女で討伐か。…とんでもないじゃじゃ馬だ…。」
パレッティア王国の名簿をめくり、レベリス王国の名簿を見、ダミアンが名簿の有名な二人を解説する。
「レベリスの方からは王国冒険者ギルドの最高峰、ブラックランク“竜双剣”の異名を持つスレナ・リサンデラ。そしてレベリス王国騎士団指南役にして平民ながらレベリス国王より剣聖と謳われたベリル・ガーデナンド。王国騎士団長とブラックランク冒険者の剣の師であり、ブラックランク冒険者リサンデラと共に
「…冒険者の最高峰と剣聖。こちらもとんでもない化物を倒しているか、下手な人物を我が護衛には連れて行けないな。」
「殿下、一つ愚案を宜しいでしょうか?」
「申してみよ。」
「聖女セイ様をお連れしては如何でしょうか?」
「何だと?何を馬鹿な事を…聖女は我が国の最高機密だぞ!」
眉間を寄せてカイルはダミアンを怒鳴りつけるが、彼は表情を変えずに流し、話を続けた。
「既に他国の者に知られてしまった以上、この先機密にするのは無理で御座います。それに既にこの国の瘴気の沼は全て浄化されホーク団長と御婚約されました。
…であるなら別に聖女とは言わず瘴気の沼を浄化した功労者として、第三騎士団の一員とし同行すれば宜しいかと。」
「聖女はキモンシュウと言う謎の敵に狙われているのだぞ?」
「だからこそ、連れて行くのです。」
「なっ!?」
ダミアンは真剣な表情でカイルの目を見る。
「王都にはソルシエの来賓…カタリナ・クラエス公爵令嬢が居られます。聖女様がまた狙われるなら高い確率で巻き込まれるでしょう。カイル殿下もそれを国王に伝えられたと聞いております。彼女を守るなら一旦聖女様と離すべきと愚考致します。
この会議の開催場所はクラウスナー領、あの領には我が国有数の傭兵団もいます。そして御説明した通り両国からはその国で有名な猛者も来られます。戦力としては申し分ありません。」
「パレッティアから来るのは王族だ!」
「元王女ではありますが
カイルは憤慨し立ち上がってダミアンを睨むが…、他に良策が浮かばず…勢い良く椅子に座り直す。
「王都に置いてはソルシエの公女殿下を巻き込み、クラウスナーに連れても他国…しかもパレッティアの王姉殿下を巻き込むか。何て二択だ!」
カイルは机上で強く両掌を組み、その手を睨みつけた。