オボロは周囲の部屋の中を見渡した。今まで借りていた小屋より少し豪華な部屋ではあったが窓が一つもなく、暖かみを感じない部屋であった。
一ヶ月程に森の川を気絶して流されているのをこの土地の主、クラウスナー領主に仕える傭兵と呼ばれる者達に救われた。抱き合うように重なっていたゲンノスケと一緒に…。
この土地の薬師…コリンナの紹介の下、領主とも顔を合わせ、オボロとゲンノスケはこの地で匿われ生活をしていた。
「すまないね…。領主より上の…、第一王子殿下の指示でね。暫くこの部屋から出ないでいておくれ。」
「ゲンノスケ様は何方におられますか?」
オボロは暗い顔でコリンナに尋ね、ゲンノスケはオボロと同じ一人部屋を用意され彼女と同じく部屋を出る事を禁じられているそうだ。コリンナはオボロの暗い表情を見て胸が痛む。
(まさかこんな仕打ちをされてしまうとは…、“ニホン”とは何なのか…セイにも関係しているのか?)
「悪い様にはならないさ、少しジッとしておいてくれ。」
「はい…。」
コリンナは後髪を引かれながらも部屋の扉を閉じ、鍵を掛けた。
時間が経ち、聖とアルベルトがカイルに呼び出され、領主の書斎へと足を運ぶ。
「カイル殿下、アルベルト・ホークとセイ・タカナシです。」
書斎へ行くとその書斎席には領主が座っており、客席のソファにはカイルが座り、その傍らにダミアンが付き従っている。
「ホーク団長、聖女セイ。予定外の仕事をお願いしたい。」
カイルがそう口にするとアルベルトも表情を引き締める。
「何…ですか?」
聖が尋ねる。
「領主によれば一カ月前程に傭兵団が森の川で一組の男女を助けたそうだ。」
「男女…ですか?」
聖が聞き返すとカイルは頷く。
「そうだ、そしてその男女は…“ニホン”より来たと…クラウスナーの傭兵団と薬師に語ったそうだ。」
「「えっ!?」」
アルベルトと聖の表情が強張り、聖は王都での襲撃が頭を過ぎった。
「キモンシュウ…。」
思わず聖は忌々しいその名を口にする。
「まだ分からん。二人は別々の部屋に軟禁している。」
「軟禁ですか…。」
聖は小さく呟きその顔に影を落とす。
「会議の準備を直ぐしたいが男女の件はその前に解決したい。明日、女の尋問をセイ、貴女にお任せしたい。」
「尋問?」
「そうだ、時間が惜しいので男は私とダミアンで尋問する。男女は今の所大人しい様子だが、何かあった時はホーク団長、聖女の守護を。」
「言われるまでも御座いません。」
「うむ、聖女を頼む。」
その深夜、朝の城の人気がない所で見張りをしていたであろう兵士が一人…闇より舞い降りた梟から手紙の入った小さい筒を受け取っていた。
(鬼門衆、深き森より集結。時期を見て城を強襲せり。
私は今暫く様子を見るが、“朧”様に何かあれば即殺す、如月左衛門。)
物騒な文の終わりを見て兵士は兜の影で笑みを隠し、手紙を燃やしたのであった。