スランタニア王国王都へと続く道を数騎の騎馬に護衛された数台の馬車が王都へと向かっていた。
「うあ…頭痛い、嫌な夢だったわ…。」
長い金髪で少々人相の悪い、しかし整った美少女が疲れた表情で呟いた。
「大丈夫ですか、カタリナ様。」
「う〜ん、駄目。マリアのクッキー食べたい。」
「分かりました。ココにありますのでどうぞ召し上がって下さい。」
向かいに座り持っていたバスケットケースを開けて中にあるクッキーを摘む彼女はマリア・キャンベル。ふわりとした金髪ショートボブの平民の少女だが光の魔法が使える希少な存在である。
そしてその彼女に“あ〜ん”と大口を開けてクッキーをせがむ彼女はソルシエ王国公爵令嬢カタリナ・クラエス。
今回、友好国としてソルシエとスランタニアの短い期間ながらスランタニア宮廷魔導師団で異国の魔法を学ぶ機会が出来、友好派遣魔導師として一人は国で数人しかいない光の魔力を行使出来るマリア。もう一人はマリアと第一王子ジェフリー・スティアートの推薦により彼女に決まった。言ってしまえばマリアの勇気ある我儘をジェフリーが快く受け入れて推したのである。
しかし決まった際に彼女の婚約者や弟、友達等が一緒に行くと騒ぎ大変であった。
結局魔法省研究部署長にして第一王子の婚約者…ラーナ・スミスの采配で同行が決まったのがカタリナ付きのメイド…アン・シェリー。二人の直属護衛として魔法省職員のソラ・スミスである。護衛部隊として王国騎士団の小隊を付ける事となった。
マリアの指からクッキーをパクリと食べるカタリナを隣に座る黒髪ショートボブのメイド…アンが呆れ顔になり嗜める。
「カタリナ様、はしたないですよ。」
「だってマリアのクッキー美味しいんだもん!」
「ふふ。」
マリアはクッキーを美味しいと言ってもらい嬉しさで笑顔になる。そこで馬車の御者をしていたソラが三人に声をかけた。
「御三方、もう直ぐ王都だぜ。」
その声にいち早く反応したのがカタリナで馬車の窓から顔を出した。
「やっと着いた!ウェルカム、スランタニアー!」
「カタリナ様、招かれたのは我々です。」
「いいのいいの。」
何が良いのか分からないが、元気な笑顔を見せてくれた主にアンは苦笑し、カタリナも先程見た悪夢はすっかり忘れてしまっていた。
「ソラ!」
突然御者のソラにカタリナが声をかける。
「何だよ、カタリナ様」
「約束、また果たせて良かったわ!」
彼女が投げかけた言葉にソラは照れ臭そうにはにかんだ。
同じ時、ソルシエ王国の馬車団とは別の離れた森林から黒装束の集団がスランタニア王国王都へと侵入しようとしていた。
黒装束装束はざっと十人、それを率いるのは銛を手にし、汚い着物一枚姿、背中が大きく盛り上がり、手足が細い醜い餓鬼…まるで傴僂男の様な片目の老人であった。
老人は細い糸を咥えて唇を小さく動かした。
「スランタニア王都に着いたぞ、百合丸。」
「では手筈通り、聖女を拉致しろ。」
醜い餓鬼に似た片目の老人は薄笑いを浮かべる。
「合い分かった。きひひひ。」
薄笑いを浮かべる老人。その周りを数匹の