聖とアルベルトはクラウスナーの城兵にニホンより来たと言う女性のいる部屋へと案内されると、部屋の扉の前には一人の老婆…コリンナが立っていた。
「コリンナさん…。」
「待っていたよ、セイ。すまないね、こんな邂逅させちまって…。」
「いえ、コリンナさんが責任感じる必要なんてありません。」
「いや、少しはあるんだよ。お前さんとあの娘…オボロを会わせてみたいと思って領主様をちょっと煽ってしまった。
何故こんな好奇心が出ちまったのか…ニホンて国への興味と、オボロのあの綺麗な瞳にアンタが何を見るか…。いい年して胸が高鳴っちまった。」
「オボロさん…と言うんですか。」
「かなり天然で何もない道で直ぐ転ぶ可愛い…しかし何処か…心の通った様に思わせてくれる娘さ。」
「気に入られてるんですね。」
「あぁ、アンタと同じさ。後オボロは決して相手を貶める事なんか出来る娘じゃない、アンタなら直ぐ打ち解けられるよ。」
「ありがとう、コリンナさん。」
話を終えて城兵が扉を開けると、部屋の中には長く少し跳ねっ毛がある黒髪を黄色い布と紐で束ね、紫の着物を着た可憐な少女がキョトンとした顔で聖を見つめて椅子に座っていた。そしてコリンナが言っていた瞳は吸い込まれそうな程に綺麗で…彼女の純粋さがそのまま瞳に出ている様に思え、彼女が危険な人物とは考えなかった。
(本当、コリンナさんの言う通りだ。)
すると聖が部屋に入った途端、彼女は椅子から立ち上がり、自分から自己紹介を始める。
「おっ、お初にお目にかかります。私、伊…、いえ、只の朧と言います。」
「“只野”…朧さん…です良いか?」
朧と名乗った少女は少し顔を赤らめる。
「はい…。」
何か違和感を感じて聖は名前を聞き直す。
「只野…さん?」
其処で朧も気付いて慌てて言い直した。
「いっ、いえ、朧です。“おぼろ”だけで御座います。」
「そっ、そうなんだ、じ、じゃあ朧さんと呼びますね。」
聖は朧に笑いかけ、朧はそのぎこちなくもこちらを気遣う様な微笑みに少し警戒を緩めて改めて聖を観察した。
先ず気になったのが綺麗な長い黒髪で自分と同じ黒髪とこの国の者の名前が苗字と名前が逆ではあるがもしかしたら…と思い、自分から尋ねた。
「タカナシ様は…もしや、私と同じ“日本人”ではないでしょうか?」
そう聞いた聖とアルベルトはかおを見合わせた。
「はい、私の本名は小鳥遊聖。日本人です。…でも朧さんとは同じ日本人でも、決定的に違う所があります。」
「ちがう、ところ?」
聖は少し迷いを見せるが、意を決して朧の目を見つめた。
(凄い綺麗な瞳…。)
「小鳥遊様?」
朧に声を掛けられてハッとした。朧の瞳に見惚れていた様だ。
「あっ、あっはっは、ごめんなさい。思わず朧さんの目に見惚れちゃった。」
「…すみません。」
朧に心配されて苦笑いする聖。彼女は気を改めて、朧との違いを話し始めた。朧にも心当たりがあり過ぎて何を言い当てられてしまうかで緊張が顔に出てしまう。
「先ず…ですが、この世界に関して私達がいた世界とは異なる世界。
「いせかい?…日本ではない事は分かりますが、此処は南蛮、
(南蛮、久々に聞いたな…。)
何て事を思いながら自分と彼女が違う日本人である事を話した。
「朧さんは生まれはいつですか?」
「生まれでございますか、慶長一年…くらいです。」
「慶長…400以上前…、獣兵衛さんより前だ。」
「えっ?」
「朧さん、私は朧さんが生きた時代より数百年先未来に生まれた日本人なんです。私はこの世界の魔法という力で召喚されました。
朧さんと…もう一人の方は多分、何処かでこの異世界で迷い込んだかと…思います。」
不安げに話をしていた朧の表情が神妙なものとなり作り笑顔のまま頭が傾いた。…恐らくは少し理解に苦しんでいるのだろう。
(…ですよね〜。私も理解と説明に苦しんでます。)
聖も苦笑いになり、朧と同じ方向に頭を傾け、今の所は口出ししていない後ろのアルベルㇳも何が何やら分からず顎に手をあて考え込んでしまった。
(聖のいた国もなかなかに複雑なんだな…。)