「そんな、未来にはそんな便利な物が溢れているなんて!?」
朧が驚いて大きく開けてしまった口に両手を添えて隠した。
「えぇ、遠くの人と会話が出来る電話と言う物もあって更に携帯電話が出来て歩きながら連絡出来るんです。」
聖も楽しげに自分がいた時代の物を話せるだけ話し、綺麗な瞳を更に輝かせ喜ぶ朧に気分を良くしている。
(尋問は何処へやら、しかし…。)
アルベルトと特に止めようとはせず、楽しく話す二人に顔を綻ばせる。彼女の本気の笑顔は数週間ぶりなので婚約者が嬉しげに笑う姿は彼としても喜ぶべき事であった。
…と、此処で“コンコン”とドアをノックが聞こえアルベルトが振り向くと開いたドアにはコリンナに案内されたカイルとダミアン、その後ろには長く少しウェーブのかかった黒髪をホーステイルで纏め、白く裾の長い羽織に紺の忍者装束に着こなした。強く鋭くも優しさを滲ませた瞳の日本人男性がいた。
「弦之介様!」
朧が弦之介の姿を見つけ、椅子から立ち上がるが途端に二人の護衛が即座に部屋へ入り剣を抜いて彼女に向けた。朧は驚いて椅子に尻もちをつくと次は聖が立ち上がり朧をま守る様に両手を広げて護衛を睨む。二人の護衛はその一睨みにたじろぐが其処へアルベルトが聖の肩に手を置いて宥めた。
「大丈夫だよセイ。殿下、護衛を後ろへお願い致します。」
アルベルトに言われてカイルが頷き軽く左手を上げると護衛は廊下に出た。
「我々の尋問は終わった。やはりこの男…ゲンノスケとそこの娘はニンジャであった。」
その事実に聖もアルベルトも驚愕するが、カイルは冷静に脇へと避けて弦之介を部屋の奥へと招いた。
「しかし
あの気難しく短絡的なスランタニア第一王子からは信じられない言葉が飛び出し聖は目を丸くして口からは「…えっ?」と驚きの言葉が洩れた。目が少々ジト目になっている。カイルもそれに気付き眉間にシワが寄る。
「…何か言いたそうだな。」
「いいえ、殿下も謙虚になられましたと感心致しました。」
聖のちょっと棘なある言葉にアルベルトも苦笑してしまう。かつて召喚された時、彼…カイル第一王子は聖女である聖を放置し、もう一人の召喚された愛良だけを気にかけ保護した。聖としては別に気にしてはいないが少し悪戯心が出ている様だ。
カイルも苦笑するが彼はダミアンと共に部屋の外へ出る。
「それ以外の話は私達には理解出来ぬそちらの世界の話だ。二人の尋問は聖女セイに任せたい。」
「畏まりました殿下。」
聖もそう返しカイル達を見送り、今度は弦之介と朧二人を話をする事となった。先ずはお浚いとしてカイルと話したクラウスナーでの事を聞く。
二人は気を失い重なる形で川に流れていた所を傭兵団に救われ、コリンナに看病されて今まで世話になっていたのだと言う。
聖は二人を王都に居る牙神獣兵衛と同じ異世界転移者と感じた。その事実を二人に話すと険しい顔をする弦之介、何だか分かっていない様子の朧に聖は苦笑いになる。
(随分違うタイプの二人だな、カイル様は二人は忍者と言っていた。弦之介さんは多分そうなんだろうけど…、朧さんは忍者…くノ一とは見えないな。率直に聞いてみるか。)
「カイル殿下はお二人を忍者と言っていましたが本当ですか?」
すると弦之介と朧が頷き、弦之介が口を開く。
「拙者は甲賀、朧殿は伊賀に連なる者。婚約者でござった。」
婚約者…。その言葉に聖は少し驚いて思わずアルベルトに視線を向けてしまうが彼も似た表情で聖を見る。しかし“…であった。”と過去形の微妙な言い回しが気になった。朧がとても悲しそうな表情に気付いて何かある事は確かなのだろう。
「その件でカイル様よりお話のあった鬼門衆にお心当たりはありますか?
知っている事があったら教えて下さい。」
朧は少し考えるが知らないと言いたげに弦之介を見た。弦之介は朧を愛おしげに見つめる。
(うわ、この二人絶対好き合ってる!)
なんて事を考えると弦之介がまた口を開いた。
「わが祖父…甲賀弾正から聞いた事がありまする。豊臣家と繋がり、支えていた忍者軍団で危険な集団だと…、出来るなら関わる事なきようと言われ申した。」
「それ以外は?」
聖に尋ねられるが弦之介は首を横に振った。結局、忍者である彼からは鬼門衆に関した情報は得られなかったのであった。