異世界転々忍法戦記   作:濁酒三十六

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クラウスナー領は慌ただしかった。

 スランタニア王国クラウスナー領。スランタニアの薬草を特産とする領地で何代かは分からないが聖女の逸話が密かに語られる土地である。そして数週間後に此処でパレッティア、レベリス両王国の冒険者ギルド関係者を呼んでスランタニア王家とギルド会議が行われる。内容は謂わばスランタニア側が今はまだない冒険者ギルドの運営等の情報ノウハウを学ぶ勉強会みたいなものである。

 領主であるダニエル・クラウスナーは両国から来る来賓客の名簿を見て少し頭を抱えていた。レベリス王国側はギルド最高責任者のグランドマスターと秘書数名と冒険者十数名。

 パレッティア王国もギルドマスターと秘書事務員数名、冒険者十名程と受け入れ準備の指示をしていた。

 クラウスナー領主の傍らに城で薬師(くすし)をしている老婆…コリンナがついていた。

 

「この会議はかなり大変だぞ、コリンナ。」

「お話ではパレッティア側に王族が居られるとお聞き致しました。」

「うむ、アニスフィア・フォン・パレッティア。パレッティアでは最高位冒険者だそうだ。」

「…最高位で御座いますか、とんでもないですな。」

 

 コリンナは心の内では“じゃじゃ馬”と呆れた。

 

「我が国ではカイル王子殿下。そして以前瘴気の沼浄化で来られた聖女セイ様も来られる。生半可な饗しは出来ん。」

「そうで御座いますな、噂では王都に曲者が暴れたとあります。警備もより強固にしないといけませんね。」

 

 そこまで話が進むと背後からコリンナを呼ぶ女性の声が元気に走って来た。長い黒髪を首の後で纏め、異国の衣装…紫の着物を着て澄んだ瞳の幼さが少し残る表情はコリンナの横で切らせた息を整えた。

 

「コリンナさまーっ、レオンハルト様がポーション?…ですか。足りないと言っておられます!」

「はあ?そんな訳ないよ。…後で行くとレオに伝えておくれ、オボロ(・・・)!」

「は、ハイ!」

 

 息を整え切れてないのか返事が隠るがまた走り出そうですとしたのでコリンナが止める。

 

「走らないでいいよ、ゆっくり歩きな。」

 

 オボロと呼ばれた女性は嬉しげに微笑む。

 

「ハイ!」

 

 …と、歩き出したが何故か何もない所で転んだ。

 

「オボロ!?」

 

 コリンナが心配しながら声をかけるが鼻を押さえながらオボロは立ち上がり「大丈夫れふ。」と言ってまた走り出して転んでいた。クラウスナー領主もその姿に呆れるが直ぐに真顔となる。

 

「コリンナ、あの娘が例の…?」

「はい、自分は“ニホン”と言う国から来たと言っていた娘です。

傭兵達が川で男と抱き合う形で流されていた所を助けました。今は傭兵団に男と一緒に預けております。

娘の名はオボロ、一緒に流れて来た男はゲンノスケ(・・・・・)と言っておりました。」

「男の方はどうなのだ?」

「団長レオンハルトの話では剣の達人で試合ってみた様ですがレオンハルト以外は敵わなかったそうです。その彼も命の取り合いなら勝てないだろうと言わしめております。」

「我が領としては拾い物になるか?」

「分かりません。ですがあの娘…オボロのあまりにも澄んだ綺麗な瞳からは強い力を感じます。」

「魔眼…とでも?」

「私ではそれも分かりません。ですが聖女セイなら…、この地に来られるのでしたら会わせてみてはどうでしょう?」

 

 コリンナ自身も興味があるのか、聖女の彼女には申し訳ないが悪い顔になってしまう。領主もそこに何が起きるかは分からないがコリンナの口車に乗るのも一興と笑った。

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